ご意見募集  トピックス  厚生労働省ホームページ

平成14年4月12日

臓器提供先に係る生前意思の取扱いに関するご意見の募集について


○ 臓器提供先に係る生前意思の取扱いに関しては、臓器提供者が、生前、臓器の提供先を指定していた場合、提供先として指定された者に対する臓器提供が認められるか、認められるとすればどの範囲で認められるか等について、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において、これまで5回にわたり検討が行われており、また本年3月18日から4月1日にかけて、厚生労働省ホームページ上でご意見の募集を行い、計9通のご意見をいただいたところです。

[経過]

 平成13年 9月10日  第3回臓器移植委員会
・ 議論(1回目)
10月11日  第4回臓器移植委員会
・ 議論(2回目)
12月12日  第5回臓器移植委員会
・ 参考人(外部有識者)からの意見聴取、議論(3回目)
 平成14年 3月13日  第6回臓器移植委員会
・ それまでの同委員会における議論を踏まえ、同委員会事務局(健康局臓器移植対策室)より、同委員会における議論のたたき台案として「提供先指定に係る生前意思の取扱い」を提出、議論(4回目)
 3月18日 〜 4月1日  厚生労働省ホームページ上で、「提供先指定に係る生前意思の取扱い」について、1回目のご意見募集を実施
4月9日  第7回臓器移植委員会
・ 事務局より、議論のたたき台案として、「臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱い」について、A案・B案を提出、議論(5回目)。資料としてご意見募集に寄せられたご意見を提出。

○ 4月9日に行われた第7回臓器移植委員会においては、事務局より「本人の生前の意思表示による臓器提供先の指定は認めるべきではない」とするA案と、「本人の生前の意思表示による臓器提供先の指定を限定的に認めてよい」とするB案(3月13日第6回委員会提出案)を提出し、これを基に議論が行われました。
 その結果、これまでの審議会における議論及びA案・B案の両方のたたき台案を示した上で、より広く国民からのご意見を募集して、同委員会における議論の参考とすることとされたところです。

○ つきましては、同委員会における検討の参考とするため、【臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱いについて(A案)・(B案)】について、広くご意見を募集いたします。

○ ご意見の受付期間は、平成14年4月12日(金)から5月12日(日)までとし、ご意見の提出については、電子メール、FAX又は郵送にて受け付けることとします。ご意見の提出、記載方法等は、下記【ご意見の提出要領】のとおりです。

○ いただいたご意見を有効に活用させていただく観点から、ご意見の提出に当たっては、できうる限り、ご意見を提出する事項やその理由を具体的に記載してください。

○ お寄せいただいたご意見は、原則としてそのすべてについて、資料として次回の厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において配布し、公開することとなります。


【ご意見の提出要領】

(1) ご意見の提出方法

 下記のご意見提出様式にしたがってご意見をまとめ、電子メール、FAX又は郵送にて提出してください(電話によるご意見の提出はご遠慮ください)。

(2) ご意見の受付期間及び提出先

(1) 受付期間 平成14年4月12日(金)より5月12日(日)(必着)
(2) 提出先
・ 電子メールの場合
 ishoku@mhlw.go.jp
※ 電子メールの場合、一太郎(バージョン11及びこれ以前のバージョン)、ワード(2000年版及びこれ以前のバージョン)、又はテキスト形式のいずれかにより、提出願います。
・ FAXの場合
 FAX番号:03−3593−6223
・ 郵送の場合
 〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2
 厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室 宛

(3) ご意見の提出様式

臓器提供先に係る生前意思の取扱いに関する意見

  1. 年齢:(「○歳代」でも結構です。)
  2. 性別:
  3. 職業:
  4. 氏名:
  5. 所属団体:(特にない場合は「なし」で結構です。)
  6. 上記4及び5の匿名化の希望:(匿名化を希望しない場合には「希望しない」と記載して下さい(特に指定がない場合には匿名とします)。)
  7. 連絡先の住所、電話番号又は電子メールアドレス

    ○ 御意見


(4) 問い合わせ先

厚生労働省 健康局 疾病対策課 臓器移植対策室 佐藤
(TEL:03-5253-1111 内線2366)


臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱いについて(A案)


○ 基本的考え方

1 臓器の移植に関する法律の解釈とその運用に当たっての基本姿勢


2 提供先を指定した臓器提供を認めることにより予想される弊害

(1)移植待機患者を指定して提供をなし得る者に与える影響について

(1) 親族等の一定の範囲での提供先指定を認めた場合、移植待機患者の親族等に、当該待機患者のために自らの臓器を提供しなければならないのではないかとの精神的な重圧を与えるおそれがあるのではないか。

(2) 提供者が自殺した場合にも、提供者の指定による提供を認めうるとすると、自殺を誘発するおそれがあり不適当ではないか。

(2)臓器移植医療全体に与える影響について

(1) あっせん機関に登録して移植を待っている待機患者に対して不公平となるのではないか。

(2) 提供先を指定する場合、臓器提供意思表示カードに記載するなど、書面によりその意思を表示する必要があるが、そうした処理が定着することは公平な移植医療に反することになるのではないか。

(3)運用上の不都合について

(1) 医学的理由により指定された者への提供ができなかった場合に、当該提供者からの臓器提供ができなくなるのか、それともあっせん機関に登録されている待機患者に配分されることになるのかなど、取扱いが複雑になるのではないか。

(2) 提供先の指定が認められるための要件を定めて運用するとしても、その要件に該当しないために提供先の指定が認められない事例が多発し、現場での混乱が起きるのではないか。

(4)普及啓発の問題について


○ 新たなルール(案)

 レシピエントの選択は、あっせん機関により、公平かつ適正に行われることが原則であり、何人も自らの臓器の提供先を指定して臓器提供を行うことはできない。
 また、臓器の提供先を指定する意思が書面により表示されていた場合は、医師は、移植術を必要とする者に対する移植を行うために、当該提供先を指定する意思表示を行った者に対する法に基づく脳死判定及びその者からの臓器(心停止後の眼球又は腎臓を含む)の摘出を行わないものとする。

(参考)


  (案) (論点)  
(1) 法律との関係について
(1) 臓器移植法は提供先の指定を禁止しているか
  •  臓器移植法の基本的理念の一つとして「移植術を受ける機会は公平に与えられるよう配慮されなければならない」とされており、レシピエントの選択は公平に行われるべきであることは当然である。

  •  また、厚生労働大臣は、移植術を受ける者の選択を公平かつ適正に行わないおそれがあると認められるには、臓器あっせん業の許可をしてはならないとされている。

  •  こうした法を支える考え方に照らせば、親族に提供者がいる場合には、移植を待つレシピエントの列を飛び越えて移植を受けられるということは例外的にも認められない。

  •  確かに臓器移植法の基本的理念の一つとして移植術を受ける機会は公平に与えられるよう配慮されなければならないとされている。

  •  しかし、現行法に明文で提供先の指定を禁止する規定はなく、提供先の指定を認めることが直ちに法に抵触し許されないとまではいえない。

  •  また、基本的理念として、「自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない」ともされている。

  •  こうした法を前提とする限り、提供先の指定をが全く認められないとはいえないのではないか。

  •  明文の規定になっていなくとも、法律制定時も公平な移植医療が行われることが前提で議論が行われてきたのであり、臓器移植は当然に公平に行われるべきものではないか。

  •  提供先の指定を認めることは公平性の原則に反するものであり、基本理念である公平性を超えられる論理がないままに認めることはできないのではないか。

(2) 認めるとした場合の弊害について
(1) 移植待機患者を指定して提供をなし得る者に与える影響について
  •  移植待機患者の親族等に、当該患者のために自らの臓器を提供しなければならないのではないかとの精神的な重圧を与えるおそれがあるのではないか。

  •  提供者が自殺した場合にも、提供者の指定による提供を認めうるとすると、自殺を誘発するおそれがあり、不適当ではないか。

  •  移植医療は、誰かのために自分の臓器を提供してもよいという提供者本人の自発的意思によってなされることが原則であり、そうした自発的意思が明確に表示されている場合に限って認めることとすれば、不当なまでの精神的重圧がかかるとはいえないのではないか。

  •  自殺した者については、臓器提供先の指定を認めないことを明確にすれば、自殺を誘発するおそれはないのではないか。

  •  自発的意思による提供というルールがどこまで担保されるかは疑問が残る。

  •  生前意思の取扱いについての周知がどこまで徹底されるのかは不明であり、自殺した者についての取扱いが周知されるかどうかは必ずしも保証されないのではないか。

(2) 臓器移植医療全体に与える影響について
  •  あっせん機関に登録して移植を待っている待機患者に対して不公平となるのではないか。

  •  提供先を指定する場合、臓器提供意思表示カードに記載するなど書面によりその意思を表示する必要があるが、そうした処理が定着することは公平な移植医療に反することになるのではないか。

  •  善意の意思が活かされず、救済できる命が救済されないことは臓器移植医療にとってマイナスではないか。

  •  家族に提供したいという人の意思を無視してまで公平に臓器が配分されるべきであると望む患者は少ないのではないか。

  •  提供先指定が認められないとしても移植を待っている他の患者への移植機会は増加しないのではないか

 
(3) 運用上の不都合について
  •  医学的理由により家族に提供できなかった場合に、当該提供者からの臓器提供ができなくなるのか、それともあっせん機関に登録されている待機患者に配分されることになるのかなど取扱いが複雑になるのではないか。

  •  提供先の指定が認められるための要件を定めて運用するとしても、その要件に該当しないために提供先の指定が認められない事例が多発するのではないか。

  •  これらにより、現場での混乱が起きるのではないか。

  •  提供先として指定された者に対する提供が医学的に不可能であった場合の取扱いについては、本人の意思が表示されている場合はそれに従い、表示されていない場合にはあっせん機関を通じた配分にのせることとしてはどうか。

  •  ルールとして明確化した上で、提供施設等を通じて周知徹底を図ることとし、要件に該当しない事例については、一律に認めないとして運用することとしてはどうか。

 
(4) 普及啓発の問題について
  •  臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱いについて、提供先の指定が認められるための要件等を明確にした上で国民に周知徹底を図る必要があるが、それにより結果的に提供先の指定が推奨されることになり、不適当ではないか。
  •  提供先指定についてはその取扱いを明確にした上で周知徹底を図る必要がある。しかし、臓器移植に当たっては医学的理由による公平な配分が原則であること、あくまで自発的意思による提供にが前提となることについても併せて普及啓発を一層推進することとしてはどうか。

  •  また、指定しうる者への提供という身近な事例から移植について考え、理解が深まるという現象も起こりうるのではないか。

  •  本人の自己決定を権利として認めるのか、公平性を原則とするのかの基本原理が不明確なままで普及啓発を行うことになり、混乱が生じるのではないか。
(3) 臓器提供先を指定する意思表示があった場合の本人の生前意思の取扱いについて
 
  •  臓器の提供先を指定する意思が書面により表示されていた場合は、医師は、移植術を必要とする者に対する移植を行うために、当該意思行事を行った者に対する脳死判定及びその者からの臓器の摘出は行わないものとする。
  •  提供先を指定する部分のみを無効とし、臓器を提供するという部分は有効と解して、他のレシピエントへ配分するために臓器を摘出できることとしてもよいではないか。

  •  指定した者への提供ができなかった場合の取扱いについての本人の意思が書面により表示されていれば、それに従うこととしてよいのではないか。

  •  指定した者への提供が不可能である場合、本人の意思が「指定した者へ提供ができないのであれば提供しない」というものであるか、「提供した者へ提供ができないのであれば他の待機患者へ提供する」というものであるかは不明確であり、一律に取扱いを決めることは不適当ではないか。

  •  本人の意思が表示されていた場合にはそれに従うこととすると取扱いが複雑になり、運用上不適当ではないか。



提供先指定に係る生前意思の取扱いについて(B案)


○ 基本的考え方

1 臓器の移植に関する法律の解釈とその運用に当たっての基本姿勢


2 提供先を指定する生前意思の取扱い


○ 新たなルール(案)

 レシピエントの選択は、あっせん機関を介して、公平かつ適正に行われることが原則であるが、臓器提供者本人が、生前、既にあっせん機関に登録されている血族を提供先として指定する意思を書面により表示しており、かつ遺族が拒まない場合には、例外的に、提供先として指定された者に対する臓器の提供を認めること。

(参考)

(1) 臓器提供者本人の指定による臓器の提供を受けられる者について

(1) 臓器提供者の血族であること

(2) 社団法人日本臓器移植ネットワークへのレシピエント登録を行っている者であること

(3) 医学的に移植適応であること

(2) 指定が認められる臓器提供者本人の生前意思について

(1) 提供先を指定する本人の意思が書面により表示されていること

(2) 15歳以上の者の意思表示を有効なものとして取り扱うこと

(3) その他


  (案) 意見  
(1) 臓器提供者本人の指定による臓器の提供を受けられる者について
(1) 親族に限定するか
  •  親族に限定する。
  •  親族に限定しない。
    A 人種、国籍、性別、年齢等の属性による指定
    B 親族以外の特定個人を指定
  •  Aの属性による指定は社会的に問題が多く、またBの特定個人の指定とは、臓器売買等の違法若しくは不公平・不適正な行為につながるおそれがある。
(1)’親族の範囲
  •  血族
A 配偶者と2親等内の血族
B 3親等内の親族
C 血族と同居の親族
D 親族
  •  広い範囲で本人が指定した者への臓器提供を認めると、臓器売買に準ずるような利害関係がからむ可能性が比較的高くなる。
(2) レシピエント登録の必要性
  •  あっせん機関へのレシピエント登録を行っている者であること
  •  本人の生前意思が明らかであり、医学的に移植適応であれば、レシピエント登録を行っている必要はない。
  •  あっせん機関に登録して移植を待つ人が大勢いる中、提供先が指定された形での提供を含め国民の理解を得て臓器移植を推進していくためには、客観的に見てレシピエントが移植を真に必要としていると認められることが必要である。

  •  提供先指定のある場合でもあっせん機関によるあっせん業務は存在する。

(3) 移植適応
  •  医学的に移植適応であること
(2) 指定が認められる臓器提供者本人の生前意思について
(1) 提供先指定は本人の自発的意思によるものである必要があるか
  •  提供先を指定する本人の意思が明らかであること。
  •  本人の提供先指定の意思が明確でなくとも、親族が提供先を指定することができる。
  •  臓器移植の基本理念の一つは公平性であり、本人の明確な意思が確認されない場合に原則から離れた形である提供先指定を認めることは不適切。

  •  本人意思に反した提供が行われるおそれがある。

(1)’書面による意思表示である必要があるか
(家族の忖度について)
  •  提供先を指定する本人の意思が書面により表示されていること。

  •  書面性を満たすものとしては、
     @) 本人の自署による署名
     A) 署名年月日
     B) 提供先として指定する者の氏名と臓器の種別

    が記載されている文書であること

  •  必ずしも書面による意思表示であることを要せず、本人の生前意思を家族が忖度することも認めうる。

  •  脳死判定及び臓器提供の意思が書面で表示されていれば指定先については書面になっていなくともよい。

  •  書面でなくてはならないとするとカードに指定先を記載する者が増え、公平公正な移植医療の推進が阻害され、また移植適応の者の家族への精神的負担が生じる。

  •  移植法においては家族による本人意思の忖度は基本的に認められていない。

  •  提供先が指定された形での提供は例外的な在り方であり、国民の理解を得て臓器移植を推進していくためには、本人の自発的な意思による指定があることが書面により明らかに確認されたといえることが必要。

  •  レシピエントの選択は医学的理由により公平に行われることが原則であることから、カードに記載欄を設けることは予定していない。

(3) 有効に意思表示をなし得る主体について
  •  15歳以上

  •  有効な意思表示をなしうる能力があることが必要。

  •  15歳未満の者でもよい
  •  本人の書面による意思表示での指定のみを認めるとする以上、15歳以上の者の意思表示のみを有効なものと取り扱うべき。
(3) その他

○ 臓器の別により扱いを変えるか

○ 脳死下・心停止下での提供により扱いを変えるか

  •  臓器の別により扱いを変える必要はない。

  •  脳死・心停止下とも同様の扱いとする。

  •  心停止下での腎臓及び眼球については、現行臓器移植法でも家族の承諾のみによる提供が可能とされていることから、これらについては家族による提供先指定を認める。

  •  眼球については、52のアイバンクがあっせんを行っており、必ずしも全国レベルでの公平性は運用上実現されていないことから、眼球についてはあっせん機関ごとの対応を認める。

  •  現行法附則第4条における腎臓・眼球の取扱いは、角腎法からのスムーズな移行を目指し、当面の措置として、家族の書面による承諾で足りるとしたものであり、本人意思の尊重を基本理念の一つとする現行臓器移植法下において、本人の明確な意思が確認されない場合に原則から離れた形である提供強先指定を認めることは不適切。

  •  本人意思に反した提供が行われるおそれがある。

  •  眼球についても、アイバンクごとに公平かつ適正なレシピエント選択が行われるべきものであり、原則から離れた形である提供先指定によるレシピエント選択を認めるルールについては、全臓器同一のものとし、これを明確にしておく必要がある。

○ 指定による提供が可能な臓器の数
  •  指定による提供が可能な臓器の数は限られるものではない。
  •  一臓器のみの指定を認め、他の臓器の少なくとも一をネットワーク・アイバンクを介したあっせんにのせる。(なお腎臓であれば一腎、眼球であれば一眼。肺は両肺であってもよい。)
  •  一臓器に限るとする根拠が不明確。

  •  結果的に、提供先指定があった臓器以外の臓器が、臓器移植法の範囲内で(本人意思/家族の承諾により)、ネットワークを介したあっせんにのることは可能。

○ 取扱いの周知について
  •  提供先の指定が認められるための要件については、ルールとして明確化した上で国民の間に周知徹底を図る。
  •  取扱いを周知徹底することにより、提供先を指定することを推奨し、移植待機患者の血族等に精神的重圧を与える結果になるのではないか。
  •  取扱いの周知に際しては、併せて、原則として臓器移植を受ける者の選択は医学的理由に基づき公平に行われるべきものであることや、臓器提供はあくまでも本人の自発的意思に基づいて行われるべきものであることについても併せて周知・啓発を図ることとする。


臓器移植委員会におけるこれまでの「臓器提供先に係る生前意思」に関する主な意見(未定稿:事務局まとめ)

  提供先の指定を(限定的に)認めてよい 提供先の指定を認めるべきではない
公平性について
  •  「臓器は基本的に公なものであり、その分配は公の下で行う」という場合には提供先の指定は認められないであろうが、日本の法律は非常に私的な権利を認めているのではないか。

  •  今までの議論を見ると、レシピエント選択の公平・公正さという観念の中に、親族間は別で、その場合には優先されても仕方ないという認識が含められているというふうに把握することも可能。

  •  原則として、書面による本人の意思表示により、親族間の移植に限りその本人の意思表示の有効性を認める。ただし、臓器移植の公平及び適正を害さないこと。この臓器移植の公平及び適正を害するか否かの判断結果については、パブリックに開示していくことが臓器移植の適正な発展に寄与していくものと考える。

  •  公平性、匿名性については生体移植では貫徹されていない。

  •  基本的には提供先指定は、エンカレッジされるべきではない。提供先指定の希望があれば、書面で書いてもらう。

  •  あくまで臓器移植の原則は公平性であると思うが、提供先の指定はエンカレッジされるものではないという認識のもとで、例外的なものとして認めるかそれとも認められないかということを議論すべきではないか。

  •  親族に臓器を提供することで助けることができるのであればそうしたいというのが大方の人の気持ちであり、それが法律に抵触するのであればもう一度根本に立ち返ってそうしたことが認められるようにしてほしい。

  •  提供先の指定を一律に認められないとする背景として、それを認めることによる何らかのリスクがあるのか。あるとすればそれはどのようなリスクなのか。

  •  諸外国は本人の意思を尊重する仕方が違うだけであり、本人が拒否した場合には移植は行われないのであって、本人の意思を諸外国が尊重しておらず、日本は尊重しているとする議論のたて方は誤りではないか。

  •  臓器移植の基本的な考え方は医学的必要性であり、身内に提供者がいる場合には助かるということでは公平とはいえないのではないか。

  •  公平性ということを外したら法律を定める意味が無くなるのであり、仮に提供先指定を認めないことにより提供数が減るとの指摘があっても、基本理念である公平性を優先すべきである。

  •  提供先の指定を認めると「親族に限定する理由」が問われるとともに、「意思は書面に書く必要があり、書かれた意思は尊重する必要がある」となり公平な移植医療に反することになる。

  •  (生体移植とのアナロジーで本人の意思を尊重すべきとする議論については、)臓器移植は基本的に死体から行われるものであり、生体移植の場合に指定した者への提供ができるというのは権利ではなく、やむを得ないものとして弊害の少ない範囲で解除したものである。

  •  現在のシステムによる公平を飛び越える公平というのは存在するのか。

  •  立法者意思は必ずしも明確でないが、少なくとも日本の臓器移植が公平性からスタートしたことは否定できず、現在ではさらに多くの人が臓器移植の公平性は押し進められるべきと認識するようになってきているのではないか。

  •  本人や家族の心情だけではなく、移植を待つ患者のことも考えるべきであり、それが公平ということではないか。

  •  親族に提供したいという心情は正しいことであり得るが、提供先の指定を権利として認めるとすれば、待機患者の列を飛び越えて提供を受けられることになり、それは移植法成立に至る議論の過程からみても誤りである。

  •  仮に提供先の指定を認めるのであれば、基本的に日本の臓器移植が公平性と意思尊重のどちらを基本原則とするのかというところから考えるべきではないか。

  •  血族を説得して、提供者となってもらうことから始めるべきであるという社会的な風潮が出てくるおそれがあるのではないか。

本人・家族の意思について
  •  自分の臓器について、身近にある親族に提供したい意思は当然であり、それは優先してほしい。

  •  自己決定権や、財産権の議論から論理的に演繹できる話ではなく、あくまでも公共政策として、どの範囲で明確な基準を設けて、本人の意思を限界づけるか、または認めていくかということが重要。

  •  特にルールの明瞭性と手続の適正を本質とする「法的適正手続」が重要。

  •  家族に対し、ネットワークに委ねるか、あるいは移植全体を拒否するかどちらかの意思表示しか認めないとまでいうためには、適正手続の観点から、明示的な法の定めが必要と考えるが、現在はその定めがない。

  •  現行の臓器移植法の趣旨、理念、思想というのは、本人及び家族意思の重視。このことは、これらの者の承諾が重点的にあるいは重畳的に求められている点に現れている。
     また、本人が脳死判定・臓器提供の意思を表明していても家族が本人意思の実現を拒むことができるとされている点で、家族の意思の優越が認められているといえる。

  •  臓器移植法は、臓器の提供を狭める方向で本人意思あるいは家族意思を非常に重視しているといえる。

  •  臓器移植法第2条第1項については、あくまでも献体法の段階で親族意思と本人意思が対立した場合にどちらを優先させるかという問題を念頭に置いて入れられた規定であるが、本人意思の尊重という性格は、第6条の規定自体より明らか。

  •  本人の指定を家族が拒むという問題も出てくるが、その際は2条1項の本人意思の優先をなるべく進める。

  •  本人が意思表示をできないとき、家族をどういう順位づけで代理人として取り扱うかということについて、日本にはルールがないので、曖昧な部分が残らざるを得ない。

  •  希望を認めない場合、遺族は提供を拒むことが予想されるが、希望を認めてもネットワークを介してあっせんされる臓器の数には変化がない。むしろそういう希望を認める方が、制度がより国民に身近に感じられるのではないか。

  •  今回措置は、死者の自己決定権を極めて厳格に解し「命の贈り物であるからあげたい人にあげる」という考え方が強く出てしまったため生じた誤り。

  •  仮に遺言として残したとしても、財産と臓器は異なり、臓器の贈与先を指定することはできない。

  •  (生体移植とのアナロジーで本人の意思を尊重すべきとする議論については、)臓器移植は基本的に死体から行われるものであり、生体移植の場合に指定した者への提供ができるというのは権利ではなく、やむを得ないものとして弊害の少ない範囲で解除したものである。(再掲)

  •  親族に提供したいという心情は正しいことであり得るが、提供先の指定を権利として認めるとすれば、移植待機患者の列を飛び越えて提供を受けられることになり、それは移植法の議論からみても誤りである。(再掲)

  •  仮に提供先の指定を認めるのであれば、基本的に日本の臓器移植が公平性と意思尊重のどちらを基本原則とするのかというところから考えるべきではないか。(再掲)

  •  諸外国は本人の意思を尊重する仕方が違うだけであり、本人が拒否した場合には移植は行われないのであって、本人の意思を諸外国が尊重しておらず、日本は尊重しているとする議論のたて方は誤りである。(再掲)

  •  献体法に由来する臓器移植法第2条第1項は、「なるべく本人意思を尊重し、遺族がNoと言わないことを期待する」という趣旨ととらえるべきもの。

家族による忖度について
  •  親族の内側についてはできる限り忖度をし、親族の外側については秩序を乱してはいけない。

  •  本人が意思表示をできないとき、家族をどういう順位づけで代理人として取り扱うかということについて、日本にはルールがないので、曖昧な部分が残らざるを得ない。(再掲)

  •  家族に対し、ネットワークに委ねるか、あるいは移植全体を拒否するかどちらかの意思表示しか認めないとまでいうためには、適正手続の観点から、明示的な法の定めが必要と考えるが、現在はその定めがない。(再掲)

 
遺体(臓器)の所有権
  •  脳死であれ心臓死であれ遺体の処分について、本人・遺族の意思はどこまで認められているのか。どのような権利があるのか。

  •  [「臓器の所有権」議論]人体については、一般的な物と違って、所有権の客体になると言おうがいわまいが、公法的な規制に大きく委ねられ、普通の物と同じように自分の物だから自分の好きに処分していいということにはならない。あくまでも公共政策の観点から、その処分の内容を決めていかないといけないというのが通説的見解。

  •  日本においては、遺体は火葬が終わり遺骨が収集され、骨壺に入れられるまでは、ある程度人格を残しているという取扱いをされており、ある一定の段階までは、遺体に死者の意思が残っていると周りの人がみなして遺体を扱う。

  •  我が国における死体の法的取扱い特に医学的利用に関する取扱いとして、遺族に本人の死体の所有権を認め、遺族を所有者とした判例がでている。

  •  今回措置は、死者の自己決定権を極めて厳格に解し「命の贈り物であるからあげたい人にあげる」という考え方が強く出てしまったため生じた誤り。(再掲)

  •  仮に遺言として残したとしても、財産と臓器は異なり、臓器の贈与先を指定することはできない。(再掲)

  •  所有権についてあるいは財産的な取戻権についての議論は、臓器の提供の問題には当てはまらない。

本人の生前意思の表示について
  •  原則として、書面による本人の意思表示により、親族間の移植に限りその本人の意思表示の有効性を認める。(再掲)

  •  基本的には提供先指定は、エンカレッジされるべきではない。提供先指定の希望があれば、書面で書いてもらう。(再掲)

  •  提供先の指定が認められるための要件は明確にした上で周知徹底されるべきである。

  •  提供先の指定を認めると「親族に限定する理由」が問われるとともに、「意思は書面に書く必要があり、書かれた意思は尊重する必要がある」となり公平な移植医療に反することになる。(再掲)

  •  提供先の指定を認めるとすれば本人の意思表示をもって示すことが必要になるが、意思表示カードに記載欄を設けてそうした意思表示を処理することになると、本質を失っていく可能性がある。

レシピエントとして指定しうる者について
  •  「他人は嫌だが、血族の中で自分の臓器が生き長らえるのならばいい」という感情はあり、それを認めてもよいのではないか。

  •  自分の臓器について、身近にある親族に提供したい意思は当然であり、それは優先してほしい。(再掲)

  •  極めて限定された形であれば、認めてもいいのではないか。

  •  原則として、書面による本人の意思表示により、親族間の移植に限りその本人の意思表示の有効性を認める。ただし、臓器移植の公平及び適正を害さないこと。この臓器移植の公平及び適正を害するか否かの判断結果については、パブリックに開示していくことが臓器移植の適正な発展に寄与していくものと考える。(再掲)

  •  指定が認められる親族は、2親等の血族及び配偶者程度をイメージ。

  •  人種、国籍、性別、年齢、障害等社会的に問題が多い特徴による指定は認められてはならない。

  •  親族の内側についてはできる限り忖度をし、親族の外側については秩序を乱してはいけない。(再掲)

  •  今までの議論を見ると、レシピエント選択の公平・公正さという観念の中に、親族間は別で、その場合には優先されても仕方ないという認識が含められているというふうに把握することも可能。(再掲)

  •  生体移植で認められているドナーの範囲内のみならば整合性が取れる。

  •  あっせん機関に登録しているということは、親族からだけでなく臓器の提供を受けたいという意思表示をしているのであるから、ある意味では正当なプロセスではないか。

  •  臓器移植の基本的な考え方は医学的必要性であり、身内に提供者がいる場合には助かるということでは公平とはいえないのではないか。(再掲)

  •  提供先の指定を認めると「親族に限定する理由」が問われるとともに、「意思は書面に書く必要があり、書かれた意思は尊重する必要がある」となり公平な移植医療に反することになる。(再掲)

  •  今回措置は、死者の自己決定権を極めて厳格に解し「命の贈り物であるからあげたい人にあげる」という考え方が強く出てしまったため生じた誤り。(再掲)

  •  提供先を指定する権利を認めた上で指定が認められる範囲を限るのであれば、商業主義の排除という目的を達成する以外の限定は考えられず、必ずしも血縁者やネットワークに登録している者に限る理由はないのではないか。

指定しうる臓器の種別について
  •  すべての臓器について認めるとすると、指定された者が医学的に移植適応でなかった場合の扱いが複雑になるので、眼球と腎臓については認めることとしたらどうか。

  •  腎臓と肝臓は、実際に医療現場で生体ドナーからのレシピエントを指定した移植が行われており、これについて特に他の移植待機患者から不公平であるとの批判はなされていない。こうした中では、これらの臓器については、死体からの移植であっても提供先の指定が認められるのではないか。

  •  全臓器共通の取扱いとして、指定は認められるということが原則であるとして周知徹底することは困難なので、あくまで例外的な対応として指定を認めることが適当。このため、ドナーとなりうる者が自殺するおそれも低いと考えられる腎臓について、期間を限って試験的に提供先の指定を認めることとし、一定期間が経過したらその結果を検証することとしてはどうか。

  •  生体移植のドナーは自ら臓器を摘出されるというリスクを負っており、死体からの移植と同列にはできないのではないか。

  •  腎臓であれば生体移植も可能であり、また人工透析という治療法もあるので、特に腎臓の場合だけ認めると矛盾点が出てくるのではないか。

  •  臓器の種別を区切った上で、期間を区切って試行的に行うにせよ、恒常的に行うにせよ、提供先の指定を認めることが不公平であることは変わりはないのであって、認められるものではない。

その他
  •  提供数が少ないからこのような問題が起こってくるのであり、基本的にもっと移植が進むようなことを真剣に考えることが前提。現状からいえば、例外的に提供先を指定する意思を認める余地は残しておくべきではないか。

  •  自己決定に委ねることができるということはそれだけ資源の余裕があるのであり、希少な資源に関しては統制的・規制的側面が当然強まってくるのではないか。

  •  日本社会の中に残る人間関係、その上の社会的な関係というのは、極めて具体性を帯びており、提供を受ける者を指定したドネーションというのが一方で非常に根強いことから、提供先指定を認めないということは、現段階では、臓器提供に関する日本人の動機づけをある一定期間(日本の家族制度、あるいはその家族制度に支えられた死者儀礼が守られ続ける限り)抑止することになりかねない。

  •  提供先の指定を例外的に認めることにより、一般国民の臓器移植に対する理解が深まるのではないか。

  •  提供先の指定を認めるとすれば本人の意思表示をもって示すことが必要になるが、意思表示カードに記載欄を設けてそうした意思表示を処理することになると、本質を失っていく可能性がある。現在の提供数を増やしたいということならば、やるべきことは他にあり、別問題。(再掲)

  •  日本では、法律上の理由等により、移植が難しくなっており、そうした事態を放置しておきながら、親族へ提供する意思を重視すべきだという考え方は妥当ではない。

  •  これは文化人類学的な問題であるという指摘があるが、まさにその点を変えるために法律が作られたのではないか。

共通事項
  •  提供先の指定を認めるか認めないかという問題を検討するに当たっては、いずれを採用するかにより、全体として臓器の提供される件数が増加する又は減少するといった移植件数の動向とは切り離して考えるべきである。



(参考)
未定稿:事務局まとめ
議事録は厚生労働省HPに掲載

児玉参考人説明要旨

○ 臓器提供先と本人の意思に関わる問題

・ アメリカの統一死体提供法(UAGA:州法を作る上でのガイドライン)においては、donee(提供を受ける人)という概念があり、病院や医師、大学等及び「臓器移植を必要とする指名された個人」はその提供を受ける人になれるとされており、個人の自己決定、個人の意思を非常に重視した法制度になっている。
・ 一方、我が国の臓器移植法においては、第2条第1項により自己決定を尊重するとされているが、それが全てでなく、公平性、あっせんが「公平かつ適正」に行われなくてはならないという対立するファクターが含まれている。
・ これらの対立する価値について、法律分野では、色々なファクターを天秤にかけて判断をしていく「比較衡量」という手法があり、アメリカの法律の一般的な手法であり、日本も受け継いできたやり方。比較衡量手法は、絶対的なものではなく、Slippery Slope issue(いったん傾き出すと、坂を転げ落ちるように一方の利益ばかりが強調されてしまうという傾向)、Incommensurability(共約不可能性。パラダイムが違うものは比較できない)といった議論がある。いずれにせよ、比較衡量論を用いるときには、ボーダーラインをはっきりさせることが大事。
・ 「臓器の所有権」議論
 人体については、一般的な物と違って、所有権の客体になると言おうがいわまいが、公法的な規制に大きく委ねられ、普通の物と同じように自分の物だから自分の好きに処分していいということにはならない。あくまでも公共政策の観点から、その処分の内容を決めていかないといけないというのが通説的見解。

(参考)

・ 「ムーア対カリフォルニア大学」(1990)
 ブラサード判事は反対意見において、「UAGAの大原則は、提供者が臓器の行き先をコントロールできるということではないか」と指摘。「もし提供者の意志に反する形で臓器ないし組織が使用されるとすれば、何人といえどもその病院が提供者の法的な権利を侵害したということを否定する者はないだろう」と、自己決定論を強く支持。
・ 「ウェリー対トスコラ郡」(1995)
 解剖の際、角膜を、本人の意思によらずに摘出することを認めるというルールについて、遺族が異議を唱えたもの。親族に、その物についての法的な正当な権利を認め、もしこの権利を侵害するとすれば、法的適正手続に反していると指摘(財産権に対する侵害ではない)。

○ 本人と遺族の意思表示をどう取り扱うか

・ 現行法は本人の意思表示(要式)が条件+遺族の側に拒否の意思表示をするという立場を認める。範囲や条件付けについては沈黙。
・ また、(ドナーカードなどの)一般的な書式にどのような項目を盛り込むかにより、政策的な影響はかなり異なる。
・ 意思表示に会えて余分な条件が付けられた際に、どういう対応をするか。
(1) 意思表示全体として有効、条件も有効
(2) 提供の意思表示は有効、条件は無効
(3) 条件付けのある意思表示は全体として無効

・ 自己決定権や、財産権の議論から論理的に演繹できる話ではなく、あくまでも公共政策として、どの範囲で明確な基準を設けて、本人の意思を限界づけるか、または認めていくかということが重要。
・ 特にルールの明瞭性と手続の適正を本質とする「法的適正手続」が重要ではないか。
・ また、資源の問題も重要ではないか。つまり、自己決定に委ねることができるということはそれだけ資源の余裕があるのであり、希少な資源に関しては統制的・規制的側面が当然強まってくるのではないか。
・ 原則として、書面による本人の意思表示により、親族間の移植に限りその本人の意思表示の有効性を認める。ただし、臓器移植の公平及び適正を害さないこと。この臓器移植の公平及び適正を害するか否かの判断結果については、パブリックに開示していくことが臓器移植の適正な発展に寄与していくものと考える。



波平参考人説明要旨

○ 日本においては、遺体は火葬が終わり遺骨が収集され、骨壺に入れられるまでは、ある程度人格を残しているという取扱いをされており、ある一定の段階までは、遺体に死者の意思が残っていると周りの人がみなして遺体を扱う。
 脳死移植はしっかり人格を喪失しないうちに、人格の一部分が切り取られて他の人格に移動するという、伝統的な考えとはかなり異なるもの。

○ 生前に自分の親族に対して臓器を提供したいという意思表示を認めないということは、現段階では、臓器提供に関する日本人の動機づけをある一定期間(日本の家族制度、あるいはその家族制度に支えられた死者儀礼が守られ続ける限り)抑止することになりかねない。
 なぜならば、日本でもアノニマス(匿名性をもった)ドネーションが次第に社会に広がりつつあるが、提供を受ける者(ドニー)を指定したドネーションというのが一方で非常に根強いため。
 関係性を明確にした上でドネーションをしたいというのは、日本社会の中に残る人間関係、その上の社会的な関係というものが、極めて具体性を帯びているということであり、(お歳暮や年賀の交換のような)具体的な行為をもって人間関係が確認され、さらに新たな関係を再生産していくものであるということ。

○ ただし、提供を受ける者が、ネットワークに登録できるとなると、権利を二重に持つことになるという問題は残る。



丸山参考人説明要旨

I 臓器提供先に関する本人の生前意思の取扱いについての視点

(1) 現行法の性格及びその由来
・ 法律の解釈というのは、その法律の理念・趣旨に則して行わなければならない。現行の臓器移植法の趣旨、理念、思想というのは、本人及び家族意思の重視。このことは、これらの者の承諾が重点的にあるいは重畳的に求められている点に現れている。
 また、本人が脳死判定・臓器提供の意思を表明していても家族が本人意思の実現を拒むことができるとされている点で、家族の意思の優越が認められているといえる(第6条第1項、第3項)。
・ 現行法における本人又は家族・遺族の意思尊重という性格、特に家族に拒否権を認めて強い発言権を与えているという性格は、平成6年の各党協議会案に、平成8年の各党協議会案による修正及び関根案による修正が加わったという経緯から、否定できない。
・ 本人意思の尊重という性格は、あくまでも献体法の段階で親族意思と本人意思が対立した場合にどちらを優先させるかという問題を念頭に置いて入れられた規定であるが、本人意思の尊重という性格は、第6条の規定自体より明らか。
・ 臓器移植法は、臓器の提供を狭める方向で本人意思あるいは家族意思を非常に重視しているといえる。
(2) 生体臓器移植については、摘出要件について法律の規定が存在しないため、その適法性、どういう条件で認められるのかについては最終的には社会的判断が下されるものと思われ、この問題に関する社会的意見が大きく反映されていると考えられることから、生体移植からのアナロジーも押さえておくべき。
(3) 我が国における死体の法的取扱い特に医学的利用に関する取扱い
 遺族に本人の死体の所有権を認め、遺族を所有者とした判例がでていること。
(4) 外国の立法例
 統一死体提供法において、被提供者の指定が認められているということ。
以上(1)〜(4)より、臓器の提供先に関する本人の生前意思を尊重してもいいのではないか。

II その上で、個別の論点を見ると、

a 公平性・匿名性の点で問題があるのではないかという指摘があるが、それらは生体移植においては貫徹されていない。アメリカではドナーとレシピエントが会うことがあると聞いており、死体移植でも匿名性は貫徹されていないのではないか。
b レシピエントについての希望の表示がどのようなものでなければならないか(書面性)
c レシピエントに関する希望における特定性の基準:人種、国籍、性別、年齢、障害等社会的に問題が多い特徴による指定は認められてはならない。
d 希望を認めない場合、遺族は提供を拒むことが予想されるが、希望を認めてもネットワークを介してあっせんされる臓器の数には変化がないといえる。むしろそういう希望を認める方が、制度がより国民に身近に感じられるのではないか。

 結論としては、親族に提供したいという本人の希望は容認されていいと考える。



参考人との意見交換の概要

意思表示カードへの記載は必要か。記載なしで、遺族が判断してよいとするのか。

○ 基本的には提供先指定は、エンカレッジされるべきではなく、本人の書面による表示が必要。さらに本人の指定を家族が拒むという問題も出てくるが、その際は2条1項の本人意思の優先をなるべく進める。

○ 家族について、ネットワークに委ねるか、あるいは移植全体を拒否するかどちらかの意思表示しか認めずに、誰に移植せよということは言えないとまでいうためには、適正手続の観点から、明示的な法の定めが必要と考えるが、現在はその定めがない。

○ 臓器移植法については、2度にわたる修正を経て「臓器移植否定法」とコメントされるような法律にせざるを得なかった。これには、この法律を社会的な常識・慣行を無視しては作り得なかったという背景があり、運用する上ではそうした法律ができるプロセスを考えざるを得ない。本人の書面による意思表示がついていれば、法律上の「公平かつ適正に配分」を変えることなく、運用のレベルで認めてよい。
 臓器移植について国民一般は、臓器がクーラーに入れられてヘリで運ばれてという映像をテレビで見たことにより初めて現実としてわかったのだが、それにより死体腎の提供がむしろ減ったという現象がある。提供数の多かった県で提供が減ったのは、以前は、自分がお世話になった病院の先生、あるいは一緒に病んだ人たちに提供するというところにドナーとドニーの関係が成立していたが、臓器の提供先を指定されないとするとそういうことが否定されたという理解があったのではないか。

 所有権あるいは財産的な取戻権についての議論は、臓器提供の問題には当てはまるものではないのではないか。
 また、提供先の指定を認めることは、公平性を害さないか。現在のシステムによる公平を飛び越える公平というのは存在するのか。提供先指定を認めないことにより提供数が減るということがあるとしても公平という理念にはこだわるべき。

○ 家族の意思について、イエスかノーかしか認めないというのであれば、そういうルールの確立あるいは法律の制定が必要ではないか。法律がブランクになっている部分については、なお家族の権利が何らかの形で残されていると見ざるを得ない。家族の遺体への思いというものを、臓器移植の公平性ということのみで断ち切るには抵抗が強いのでは。親族の内側についてはできる限り忖度をし、親族の外側については秩序を乱してはいけないと考える。

○ 現行法の由来を踏まえ、現行法は本人の意思を重視し、最終的な拒否権を遺族に与えるという本人・遺族の意思を重視するという性格は、所与として受け入れなければならない。死体標本の判例は、アナロジーを引き出すべき事例の一つとして挙げたものであり、ここから演繹的に導かれる直接的な根拠として挙げているわけではない。
 今までの議論を見ても、レシピエント選択の公平・公正さという観念の中に、親族間は別で、その場合には優先されても仕方ないという認識が含められていると把握することも可能。


第15例目の脳死下での臓器提供及び移植に当たってのネットワーク
からの照会に対する厚生労働省としての対応について


平成13年7月31日
厚生労働省臓器移植対策室

1.臓器提供者の親族への臓器提供意思について

 臓器提供者の生前意思を尊重し、提供者の親族2名への臓器(腎臓)提供が可能かとの照会があり、これに対し、臓器提供者の生前の意思について客観的証言が得られる場合は、可能である旨回答。

・ 臓器移植の基本的理念はあくまで公平性であり、原則的には臓器の提供先を指定する本人の意思表示は認められるべきではない。

・ しかし、臓器提供者が、近親者といった極めて限られた者を臓器提供先として希望し、実際その者に臓器提供を行うことができるような場合には、臓器提供者の意思は臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号。以下「法」という。)第2条第1項にいう「自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思」の一つのあり方として、尊重されるべきである。

・ 今回の事例については、(1)本人の生前意思(親族に腎臓を提供したい)が移植を受ける者以外の複数の親族から確認されたこと、(2)臓器提供先として指定された親族が移植を受ける医学的適応があったこと等の理由から、移植を実施することが法に抵触し許されないとまでは言えないと判断(臓器提供者の「脳死判定に従う意思」及び「臓器を移植術に使用されるために提供する意思」はドナーカードで確認)。

・ なお、臓器提供者が生前特定の者に対する臓器提供の意思を表示している場合にどのようなルール化が可能か、今後、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において検討いただくことが必要と認識。

2.あっせんに当たって

 臓器提供者が臓器提供先として希望した親族が、ネットワークのレシピエント候補者として登録されていないが、コンピューターに登録する必要があるかとの照会があり、これに対し、

(1) 臓器提供者の親族への臓器提供意思が示されている中、提供される臓器 が腎臓であり、レシピエント候補者が移植を受ける医学的適応がある今回の 事例においては、改めて登録の必要はない
(2) 登録料相当額(3万円)を入金していただくことが望ましい旨回答。



○ 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)(抄)

(基本的理念)
第2条 死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない。

2 移植術に使用されるための臓器の提供は、任意にされたものでなければならない。

3 臓器の移植は、移植術に使用されるための臓器が人道的精神に基づいて提供されるものであることにかんがみ、移植術を必要とする者に対して適切に行われなければならない。

4 移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない

(臓器の摘出)
第6条 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。

2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。

3 臓器の摘出に係る前項の判定は、当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り、行うことができる。

(以下略)

(業として行う臓器のあっせんの許可)
第12条 業として移植術に使用されるための臓器(死体から摘出されるもの又は摘出されたものに限る。)を提供すること又はその提供を受けることのあっせん(以下「業として行う臓器のあっせん」という。)をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の許可の申請をした者が次の各号のいずれかに該当する場合には、同項の許可をしてはならない。

一 営利を目的とするおそれがあると認められる者
二 業として行う臓器のあっせんに当たって当該臓器を使用した移植術を受ける者の選択を公平かつ適正に行わないおそれがあると認められる者



諸外国における臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱い(未定稿メモ)

  脳死を人の死とするか 臓器提供の承諾に関する基準 死後の臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱い
アメリカ  脳死を人の死とする。
 死の定義については、脳死を人の死とする「人の死の判定に関する統一法案(大統領委員会(1981))」がモデル法案として示されており、現在、これにならって、50州全てにおいて脳死に関する法が存在している。
 Opt-in
 本人の承諾がある場合は摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否の意思表示がなく、遺族の承諾がある場合は、摘出可。
 尊重される場合もある。
・ 臓器の分配について、全国的には、UNOS(United Network for OrganSharing:全米臓器分配ネットワーク)のルールがあるが、生前意思の取扱いについての明文の規定は確認されていない。
・ しかし、分配に当たっては、各OPO(Organ Procurement Organization:現在全米で51設置されている臓器調達の組織)の自由度が高く、OPOによっては提供先の指定に係る意思を尊重しているものもある。
カナダ  脳死を人の死とする。
 各州ごとに臓器移植等に関する法律(州法)が制定されており、それらによれば、脳死は個体の死と定義されている。
各州の州法による。
<オンタリオ州>
 本人の承諾があれば摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否の意思表示がなく、遺族の承諾がある場合には摘出可。
 各州の州法によるが、尊重される場合もある。
<オンタリオ州>
・ 生前意思の取扱いに係る明文の規定は確認されていないが、原則としては尊重されていない模様。
・ しかし例外として、ごくまれに、ドナーの親族が人工透析を受けているため(腎臓移植の適応)、一腎をその親族に提供するというように提供先を指示するケースがある(なお、このような事例は、オンタリオ州においてこの10年間で5例もなかったとのこと)。
イギリス  脳死を人の死とする。
 脳死を人の死として定義した法令はないが、慣習法上脳死を人の死とする王立医学会の見解を認めている。
 Opt-in
 本人の承諾がある場合には摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否の意思表示がなく、遺族の承諾がある場合には摘出可。
 尊重されない。
・ 臓器提供者が生きている間に特定の者に臓器(片方の腎臓、肝臓や骨髄の一部)を提供することは、法律に根拠があり可能。
・ しかし、死後の臓器提供先を指定する意思表示については尊重されず、もっぱら医学的必要性及び適合性を判断しレシピエントが決定される。
スウェーデン  脳死を人の死とする。
 死の定義については、「人の死の決定のための基準に関する法律」により、脳の全機能が完全かつ元には戻らない状態で停止することとされている。
 Opt-out
 本人の承諾がある場合には摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否
の意思表示がない場合には摘出可。
 尊重されない。
・ 死後の臓器提供先を指定する意思表示については、根拠は不明だが、運用上認められていない模様。
・ また、臓器を提供する意思若しくは提供しない意思について、保健福祉庁に登録することができるが、様式にない事項(例:自分の家族に優先的に移植したい旨の意思表示)を記入した場合は、保健福祉庁で受理しない仕組みとなっている。
オーストリア  脳死を人の死とする。
 脳死を人の死として定義した法令はないが、医師の脳死基準があり、脳死を持って人の死と認めている。
 Opt-out
 生前に本人又は法的代理人の拒否の意思表示がなければ摘出可。
 尊重されない。
・ 臓器提供者が生きている間に特定の者に臓器(片方の腎臓、肝臓や骨髄の一部)を提供することは、法律に根拠があり可能。
・ しかし、死後の臓器提供先を指定することについては、法律上の根拠がなく、現時点ではそのような意思表示は尊重されない。
イタリア  脳死を人の死とする。
 法令により、脳死を人の死として定義している。
 Opt-out
 本人の承諾がある場合は摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人及び遺族の拒否の意思表示がなければ摘出可。
尊重されない。
・ 死後の臓器提供先を指定する意思表示については尊重されない。
・ 臓器移植並びに血液、骨髄及びさい帯細胞の提供に関する法令とも、このような連帯を示す行為は、社会の利益のみのために促進・組織されており、また公的部門が運営しているものであるため、いかなる「個人的な」提供も禁じている。
大韓民国  脳死を人の死としない。
 脳死を人の死とは定義していないが、「臓器等の移植に関する法律」により脳死者からの移植は可能である。
 Opt-in
 本人の承諾があり、遺族が拒否しない場合には摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否の意思表示がなく、遺族の承諾がある場合には摘出可。
 尊重されない。
・ 臓器提供者が生きている間に特定の者に臓器(片方の腎臓、肝臓や骨髄の一部)を提供することは、法律に根拠があり可能。
・ しかし、死後の臓器提供先を指定する意思表示については、法律上の根拠が無く、現時点では例え生前に特定の者に提供する意思を表示していたとしても、その意思表示は尊重されない。
フィリピン  脳死を人の死とする。
 法令により、脳死を人の死として定義している。
 Opt-in
 本人の承諾がある場合には摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否の意思表示がなく、遺族の承諾がある場合には摘出可。
 尊重されない。
・ 死後の臓器提供先を指定する意思表示については、根拠は不明だが、運用上認められていない模様。
オーストラリア  脳死を人の死とする。
 各州ごとに臓器移植に関する法律(州法)が制定されており、それらによれば、脳死は個体の死と定義されている。
 各州の州法による。
<ニューサウスウェールズ州>
 本人の承諾がある場合には摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人及び遺族の拒否の意思表示がなければ摘出可。
<ヴィクトリア、クイーンズランド州>
 本人の承諾がある場合には摘出可。
 本人の承諾がない場合でも、本人の拒否の意思表示がなく、遺族の承諾がある場合には摘出可。
 各州の州法によるが、主な州においては尊重されていない。
<ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州、クイーンズランド州>
・ 死後の臓器提供先を指定することについては、明文の規定は存在しないが、運用上そのような意思表示は尊重されない。
・ なお、ニューサウスウェールズ州では、臓器の配分については、オーストラリア赤十字がコーディネイトしており、待機者リストの中から必要性と組織適合性を確認し、平等原則に基づいて行われているため特定の者に提供することを予め定めた臓器移植については否定的とのこと。
・ また、クイーンズランド州においては、ドナーの親族が臓器提供の待機中というケースは、これまで報告されていないとのこと。
資料出所:厚生労働省健康局臓器移植対策室調べ(平成13年12月)



第10回脳死下での臓器提供事例に係る検証会議(平成14年2月20日)
における第15例目の事例に係る検証結果(ポイント)

○ レシピエント選択において「公平性」の原則は極めて重要である。一方、親族への提供については、法が希有な事例として明確なルールを整備していない。
 本事例において臓器提供者の親族2名に腎臓が提供されたことについては、ルールが整備されていない状況で、かつ緊急性を要する限られた時間の中で、提供者本人や親族を始めとする関係者の意思を優先した例外的な対応として、結果的にやむを得なかったものと評価する。

○ しかしながら、本事例に際しての厚生労働省の判断については、

(1) 意思表示カードに記載されていなかった提供者本人の意思の確認方法
(2) 本人の意思の客観的な確認方法(移植を受ける者ではない者とはいえ、本人の親族の文書による証言によったこと)
について、法的問題が指摘できる。

○ 今後、このような事例の対応について、一定のルール化を早急に図るべきである。


(参考)

検証会議のまとめに関する補足(検証会議における主な意見)

(親族への提供を認めることについて)
○ これからの医療は自己決定権を重視しなければならないという流れがあるが、レシピエント登録者が登録料を支払って移植を待っている中で、提供先を指定したドナーが現れたら指定された者がその列の前に入り込み得るというのは、公平性という観点からいえば納得されない可能性がある。

○ 法的には、
(1) 生前意思の確認は、文書でなければいけないというのが原則だが、そもそもカードに書かれていない意思をどうやって確認したのか。文書以外の意思確認でもよいとしたのはどのような考えに基づくのか。
(2) 通常、本人が既に意思表示できない場合、かつて言ったこと(遺言等)についての意思確認の場合一定の親族関係の者は証人になれないというのが民法上のルール(※1)だが、今回臓器を受ける直接の者でないからよいとしたのはなぜか。
(3) 本人の生前の意思確認及びその解釈を行うのは、コーディネーターでよかったのか(※2)といった問題点が指摘できる。

※1 民法第974条参照。##なお、財産を目的とする遺言の場合、遺族間に争いがなければ問題ないが、臓器移植の場合は公的な秩序に関わる事柄であって、臓器提供を受ける患者の親族が、脳死判定及び臓器提供について承諾するのに適切な地位にあるといえるのかは慎重に検討されるべき。
※2 遺言の解釈に当たり、遺言者の遺言時の状況を考慮に入れることは認められ、その際に家族等の証言を用いることは可能。しかし遺言の解釈は基本的に裁判所が行うこととされており、裁判所以外の者が遺言の解釈をすることは理論上可能だが、公正な解釈ができるかは問題のあるところ。

○ 民法(民法第4編第5編)(明治31年法律第9号)(抄)

第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。

一 未成年者
推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
三 略

(費用負担について)
○ 第3者間の移植で、ネットワークという公共的資源を使い、3万円の登録料を支払っているその他のレシピエント登録者をおいて、本人の指定があれば費用負担を求めずにあっせんするという扱いは一般性を欠き、待っているレシピエントが納得しない。公共性を持つ事柄の場合、関係者が納得することが必要であり、受益者負担を求めるべき。

○ 第15例目に限れば、イレギュラーな対応なので、無理に現行制度の仕組みに合わせる必要はなかったのではないかと考えられるが、第3者間の移植と同じシステムを使ってやる以上、費用は徴収するべきである。


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