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年金制度のさらなる安定のために~オプション試算ってなに?

疑問「」

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現行制度に基づく財政検証結果が示す課題

今回の財政検証を行うに当たっての基本的なスタンス

幅の広い経済前提を設定し、それぞれの経済状況の下で、どのような年金財政になるのかを幅広く示すことで、何が年金制度にとって重要なファクターなのか、制度の持続可能性や年金水準の確保のためにどのような対応があり得るかなど、さまざまな議論のベースとなるものを提示する

日本経済の再生と労働市場参加の促進が進めば、今の年金制度の下で、将来的に所得代替率50%の給付水準を確保できることが確認できた

日本経済の再生を軌道に乗せるとともに、成長に必要な労働力を確保するため、女性や高齢者が安心して働ける環境整備を進め労働参加の促進を実現することが、年金制度の持続可能性を高める意味でも、給付水準の確保を図る意味でも重要

一方で、 (1)経済が比較的成長するケース(ケースA~E)においても、基礎年金のマクロスライド調整には30年近くを要するため、基礎年金の水準が相対的に大きな低下となる (2)低成長ケース(ケースF~H)では、年金の給付と負担のバランスをとるためには所得代替率は50%を割り込むこととなるなど課題も確認できた

所得代替率の将来見通し

経済成長率と将来的な所得代替率の見通し

長男現行制度では、経済成長の度合いによっては、所得代替率が40%近くまで下がるのか……経済成長が低くても、年金の水準が低くなりすぎないようにできるのかな?

ガイドそうですね。こうした背景もあり、国では、今後、社会状況や経済状況が変わっていっても、十分な年金が受け取れるように、どんな制度にしていけばいいか考えているんですよ

こうした背景の下、今回の財政検証では「もし年金制度が変わったら、将来の姿はどうなるか」という視点に基づいて、新たな試算を行いました。
 これが「オプション試算」と呼ばれるものです。

オプション試算の内容

オプション試算では、次の3つの仕組みについて、現行制度を変えた場合の試算を行っています。

(1)マクロ経済スライドの仕組みの見直し

オプション試算の1つ目は、将来世代の年金水準の低下が見込まれる中、現在の受給者と将来の受給者の給付水準のバランスを取るため、マクロ経済スライドの仕組みを見直した場合の試算です。

マクロ経済スライドは、被保険者数の減少や平均余命の伸びなど社会情勢に合わせて、年金給付の水準を自動的に調整する(給付の伸びを抑える)仕組みです。
(詳しくは第7話の「マクロ経済スライド」をご覧ください)

公的年金は、前年度と比較した物価や平均賃金の伸びを考慮して、年金額が改定されます。ただし、マクロ経済スライドが発動している間は、物価や平均賃金が上昇しても、年金額の伸びは抑えられます。

ただし、現行の制度では、物価や平均賃金が伸びていても、マクロ経済スライドによって年金額が前年度よりも下がってしまう場合には、年金の給付額(名目額)がマイナスにならないように、マクロ経済スライドを一部しか発動しないことになっています。また、物価や平均賃金が下がっているときは、その分だけ年金額は下がりますが、マクロ経済スライドは発動しませんので、それ以上に下がることはありません。

オプション試算(1)では、物価・平均賃金の伸びが低い場合や下がっている場合においても、マクロ経済スライドがフルに発動する制度とした場合を考えています。

これは、現在の受給者への年金支出を抑えることで、将来の年金給付がどの程度改善するかをみるものです。

(2)被用者保険の更なる適用拡大

働き方の多様化が進む現在の日本において、働き方にかかわらず年金の二階部分(厚生年金)を受け取れることは、公的年金の意義から見ても非常に重要です。そのため、オプション試算の2つ目は、より多くの労働者が厚生年金の適用を受けられるようになった場合の試算です。

現行の制度では、厚生年金に加入できるのは正社員(正規職員)、または正社員に近い労働時間・労働内容のパートやアルバイトに限られています。 オプション試算(2)では、この制限を緩和し、

  • 「週20時間以上働き、かつ一定以上の収入(月5.8万円以上)がある短時間労働者に適用拡大」
    (約220万人の拡大を想定)
  • 「一定以上の収入(月5.8万円以上)があるすべての被用者に適用拡大」
    (約1200万人の拡大を想定)
 の2種類のケースで、厚生年金への適用拡大を行った場合を考えています。

これは、厚生年金の加入者が増えることで、どの程度将来の年金水準が改善するかをみるものです。

(3)保険料拠出期間の延長と受給開始年齢の選択制

平均寿命が延び、同時に高齢者人口が増加していく中で、60歳を過ぎても働き続ける方が多くなっています。そのため、オプション試算の3つ目は、こうした高齢期の就労が年金受給額の増加に結びつくよう年金保険料の納付期間を延長すること、さらに、65歳を超えて就労したときに受給開始年齢の繰下げを選択した場合の試算です。

  •  保険料拠出期間の延長
     現在の制度では、国民年金保険料を納付する期間は最大40年(20歳から60歳まで)となっています。これを45年間(20歳から65歳まで)とし、納付年数が伸びた分に合わせて基礎年金を増やす仕組みにした場合をみるものです。
  •  受給開始年齢の選択制
     上記の保険料拠出期間の延長と併せて、65歳以降も働く(厚生年金保険料を納付する)方が、公的年金の受給開始年齢の繰下げを選択したときに、後々給付される年金がどの程度の水準になるかをみるものです。

オプション試算の結果

これらの試算の結果、どのオプションにおいても給付水準の上昇に一定の効果が得られることがわかりました。

  1. (1)マクロ経済スライドの仕組みの見直し

    経済成長が低いケースほど高い効果が見られる結果となりました。ケースGの場合、マクロ経済スライドを実施する期間が20年以上短縮され、所得代替率も5.0%改善する見通しです。

    マクロ経済スライドの仕組みの見直し
  2. (2)被用者保険の更なる適用拡大

    厚生年金の加入者が増加することによって、将来の給付水準が改善されることが分かりました。また、現在パート・アルバイトなどで国民年金にしか加入していない人でも、厚生年金へ加入できるようになると将来的に厚生年金を上乗せして受け取ることが可能になります。

    適用拡大1:一定以上の収入がある、週20時間以上の短時間労働者に厚生年金を適用した場合

    一定以上の収入がある、週20時間以上の短時間労働者に厚生年金を適用した場合

    適用拡大2:一定以上の収入のあるすべての被用者に厚生年金を適用した場合

    一定以上の収入がある、週20時間以上の短時間労働者に厚生年金を適用した場合
    適用拡大1と適用拡大2の各パターンで適用拡大される人数(単位:万人)

     

    1号→2号

    3号→2号

    非加入→2号

    適用拡大1

    220

    80

    100

    40

    適用拡大2

    1200

    600

    250

    350

  3. (3)保険料拠出期間の延長と受給開始年齢の選択制

    国民年金の保険料納付期間を45年に延長し、その分基礎年金を増額した場合

    どのケースも所得代替率が6~7%程度上昇し、給付水準が大幅に改善する結果となりました。これは、保険料の拠出期間が40年から45年に延長されたことに伴い、年金額が45/40倍となることから給付水準もおおむね45/40倍となったものです。この結果、低成長のケースGやケースHの場合であっても、40%台後半の給付水準を確保できる見通しとなりました。

    国民年金の保険料納付期間を45年に延長し、その分基礎年金を増額した場合

    さらに、退職年齢と受給開始年齢を65歳以降とした場合

    どのケースも所得代替率は大幅に改善し、最も低成長のケースHの場合でも50%を上回る結果となりました。65歳受給開始モデルと比べて所得代替率が上昇する要因は、65歳を超えて就労することにより保険料の拠出期間が延長したことと繰下げ受給を選択することにより給付が増額することです。

    さらに、退職年齢と受給開始年齢を65歳以降とした場合

制度改正は行われるのか?

一定の制度改正を仮定したオプション試算について、3つのオプションどれもが給付水準の上昇に有効であることが分かりました。いずれの場合も将来の給付水準は改善しますが、特定の受給者および加入者に負担をかけるものでもあります。

これらの結果はあくまで試算であり、制度改正を実施するか否かを含め、今後とも慎重な議論が続けられていくことになっています。

まとめ

  • 今後、社会・経済状況が変わっていっても、十分な年金が受け取れるような年金制度を検討していく必要がある
  • もし年金制度が変わったら、将来の姿はどうなるかをみるための試算が行われ、それをオプション試算という
  • オプション試算は、1.マクロ経済スライドの仕組みの見直し 2.被用者保険の更なる適用拡大 3.保険料拠出期間の延長と受給開始年齢の選択制 の3つについて行われた
  • 3つのオプションのどれもが、公的年金制度の持続可能性を高め、将来の給付水準を確保するうえでプラスになることを確認
  • 実際の制度改正については、実施の有無を含め今後の検討課題とする
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