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財政検証と財政再計算~持続可能性を確保する仕組み

疑問「少子高齢化が進むと、保険料ってどこまでも値上がりしちゃうの?」ガイド「一定水準を超えることはありません。そのために、給付水準を調整する仕組みを取り入れました」

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少子高齢化が進んでも、公的年金制度はなくなりません

「日本の公的年金は『賦課方式』」で紹介したように、現在の日本の公的年金の財政方式では、現役世代から納められる保険料が、そのときの公的年金の主な財源になります。

そのため、少子高齢化が進行して保険料を納める現役世代が少なくなると、財源となる保険料収入も減少し、支出(年金を給付するために必要な額)とのバランスが取れなくなる可能性があります。

そういった事態を避けるために、現在の公的年金制度には、将来にわたって制度を安定させるための仕組みが導入されています。

公的年金財政を持続させる仕組み

平成16年に改正する前の制度では、5年ごとに給付水準を固定した上で、保険料の段階的な引上げ計画を再計算する「財政再計算」が行われてきました。また、この財政再計算の実施に併せて、公的年金の財政バランスを取るために、負担水準と給付水準どちらも見直すような制度改正を実施してきました。

段階保険料方式と賦課方式

厚生年金の前身である労働者年金保険を創設した当初の保険料率は、月収の10%程度に設定され、将来にわたって一定水準の保険料率とする見込みでした。これは、積立方式を基本とする考え方となります。しかし、戦後、当時の混乱期における被保険者と事業主の負担能力を考慮して、暫定的に低い保険料率(3%)を設定したことから、保険料率を将来に向けて段階的に引き上げていく段階保険料方式を採用することとなりました。さらに戦後の経済成長に合わせて年金の充実が図られてきましたが、このときも保険料は直ちに引き上げるのでなく、将来に向けて段階的に引き上げていくこととされたため、将来の保険料の引上げ幅が大きくなるとともに、賦課方式を基本とする財政方式に変わっていくこととなりました。

給付水準を保ったまま高齢化が進むと、現役世代一人当たりの保険料負担を増やさなければならない

しかし、想定以上のスピードで少子高齢化が進行したため、財政再計算のたびに保険料の引上げが前回の想定以上に必要となり、そのたびに給付水準も引き下げてきました。そこで、平成16年に年金財政の枠組みを抜本的に改正し、保険料の引上げスケジュールを固定した上で、自動的に財政のバランスを取る仕組みを導入しました。

  1. 上限を固定した上での保険料の引き上げ
  2. 基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げ
  3. 積立金の活用
  4. 財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み(※マクロ経済スライド)の導入

年金財政のバランスを取るための4つの仕組み

平成16年制度改正の詳細

(1)上限を固定した上での保険料の引き上げ

平成29年度以降の保険料水準の固定。(保険料水準は、引上げ過程も含めて法律に明記)

  • 厚生年金: 18.30%(労使折半)(平成16年 10月から毎年0.354%引上げ)
  • 国民年金: 16,900円 ※平成16年度価格(平成17年4月から毎年280円引上げ)

(2)基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げ
 平成21年度以降、基礎年金給付費に対する国庫負担割合を2分の1とする。

(3)積立金の活用
おおむね100年間で財政均衡を図る方式とし、財政均衡期間の終了時に給付費1年分程度の積立金を保有することとして、計画的に積立金を活用し、後世代の給付に充てる。
積立金については「年金積立金の見通し」をご覧ください

(4)財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み(※マクロ経済スライド)の導入 
現役世代の人口減少とともに年金の給付水準を調整。
 標準的な公的年金の給付水準について、今後の少子高齢化の中でも、年金を受給し始める時点で、現役サラリーマン世帯の平均所得の50%を上回る見通し。

 ※標準的な年金給付水準の現役サラリーマン世帯の平均所得に対する割合(所得代替率)  62.7%(平成26年度)→ 50.6%~51.0%(平成55~56年度以降(平成26年財政検証結果(ケースA~E)))

こうした制度改正により、厚生年金の保険料率および国民年金の保険料に上限を設け、そこから得られる保険料収入や国庫負担、積立金からの収入が固定され、その固定された財源の範囲内で給付水準を自動的に調整することで、給付と負担の均衡が図られる財政方式に変わっていったのです。

そして、「財政再計算」は平成16年以降行われなくなり、少なくとも5年ごとに、おおむね100年という長期の財政収支(保険料収入や給付費等の収支)の見通しや、マクロ経済スライドに関する見通しを作成し、公的年金財政の健全性を検証する「財政検証」を行うこととなりました。

平成16年改正前と改正後の比較

  改正前 改正後
保険料

○財政再計算において、給付設計(見直す場合もあり)を賄うことのできる保険料の将来見通しを作成

○次期再計算までの間の保険料(率)を、当面の間の保険料(率)として法律に規定

○将来の保険料水準の上限を固定

○保険料水準の引き上げ過程も含めて法律に明記することにより、毎年、自動的に引上げ

年金額改定

○平成元年以降は、年金額は消費者物価指数に基づき完全物価スライド(制度改正は不要)

○賃金上昇等を踏まえた年金額改定については、5年に一度の再計算時に法律改正して年金額に反映。(賃金再評価や基礎年金額の改定) ※平成12年改正により既裁定者に関しては物価スライドのみ

新規裁定者は賃金変動率、既裁定者は物価変動率に基づき改定を原則とした上で、給付水準調整期間は、マクロ経済スライド調整分を控除

○毎年度、自動的に改定

財政フレーム
(給付と負担の均衡を図る仕組み)

○再計算における保険料負担の見通しを踏まえて必要となる場合には、その都度、給付設計等の見直しを実施

○財源の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)により、給付と負担の均衡を自動的に図る

積立金

○原則として、その「運用収入」を活用し、高齢化が進んだ将来の保険料負担を抑制するためのもの

○今後、約100年間の高齢化に対応するため、運用収入のみならず原資についても給付費に充てる

制度(法律)上の財政再計算と財政検証の役割

○将来の保険料の見通しを作成した上で適切な保険料を設定する

○給付と負担の均衡を自動的に図る仕組みの下での年金財政の健全性を検証する

マクロ経済スライドってなに?

マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

マクロ経済スライドについて

財政検証とは、どのようなことをするのか

公的年金の財政バランスは、人口構成や社会・経済情勢の変化によって年々変わります。あらかじめ100年先まで収入や支出などの見通しを立てていても、実際に見通しどおりになるとは限りません。

そこで、「財政検証」では、少なくとも5年ごとに人口や経済の実績を織り込んで、新しい見通しを作成します。

財政検証の実施イメージ

ガイド公的年金の財政バランスは、人口構成や社会・経済情勢によって年々変わります。財政検証は、いわば公的年金の定期健康診断ですね

まとめ

  • 以前まで行われていた「財政再計算」は、給付水準を維持する場合に必要な保険料を算定するもの
  • その後、少子高齢化が進行しても、財源の範囲内で給付費をまかなえるように制度を改正。財源にあわせて給付の水準を自動調整する仕組み(マクロ経済スライド)を導入し、長期的に財政のバランスをとる枠組みを構築
  • 財政のバランスを取るための制度改正に伴う「財政再計算」は行われなくなり、将来の収支見通し等を作成し、公的年金財政の検証を定期的に行う「財政検証」へ移行
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