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日本の公的年金は「賦課ふか方式」~どうして積み立てておけないの?

疑問「積立方式じゃないのは、もしかして財源が足りないから?」ガイド「公的年金では、積立方式のリスクを避けて、賦課方式を採用しつつも、積立方式のいいところも取り入れています」

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日本の公的年金は「賦課方式」を基本にしています

現在の日本の公的年金は、基本的に「賦課方式」で運営されており、現役世代が納めた保険料は、そのときの年金受給者への支払いにあてられています。

その理由は、公的年金の実質的な価値を維持することにあります。

年金の実質的な価値=決まった額ではなく、物価、所得水準に応じた「経済的価値」

なぜ、賦課方式のほうが公的年金の実質的な価値を維持できるのか、賦課方式と積立方式の特徴をみていきましょう。

賦課方式と積立方式の特徴

積立方式の特徴

賦課方式の特徴

○民間保険と同様に、現役時代に積み立てた積立金を原資とすることにより、運用収入を活用できる

○インフレによる価値の目減りや運用環境の悪化があると、積立金と運用収入の範囲内でしか給付できないため、年金の削減が必要となる

○社会的扶養の仕組みであり、その時の現役世代の(給与からの)保険料を原資とするため、インフレや給与水準の変化に対応しやすい(価値が目減りしにくい)

○現役世代と年金受給世代の比率が変わると、保険料負担の増加や年金の削減が必要となる

(少子高齢化で生産力が低下した影響はいずれも受けるが、積立方式は運用悪化など市場を通して、賦課方式は保険料収入の減少などを通して受ける)

積立方式の特徴~価値の目減りとは

将来受け取る予定の年金として、現時点で一定の額を積み立てておいても、急激なインフレや給与水準の上昇があると、その額の価値が著しく減少してしまう可能性があります。これを価値の目減りといい、多額の積立金を必要とする積立方式では、このような事態が起こり得るのです。

このように価値の目減りが起こってしまうと、現役時代に貯めた年金額が十分な価値ではなくなる恐れがあります。そうなると高齢者の生活を支えるという公的年金の役割が果たせなくなってしまいます。

また、株価の大幅な下落や為替の変動などの影響を受けて、積み立てていた年金の運用結果がマイナスに転じた結果、積立金が減少して将来受け取れる年金額が減ってしまうことも考えられます。

長女どうして保険料を資産運用するの? そのまま積み立てておけばいいじゃない?

長女そういう意見もあります。ですが、積立金を全く運用しないままで、生活の支えとして十分な年金を給付しようとすると、負担しないといけない保険料が高くなってしまうんですよ

長女そうか、保険料が高くなり過ぎると負担していくのが大変よね……

積立方式における「世代間格差」

上記のように、積立方式の場合でも、納められた保険料をそのままにしておくことはありません。より十分な給付のために、保険料を運用し、その利益も給付に充てていくことになります。

ただし、こうした資産運用は、市場の変化による影響を大きく受けやすく、市場からどのような影響を受けるかは、世代によって異なります。たとえば、1980年代後半のバブル景気の頃と、2008年のリーマン・ショック後を比べると、その差は明らかです(リーマン・ショックは各国の経済に大きな打撃を与え、世界中で資産価値の暴落が起きました)。

積立方式だからといって、世代による差がなくなるとは言い切れないのです。

参考:1965年と2015年の物価の違い
品目 1965年 2015年
鶏肉
牛乳
カレーライス
コーヒー(喫茶店)
ノートブック
100g
瓶1本
1皿
1杯
1冊
71.8円
20円
105円
71.5円
30円
136円(1.9倍)
125円(6.2倍)
739円(7.0倍)
422円(5.9倍)
141円(4.7倍)

出典:小売物価統計調査

お父さん昔は100円でおつりがきたけど、今ではとても100円では買えないものも多くなった。このように同じ金額でも価値が下がってしまうことが、長い間には起こり得るんだな

少子高齢化の影響

少子高齢化で社会全体の生産力(GDP)が低下すると、その影響は賦課方式でも積立方式でも受けることとなりますが、その影響を受ける経路が異なります。

賦課方式は、保険料収入の減少という形で影響を受けます。一方、積立方式は、低成長による運用悪化やインフレによる年金の実質価値の低下など、市場を通して影響を受けます。

賦課方式の場合

賦課方式では、社会的扶養の仕組みであるため、その時々の現役世代が負担する保険料を財源として、年金を給付します。

少子高齢化が進行すると、保険料を負担する現役世代の人数が減り、年金を受け取る高齢者の人数が増加していきます。

このため、賦課方式のもとで年金の給付水準を維持しようとすると、現役世代の保険料負担が増えてしまうことになります。逆に、現役世代に保険料負担がかかりすぎないようにすると、年金の給付水準が下がってしまいます。

賦課方式の場合、少子高齢化が進むと高齢者を支えるための現役世代の保険料負担が重くなります

積立方式の場合

積立方式の場合でも、少子高齢化で社会全体の生産力(GDP)が低下するとその影響を受けます。

積立方式でも、現役世代が生産した財やサービスを、公的年金を通して高齢者が消費する仕組みは変わりません。少子高齢化で生産力が低下すると、高齢者に回せる分も減ることになります。その影響は、低成長に伴う運用悪化やインフレによる年金の実質価値の低下など、市場を通して受けます。

 

少子高齢化による生産力の低下が積立方式に与える影響

少子高齢化の影響を軽減する年金積立金

下の図のように、賦課方式では、年金給付の財源は現役世代からの保険料が主なものとなります。しかし、このまま少子高齢化が進み、年金の給付に必要な額を現役世代からの保険料収入だけで用意しようとすると、収入が不足し、十分な年金給付を行えなくなる可能性があります。

そこで、現在の公的年金制度では一定の「年金積立金」を保有し、それを活用することで、こうした少子高齢化の影響を軽減するようにしています。

年金積立金の詳細については、「年金積立金の見通し」のページをご覧ください。

年金積立金の運用イメージ

公的年金が賦課方式を基本としている理由

公的年金は、皆さんが安心して暮らしていくための保険であり、高齢で働くことが困難になったときなどの生活を支えるという役割も担っています。そのため、年金としての価値が下がる可能性がある積立方式のリスクは、無視することができません。

逆に、賦課方式の場合は納められる保険料がそのときの給与水準に応じたものであるため、給付に関してもその時々の経済状況に対応しやすいというメリットがあります。

国民年金の保険料は個々人の収入によらず定額ですが、社会全体の給与水準の変動に応じて、毎年度の具体的な金額は変動します。また、厚生年金の保険料は給料に対する定率なので、個人の給与水準が変化すれば、納める保険料も変化します)

アメリカやドイツなど諸外国の財政方式をみても、最初は積立方式で始まったものの、予測できない社会や経済の大きな変化に事後的に対応していくなかで賦課方式を基本とする財政運営に変わっていきました。

日本の公的年金制度は、賦課方式を基本としながらも、積立金を保有するメリットも生かした財政運営を行っています。今の日本では、これが公的年金制度に最も適した財政方式ではないでしょうか。

まとめ

  • 賦課方式は経済変動に強い
  • 積立方式は運用収入を活用できるが、経済変動に弱い(目減りの可能性がある)
  • 公的年金の財政方式は、賦課方式を基本とした財政方式である。これは賦課方式と積立方式のよいところを組み合わせる方式で、積立金を活用することによって、賦課方式のデメリットを補っている
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