■気分障害
うれしいことがあれば気分は良くなるし、イヤなことがあれば気分は沈む、というように、私たちの気分はそのときどきの状況によって、さまざまに変化する。
しかし、ときには、身の回りの出来事に関係なく、落ち込んだ気分が続いたり、逆に、突然ハイになって自分をコントロールできなくなることがある。
こうした状態が一定期間以上続いて、普段の生活がうまくいかなくなっている場合は「気分障害」という、こころの病気にかかっている可能性がある。
10〜20代に多い気分障害の代表は、気分の落ち込みが数週間以上にわたって続く「うつ病」と、うつ状態とエネルギッシュな状態が交代で繰り返し現れる「双極性障害」の2つ。これらは同じ気分障害でも、治療に使われる薬は異なる。両者の違いをよく知っておくことが大切だ。
そして、気になるサインが続くときは、早めにこころの専門家(→こころの専門家)のアドバイスを受けよう。早く治療を始めれば、元の生活に戻るのにかかる時間も短くて済む。
うつ病は、気分が落ち込んで無気力になる病気。楽しい、うれしいといったポジティブな感情が失われ、罪悪感が強くなって、自分は生きている価値のない人間だと思い込み、自殺する危険がある。
親しい人の死などこころがダメージを受けるような出来事に出会ったときにかかることが多いが、引き金になるような出来事がなくてもかかることがある。
はじめのうちは、重苦しい気分よりもむしろ、眠れない、だるい、頭が重いといったカラダのサインのほうが目立つ場合が多い。こころの症状が重くなると、本当は間違っているのにそれを訂正できない「妄想」という強い思い込みが出てくることもある。
<うつ病の特徴>
次の症状のうち、5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続いた場合は、うつ病の可能性がある。
1.暗く悲しい気分が1日中続く
2.これまで好きだったことが楽しめない、興味がわかない
3.食欲がなくて体重が減ってきた、または、食べすぎる
4.毎日眠れない、または寝過ぎてしまう
5.イライラして、怒りっぽい。あせる
6.疲れやすくて、元気がない。何もやる気がしない
7.自分が役に立たない人間だと感じる
8.集中力がなくなって、物事を決断できない
9.将来に希望がもてず、死んでしまいたいと思う
◎治療は抗うつ薬が中心
治療には、落ち込んだ気分をやわらげ、睡眠リズムを改善する効果をもつ抗うつ薬を中心に、必要に応じて不安感をやわらげる抗不安薬なども使われる。ストレスをやわらげ、自分を責める考え方を修正する目的でカウンセリングも行われる。
双極性障害は、こころとカラダが過剰にエネルギッシュになる「そう状態」が一定期間続く、こころの病気。うつ状態とそう状態が、数日から数週間ごとに交代で繰り返し現れる場合が多いことから、かつては「そううつ病」と呼ばれていた。
そう状態のときは睡眠時間が少なくなるが、疲れるどころか、むしろ頭の回転が速くなって口数が増える。イライラして落ち着きがなくなり、怒りっぽくなったりもする。自分には特別なパワーがあると思い込む「妄想」が出てくることも多い。
とはいえ、そう状態の症状が軽い場合は、たんに「はりきっている」ようにしか見えないこと、本人もあまりつらいと感じないことなどから、病気のサインだとはなかなか気づかない。
そのため、うつ状態が現れたときに、こころの専門家に相談する場合が多く、うつ病と間違われることも多いが、うつ病と双極性障害では治療薬が異なる。
うつ状態になる前に、そう状態と思われるサインがあった場合は、そのことを必ずこころの専門家に話そう。うつ病と同様、自殺する危険のある病気なので、心配なサインがあるときは、早めに相談してみることが大切だ。
◎治療は気分安定薬が中心
双極性障害の治療に使われるのはおもに「気分安定薬」と呼ばれる薬。うつ病の治療薬である抗うつ薬を使うと、逆に症状が悪化することがある。そう状態の症状が強いときは、自分やほかの人を傷つける危険を避けるために、入院を勧められることがある。
→こころの専門家
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