国の政策と方向性

自殺対策について

我が国の自殺の現状

平成9年から平成10年にかけて、それまで年間2万人台前半で推移していた自殺者数が3万人を超えました。それ以降は、3万人を超える高い水準で推移をしています(※平成24年の自殺者数は、警察庁発表の速報値(暫定値)によると、15年ぶりに3万人を下回っています)。

自殺者数の年次推移【図を拡大する】
近年の自殺死亡者数の推移

警察庁の発表によると、平成23年の自殺者数は30,651人、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は24.0であり、平成23年度交通事故死者数の4,612人に比べても高い数字になっています。また、自殺は国内の死因別の順位で第7位であり、主要7か国の中でも、男女とも日本が最も高い数字となっています。

平成10年においては50代を中心とした中高年層と80代を中心とした高齢者層で自殺死亡率が高くなり二峰性の分布となっていましたが、平成20年では中高年層の峰も高齢者層の峰も共に低下しており、代わって20代~30代の若年層の自殺死亡率が上昇していることが懸念されます。

年齢階級別自殺死亡率の比較【図を拡大する】
年齢階級別自殺死亡率の比較


自殺対策の重要性

自殺者数が毎年3万人を超える深刻な状況を受けて、政府は自殺対策を強化し、平成18年に「自殺対策基本法」(全文へリンク)が成立、施行されました。また、平成19年に「自殺総合対策大綱」(全文へリンク)が閣議決定されました。

自殺総合対策大綱の概要【図を拡大する】
自殺総合対策大綱の概要

自殺総合対策大綱は、我が国の自殺をめぐる現状を整理するとともに、

  • 自殺は追い込まれた末の死
  • 自殺は防ぐことができる
  • 自殺を考えている人は悩みを抱え込みながらもサインを発している

という自殺に対する三つの基本的な認識を示しています。
そのうえで、

  • 社会的要因も踏まえ総合的に取り組む
  • 国民一人ひとりが自殺予防の主役となるよう取り組む
  • 自殺の事前予防、危機対応に加え未遂者や遺族等への事後対応に取り組む
  • 自殺を考えている人を関係者が連携して包括的に支える
  • 自殺の実態解明を進め、その成果に基づき施策を展開する
  • 中長期的視点に立って、継続的に進める

という自殺対策を進めるうえでの六つの基本的考え方を示しています。

内閣府を中心に、国を挙げて総合的な自殺対策を実施する中で、医療、福祉、労働、年金など一生を支える役割を有する厚生労働省は、国の自殺対策における大きな役割を担っています。

 


自殺対策の概要

うつ病対策

自殺既遂者に対する調査からは、うつ病等の気分障害がとくに重要な自殺の要因であることが明らかになっており、厚生労働省における自殺対策においても、その中核となっているのはうつ病対策です。

自殺既遂者における精神疾患の存在【図を拡大する】
自殺既遂者における精神疾患の存在

うつ病患者の医療機関への受診率が低いことから、うつ病の方々が早期に気づき、専門的な医療機関にかかることができるよう、うつ病に関する一般への普及啓発や、地域の保健医療体制、職場のメンタルヘルス対策等によるうつ病の早期発見をすすめています。また、うつ病患者の治療、支援についても様々な施策を講じています。

アルコール問題対策

うつ病等の気分障害とともに自殺の大きな要因となっているのは、アルコール依存症等が含まれる物質関連障害です。
うつ状態に陥った際に不眠や抑うつ気分の解消のためにアルコールを使用することは、うつ状態の悪化につながる行為として極めて有害です。
そのため、自殺対策の観点からアルコールの有害使用についての対策を積極的に実施する必要があります。

のめばのまれる 自殺既遂者に対する調査からは、とくに中高年男性の自殺者において、死の直前に飲酒量が増加していたり、飲酒した状態で自殺企図に至っていたり等、自殺に際してのアルコールの有害使用が少なからず認められることがわかっています。

飲酒が不眠や抑うつ気分の解消のために有用だという誤解を解消し、アルコールとうつ・自殺との関連について広く知ってもらうため、とくに中高年男性をターゲットとしたリーフレット「のめば、のまれる」を作成し、普及啓発活動を始めました。

アルコール依存症や薬物依存症の回復に有効と考えられている自助団体の活動の支援や、関係機関による依存症対策にかかわる地域連携体制の構築と効果的な依存症対策の開発・実施を目的として、平成21年度から「地域依存症対策推進モデル事業」を開始し、地域における依存症対策の推進を図っています。

また、平成22年4月から、重度のアルコール依存症の患者に対して専門的な入院医療を行った場合に、診療報酬の加算が新たに設けられました。

自殺未遂者対策

自殺未遂者は、実際に自殺企図を行っているという点で最も自殺のリスクの高い者と考える必要があり、十分なケアが必要です。

平成17年から、救命救急センターに搬送された自殺未遂者に対して精神医学的評価に基づくケース・マネージメントを実施し、その有効性を検証する研究を実施しています。
【自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究:ACTION-J】

平成18年12月から、「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会」を開催し、自殺未遂者が再企図しないために必要な支援等について、有識者の意見を平成20年3月にとりまとめました。

研究で蓄積された自殺未遂者対応に関する現場でのノウハウや、この検討会の報告を基に、厚生労働省の研究班と日本臨床救急医学会との協同で「自殺未遂者への対応-救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き」を作成しました。
この手引きを基に救急医療従事者に対して自殺未遂者ケアに関する研修会を厚生労働省と日本臨床救急医学会との共同開催で実施する等、救命救急医療現場における自殺未遂者への対応技術の普及を進めています。

また、厚生労働省の研究班と日本精神科救急学会との協同で「精神科救急医療ガイドライン-自殺未遂者対応」を作成し、精神科医療従事者に対する自殺未遂者ケアに関する研修会を厚生労働省と同学会との共同開催で実施する等、精神科医療の現場についても自殺未遂者への対応技術の普及を進めています。

複合的な自殺対策

精神疾患に至るまでには経済社会的問題、生活問題、学校問題等様々な要因が積み重なっていることも多く、自殺対策としての精神保健対策を生かすためには、精神保健以外の領域における対策も併せて実施することが必要です。

平成17年から、様々な視点からの自殺対策を組み合わせたプログラムに基づく自殺対策を実施して、複合的な自殺対策の有効性を検証する研究を実施しています。
【複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究:NOCOMIT-J】

この研究を通じて、これまで僅かな実施例しか知られていなかった地域での自殺対策に関するノウハウが蓄積され、それらを基にした地域における自殺対策の基盤作りが進みつつあります。この研究で実際に使用されているプログラムを「地域における自殺対策プログラム」としてまとめ、厚生労働省のホームページに掲載しています。

労働者のメンタルヘルス

労働者のメンタルヘルスや自殺対策が重要な課題となっている中で、様々な支援事業の活用を図りつつ、事業場に対する指導、業界団体等の自主的活動を促進する等メンタルヘルス対策の強化を行っています。
【詳しい内容は関連リンクの「職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策・心身両面にわたる健康づくり」】

平成19年には「職場における自殺の予防と対応」(自殺予防マニュアル)を改訂し、うつ病の症状や早期発見のための方法、産業医や専門医へ紹介する時期、方法等の内容の充実を図りました。

平成21年度からは、リーフレットによるこころの健康に関する情報、ストレスチェックシート、メール相談の案内等の周知のほか、自殺等にかかわる悩み、不安等の相談に対し、カウンセラーによるメール相談を実施しています。また、平成21年10月には、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を設置し、事業者、産業保健スタッフ、労働者やその家族等に対してメンタルヘルスに関する様々な情報を提供しています。

こころの耳

民間団体の活動に対する支援

「いのちの電話」をはじめいくつかの民間団体において、自殺を防止するための電話相談活動などが行われています。「自殺防止対策事業」の中で、ボランティア等で先駆的・試行的な自殺対策の取り組みを行う民間団体に財政的支援を行っており、相談員に対する研修、フリーダイヤル電話相談の実施等の事業を行う複数の団体がその対象となっています。


今後の政策の方向性

厚生労働省では、平成22年1月に自殺・うつ病対策プロジェクトチームを立ち上げ、5回にわたり有識者の方々からのヒアリング及び議論を行うとともに、人口動態統計など、自殺に関するデータの分析等を行い、5月28日に報告をとりまとめ、今後の厚生労働省の対策として五本柱を示しました。

まず、「いのちを守る」というメッセージを発し、「支えられている」という安心感を持っていただけるよう、「柱1-普及啓発の重点的実施」として、キャンペーンの実施やウェブサイトの充実などにより、当事者の気持ちに寄り添ったメッセージを発信していきます。
自殺の実態の分析からは、自殺には多くの要因が関連しており、中でも、無職者、独居者、生活保護受給者等は自殺のリスクが高いことが分かりました。
「柱2-ゲートキーパー機能の充実と地域連携体制の構築」として、ハローワーク等での相談・支援体制の強化など、精神疾患を有する生活保護受給者への相談支援体制の充実などにより、悩みのある人を、早く的確に必要な支援につなぐことを目指します。一方、有職者の自殺率も上昇しており、「柱3-職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実」として、職場におけるメンタルヘルス不調者を把握する方法や、職場での支援体制の強化について検討するほか、産業保健スタッフの養成や職場環境のモニタリングなど、一人ひとりを大切にする職場づくりを進めます。 自殺の背景には、うつ病をはじめとする様々な精神疾患が関連することが多いといわれていますが、治療を受けていない方々も多くいます。「柱4-アウトリーチ(訪問支援)の充実」として、一人ひとりの身近な生活の場に支援を届けます。また、精神科医療の改革と診療の質の向上も求められており、「柱5-精神保健医療改革の推進」として、認知行動療法の普及や自殺未遂者に対する医療体制の強化など、質の高い医療提供体制づくりを進めています。

このような対策を通じて、誰もが安心して生きられる温かい社会づくりを目指していきます。


法令・通知、資料など

 

 

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