家族や友人が薬物依存症になったとき

息子が薬物依存症になった母親の経験 (息子34歳・無職 母58歳・会社員)

息子は34歳、8年間、せき止め薬の依存症となり、ダルクに入所して3年目になる。

息子は専門学校を卒業して3年間、リフォーム会社で働いていたが、会社の合併で、多くの社員が人員整理され、息子もその一員となった。それからは人材派遣会社から内装工事などのスタッフとして、あちこちの会社で短期間の契約で働くようになった。有給休暇は実質的にないし、仕事が途切れることがあれば生活は苦しい。

安いアパートに越すというので、手伝いにいくと、せき止め薬の空きびんが50本ほどもある。「仕事を休めないから、風邪をひいたときに飲んだ」と言う。数年分のゴミならこんなものかと思ったが、このとき、息子はすでに依存症だったのだ。

ある日、警察から電話がかかってきて、息子がドラッグストアで万引きをしたというので迎えに行った。初犯なのに盗んだ量があまりにも多かった。警察官は「息子さんは薬物依存ですよ」といって、病院を紹介してくれた。

退院のとき「これで治った」とうれしかったが、何度も再発しては入院した。その間、息子が大量の薬を買うために作った借金も肩代わりしてきた。

精神的にも経済的にも追い詰められ、もう治療費が払えないかもしれないと、病院のケースワーカーに相談したところ「ダルク」を教えてもらい、息子も同意したので、お世話になることにした。

私は「入院すれば薬物依存は治る」と思っていた。でも、家族会に参加するようになって「依存は治らないけど、本人が薬を使わないで生きることはできる」ということを知り、自分なりに薬物依存について、家族のかかわり方について、もっと知りたいと思うようになった。

息子のことでギスギスしていた夫婦や家族の関係も、だんだんよくなってきているような気がする。家族会の皆さんと勉強しながら、息子の行く末を見守りたい。

家族会や勉強会に参加して孤立を避ける

薬物依存者の家族が集まる家族会に出ると、ほかの人も自分と同じ悩みを抱えていることがわかり、その経験から知恵を借りることができます。
また、薬物依存について知るための勉強会への参加も重要です。まず家族が勉強して変わることが本人の回復につながります。
家族会の人々に会うのがつらい場合は、専門家に相談して、必要なら治療やカウンセリングを受けましょう。

できるだけ本人に責任をとらせる

薬物依存者が、家庭外で問題を起こすと、家族はその後始末に追われますが、かえって薬物を続ける助けになってしまう可能性があります。
次のようなことはしないようにしましょう。

困った時の相談先

※全国のダルクや精神保健福祉センターおよび家族会などの詳しい連絡先は、「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」(厚生労働省)の巻末にも記載されています。