PTSDPTSD

「PTSD」とは

PTSDは、とても怖い思いをした記憶がこころの傷となり、 そのことが何度も思い出されて、恐怖を感じ続ける病気です

このページを訪れたあなたは、過去にとても怖い思いをした経験があるのではないでしょうか。PTSDとは、命の危険を感じたり、自分ではどうしようもない圧倒的な強い力に支配されたりといった、強い恐怖感を伴う経験をした人に起きやすい症状です。その怖かった経験の記憶がこころの傷(トラウマ)として残り、さまざまな症状を引き起こしてしまうのです。

人によって、怖い経験は異なります

どんな経験がPTSDの原因になるかは人によって違いますが、大地震などの天災、火事・交通事故などの偶発的な事故、殺人未遂や強盗およびレイプなどの犯罪被害、また、子供の頃の虐待などがPTSDのよくある原因として知られています。
また、直接脅威を受けたのでなくても、殺人や事故の現場を目撃しただけでPTSDになることもあります。

こころの弱い人がPTSDになるわけではありません

しかし、このような経験をした人が全員PTSDになるわけではありません。同じ事故にあっても、PTSDになる人とならない人がいます。
では、PTSDになる人はこころの弱い人なのでしょうか?実際にはそんなことはなく、屈強な男性がPTSDに悩まされている例もたくさんあります。どんな人がPTSDになりやすいのかはわかっていません。PTSDは、誰がなるかわからない障害です。言いかえれば、誰にでもその可能性があるのです。

いつまでもこころの傷を克服できないからといって、自分を責めないでください。とても怖い思いをしたあなたにとって、PTSDは自然の反応ともいえるのです。

その症状がPTSDだと気がつかないこともあります

生命の危機に直面するほどの体験をしていても、今悩まされている症状とその体験を結びつけることができないこともあります。
原因がわからないまま、こころの不安定な症状が続くと、原因がわかっている時以上に本人も周りの人もつらく、疲れてしまいます。それが過去の体験に関係していると気づくことができれば、それは回復への第一歩となります。

「PTSDかもしれない」と思ったら、どこに行けばいい?

その体験が犯罪被害の場合は、犯罪被害者の会や支援組織など、多くの相談窓口が用意されています。
地震などの大きな天災の時は、救護チームの中にカウンセラーが派遣されることもありますので、救援スタッフに尋ねることも一つの手段です。 その他、地元の精神保健福祉センターや、精神科や心療内科など、PTSDに知識のある専門医やカウンセラーのいる施設もあります。 とはいっても、性的被害や家庭内の虐待などは人に相談しにくく、特に女性や子供など立場の弱い人の中には誰にも相談できずひとりで悩み、がまんしている人が少なくありません。

PTSDでなくてもいいのです。今あなたがつらい思いをしているのなら、ひとりでがまんせず、思い切って相談窓口のある施設に連絡をとってみてください。

PTSDのサイン・症状

PTSDでよく見られる症状には次のようなものがあります。

1.突然、つらい記憶がよみがえる

事件や事故のことなどすっかり忘れたつもりでいても、ふとした時に、つらい体験の時に味わった感情がよみがえります。
それは恐怖だけでなく、苦痛、怒り、哀しみ、無力感などいろいろな感情が混じった記憶です。

周りからみると、何もないのに突然感情が不安定になり、取り乱したり涙ぐんだり怒ったりするので、理解に苦しむことになります。
その事件や事故を、もう一度体験しているように生々しく思い出されることもあります。また、同じ悪夢を繰り返し見ることもPTSDによくある症状です。

2.常に神経が張りつめている

つらい記憶がよみがえっていない時でも緊張が続き、常にイライラしている、ささいなことで驚きやすい、警戒心が行き過ぎなほど強くなる、ぐっすり眠れない、などの過敏な状態が続くようになります。

3.記憶を呼び起こす状況や場面を避ける

何気ない日常の中につらい記憶を思い出すきっかけがたくさん潜んでいます。多くのPTSD患者さんは何度も記憶を呼び起こすうちに、そうしたきっかけを避けるようになります。
どんなことがきっかけになるかは本人でなくてはわからず、本人も意識できないままでいることもあります。
意識できない場合でも、自分で気づかないうちにそうした状況をさけるようになるのです。
その結果、行動が制限されて通常の日常生活・社会生活が送れなくなることも少なくありません。

4.感覚が麻痺する

つらい記憶に苦しむことを避けるために、感情や感覚が麻痺することもあります。そのために家族や友人に対してこれまで持っていたような愛情や優しさなどを感じられなくなったり、人にこころを許すこともできなくなりがちです。
これは、つらい経験の記憶からこころを守るための自然の反応なのです。

5.いつまでも症状が続く

こうした症状は、つらく怖い経験の直後であればほとんどの人にあらわれるものです。ですので、事件や事故から1ヶ月くらいの間は様子をみて、自然の回復を待ってみます。
数ヶ月たっても同じような症状が続いたり、悪化する傾向がみられたら、PTSDの可能性を考えて専門家の診断を受けてみてください。

PTSDの治療

こころの傷の回復と、つらい症状の軽減の2本柱で考えます。
こころの傷の回復を助けることと、苦しい症状を軽減することがPTSD治療の基本となります。

心理的・精神的アプローチでこころの傷の回復を

こころの傷の回復を助けることと、苦しい症状を軽減することがPTSD治療の基本となります。

  • 持続エクスポージャー療法
    トラウマとなった場面をあえてイメージしたり、これまで避けていた記憶をよびおこすきっかけにあえて身を置くようにする治療法です。
    こうすることで、思い出しても危険はない、怖いことはないということをそれこそ肌身を通じて感じ取っていくのです。
    この治療は、専門の治療者の立ち会いのもとに今の状況が安全であることを患者さんがよく理解した上で行う必要があります。
    「思い出すことが治療につながる」という知識だけで十分な経験のない人が患者さんに記憶の再体験をうながすと、かえって不安が強まって症状が悪化することにもなりかねません。
    必ず持続曝露療法の知識と経験のある治療者のもとで行うようにしましょう。
  • その他
    ほかにも、考え方やこだわりを見直して別の視点で物事を考えるように導く認知療法や、眼球を動かしながらトラウマとなった経験を思い出す「眼球運動脱感作療法」や、PTSDの人が数名で自分の悩みを語るグループ療法など、さまざまな方法があります。

薬による治療
つらい症状には薬による治療も行います。
・眠れない
・不安が強い
・うつ状態がある
・自殺を考える

主に使われる薬
SSRIをはじめとする抗うつ薬や抗不安薬、気分安定薬や、そのほかにもいろいろな薬を症状にあわせて使います。

私がPTSDになったとき

  • 自分を責めないで
    あなたは「こうなったのは私のせいだ」と思っていませんか?
    自分の不注意、判断ミスのせいでこんな目にあったのだ、悪いのは自分なのだ、こんなつらい思いをするのは仕方がないのだ、という思いの中に閉じこもっていませんか?
    この思いは、こころが回復しようとする力を奪ってしまうものです。
    なぜ自分を責めてしまうのかを、ゆっくりと見なおしてみましょう。自分を責めてしまう考え方から抜け出すことは回復への一歩となります。
  • ひとりだと思わないで
    トラウマの原因となる経験の中には、人に話しにくいものがあります。
    特にレイプなどの性被害や家庭内暴力、学校でのいじめなどは、被害にあった本人も話しにくく、また周りの人の理解も得られにくいものです。
    そのために自分はひとりぼっちだという気持ちになりがちです。
    そのうえPTSD患者さんにはしばしば感情や感覚の麻痺があって人とのこころの交流を保ちにくい状況にありがちです。突然感情が不安定になることも周りから理解されにくく、さらに孤立を深めることになります。
    あなたを否定せず、ゆっくりと話を聞いてくれる人は周りにいますか?
    そういう人がいるならば、時々話を聞いてもらうようにしましょう。
    もしいない場合は、相談窓口を通じて「当事者の会」などを紹介してもらうのも一つの方法です。同じ苦しみを持つ人たちが、自身の思いを語り合う場を設けているので、そこに参加することが孤立感から解放されるきっかけになります。

家族や友達がPTSDになったとき

  • 家族や友達との接し方
    トラウマになるような恐ろしい経験は、周りの人にとっても不安や恐怖を感じさせるものです。
    そのため、知らず知らずのうちに、トラウマを負った人を責めたり、こころの距離をとろうとしがちになります。
  • 話をじっくり聞くこと
    時に、よかれと思って言った励ましの言葉やなぐさめの言葉が、かえって相手を傷つけていることがあります。
    ただ、相手の言葉をさえぎったり否定することなく、だまってうなずきながら話を聞くだけで、本人は少し楽になります。
  • ひとりですべてを背負おうとしないで
    トラウマを負った人には真っ正面からきちんと接することが大切ですが、「この人を理解できるのは私だけだ」といった思いこみは危険です。かえって相手をコントロールしようとして傷つけてしまうことになりかねません。
    また、話を聞いているうちに自分もその体験に対して恐怖や怒りを感じて、同じ体験をしたかのようになってしまうこともあります。
    のめりこみすぎず、離れすぎず、自分ひとりだけでなく複数の人と力を合わせて、余裕をもって本人と接するように心がけましょう。
厚生労働省