こころの病気と向きあう

第8回:病気の治療は正しい理解から

あさかホスピタル 院長 佐久間 啓

日本では心の病気は、どの身体の病気よりも罹っている人が多く、本人の家庭や学校、職場へ与える様々な影響も大きいのですが、身体の病気に比べ、なかなか早い段階で、適切な治療を受けていないことが明らかになっています。

心の病気を理解する、あるいは自覚することが難しい理由は幾つかあります。まず「脳」が現在の科学でも解明しきれないほど複雑な臓器で、 他の身体の病気のように、画像や血液などの検査では診断できず、目に見えないことです。 次に、心の疲れやバランスの乱れなどは誰にでも起こるので、どの段階から病気と考えれば良いのかが判りにくいのです。そして心のバランスを大きく崩してしまったときには、本人の気持ちや考え方自体も強く影響を受けるので、その変化を自分で病気だと理解することがとても難しいのです。その背景の一つに、心の病気に罹る人は“意志の弱い人”だとか“怠け者”であるという社会の誤った風潮から、オープンに話題にできない状況があり、理解が進まなかったということもあります。

身体の病気と同じように、身体や心の疲れから誰でも心の病気になりうることを、正しく理解して、自分ではなかなか気付くことが出来なかったり、病気であると受け入れることが難しいものであることを、周囲の人が理解して、本来の本人とどう違うか、元気な時と何が変わったか、ということを説明して、なるべく早く専門家に相談してみることが大切です。相談や治療は早ければ早い程、回復も早く、良くなることが判っています。

精神科医療では、以前は病名を本人に伝えないことが多かったのも事実です。しかし、現在は、本当の意味での治療のスタートは、本人にも、ご家族にも病気について正しく理解して頂き、病気と向き合って、一緒に治療を考える体制を作ることから始まると考えられようになってきました。心の病気の治療では、医師はじめ、医療の専門職と本人、ご家族が、チームとなって取り組んでいくことがとても大切なのです。

 

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