こころの病気と向きあう

第2回:こころの問題に立ち向かう

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部長 伊藤 弘人

ジェラルド・フォード第38代アメリカ大統領の夫人であるベティ・フォード氏が、2011年7月8日に93歳で逝去されました。夫人は自らの経験を率直に公表される方でした。ご自身のアルコール問題等での入院の経験をきっかけに、専門施設であるベティ・フォード・センターを設立するなど、依存症問題の改善に資する啓発・支援に尽力されました。

アメリカ政府要職者の夫人は、こころの問題に立ち向かう方が少なくありません。ロザリン・カーター氏(ジミー・カーター第39代大統領夫人)は、メンタル・ヘルス大統領委員会の名誉議長を務め、精神保健医療政策の推進に大きく寄与してきました。ティッパー・ゴア氏(アル・ゴア副大統領夫人)は、ホワイトハウスでメンタルヘルスの推進に注力しました。

わが国においても、こころの問題に立ち向かうことを応援する方々が、さまざまな方面で増えてきています。1年間に国民の約40人に1人がこころの問題で医療を受けていますので、10~20年で考えるとその割合はもっと高くなり、とても身近な問題となっていることも影響しているかもしれません。学術的にも、糖尿病などの生活習慣病と同じく、精神疾患を早期発見・早期治療をすると予後がよくなるという考え方が主流になりつつあります。医療にかかりやすくなることは、必要な方々の受療が進んでいるのであれば望ましいことです。

医療の中での連携も進んでいます。がん、心筋梗塞、脳卒中や糖尿病などを患うと、こころの問題が出てきて、その一部は専門的治療を受けることで軽減されることが、国際的に明らかになってきました。わが国のがん治療の中にこころを担当する専門家がチームの一員に位置づけられており、心疾患領域においてもその基盤が整備されつつあります。
さらに心強いことに、近年、当事者の方が保健医療政策の立案に参画されることが一般的になっています。ベティ・フォード氏の功績を称え哀悼の意を表するとともに、わが国においても、学術的な蓄積をベースに、当事者の観点が十分に反映されることにより、よりよい精神保健医療サービスが提供され、国民の保健医療福祉の向上につながることを願います。

 

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