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報告基準

 天然痘は、平成15年10月の感染症法改正により一類感染症に位置付けられた。その際、天然痘については、以下のとおり届出基準が示された。(「感染症法に基づく医師から都道府県等への届出のための基準の改正について」(平成15年11月5日付健感発第1105006号))

(以下、法改正に伴い差しかえ)
《定義》
 痘そうウイルスによる急性の発しん性疾患である。現在、地球上では根絶された状態にある。

《臨床的特徴》
 主として、飛沫感染によりヒトからヒトへ感染する。患者や汚染された物品との直接接触により感染することもある。エアロゾルによる感染の報告もあるが、稀である。潜伏期間はおよそ12日(7〜17日)で、感染力は病初期(ことに4〜6病日)に最も強く、発病前は感染力はないと考えられている。すべての発しんが痂皮となり、これが完全に脱落するまでは感染の可能性がある。
  主な症状は、
 1) 前駆期: 急激な発熱(39度前後)、頭痛、四肢痛、腰痛などで始まり、発熱は2〜3日で40度以上に達する。第3〜4病日頃には、一時解熱傾向となり、発しんが出る。
 2) 発しん期: 発しんは、紅斑→丘しん→水疱→膿疱→結痂→落屑 と規則正しく移行する。その時期に見られる発しんはすべて同一のステージであることが特徴である。第9病日頃に膿疱となるが、この頃には再び高熱となり、結痂するまで続く。疼痛、灼熱感が強い。
 3) 回復期: 2〜3週間の経過で、脱色した瘢痕を残し治癒する。痂皮(かさぶた)の中には、感染性ウイルスが長期間存在するので、必ず、滅菌消毒処理をする。

《届出基準》
 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断がなされたもの

 【材料】 水疱、膿疱、痂皮、咽頭スワブ、血清など
  ・ 病原体の検出
 例、ウイルス粒子の直接観察(電子顕微鏡)、ウイルス分離 など
  ・ 抗原の検出
 例、蛍光抗体法(水疱、膿疱の塗抹) など
  ・ 病原体の遺伝子の検出
 例、PCR法(水疱、膿疱の塗抹) など

 疑似症の判断(この時点で速やかに報告を行う。)
 臨床的特徴に合致し、水痘などとの鑑別診断がなされたもの

《備考》
 生物テロへの使用が危惧されている病原体であり、一例の発生でも、高い感染性と致死率から非常に大きな問題となる。症例の確実な探知と迅速な対応が重要である。当該疾患を疑う症状や所見はないが、病原体や抗原は検出されず、遺伝子のみが検出されたものについては、法による報告は要しないが、確認のため、保健所に相談することが重要である。まん延防止には、発症1週間前後の痘そう様患者との遭遇、疑わしいエアロゾル・粉末の吸引・皮膚付着、旅行歴、職業歴などについての情報を把握することが有用である。



別記様式1


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