第1 | 救急医療の確保及び医薬品供給に関する対応について | ||||||||||||||||||
1. | 事件発生に備えた事前対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 災害発生に備えた救急医療体制の点検 テロ事件等発生時に、医療機関等において適切な対応が遅滞なく行われるよう、各地域における災害拠点病院や救命救急センターを中心とした災害・救急医療体制について点検を行うとともに、必要に応じ見直しを行うこと。 | ||||||||||||||||||
(2) | 災害発生に備えた情報連絡体制の点検・確認 広域災害・救急医療情報システムに登録されている医療機関等の連絡先(担当者、e-mailアドレス、電話番号、FAX番号等)を確認し、危機の状況に応じて、同システムの運用レベルに変更がありうることを認識し、必要情報の迅速な入力等につとめること。 なお、広域災害・救急医療情報システムの未導入県においては、当該県において整備した救急医療情報システムへの情報入力を適時行う等、災害発生に備えた情報伝達体制を確認願いたい。 | ||||||||||||||||||
(3) | 災害発生に備えた医薬品の備蓄 平素から災害拠点病院等においては、常時応急用医薬品を備蓄しているところであるが、内容を点検し、期限切れ医薬品等については適宜更新を実施することにより、即応体制の構築に備えられたい。 | ||||||||||||||||||
(4) | 医薬品等の安定供給の確保 都道府県が策定している「医薬品等の供給、管理等のための計画」により、国と医薬品等関係団体及び都道府県等との連絡網が構築され、テロ事件等発生時には、必要な医薬品等の供給・管理が可能な体制を整備しているところであるが、これを再点検し、適切な体制整備を図られたい。 | ||||||||||||||||||
(5) | 医薬品等健康危機管理実施要領の活用 医薬品、医療用具等(医薬品、医療用具、医薬部外品及び化粧品)による健康被害の発生を未然に防止するとともに、健康被害が発生した場合の当該健康被害の拡大を防止することを目的として、平成9年3月31日、「医薬品等健康危機管理実施要領」を制定している(最終改訂平成13年4月18日)ことから、各位における危機管理対策において適宜、参考にされたい。 | ||||||||||||||||||
2. | 事件発生時の対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 通常とは異なる重症患者等の把握に関する情報提供の依頼 かねてより国立病院・療養所、労災病院等に対して、通常とは異なる患者等を把握した場合には、既存の情報伝達経路を通じ、迅速に厚生労働省に報告するよう指示しているところである。都道府県等においても、管下医療機関において通常とは異なる重症患者等を把握した際には、早期に報告を受け、厚生労働省に報告するとともに、適切に対応するようお願いする。 | ||||||||||||||||||
(2) | NBCテロ事件発生時の事態対処について 都道府県衛生主管部(局)長宛に、テロ事件等発生時の消防及び警察等、関係機関間の連携の確保による効果的な現場対処の観点から、救助・救急搬送、救急医療及び原因物質の特定並びに除染について「NBCテロ対処現地関係機関連携モデル(平成13年11月30日医政指発第66号)」が発出されているので、これを参考として、関係機関と連携して事態に適切に対応されたい。 | ||||||||||||||||||
(3) | 緊急に輸送の必要がある医薬品等の国内輸送の円滑化 平成13年の米国同時多発テロ発生時には、国土交通省により、国内航空輸送貨物について、空港において24時間荷積みせず留置し、点検強化する措置がとられたが、日本赤十字社の輸送する核酸増幅(NAT)検査用検体や同社血液センター間で輸送する輸血用血液製剤について、緊急に航空輸送する必要があるため、輸送に支障がないよう国土交通省及び日本赤十字社と調整を図ったところである。 その結果、現在は日本赤十字社職員が空港に出向いて内容物を安全な物と直接証明する手続きは解除されているが、貴都道府県内で、日本赤十字社の輸送に係る血液製剤以外の抗毒素その他の医薬品で緊急に航空機で輸送する必要があるものがある場合は、厚生労働省医薬食品局血液対策課あて連絡されたい。 | ||||||||||||||||||
第2 | 化学テロに関する危機管理の対応について | ||||||||||||||||||
1. | テロ事件発生に備えた事前対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 毒物劇物の管理強化 毒物又は劇物によるテロの未然防止について、「毒物及び劇物の保管管理について(昭和52年3月26日薬発第313号)」、「毒物及び劇物の適正な保管管理等の徹底について(平成10年7月28日医薬発第693号)」及び「毒劇物及び向精神薬等の医薬品の適正な保管管理及び販売等の徹底について(平成11年1月13日医薬発第34号)」に掲げる事項を、毒物劇物営業者、特定毒物研究者、業務上取扱者(毒物及び劇物取締法第22条第5項に定める者を含む。)に対し改めて点検するよう関係業者、団体等への指導を徹底すること。 | ||||||||||||||||||
(2) | 化学物質の分析に要する機材、及び除染設備、防護服等の配備 化学剤による災害等に関しては災害拠点病院と救急救命センターに、検査機器・機材等の整備を図っているが、今後とも稼働及び保管状況を把握するとともに、必要な資機材等の確認を行うこと。また、除染設備や防護服等も適切な稼働状態を確保すること。 | ||||||||||||||||||
(3) | 化学剤等に関する一般情報と対処要領等 テロに使用される可能性の高いと考えられる化学剤等に関する情報については、日頃から必要な情報を得るとともに、住民・関係者への周知を図られたい。また、日頃からテロ事件発生時に対処可能な体制づくりに努められたい。 | ||||||||||||||||||
2. | 事件発生時の対処 事件発生時には、(財)日本中毒情報センターの保有する中毒情報データベースシステムから治療等に関する必要な情報を得ることができる。 上記「NBCテロ対処現地関係機関連携モデル(平成13年11月30日医政指発第66号)」は、特に化学災害事案への対応を想定して作成されたものであることから、これを十分踏まえ対応するとともに、広域災害・救急医療情報システムを有効に利用し、患者の受け入れ体制構築と必要な医療提供を促進し、事態に適切に対処されたい。 また、毒物劇物がテロに使用され、当該物質名等が特定された場合には、毒物劇物情報データベースを活用し、毒物劇物の物性・応急措置方法等について消防機関等関係機関へ情報提供を行うとともに、関係機関と連携し危害の拡大を防止すること。 | ||||||||||||||||||
第3 | 生物テロに関する危機管理の対応について | ||||||||||||||||||
1. | 事件発生に備えた事前対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 病原性微生物等の管理強化 生物剤を利用したテロ事件発生を防止する観点から、「病原性微生物等の管理強化について(平成13年10月15日科発第456号等連名通知)」に従い、所管の機関の病原性微生物等の適切な管理を図られたい。 なお、病原性微生物等の管理強化については、特に注意喚起を行っていただくため、別途、衛生主管部(局)長あて改めて通知を発出するので了知願いたい。 | ||||||||||||||||||
(2) | 感染症発生動向調査の励行と分析の強化 感染症の発生情報については「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の施行に伴う感染症発生動向調査事業の実施について(平成11年3月19日健医発第458号)」及び「感染症法に基づく医師から都道府県等への届出のための基準の改正について(平成15年11月5日健感発第1105006号)」により正確な把握と分析をお願いしているところである。感染症発生動向調査の対象となる感染症には、エボラ出血熱等のウイルス性出血熱(一類)、ペスト(一類)、天然痘(痘そう)(一類)、炭疽(四類)、野兎病(四類)、ボツリヌス症(四類)等の生物テロによる感染被害が危惧されている感染症が含まれており、これらの感染症については、診断を行った医師から直ちに届出が行われることになるので、生物テロへの対応という観点からも、本動向調査の適切な実施をお願いしたい。なお、平成12年12月25日よりWISH−NET上で運用を開始した「定点把握感染症の注意報・警報システム」等も活用する等、地方感染症情報センターにおける本動向調査結果の解析・分析を強化し、異常な動向の早期把握に努められたい。 | ||||||||||||||||||
(3) | 住民や医療関係者への情報の提供・公表 感染症発生動向等関連情報は、国立感染症研究所のホームページ(http://www.nih.go.jp/niid/index.html)、「動物由来感染症を知っていますか」(https://www.forth.go.jp/mhlw/animal/)「海外渡航者のための感染症情報」(https://www.forth.go.jp/)等に掲載しているので参考とするとともに、住民・関係者への周知を図られたい。 | ||||||||||||||||||
2. | 事件発生時の対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 異常な発生動向を認めた場合の対応 明らかに異常な感染症の発生動向を認めた場合には、最寄りの保健所に届出を行うと同時に、国立感染症研究所感染症情報センターへ直ちに情報提供を行い、また、感染の原因等を究明し、迅速かつ適切な対策をとられたい。この場合、「積極的疫学調査の実施等について(平成11年3月30日健医感発第47号)」を踏まえた対応を願うとともに国の支援を要請することも検討されたい。 | ||||||||||||||||||
(2) | 異常な感染症が発生した場合の対応 救命救急センター、災害拠点病院等に対し、感染者(感染の疑われる者を含む)を診察した場合には、直ちに最寄りの保健所に届出を行うと同時に、国立感染症研究所に情報提供を行うよう要請しているところである。 各都道府県においても、異常な感染症が発生した場合には、「感染症の予防のための施策の実施に関する計画」(以下「感染症予防計画」という。)を再点検するとともに「感染症指定医療機関の指定について (平成11年3月19日健医発第457号)」、「感染症の患者の搬送に関する手引きについて(平成11年3月31日健医感発第50号)」、「一類感染症、二類感染症及び三類感染症の消毒・滅菌に関する手引きについて(平成11年3月31日健医感発第51号)」等を再確認の上、当該感染症に対する治療及びまん延防止のため適切な対応を図られたい。 | ||||||||||||||||||
(3) | 病原体確認検査の強化 異常な感染症の発生に関連すると思われる病原体を地方衛生研究所等が検出し、又は検出が疑われる場合、国立感染症研究所に相談の上、同研究所に検体を送付し、確認を行われたい。 | ||||||||||||||||||
(4) | 炭疽菌等の汚染のおそれのある場合の対応について 炭疽菌等の汚染のおそれのある郵便物等の取扱方法等に関わる留意事項については、「炭疽菌等の汚染のおそれのある郵便物等の取扱いについて(平成13年10月18日科発467号等連名通知)」、炭疽菌等の汚染のおそれのある場所に居合わせた住民等に対する情報提供、医療機関の確保、炭疽菌等の汚染に対する消毒方法等及び化学剤への対応等については、「炭疽菌等の汚染のおそれのある場合の対応について(平成13年11月16日科発第509号等連名通知)」に整理してあるので、これを参考に適切に対応されたい。 | ||||||||||||||||||
(5) | 感染症の適切な診断・治療 「感染症の診断・治療ガイドライン(平成11年厚生省保健医療局結核感染症課・日本医師会感染症危機管理対策室監修)」、追補・改訂版として取りまとめられた診断・治療ガイドライン(炭疽、天然痘、野兎病、ボツリヌス)、及び天然痘CD-ROM(「天然痘の症状、診断およびワクチンについて」)、「天然痘対応指針(第四版)(平成15年5月27日)」の周知、感染症指定医療機関等の感染症に対する専門的な知見を有する者との協力により感染症の適切な診断・治療の確保を図られたい。 | ||||||||||||||||||
(6) | 生物剤として使用される可能が高いと考えられる感染症 テロに使用される可能性が高いと考えられる病原体等による疾病の概要、治療等については、上記ガイドラインの他、厚生労働省ホームページの「生物兵器テロの可能性が高い感染症について(https://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1015-4.html)」等においてまとめているので参考にされたい。 | ||||||||||||||||||
第4 | 水道に関する危機管理の対応について | ||||||||||||||||||
1. | 事件発生に備えた事前対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 水道施設の警備等 水道施設については、水源監視の強化、浄水場、配水池等の水道施設の警備の強化、防護対策の確立を図り、バイオアッセイ等による水質管理を徹底すること。また、水道施設関係者等の管理の一環として、来訪者、施設出入業者の管理の徹底を図ること。併せて、施設の現状把握を行い、備品、薬品等の管理、また、施設関係図面等の管理の徹底など情報管理に努めること。 また、安全な水道水を利用者に供給するためには、水道事業者等による危機管理対策の徹底と併せて、貯水槽水道の管理等も強化する必要があることから、貯水槽水道の設置者や利用者に対しても、広報等を通じた注意喚起に努めること。 | ||||||||||||||||||
(2) | 情報収集、連絡体制等の確立 緊急時対応の体制の確立の観点から、一般住民からの連絡窓口を設定し関係情報の周知を図り、情報収集に努めること及び緊急時における水道事業体内外の関係者に対する連絡体制を確立すること。 また、給水停止措置等の緊急対応の指揮命令系統を明確化し、対応の迅速化等に努めること。さらに、応急復旧体制や応急給水体制も含めて緊急事態への対応体制を確立するとともに、これらについてのマニュアルの策定を行い、関係者への周知徹底、緊急事態対応の訓練等を通じた対応体制の強化を図ること。 | ||||||||||||||||||
2. | 事件発生時の対処 事件発生時には、「飲料水健康危機管理実施要領」に基づき迅速に対応するとともに、飲料水の水質異常などの情報を把握した場合には、「飲料水健康危機管理実施要領について(平成9年4月10日衛水第162号)」に基づき、ただちに厚生労働省宛報告するようにされたい。 | ||||||||||||||||||
第5 | 食品等に関する危機管理の対応について | ||||||||||||||||||
1. | 事件発生に備えた事前対処 | ||||||||||||||||||
(1) | 店頭陳列等の事前の対策 品質管理の徹底及び取扱製品の定期点検を行うとともに、流通、店頭における次の防止対策を講じるよう、関係方面に周知されたい。
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(2) | 販売食品等に関する事前の対策 本年5月の食品衛生法改正により、問題食品の早期特定、排除に資するため、食品等事業者に対し、販売食品の仕入元及び販売先(小売りを除く。)等の記録の作成・保存の責務が設けられたことから、「食品衛生法第1条の3第2項の食品等事業者の記録の作成及び保存に係る指針(ガイドライン)(平成15年8月食安発第0829001号)」に基づき指導を徹底すること。 | ||||||||||||||||||
2. | 事件発生後の対処 事件発生時には、食中毒処理要領、食中毒調査マニュアル等に基づき迅速に対応をすること。なお、通常の食中毒とは明らかに異なると判断された事例に対しては、国、地域保健所との連絡を密接に取りながら適切に対処されたい。 また、事件発生時には、(財)日本中毒情報センターの保有する中毒情報データベースシステムから治療等に関する必要な情報を得ることができるので、有効に活用すること。 | ||||||||||||||||||
第6 | 地域における健康危機管理体制の確保について 上記の事項に関して、医療機関、水道施設等の関係施設の点検や連絡体制及び警察、消防、医師会等関係機関との連携、情報収集及び提供体制について、「地域保健対策の推進に関する基本的な指針(平成6年12月厚生省告示第374号)」及び「地域における健康危機管理について〜地域健康危機管理ガイドライン〜(平成13年3月30日健総第17号)」を参考に地域における健康危機管理体制について再確認すること。 特に、地域における健康危機管理の拠点である保健所においては、管内の医療機関、水道・食品関係施設、毒劇物保管施設等において通常と異なる事態が生じた場合や野生動物等に異常が生じた場合等において速やかに連絡するよう関係各方面に周知するなど、健康危機の早期発見と的確な対応をお願いする。 | ||||||||||||||||||
第7 | 都道府県等において平素より準備すべき体制及びこれまで発出した通知、情報提供等 以上の事項に関連して、都道府県等における健康危機管理体制における留意事項を示すとともに、事件が疑われる場合等の情報源として、これまでに厚生労働省等から発出した通知、情報提供等について別紙を提供する。 | ||||||||||||||||||
第8 | 各項目についての所管課 第1から第7までの各項目の所管課は、それぞれ以下のとおりである。
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1. | 体制等
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2. | これまで発出した通知、情報提供等
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