定例事務次官記者会見概要

(H20.06.05(木)14:00〜14:20 省内会見場)

【広報室】

《次官会議等について》

(次官)

本日の次官会議は厚生労働省関係の案件はありません。

《質疑》

(記者)

昨日後期高齢者医療制度の実態調査の報告が出ましたけれども、低所得者の方が高所得者よりも負担増になっている割合が大きくて、低所得者により厳しい制度ではないかという批判も出ていますけれども、その点どのように考えていらっしゃいますか。

(次官)

昨日、できれば先月に出せればと思っていた実態調査の結果を発表いたしました。その時も担当部局から説明があったと思いますが、今度の後期高齢者医療制度では、保険料の負担について、所得割と均等割と二つを組み合わせるということになっており、従来、国保をやっている多くの市町村では、資産割等を入れた4方式でやっていたわけでありますが、4方式に比べてこの方式で実施しますと、資産割等がなくなりますので、低所得者の方により軽減効果が効き、所得の高い人の方がより負担が重たくなるという説明をしたわけです。4方式の所を見れば、実態調査の結果もそのように現れております。それから例えば、東京都であるとか政令指定都市とか大きな所、財政力の豊かな自治体においては、自治体の一般会計から公費を投入している、しかし後期高齢者医療制度になった時に公費が入っていない、あるいは公費が減っているということになれば、その分が保険料に跳ねますので、そこは4方式にくらべて低所得者の方により低くしていたわけですから、公費が減ればその分新しい制度になった時に負担が上がることはありうるということです。2方式の所では如実にそれが出ていたのかなと。ただ今回与党PTで低所得者対策をやるということで、案が先般発表されましたが、それに従って計算すると、低所得者に相当の改善が見られます。定性的には従前から申し上げておりましたとおり、この方式を執れば低所得者の方の負担軽減効果が高く、高所得者の負担が重いという流れは変わらないということです。

(記者)

昨日実態調査の結果が明らかになったということもあって、より一層この制度が何を目指しているかというのが、見にくい状況になっておりますが、改めてこの制度を財政面、またどういう医療を受けられるかといった点で、どういったものを本来目指すものなのかをお聞かせいただきますか。

(次官)

後期高齢者医療制度は長い議論を経ています。老人保健制度はずっと70歳以上、公費が3割と、それから各保険者の方から7割を拠出してもらうという形で動いていました。平成11年には各保険者が老人保健制度への拠出は辞退したいと、いうことが起こりました。辞退したい理由は、各保険者での負担が青天井であると、これから老人の医療費が増えていくとさらに若い世代の負担が高まると。この制度を見直して、負担のルールを明確化するとか、例えば、負担の上限が見えるとか、負担する側にとってわかり易い制度にしてもらいたいという要請があったわけです。平成11年に一部の健保組合から拠出金の支払いの拒否であるとか、健保連としても拠出金は支払わないとかそういう動きがありました。平成12年には、参議院において決議がなされておりまして、これは共産党を除くすべての党が賛成している決議でありますが、老人保健制度を見直して、新しい高齢者医療制度を作るべきだということでありました。
 平成14年に法律改正をしまして、その時は後期高齢者医療制度ということまで明確になったのではありませんが、それを睨みつつ、老人保健制度については、5年間掛けて支給開始対象年齢を70歳から75歳に引き上げる、公費の割合を30%から50%に引き上げる、毎年1歳ずつ歳を上げていきながら、公費の割合を増やしていくと。それが完成版になりましたのが、去年の10月ということです。その約1年半くらい前になりますが、国会に法律を出して後期高齢者医療制度を作ったわけです。それはまさに平成12年当時、所謂独立の高齢者医療制度を作るべきであるという、国会の決議を踏まえていろいろな方面と検討しながらやってきたものです。
 これは単に医療費負担だけではなくて、総合的な医療の対策を念頭に置きながら考えた医療施策全般の中の一部分ということです。全般というのは、経済成長がある程度までの水準のときは、医療費の伸びを経済成長の伸びの範囲に収めようということで、そういうことを念頭に対策をしてきました。1990年当初のバブル崩壊後に、我が国の経済成長が、時にはマイナス、非常に低成長になりました。一方、経済と関係なく、人口の高齢化が進んで、医療費のかかる高齢者の数が増えていきますから、国民全体の医療費は上がっていく。そういう中で医療費の伸びを抑制する対策を何度か行ってきました。自己負担を1割から2割、あるいは2割から3割に引き上げるとか、診療報酬をマイナス改定するとか。そういう結果がある意味では今日の医療現場の疲弊を招いていることも確かであります。そういう全体を踏まえて、医療施策をもっと総合的に進めるということを考えたわけです。病気に掛からないような形での健康増進対策、健診対策を進めようではないかと。あるいは諸外国に比べて、入院期間が長いので、日数を減らして行くとか。介護保険等と結び付けながら在宅医療を重視するとか。そういう様々なことの中の一環として後期高齢者について、独立の制度という国会の決議を踏まえて、議論をして作っていったわけです。これは、我が国全体としての皆保険制度を守り、一方でフリーアクセスを守るということです。この制度になりましても高齢者の方々にとって医療のアクセスが減っているわけではありません。同じような医療を受けられて、負担も従前と同じであります。ただ、後期高齢者に掛かる医療全体について、老人保健制度の年齢引き上げという中で考えていった仕組みでありますので、それは公費を5割、他の制度からの応援4割と、ご本人の負担は1割ということでやったわけです。
 この制度に移行してみて、今回の実態調査でもわかりましたけれども、かなり多くの人の保険料が減っています。それから与党のPTの案を入れれば、低所得者の保険料の負担はさらに配慮されるということになります。そういう意味では、従前の制度に比べて高齢者に相応しい医療を提供しながら、それ相応の保険料負担で受けられるのでないかと、そういうことが明らかになったのではないかと思います。

(記者)

国全体が医療費の抑制なりそういう仕組みの中でこの制度ができてきたという理由は分かるのですけれども、反対に、では後期高齢者一人一人にとってこの制度になって何が良くなったのか、もしくは後期高齢者を支える私達現役の人達にとって何が良くなったのかというのが全く見えないのですけれども、次官はそこをどうお考えでしょうか。

(次官)

一つは、負担の在り方について後期高齢者の中での公平を目指すということであります。同じように年金をもらっている中で、サラリーマンの被扶養者については負担がなく、一方同じ被扶養者で国民健康保険の者の被扶養者であれば、それは国民健康保険の制度の中で保険料を納めています、同じ世代内で負担の公平を目指している、これが一つであります。負担の公平という観点から高齢者の方々に考えてもらう。負担は、少なければ少ない方がいいというのは一般論かもしれませんが、かかる医療費全体が増えていますので、税金で負担するか、若い人に負担してもらうか、ご本人の保険料で負担してもらうかですから、その中で全体の一割部分を公平に負担していただく。これはご納得いただきたいなと思っております。
 それから、若い人達については、これは先程申し上げましたように、平成11年に一部の健康保険組合、あるいは健康保険組合連合として老人保健制度の拠出金に反対ということがあったわけであります。これはなぜかと言えば、増え続ける拠出金について歯止めが見えない。結果的に若い人達に負担がどんどん回っていくと。これについて一つルールを明確にしてくれという要請があったわけでありまして、そのルールが明確になったというのが一つだと思います。

(記者)

医療保険制度ということですので、保険料の問題ももちろんですけれども、提供される医療についても今回こうやって区切ったことで何かメリットというのは考えられるのでしょうか。どういったものを目指していらっしゃるのでしょうか。

(次官)

高齢者には、高齢者特有の医療があるわけでありまして、そういうものをこの間かなり議論されたということであります。複数の疾患を有しているとか、総合的な診断によるとか、あるいは、介護保険と結びつけて長期入院を減らしてできるだけ居住する場所において生活できるようにするとか、そういう意味では、そういうようなサービスの体系を作るようにするというのが一つのメリットであると思っております。

(記者)

昨日の厚生労働省の会見でも、実態調査を制度が始まる前にやればもうちょっときめ細かい対応が取れたのではないかというコメントもありましたが、改めて次官の方からこういう実態調査を制度が始まって混乱が起きてからやるのではなくて、その前にやるべきだったというふうにはお考えにはなりますでしょうか。

(次官)

実態の把握については、反省すべき点があるかなという感じをもっております。今回の制度は、新しい広域連合という形をとりましたので、広域連合ができるまでがこれまたなかなか大変だったわけであります。自治体行政の中では初めての試みということでありますので、各市町村から代表を出し、議会を作って一つの行政体を作るわけですので、その中でまた、おそらく各都道府県の地域ごとに様々な問題がある中を、いろいろ意見調整しながら取り組んでいったのだと思います。そういう意味では大変だったと思います。それから、去年の秋、参議院選挙後の与党合意の中でいくつかの追加的な対策がとられました。このために私どもは補正予算を組んで、各自治体に、広域連合にその旨を伝えながら対応していったわけでありますが、準備がなかなか大変だったということがあります。そういう意味で、実施に向けての準備に実際には一所懸命取り組んだというのが実態でありまして、それはそういう意味で、この制度を導入したらどうなるかということについて把握しておけばもっとよかったなという気持ちは否めないわけでありますが、まずは的確に制度を実施するということに全力を注いだということであります。

(記者)

先週の金曜日に原爆症の大阪高裁の判決が出まして、9人全員原爆症と認めるという判決が出ました。新基準でも救済が難しいという方々も結果的には認めるというような判決でしたけれども、これ以上また上告などして争う必要があるケースだとお考えかどうか。

(次官)

判決に対する国としての対応は、厚生労働省だけではなくて、関係省庁と相談しながら決めなくてはいけません。上告の期限が来週半ばにきますので、早急に詰めて対応の方針を決めたいと思っておりますが、まだ関係省庁間での議論が終わっておりませんので、これを進めて方針を決めたいと思っております。

(記者)

新しい基準でも認めないというか、新しい基準を再改定すべきではないかという声が今回の判決を受けて原告側の方から高まっているように思うのですけれども、その点お考えいかがでしょうか。

(次官)

確かに2つの高裁でこういう判決がでました。判決が出たこと自体は一つの司法の判断ですので、私どもはきちんと受け止めないといけないと思っております。上告するかどうかはまだ議論が残っておりますけれども。ただ、今度の基準は、前回もお話ししましたが、一律この範囲だったら認めようという部分と、個別に判断しようという部分とが織り交ざった一つの認定方式になっておりますので、そういう意味では、個別に判断する時に何を考えたらいいかというのがこの判決を見ながらなおまだ考えていかないといけないかなというところはあるかと思います。それが、そういう個別の検討を超えて一足飛びに基準の改定まで結びつくかということについては、私は今の段階ではそこまではいかないのではないかと思っております。

(記者)

そうすると個別の判断の部分で今回示された司法の判断というのは反映する可能性はあるということでしょうか。

(次官)

与党からの要望の中にも、例えば、認定にあたって司法関係の経験者を入れたらどうかとかいろんな議論が出ています。判決そのものということではなくて、判決の中身を受けながらいろいろな提案もあるわけでありますので、そういう事も含めてどういう対応が良いのかというのは、上告は上告で議論いたしますが、その先の行政の問題としては、更に検討したいと思っております。

(記者)

昨日発表になりました人口動態統計で、2007年の人口が2005年に次いでまた自然減になりましたけれども、その受け止めと、厚生労働省としては今後それに対してどう取り組みをしていくかお願いします。

(次官)

合計特殊出生率が一時期1.26まで下がりまして、それが1.3台が2年連続で続いたわけであります。合計特殊出生率が更に戻って少子化に歯止めがかかって来るという事態になれば大変好ましいと思いますが、まだ全体の流れを即断する状況にはないと思っております。一方、高齢者の数の割合が増えていけば、人口全体の中で占める死亡する人の割合が増えていくわけでありまして、この部分は、今後の人口推計についても今後ますます増えていくと見込まれておりますから、避けることのできない事実として受け止めなくてはいけないのだろうと思っております。そういうことを考えますと、やはり基本は、少子化を克服してある程度出生が確実に見込まれるような社会をどうやってできるかということだと思います。昨年末に少子化対策についての新しい方針も決めましたし、そういう方針に則りながら少子化対策に力を入れていきたいと思っております。また、社会保障国民会議におきましても大分議論があったようでありますので、そういう議論を踏まえながら対策の充実ができたら良いなと思っております。

(了)


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