定例事務次官記者会見概要

(H18.03.23(木)14:00〜14:17 省内会見場)
【広報室】

《次官会議等について》

(次官)
 本日の事務次官等会議ですけれども、厚生労働省の案件は、政令案が1本ありました。平成18年度における老人保健法による医療費拠出金の額の算定に係る割合及び率を定める政令案ということで、これは、医療費拠出金の算定の基準となるべき老人加入率の下限割合等を定めるという内容であります。次官会議は、年度末が近づいているということで各省新年度からの政令案の案件がかなりありました。
 月曜日から昨日までベルギーのブリュッセルに出張をしていました。これは、1991年から日本とEUの雇用問題についてのシンポジウムというのが行われていて、最近は1年おきに相互訪問をしながらやっているわけですけれども、今回は、「グローバリゼーションの中のエンプロイアビリティーの向上」というテーマで月曜日、火曜日にわたってシンポジウムが開かれました。シンポジウムに参加することと併せて、EUの雇用・社会問題担当委員、これはEUの大臣ですけれども、シュピドラという人と、それからその総局長、これは次官に当たる人ですが、ヴァンデルパスという人に会って、いろいろ意見交換しました。EU加盟国が拡大している中で、雇用、社会保障などEUとしての共通の取組とそれぞれの加盟国の取組、その辺りのバランスをどうとっていくのかということで、いろいろ課題を抱えているという話がありました。印象的だったのは、雇用の柔軟性と雇用保障と、この両立を図るんだということで、「フレクシキュリティー」ということをしきりにシュピドラという人も言っていましたし、シンポジウムでもしきりにそういう話が行われていました。これは、フレクシビリティーとセキュリティーとの合成語のようですけれども、労働市場の柔軟性と雇用保障のバランスをとろうということですが、具体的に何をやるんだと聞いても、それはこれからだと、先進的に取り組んでいる国もあるので、その辺りを見ながら中身を詰めていくのだという印象でしたけれども、フレクシキュリティーというと何でも解決出来るような呪文のような感じになっていて、やはり中身を詰めていかなければいけないという話をしていました。日本ほど少子化が進んでいないにしても、やはり高齢化・少子化の問題というのは非常に大きな課題の一つで、従来は若年者の雇用のために高齢者の早期引退を促進していたけれども、これは間違いだった。日本のように高齢者の就業率を高めないといけないという話をしていました。実は、日本は、高齢法の改正をしてこの4月から年金の支給開始年齢と定年延長あるいは継続雇用年齢を併せることにしているんだと言ったら、どうしてそんなことが出来るんだということで、かなり二重の意味で「カンシン」感心と関心をしていました。それから、ブリュッセルには、国際自由労連(ICFTU)の本部があるものですから、そこのライダーという書記長とも会いまして、今、ILOの結社の自由委員会で、日本の公務員の労働基本権問題が議題になっているということがありますので、公務員基本権についての現在の取組状況を説明して、日本の方針に理解を求めるということで話をしてきたところであります。21日に会ったんですけれども、たまたま20日に公務員の労働基本権をめぐる政労協議も行われたということで、その辺りも含めていろいろ話をし、今春闘の大手の回答日を過ぎて、これから中小ということですけれども、春闘の状況についてもいろいろ話をしてきたところでありますけれども、ライダーというのはイギリス人なものですから、ジョーク混じりに、実は、本来春闘というのは戦う春闘ですから「Spring Offence」なんですけれども、これまではむしろ「Spring Defense」だったのかと、今年は「Ofence」になったのかという話をして笑っておりました。そういったことがありましたのでご紹介だけさせていただきました。何かご質問があれば。


《質疑》

(記者)
 今日の政府与党で、少子化対策協議会が始まったわけですけれども、その中で、少子化対策として、N分N乗方式や税額控除方式など新たな所得税の在り方についても触れるよう求める声があったと思うんですけれども、一方でそういったやり方でも数万円、数十万円の税金が浮いたことが子どもを産もうという動きになるのかどうかという疑問の声があると思うんですけれども、その辺の税制と少子化対策の税制というものの有効性についてどういうふうにお考えか。お考えをお聞かせ願えますでしょうか。

(次官)
 少子化の対応策については、前にも申し上げたことがありますけれども、おそらくこれが特効薬だというものはないので、やはり、いろんな対策を組み合わせて、しかも継続的に安定して続けていくということが重要なのではないかというふうに思っています。柱としては、子どもを産み育てる人たちの経済的あるいは肉体的・精神的負担、これをどれだけ軽減あるいは支援するのかというのが1つありますし、働きながら子どもを安心して産み育てられる環境づくりというのが2本柱であると思っていますけれども、今回の税制の議論というのは、前者の手法として、税制においても何か出来ないかということだろうと思います。税制の場合は、特に所得税、個人課税は累進課税になっており、また、課税最低限が設けられているということで、若い人は一般に所得も低いという中で、どういった効果があるのか、それから税制の措置が及ぶ範囲がどの程度の広がりがあるのかという辺りを考えながら、検討していくというのが基本なんだろうと思っております。いろんな対策について効果がないということはおそらく全くないので、効果とそれにかける費用を比較して、より効率的な制度にというのが採るべき姿なんだろうと思いますが、少子化対策の場合、やはりいろんな対策を採ってもなかなかまだ目に見える数字が表れてこないという中で、いろんな対策を税制面も含めて、総合的に採っていくということは有意義なことだと思います。ただ今お話のように、いろんなご意見もあるということですし、それから昔から二分二乗方式、あるいはN分N乗方式という議論があって、そういった中で、例えば専業主婦が育児、あるいは家事という面でどういう貢献をしているのか、報酬、賃金を得てくる配偶者と、専業主婦とが、どのように家庭なり家計の運用に貢献しているのかという評価と、それから一方で、家事をしながら働いている女性、その配偶者たる男性の負担なり、負担感なり、あるいは社会的な貢献なりとのバランスというのはどうなのかと、昔から二分二乗、N分N乗といろんな議論が出て、コンセンサスが得られずに今回に至っているというのがこれまでの動きだったのではないかと思っております。税制の場合は、今申し上げたようにいろんな観点から、あるいはいろんな面から議論すべきことが多いと思うんですけれども、やはり少子化というのは喫緊の大課題ですから、役に立つことなら何でもやるということは非常にいいと思いますので、是非議論を深めていって、あるいは議論を広げていってもらって、よく議論したらいいのではないかと思っております。

(記者)
 福島の小児科医が起訴された件で、学会とか医師会がいろいろと注文をつけていますが、それについてのご意見をお聞かせ下さい。すいません、小児科医ではなく産婦人科でした。

(次官)
 産婦人科にしても小児科医にしても、医師の偏在問題、それから医師の方の負担が重いとか、いろんな議論が行われているわけで、関係者の方々には、そういった中で、今回問題になっている事故が犯罪に当たるのかどうかということについて、それぞれの立場からいろんな主張、あるいは位置づけというのがあるんだろうと思います。捜査当局がどういった捜査をし、捜査の中でどういったことを把握して今回のような措置を採るに至ったのかということは、我々も承知していないものですから、ここで的確なコメントを申し上げるだけの情報はないということでありますけれども、今おっしゃったような関係者の方々がそうした主張をされるというのも、やはり産婦人科医等々の業務の負担の大きさ、それから業務の困難さ、いろんなことがあるということなので、そのあたりにきちんとした対応を採っていくというのが、我々行政として今やれることなのかなと思います。いずれにしても、今回の事案がどうだったのかというのは、捜査当局がこれからどういった態度をとるのかということにかかっているのかなと思いますので、直接的なコメントは難しいかなと思います。

(記者)
 例えば、事故が起きた際にどういったときに警察に届け出るかとか、そういう基準づくりのことで、医師会側が提言などされていますが、省としてそこら辺を対応されるお考えなどありますでしょうか。

(次官)
 医療にかかわっている医者、あるいは看護師の方々、その他いろいろ医療関係者はおられるわけですけれども、彼らが、ある意味では過失無しにすべて業務がやれればいいのですが、診療、あるいは治療の過程で、いろんな問題が出てくるという中で、どこまでが犯罪として扱われる水準、状態で、どこまでは犯罪に至らないのかというあたりは、非常に難しい問題で、こういった問題について、個別具体的に判断するのか、あるいは一般的な目安みたいなものがうまく出来るのかというあたりについては、今直ちにこういった方向でというのは、なかなか難しいのかなと思います。ただ関係者の方々の不安というのは、非常に大きいということがあるのであれば、何か考えなければならないということになるんだろうと思います。今回の事案だけなのか、他にもそういった事案があるのか、そのあたりをよく見ながら検討していく必要があるかどうかを考えるということかなと思っております。


(了)

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