定例事務次官記者会見概要

(H18.02.16(木)14:00〜14:11 省内会見場)
【広報室】
《次官会議等について》

(次官)
 本日の事務次官等会議ですけれども、厚生労働省関係の案件はありませんでした。その後の懇談会も、特段の発言はありませんでした。何かご質問あれば。


《質疑》

(記者)
 先週末に、厚生労働省はNTTの企業年金の一部についてOBの減額を認めなかったという結論を出したのですが、この判断の決め手となった部分が1つと、もう1つ、一部の報道では、NTTが行政訴訟を検討しているということで報じられていますが、それについて今後どのように対応していくかということの2点をお願いします。

(次官)
 2月10日にNTTから申請がありました確定給付企業年金の受給者減額について不承認ということにしたわけであります。確定給付型の企業年金制度については、既に企業年金を受給している人たちについて、年金が生活の基盤の一部になっているということでありますので、企業の都合で安易に減額が行われるということは問題があるということ、それから、減額に同意しない人についても減額されるということがあるということで、法令上、1つは減額対象者の3分の2以上の同意を得ることといったような手続き要件と併せて、理由の方の要件も課しています。母体企業の経営状況が悪化しているということ、あるいは、掛金額が大幅に上昇し母体企業が掛金を拠出することが困難になると見込まれることといったような、企業年金制度を存続するために真にやむを得ない場合に限って認めていこうということで、減額をするということは例外的なことであると、これまで一貫して運用をしてきたわけです。確定給付企業年金法の立法趣旨というのが、将来にわたって約束した給付が的確に支給できるように、その受給権保護を図るための枠組みの整備してあることに照らして、今申し上げた、これまでの運用というのは合理的な範囲のものではないかと思っています。今回、申請のありましたNTTに関して申し上げると、厚生労働省でその申請を審査したわけでありますけれども、当該企業年金の中心企業でありますNTT東西、これが減収減益傾向ではあるわけですけれども、現在も1千億円を超える経常利益を上げている。それから、株主に対して配当も続けているということでありますから、手続き要件はともかく、理由の要件ということに合致しないと判断して不承認にしたということであります。申請企業たるNTTの方から今ご質問のように訴訟ということも否定出来ないわけですけれども、そういった場合にも既に企業年金を受給されている方の財産権の保護、それから企業経営上あるいは当該企業年金を将来にわたって存続させる上で、今回の減額申請が真にやむを得ないものであったかどうか、その辺りが争われるということになると思いますけれども、我々としては、これまでの運用というものが確定給付企業年金法の立法趣旨からしても、あるいは企業年金を受給されている方の保護という観点からも、合理的なものであったという主張をしていくということだろうと思っております。

(記者)
 今の関連ですけれども、経済界の中には、「そもそも労使が合意している、あるいは受け取る人の3分の2以上の合意があるのではあれば、その手続き要件だけ満たしていればいいのではないか。理由の如何を問わず、合意が取り付けられているんだったら、もう自由にさせてくれ」というような意見もあるようなんですが、ここについてはどうなんでしょうか。

(次官)
 これは企業年金というものが、そもそもどういう性格のものかということが1つあると思います。企業年金が退職金の分割払いという性格があるのではないかということが言えるのではないかと思います。そうだとすると、労働条件の不利益変更法理があるわけです。これはご案内のとおりですけれども、労働条件の不利益変更については、合理的な範囲でなければならない、その合理性の判断基準として従業員が被る不利益の程度、事業主側の変更の必要性の内容、程度、代償措置として他の労働条件の改善状況がどうかなどいろいろな要件があるわけです。労働条件の不利益変更法理の場合は、当事者たる労働組合、あるいは労働者代表とその使用者との交渉ということを前提にしても、今言ったようなことが合理性の要件として重ねてあるということであります。企業年金の場合は、受給者の方やその代表の意志、その辺りを運営者たる企業との間で、きちんと交渉が行えるかどうかということも考え併せると、やはり労働条件の不利益変更法理においても、不利益変更の必要性というのが求められている以上、企業年金についても当然ではないかと個人的には思っております。その辺りももし裁判になるということであれば、検討あるいは、法の趣旨なりに照らして判断いただくということかなと思っております。我々としては、今回の判断というのは合理性のある判断であると思っております。


(了)

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