定例事務次官記者会見概要

(H17.05.19(木)14:03〜14:23  省内会見場)
【広報室】
《次官会議等について》

(次官)

 本日の事務次官等会議ですが、厚生労働省関係は特段の案件はありませんでした。特に私から申し上げることはありません。



《質疑》

(記者)

 昨日、広島市長が被爆者援護法の関係でこちらに見えたということですが、どのようなお話をされたのか。



(次官)

 市長さんからは、被爆60年に当たる年になっているということ、被爆者の方の高齢化が進んでいますので被爆者の方々への思いを踏まえた対応を考えることができないかという、被爆地である広島市長としての立場からのご相談がありました。私からは、今回の地裁の判決では国の主張が認められなかった。具体的には、被爆者援護法の立法経緯、国会での質疑経過、特に被爆者援護法の適用を在外被爆者の方にも拡大する趣旨の修正案が提出され否決されたという当時の経緯、法全体の趣旨に照らすと国外からの申請は認めていないというのが法律の解釈であるということを申し上げ、控訴して上級審の判断を仰いでいただきたいということを申し上げたということであります。まだ控訴までの日時がありますので、お互いに今後の対応を相談していきましょうとの話がありました。



(記者)

 最終的な決断をどうするかということは、被告は広島市長になっているわけですがどのように厚生労働省としてはされるのでしょうか。



(次官)

 これは法定受託事務であるということであります。裁判のこれまでの対応についても国たる厚生労働省、法務省それから広島市で相談しながら対応をしてきたということでありますので、広島市と十分話し合ってお互い納得できる対応に至るよう努力をしたいということです。



(記者)

 社会保険庁の改革が今後どういう形になるにせよ、結果的に民間の方が何らかの形で入ったり、民間のノウハウを入れていこうという構成になるかと思うんですけれども、村瀬さんが先駆けみたいな形で行政組織の中に入られて1年弱になります。次官からご覧になって、村瀬長官のこれまでの働きぶりというのを改めて。



(次官)

 昨年の社会保険庁を巡る様々な問題を解決するには民間の発想、民間の手法といったものを活用する、そういった観点から庁の改革をやっていくことが改革の実をあげるのに必要なんじゃないかということで、村瀬さんに来ていただいてこれまで取り組んでいただいているということであります。社会保険庁の抱えている様々な課題、社会保険庁の組織としての問題点といったものを非常に短期間のうちに的確に把握され、改善のために今積極的に取り組んでいただいていると思います。それから、社会保険庁がとかくお役所的な体質で、国民の方々へのサービスの観点、国民の目線に立ったサービス提供という視点をいかに職員に浸透させるかということについても、民間の発想で取り組んでもらっています。収納率が非常に下がってしまっている中で目標たる80%に引き上げるための色々な取り組み、これは制度面の改善や取り組む職員一人一人の目標に向かってのモラルの向上・動機付けといったあたりも、さすがに民間の大企業で枢要なポストに就いておられた方らしいやり方で非常に前向きに取り組んでもらっており、私としては高く評価しています。ただ、年金、特に国民年金に対する国民の方々の信頼回復のためのハードルは相変わらず高いものがあるし、社会保険庁に対する国民の不信・不満は非常に根深いものがある。そういった、ある意味非常な逆風の中で取り組んでいただいているということを考えると、数字的な面についてもそれなりの成果を上げていただいているんじゃないかと思っております。
 いずれにしても、村瀬長官の方針や考え方を社会保険庁の本庁職員、社会保険事務所の職員一人一人に浸透させていくということがこれまでの取り組みだったんだろうと思うので、それをてこに今後目に見える成果を是非あげるようさらにがんばっていただきたいと思います。それからもっとがんばらなくてはいけないのは職員一人一人で、民間の方にわざわざ来ていただかなくてはいけないような事態を招いてしまったことを一人一人が十分反省して、国民の方々の信頼回復や目標達成に一人一人の努力をさらに促していかなくてはいけないだろうと思っております。私自身もなかなか忙しくて出張に行く機会がないのですけれども、出張に行く度に社会保険事務所を必ず訪問して「逆風の中であるけれどもしっかりやってくれ」ということを幹部に申し上げている。村瀬さんだけにお任せするということではなくて、厚生労働省全体で社会保険庁の建て直しのために取り組んでいきたいと思っています。



(記者)

 独立行政法人で似たような形で雇用・能力開発機構にも民間から来ていただいている。それに対して政府の特殊法人等改革推進本部の参与会議からは厳しい注文がついて、人事的にもどうかというような声も出ているんですけれども、どのようにお考えですか。



(次官)

 これは、限られた時間の中でのやりとりだったということを我々としては考えなくてはいけないのかなと思っています。民間出身の理事長として一生懸命改革に取り組んでおられるという自負をお持ちであるということもあって、おそらくご本人が意欲を示され、あるいは理事長として「自分の責任でこの問題に取り組んでいるんです」ということを言われた。それから民間から迎えられたということもあって、職員の求心力もいろいろと考えられての発言だったんだろうと私は解釈しています。ある意味で初めてそういう場に出られたということもあって、参与の方々と理事長との間の表現のしぶりとか意思疎通というのがうまくかみ合わなかったということが一番の原因かなと思っているのが正直なところであります。そういう意味では、マスコミでそういう報道されたとか、そういった反応を示された参与の方も少なからずいたということを聞いて、ご本人が正直びっくりされて関係のところに真意を説明されたりされておられるようですけれども、ご本人はこれまでも改革に取り組んできたし、これからさらに一生懸命取り組みたいと申されています。
 役人ですといろんな局面での対応というのは臨機応変にできるんだろうと思うのですけれども、短い時間の中で委員からいろんなことを矢継ぎ早に言われるという中で、理事長としては一生懸命やっているという自負もあって「私の責任で全部やっている」みたいな抽象的な話が結果として多かった。そのあたりで本人の改革意欲と参与の方の受け止め方との間にかなりのずれが生じてしまったということではないかと思います。
 理事長としての改革意欲を関係の方々に納得いただくためには、これから先さらに実績をあげていくということしかないんじゃないかとご本人も思っておられて、これからさらに一生懸命やりますということなので、我々としてはそれに期待したいということです。



(記者)

 JR福知山線の脱線事故に対する厚生労働省の対応についてなんですけれども、先週から今週にかけて労災認定についてかなり柔軟に対応する方針があるというような報道もされているのですが、個別具体的には結構なんですけれども、ある程度方針というか次官のお考えについてお聞かせ願えればと思います。



(次官)

 労災保険は業務上の災害にあった方、通勤災害にあった方に対する補償制度なので、運用を弾力的にするかどうかということではなく、制度の趣旨・目的に照らして的確に認定をしていくというのが基本だろうと思っています。
 今回事故に遭われた方が多数おられ、特に死亡された方には大変痛ましいことであったと思っており、被災者や遺族の方に対して補償を迅速にやることが重要だろうと思っているというのが一つ。もう一つ今のお話のたぶん業務上で救助活動にあたった方、マスコミ報道をみてますと会社命令で救助活動にあたってそのためにPTSDのような症状でよく眠れなくなってしまったという方も出ておられるということですけれども、これも業務上であるかどうか、業務起因性があるかどうかというのも判断するということだろうと思う。これはとにかく実情をみて的確に対応するということで、おそらく必要な対応は十分できるのではないかと今思っています。そういう意味では従来の解釈を変えて運用するということではなくて、今までの制度の中で事実をきちんと確認していけば必要な補償には当然つながるということではないかと思っています。まだ現地でのいろんな相談の中でそういった話が伝わったようだと聞いていますけれども、私としては労災補償制度というのは働き方の変化とか勤務形態の多様化とかに応じて機動的に運用してきていますので、今回の事故をきっかけにそれまでと違うことをやらなくてもきちんとした対応はできる。そういうことで、マスコミでみている範囲のものがその通りであるとすれば、今の制度の中できちんと対応できるものなのではないかという印象は持っています。いずれにしても、複雑な事案があるのであればよく現地を指導しながら、皆さん方の納得いただけるような運用に努めるということではないかと思っています。今までと違う方針でということを現段階で我々は考えているという状況ではないということだと思います。


(了)

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