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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

《製鋼工》

溶鉱炉で製造されたどろどろに溶けた鉄は、炭素が多く、不純物がかなり含まれている。粘りのある鉄に変えるため、転炉を使って精錬を施し不純物を取り除くのが製鋼工の仕事である。また、これらにかかわる機械・設備の整備を行うこともある。

五感も使いつつしっかりと数字を見る製鋼分野の保守・管理のプロ

大関利行
おおぜき・としゆき
1956年、北海道生まれ。75年、旭川工業高校を卒業後、旧川崎製鉄(現JFEスチール株式会社)に入社、企画部設計課に配属。79年、設備部西工場整備課(現製鋼設備室)に異動。2007年、同部製鋼設備室統括、11年、同部第2製銑設備室統括に就任。14年、同部保全技術室の主任部員。同時に、テクニカルエキスパート(技能伝承者)に就任。15年、「現代の名工」に選定される。

製鉄所で製造される鋼板は、私たちの暮らしを支えています。大関利行さんは、製鉄所勤務40年のベテラン。現在は、製鋼・鋳造分野の保守・管理のエキスパートとして、細心の注意で機械・設備の点検にあたっています。五感を使いつつ、しっかりと数字でも確認しながら行う抜けのない点検法には驚かされます。

設備の不具合を見逃さず、対処を後回しにしないことが重要

 製鉄業界一筋に歩んできた大関利行さんは、製鋼分野の設備保全におけるベテラン。缶や自動車などに使われる薄板やキッチンなどに使われるステンレス鋼板の製造を行っている製鉄所に長年勤務しています。
鉄鋼を製造する多くのプロセスの中で、大関さんが担当しているのは、製銑(せいせん)(鉄鉱石に含まれている鉄分を取り出す)の次の工程である製鋼と連続鋳造です。製鋼とは、製銑でどろどろに溶けた鉄はかたくてもろいため、炭素などの不純物を取り除いて、強い鋼にすること。連続鋳造とは、溶けた状態の鋼を、冷やして厚い板状にかためることです。大関さんは、その二つの工程で使われる設備の保守・管理の責任者として製鋼・連続鋳造全体を統括してきました。
「保守・管理とは、設備の機能を維持していくことです。故障して止まってしまうと操業がストップしてしまいますし、設備の不具合によって作業員を危険にさらすことにもなりかねません。日々の点検が何より重要なんです」
 設備の重要度によって日常点検、週に1回、月に1回などの定期的な点検を行い、計器で測定したデータをしっかり見ることで不具合を確認します。それに加えて大関さんは、見る、触る、聞く、嗅ぐなど五感を使った状態把握も行っています。
「たとえば、設備に温度計を当てて数値を確認するだけでなく、直接手でも触ります。計器で測定した数値と自分の感覚とを比較して状態を判断するわけですが、これには経験の積み重ねが必要です」
 3カ月に1回程度、ラインが停止するときに行う点検では、設備の摩耗など、運転しているときは見られない部分をチェックします。  五感で判断している設備はありますが、この先システムによる数値化を進めていきます。
 点検は、単に不具合の有無を確認するだけではありません。いつもと違うことに気づいたら、どこに異常があるかを探り、原因を特定する必要があります。
「不具合が起きていることを示すもののひとつに振動の変化があり、その際は潤滑油が少なくないか、ボルトが緩んでいないかなどをチェックします。原因が特定できないときは、設備を分解する場合もあります。変化に気づかず放置しておくと、不具合が悪化し故障につながったり、大きなトラブルにつながりかねません。設備の故障は人間がつくっているようなものなんですから、ちょっとした変化も見逃さない、後回しにしないことを常に心がけて点検にあたっています」
 変化に気づき原因を特定したら、その後の対処法について判断を下すのも大関さんの仕事です。
「どこまで使えるのか、今すぐ分解して修理するのか、新しく取り替えるのかなどの判断をする必要があるんです」
 保守・管理の仕事は、設備を点検して不具合や故障に対処することだけではありません。設備の寿命を延ばしたり、機能をアップさせることによって作業性・効率性・保全性を向上させることに、最終的な目的があります。自身が取り組んだことでその目的が実現し、会社に貢献できたときに最もやりがいを感じるといいます。

若手と中堅クラスへの技能継承に尽力

 大関さんは、現在テクニカルエキスパート(技能伝承者)として、若手と中堅クラスに、豊かな経験によって培ってきた技能を継承しています。
 現場では、まず自身がやってみせ、次いで彼らに一人でやらせるというように丁寧な指導を心がけています。点検や対処法の判断だけでなく、機械交換の工事が必要になった場合のその工事計画の立て方やさまざまな機器の発注など、必要なデスクワークも一つひとつ基本から指導しています。
「若手に基本的なことを教えるのは先輩がやるべきこと。そのために今、中堅クラスを指導しているわけです。3〜5年後には、若手も中堅クラスも成長しているでしょう。その姿をこの眼で見ることが今の目標ですね」

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