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広報誌「厚生労働」

特集 10分でマスターする 個人型確定拠出年金(iDeCo)の基礎知識

仕事で忙しい毎日を送っている会社員のコウセイくん。ある日、公務員の弟から、「お兄ちゃんは老後のことをちゃんと考えているの?」と聞かれ、ドキリ。「まだ若いから老後のことなんて……」と答えながら、横にいる付き合って3年目のカスミちゃんを見ると、苦い表情。慌ててコウセイくんは、「やっぱり貯金かなぁ、それとも資産運用かなぁ……」とごまかすと、弟は「今なら確定拠出年金だね」と一言つぶやきました。「確定拠出年金?」。耳慣れない言葉にコウセイくんは興味をそそられ、どんなものなのか知りたいと思いました――。
さぁ、皆さんもコウセイくんと一緒に、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の仕組みやメリット、注意点について学ぶ旅へと出かけてみましょう。

Introduction:将来に備えておかないとどうなるの?

将来に対して不安が増してきたコウセイくん。偶然耳にした「確定拠出年金」に興味を持ち始めました。

老後の生活を考えてみよう

 弟から将来に対する備えについて質問されたコウセイくんは、これまで何もしてこなかったため、だんだんと不安を感じてきました。
 「老後のために、いくらお金が必要なんだろう?」
 そう質問すると、彼女のカスミちゃんが言いました。
 「老後は年金をもらえるから、問題ないんじゃない?」
 すると、さっきまで縁側で昼寝をしていたおじいさんが立ち上がりました。
 「さっきから話を聞いていると、お前たちの将来が心配になってきたぞ。元銀行マンのわしが、教えてあげよう」
 さっそくコウセイくんが尋ねました。
 「将来は年金をもらえるんだよね?」
 「もちろんじゃ。国民年金の保険料を納めていれば、国民年金をもらえるぞ。さらに、コウセイやカスミさんは会社に勤めているから、厚生年金にも加入しておる。毎月会社から受け取っている給与明細を見れば、厚生年金の保険料の金額が載っているはずじゃ。だから、国民年金と厚生年金をもらえるぞ」
 おじいさんの言葉を聞いて、コウセイくんとカスミちゃんは安心しました。
 「国民年金と厚生年金がもらえるなら、備えておかなくてもいいや。カスミちゃん、貯金を使って旅行に行こうよ」とコウセイくん。
 「ばかもん!」
 おじいさんは声をあららげました。
 「年金をもらえるからといって、何の備えもしておかなくてもいいわけではないぞ」
 「なんで?」
 「コウセイは、老後はどんな生活を送りたいと考えているんだい?」
 おじいさんの質問にコウセイくんは指を折りながら答えました。
 「定年退職したら、世界中を旅行して鉄道の写真を撮りたいな。マイホームで趣味を楽しみながら暮らすのもいいし、おいしい食事が出て広々とした部屋がある老人ホームに入ってもいいかな」
 「世界中を旅行するなら、豪華客船にも乗ってみたい」
 カスミちゃんもうっとりと言いました。
 「なるほど。そんな生活を送るには、どれくらいお金が必要になるのか、計算したことはあるか?」
 鋭い質問がおじいさんの口から飛び出しました。コウセイくんは慌てて考えました。
 「それじゃあ、世界中を旅するには結構お金がかかりそうだな。それ以上にマイホームを手に入れるにはかなりの頭金が必要だし。老人ホームに入るには入居金や介護の費用、管理費などが必要だし……」
 「厚生年金と国民年金だけで足りるかしら?」
 カスミちゃんが心配そうな顔をしました。
 「老後までに持ち家のローンを返済し終えているか、老人ホームの入居金をためているかなどで、年金だけで足りるかどうかの見通しは違ってくるはずじゃ。自分がどんな生活を送りたいのかを考えたうえで、まずは自分の年金額を日本年金機構のねんきんネットで調べるとよい。もし足りないのであれば、今から何らかの備えをしておいたほうがいいだろう」
 おじいさんの言葉に、二人は顔を見合わせました。

個人型確定拠出年金の加入者の範囲が拡大

 将来について考え始めたカスミちゃんが、おじいさんに尋ねました。
 「備えって、何をすればいいのかしら?」
 「貯蓄や投資など、さまざまな方法があるから、それぞれのメリット・デメリットをよく調べて、自分に合ったものを選ぶ必要があるぞ。今話題の個人型確定拠出年金も選択肢の一つになるな」
 「『確定拠出年金』って何?」
 「確定拠出年金とは、公的年金に上乗せして給付を受けられる私的年金の一つじゃ。国民年金や厚生年金と組み合わせれば、老後の生活が豊かになるだろう」
 そう言って、おじいさんは、確定拠出年金には事業主が実施する企業型確定拠出年金と、個人で実施する個人型確定拠出年金の2種類があると説明してくれました。
 「個人型確定拠出年金、愛称iDeCo(イデコ)の注目度は高まっており、加入者も年々増加しているぞ(図表1)」
 その言葉に思わずコウセイくんとカスミちゃんが身を乗り出したところ、「iDeCoは確定拠出年金法の改正により、来年1月から加入者の範囲が拡大し、基本的に60歳未満のすべての人が加入できるようになったんじゃ」とおじいさん。
 「えっ、僕たちも入れるの?」
 コウセイくんの問いかけに、おじいさんはうなずきました。

専業主婦(夫)や公務員も加入が可能に

 コウセイくんはiDeCoに自分も加入できると知り、一気に興味がわいてきました。
 「もし、僕がiDeCoに加入したら、老後はいくらもらえるの?」
 「iDeCoに30年間加入し、年率1%で運用した場合を考えてみよう。iDeCoの受給方法は(1)一時金(2)年金受給の2種類があり、選択することができるぞ※」
 コウセイくんは第2号被保険者です。月2万円拠出し、iDeCoを一時金として受け取ることを選択した場合は次のとおりです。企業などの退職一時金給付額2,000万円とiDeCoの一時金を合わせると2,750万円を受給できます。
 もし、iDeCo受給時に年金として受け取ることを選択した場合は、iDeCoの年金と公的年金を合わせて毎年約230万円を受給できます(iDeCoに加入していない場合は毎年約188万円受給)。
 現在、会社に勤めているカスミちゃんは、将来、専業主婦や転職も考えています。
 「私は結婚したらまずは専業主婦になりたいの。もしくは、仕事と家庭を両立しやすい会社に転職したいな……。そんな私でもiDeCoに入れるのかしら?」
 カスミちゃんの質問に、おじいさんはうなずきました。
 「今回の改正で第3号被保険者、つまり専業主婦も加入できることになったのじゃ(図表2)。第3号被保険者と会社員などの第2号被保険者では拠出限度額などが違うから、もしカスミちゃんが専業主婦になった場合の給付額を考えてみよう」
 第3号被保険者が月2万円拠出し、iDeCo受給時に一時金として受け取ることを選択した場合、通常専業主婦に退職金はありませんが、一時金約840万円を受給できます。もし、iDeCo受給時に年金として受け取ることを選択した場合、iDeCoと公的年金を合わせて毎年約114万円を受給できます。
 「それでは転職した場合はどうなるの?」
 「今回の改正で、転職したときなどの積立資産の持ち運び(ポータビリティ)も拡充されたから、安心するんじゃ」
 それまで話を聞いているだけだった弟が口を挟みました。
 「公務員の僕は?」
 「大丈夫じゃ。今回の改正で公務員も加入できるようになったぞ。公務員は毎月1.2万円まで出せるので、この数字をもとに計算するとよいだろう」
 さらにおじいさんは、第1号被保険者が月5万円拠出した場合についても説明してくれました。
 iDeCo受給時に一時金を選択した場合、一時金約2,080万円を受給できます。もし、iDeCo受給時に年金を選択した場合は、iDeCoと公的年金を合わせて毎年約183万円を受給できます。
 おじいさんの言葉に、三人はほっとした表情を浮かべました。

※企業などの退職一時金を受け取る場合、その金額は2,000万円と仮定する。またiDeCoを年金受給する場合は受給する期間を選べるが、20年間で受給するものと仮定する


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