厚生労働省発表
平成20年5月23日

(平成20年6月12日訂正版)



大臣官房地方課
労働紛争処理業務室長 金刺 義行
室長補佐      藤原 義彦
電  話 03-5253-1111 (内線7736)
夜間直通 03-3502-6679


《 平成19年度個別労働紛争解決制度施行状況 》
個別労働紛争解決制度の利用が引き続き拡大

・総合労働相談件数約100万件
・民事上の個別労働紛争相談件数約20万件
・あっせん申請受理件数 約7千件

《 概 要 》

「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」施行状況 〜平成19年度〜

1.総合労働相談件数 997,237件( 5.4%増*)
2.民事上の個別労働紛争相談件数 197,904件( 5.6%増*)
3.助言・指導申出受付件数     6,652件( 15.5%増*)
4.あっせん申請受理件数 7,146件( 3.2%増*)

【* 増加率は、平成18年度実績と比較したもの。】

個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から今年で7年を迎えるが、企業組織の再編や人事労務管理の個別化等の雇用形態の変化等を反映し、全国約 300ヵ所の総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談の件数は約100万件、民事上の個別労働紛争に係る相談件数も約20万件となり、制度発足以降依然として増加を続けている。

また、助言・指導申出受付件数は6千6百件を超え、あっせん申請受理件数は 約7千件と昨年度実績を上回っており、引き続き、制度の利用が進んでいることが窺える。

【 参 考 】

平成19年労働関係民事通常訴訟事件の新受件数 2,246 件

平成19年労働審判制度の新受件数 1,494 件      (ともに全国地方裁判所)

『個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(別添4)』に基づく、個別労働紛争解決制度の平成19年度の施行状況は以下のとおりである(概要は別添2、都道府県労働局別一覧は別添3)。

1.相談受付状況

各都道府県労働局、主要労働基準監督署内、駅近隣の建物などにおいて、労働問題に関するあらゆる相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナー(約300ヵ所)を設置しているところであるが、平成19年度1年間に寄せられた相談は99万7,237件であった。

このうち、労働関係法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関するものが19万7,904件である。

年度ごとの推移をみると、確実に件数が増えている。(第1図)


第1図 相談件数の推移

民事上の個別労働紛争に係る相談内容の内訳は、解雇に関するものが最も多く22.9%、いじめ・嫌がらせに関するもの、労働条件の引下げに関するものが12.5%と続いている。(第2図)

第2図 民事上の個別労働紛争相談の内訳

また、民事上の個別労働紛争に係る相談者は、労働者(求職者)が80.8%と大半を占めており、事業主からの相談は11.7%あった。

労働者の就労状況は、正社員が48.0%と最も多いが、パート・アルバイトが17.2%、派遣労働者・期間契約社員も13.8%を占めている。

2.都道府県労働局長による助言・指導及び紛争調整委員会によるあっせんの受付状況

平成19年度の当該制度に係る助言・指導申出件数は6,652件で、平成18年度比で15.5%の増加となっている。

あっせん申請受理件数は7,146件で、同じく3.2%の増加となっている。(第3図)

第3図 助言・指導申出件数及びあっせん申請受理件数の推移

3.都道府県労働局長による助言・指導の主な内容

助言・指導の申出の主な内容は、解雇に関するものが24.0%と最も多く、次いで、労働条件の引下げに関するものが11.9%、いじめ・嫌がらせに関するものが11.2%と続いている。(第4図)

第4図 助言・指導申出内容の内訳

申出を受け付けた事案の都道府県労働局における処理状況をみると、平成19年度1年間に手続きを終了したものは6,592件である。このうち、助言・指導を実施したものは6,417件で97.3%、申出が取り下げられたものは100件で1.5%、処理を打ち切ったものは45件で0.7%となっている。

処理に要した期間は、1ヶ月以内が95.5%となっている。

申出人は、労働者が98.1%と大半を占めるが、事業主からの申出も128件と1.9%あった。

労働者の就労状況は、正社員が51.8%と最も多いが、パート・アルバイトが21.1%、派遣労働者・期間契約社員も19.3%を占めている。

事業所の規模は、10〜49人が30.1%と最も多く、次いで10人未満21.1%、100〜299人が11.7%となっている。

また、労働組合のない事業所の労働者が68.0%である。

なお、助言・指導の実施事例は、別添1のとおりである。

4.紛争調整委員会によるあっせんの主な内容

あっせん申請の主な内容は、解雇に関するものが37.4%と最も多く、次いで、いじめ・嫌がらせに関するものが15.1%、労働条件の引下げに関するものが8.6%と続いている。(第5図)

第5図 あっせん申請内容の内訳

申請を受理した事案の都道府県労働局における処理状況をみると、平成19年度1年間に手続きを終了したものは7,034件である。このうち、合意が成立したものは2,700件で38.4%、申請者の都合により申請が取り下げられたものは522件で7.4%、紛争当時者の一方が手続きに参加しない等の理由により、あっせんを打ち切ったものは3,777件で53.7%となっている。

処理に要した期間は、1ヶ月以内が57.9%、1ヶ月を超え2ヶ月以内が34.3%となっている。

申請人は、労働者が7,022件で98.3%と大半を占めるが、事業主からの申請も118件で1.7%となっており、労使双方からの申請も6件で0.1%あった。

労働者の就労状況は、正社員が57.5%と最も多いが、派遣労働者・期間契約社員が19.0%、パート・アルバイトも18.4%を占めている。

事業所の規模は、10〜49人が31.8%と最も多く、次いで10人未満が19.7%、100人〜299人が11.8%となっている。

また、労働組合のない事業所の労働者が72.7%である。

なお、あっせんの実施事例は、別添1のとおりである。

【紛争調整委員会とは】

弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されている。この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施するものである。

別添1

【助言・指導の例】

事例1: 労働条件の引下げに係る助言・指導

事案の概要

 申出人は、突然会社から1か月の勤務時間数が削減される勤務シフトを提示され、それに納得できないことから、労働条件変更の撤回を求め、労働局長の助言・指導を申し出たもの。
 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社とで話し合った結果、従来の勤務シフトで働くことができることとなった。

助言・指導の
内容

 労働契約で定められた労働条件を使用者が一方的に変更することはできないことから、当事者間でよく話し合うこと。

事例2: 配置転換に係る助言・指導

事案の概要

 申出人は、上司から職種の変更を告げられ、それが嫌なら退職届を出すよう勧奨を受けたが、あくまでも現在の職種として雇い入れられており、また、今まで他の職種に配置転換した同僚を見たことがなく、配置転換に納得できないことから、従来の職種での勤務を希望して、労働局長の助言・指導を申し出たもの。
 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社とで話し合った結果、配置転換は行われず、これまでの職種で勤務することとなった。

助言・指導の
内容

 就業規則等に業務上の都合による配置転換の規定がなく、雇入れ時に他の職種への配置転換について提示されておらず、また、過去にこのような配置転換が行われた例がないことからすると、労働者の同意なしに配置転換を命ずることができないことから、当事者間でよく話し合うこと。

【あっせんの例】

事例1: いじめ・嫌がらせに係るあっせん

事案の概要

 申請人は、顧客からクレームがあった際、上司から人格的価値、社会的評価・名誉を害する発言を受け、会社に職場環境の改善を求めたが聞き入れてもらえず、逆に会社からも言葉の暴力等により精神的に追いつめられ、退職を余儀なくされたとして、精神的苦痛及び経済的損害に対する補償を求めて、あっせん申請を行ったもの。

あっせんの
ポイント

 あっせん委員が双方の主張を確かめ、当事者間の調整を行った結果、解決金○○万円を支払うことで双方の合意が成立した。

事例2: 解雇に係るあっせん

事案の概要

 申請人は、会社から「営業成績が悪い」として解雇されたが、会社の解雇回避の努力もなく、雇用契約期間の途中に解雇されたことに納得できないとして、解雇の撤回又は精神的苦痛及び経済的損害に対する補償を求めて、あっせん申請を行ったもの。

あっせんの
ポイント

 早期解決を双方が望んだ結果、解決金○○万円を支払うことで双方の合意が成立した。

別添2

個別労働紛争解決制度の運用状況(概要)

(平成19年4月1日〜平成20年3月31日)

1.総合労働相談コーナーに寄せられた相談   997,237

 

 

相談者の種類

労働者 594,365件   事業主 300,954件  その他 101,918件

2.民事上の個別労働紛争に係る相談の件数   197,904件

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[1]相談者の種類

労働者 159,850件  事業主  23,104件  その他  14,950件

[2]労働者の就労状況

正社員 94,993件 パート・アルバイト 34,096件 派遣労働者 13,615件
期間契約社員 13,715件 その他 41,485件    

[3]紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、合計が226,460件となる。)

普通解雇 39,490件 整理解雇 6,837件 懲戒解雇 5,422件
労働条件の引下げ 28,235件 退職勧奨 17,410件 出向・配置転換 8,188件
その他の労働条件 48,605件 育児・介護休業等 1,785件 募集・採用 3,255件
雇用管理等 3,888件 いじめ・嫌がらせ 28,335件 その他 35,010件

3.都道府県労働局長による助言・指導の件数

(1) 助言・指導の申出の受付を行った件数   6,652件

 

 

 

 

 

 

 

 

[1]労働者の就労状況

正社員 3,449件 パート・アルバイト 1,406件 派遣労働者 594件
期間契約社員 693件 その他 510件    

[2]紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、合計が6,801件となる。)

普通解雇 1,325件 整理解雇 209件 懲戒解雇 98件
労働条件の引下げ 809件 退職勧奨 521件 出向・配置転換 315件
その他の労働条件 1,484件 育児・介護休業等 2件 募集・採用 64件
雇用管理等 107件 いじめ・嫌がらせ 759件 その他 1,108件

(2) 助言・指導の手続を終了した件数  6,592件

 

 

 

終了の区分

助言を実施  6,409件   指導を実施 8件

取下げ     100件    打切り    45件   その他 30件

4.紛争調整委員会によるあっせんの件数

(1) あっせんの申請の受理を行った件数   7,146件

 

 

 

 

 

 

 

 

[1]労働者の就労状況

正社員 4,109件 パート・アルバイト 1,318件 派遣労働者 532件
期間契約社員 828件 その他 359件    

[2]紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、合計が7,411件となる。)

普通解雇 2,191件 整理解雇 452件 懲戒解雇 128件
労働条件の引下げ 641件 退職勧奨 590件 出向・配置転換 238件
その他の労働条件 1,324件 育児・介護休業等 5件    
雇用管理等 84件 いじめ・嫌がらせ 1,118件 その他 640件

(2) あっせんの手続を終了した件数   7,034件

 

 

 

終了の区分

当事者間の合意の成立 2,700件  申請の取下げ 522件

打切り3,777件   その他35件

別添3

個別労働紛争解決制度の運用状況について

別添4

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の概要

1 趣旨

企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働関係紛争」という。)が増加していることにかんがみ、これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整委員会のあっせん制度の創設等により総合的な個別労働紛争解決システムの整備を図る。

2 概要

(1) 紛争の自主的解決

個別労働関係紛争が生じたときは、紛争の当事者は、自主的な解決を図るように努めなければならないものとする。

(2) 都道府県労働局長による情報提供、相談等

都道府県労働局長は、個別労働関係紛争の未然防止及び自主的な解決の促進のため、労働者又は事業主に対し、情報の提供、相談その他の援助を行うものとする。

(3) 都道府県労働局長による助言及び指導

都道府県労働局長は、個別労働関係紛争に関し、当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。

(4) 紛争調整委員会によるあっせん

イ 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争について、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において、当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。

ロ 都道府県労働局に、紛争調整委員会を置くものとする。

ハ あっせん委員は、当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、実情に即して事件が解決されるように努めなければならないものとする。

ニ あっせん委員は、当事者等から意見を聴取し、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを当事者に提示することができるものとする。

(5) 地方公共団体の施策等

地方公共団体は、国の施策と相まって、地域の実情に応じ、労働者又は事業主に対し、情報提供、相談、あっせんその他の必要な施策を推進するように努めるものとし、国は、地方公共団体の施策を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。 

また、当該施策として都道府県労働委員会が行う場合には、中央労働委員会が、当該都道府県労働委員会に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。

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