平成20年4月30日

(照会先)医薬食品局

安全対策課        (内線2749)

 松田課長,江野補佐,美上補佐

監視指導・麻薬対策課  (内線2761)

  山本室長


企業、医薬食品局が保有していた血漿分画製剤と
ウイルス性肝炎症例等に関する調査の結果について

I 企業が医療機関から収集・保有していた症例に関する調査について

昨年11月に、血漿分画製剤を製造販売する企業に対し、血友病以外の傷病でフィブリノゲン製剤以外の血漿分画製剤を投与していたところ、ウイルス性肝炎又はその可能性のあった症例につき、報告を求め整理した。その概要は以下のとおり。

なお、この調査の中で、投与された製剤に併用薬としてフィブリノゲン製剤が含まれる症例が報告されたところ。

1 特定製剤を含む投与例について

○特定製剤※1が投与された症例であって、今回新たに判明したものは4例※2
(併用薬として特定製剤が投与されたもののみ。)。

○上記のうち、3例はC型肝炎(疑いを含む。)と報告された症例※3 、1例は肝機能障害と報告された症例。

報告された症例の製剤名、報告製造販売業者名、製剤分類及び症例数

製剤名

報告製造販売業者名

製剤分類

症例数

ヘモフィルM 250
クリスマシン−HT併用)

バクスター

血液凝固第VIII因子製剤

1(1)

献血グロベニン−I
フィブリノゲン−HT併用)

日本製薬

グロブリン製剤

1(1)

ガンマガード
フィブリノゲン併用)

バクスター

1(0)

フィブロガミン
フィブリノゲン併用)

CSLベーリング

血液凝固第XIII因子製剤

1(1)

注)太字は特定製剤。()内は、C型肝炎(疑いを含む)と報告された症例数。

※1 「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(以下「救済法」という。)に規定する製剤(以下「特定製剤」という。)

※2 原疾患、初回投与日、症状発現日等の情報から同一症例への投与と考えられる症例が見られることから、実際の患者数は、これよりも少ないと考えられる。

※3 C型肝炎(疑いを含む。)と報告された症例は、C型肝炎ウイルス抗体検査陽性、C型肝炎感染の疑いと報告されたもの。

※4 上記4例のほか、14例の報告があったが、これらはいずれも既に公表されたもの。

製剤名

報告製造販売業者名

製剤分類

症例数

クリスマシン
フィブリノゲン併用1症例)

ベネシス

血液凝固第IX因子製剤

6(6)

クリスマシン−HT
フィブリノゲン併用1症例)

7(2)

PPSB−ニチヤク

日本製薬

1(0)

注1)太字は特定製剤。()内は、C型肝炎(疑いを含む。)と報告された症例数であって、C型肝炎ウイルス抗体検査陽性、C型肝炎、非A非B肝炎疑いと報告されたもの。C型肝炎(疑いを含む。)以外の症例は、「クリスマシン−HT」の1症例(B型肝炎)を除き、すべて肝機能検査値上昇等。

注2)日本製薬からは、「PPSB−ニチヤク」について、別途、1例の投与例があることが報告されている。

2 特定製剤以外の血漿分画製剤の投与例について

○ 特定製剤以外の血漿分画製剤を投与していたところ、投与された製剤と肝炎症状との関連は薄い、或いは不明ではあるが(1例を除く。)、ウイルス性肝炎又はその可能性のある症例として企業が医療機関から収集したものは135例(9社から報告。別添参照。)。

※ 原疾患、初回投与日、症状発現日等の情報から同一症例への投与と考えられる症例が複数見られることから、実際の患者数は、これよりも少ないと考えられる。また、血漿分画製剤投与前の肝炎ウイルス検査未実施の症例が多く、既往症である可能性も否定できない。

○ 上記症例について、症状の経過、投与製剤の肝炎ウイルス安全対策(ドナースクリーニング、ウイルス除去・不活化処理等)及び投与製剤と同一ロット製剤での報告の有無等を踏まえ、製剤投与と肝炎ウイルス感染との関連について整理した結果については、以下のとおり。

整理結果 症例数

[1]血漿分画製剤の投与と肝炎ウイルス感染との関連が否定できないと考えられる症例

・不適切な製法で製造された製剤を投与された者がB型肝炎ウイルスに感染した症例(昭和62年公表済み)

1(0)

[2]血漿分画製剤の投与と肝炎ウイルス感染との関連が極めて薄いと考えられる症例

・原料血漿対策※1 、不活化・除去処理工程※2 、同一ロットで他の報告がないなどの理由から、関連が極めて薄いと考えられる症例 等

79(63)

[3]血漿分画製剤の投与と肝炎ウイルス感染との関連が認められないと考えられる症例

・受身抗体(製剤投与直後にC型肝炎抗体が検出された症例)と考えられる症例

・原料血漿と患者血液中のHCV-RNA比較解析により、異なる遺伝子型が検出された症例

・針刺し事故(B型肝炎ウイルス汚染血液)の患者に対し、B型肝炎発症予防を目的として血漿分画製剤を投与したものの、奏功しなかった症例 等

28(25)

[4]報告情報からは当該製剤と肝炎ウイルス感染との関連の評価が困難と考えられる症例

・当該症例に関する詳細な情報が報告されておらず、判断が困難な症例 等

27(22)

注)()内は、C型肝炎(疑いを含む。)と報告された症例数で、C型肝炎ウイルス抗体検査陽性の症例のみならず、単にC型肝炎との症例や、非A非B肝炎(又はその疑い)と報告された症例を含む。

※1 ドナースクリーニング(HBV及びHCV検査陰性)又は原料血漿プールNAT検査陰性確認。

※2 WHO「Guidelines on viral inactivation and removal procedures intended to assure the viral safety of human blood plasma products(ヒト由来血漿分画製剤のウイルス安全性の確保のためのウイルス不活化及び除去処理工程に係るガイドライン)(WHO Technical Report, 2004)」による不活化及び除去処理工程を満たすもの。

3 今後の対応

(1) 特定製剤を含む投与例について

○ 今回新たに判明した4例について、報告企業に対し、医療機関を通じ特定製剤の投与の事実のお知らせ及び肝炎ウイルス検査の受診勧奨を行うよう指示する。また、感染の場合における救済法の申請手続き等についても、併せてお知らせを行うよう指示する。

○ なお、公表済みの14例及びページ2上の表の注2に記載した1例については、既に医療機関を通じ特定製剤の投与についてお知らせを実施。

(2) 特定製剤以外の血漿分画製剤の投与例について

○ 報告された症例については、投与された製剤と肝炎症状との関連は薄い、或いは不明ではあるが(1例を除く。)、肝炎ウイルスへの感染又はそのおそれが報告されており、これらの症例におけるウイルス性肝炎の早期発見・早期治療につなげるために、報告されたすべての症例について、報告企業に対し、医療機関を通じ肝炎ウイルス検査の受診勧奨を行うよう指示する。

○ これら製剤の投与とウイルス性肝炎との関連についての整理結果については、念のため、専門家に内容を精査いただく予定。

4 その他

○ 上記症例以外に、川崎病治療やCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)治療に対する免疫グロブリンの大量投与による肝機能検査値上昇等の報告など、当該製剤による副作用として一般的に知られているものや、肝炎ウイルス安全対策が施されている製剤に係る報告が相当数含まれるものではあるが、血漿分画製剤投与後の肝機能検査値(GOT,GPT等)上昇等の症例が1,502例報告されている(10社より報告)。

○ これらの製剤に係る肝炎ウイルス安全対策の現状等を踏まえれば、多くの症例は、肝炎ウイルス感染の可能性は低いのではないかと考えられるが、報告症例の一部に古い時期の症例もあることから、念のため、それらの報告について専門家に内容を精査いただく予定。

○ また、日本赤十字社より、輸血用血液製剤を投与していたところ、ウイルス性肝炎又はその可能性のある症例として、医療機関から同社が収集した症例のうち、併用薬として血漿分画製剤が投与された症例39例が報告されている(22例についてはB型肝炎、17例についてはC型肝炎との報告。)。これらの症例については、併用薬として投与された血漿分画製剤の製造販売業者に対し、当該血漿分画製剤について、必要な調査を行うよう指示する。
 同時に、日赤に対し、医療機関を通じ、肝炎ウイルス検査の受診勧奨を行うよう指示する。

※ B型肝炎には、B型肝炎ウイルス抗原検査陽性のみならず、単に(急性)B型肝炎又はB型肝炎ウイルス感染とのみ報告された症例を含み、C型肝炎にはC型肝炎ウイルス抗体検査陽性のみならず、単にC型肝炎と報告された症例を含む。

(別添) 報告された症例に係る製剤名、報告製造販売業者名、製剤分類及び症例数

製剤名

報告製造販売業者名

製剤分類

症例数

コンコエイト−HT

ベネシス

血液凝固第VIII因子製剤

(6)

ヘモフィルM1000, 250

バクスター

(3)

コーエイト

バイエル薬品

(0)

コーナインHT

血液凝固第IX因子製剤

(0)

プラスマネート・カッター

バイエル薬品

アルブミン製剤

(1)

アルブミン・カッター

(1)

アルブミン−ヨシトミ他

ベネシス

(4)

プラズマプロティンフラクション

大日本住友製薬
バクスター

11(8)

ブミネート25%, 5%

バクスター

(7)

アルブミン25%「バクスター」

(1)

アルブミナー25%, 5%

CSLベーリング

(3)

ガンマグロブリン−ニチヤク

日本製薬

グロブリン製剤

(1)

グロベニン−I他

(4)

破傷風グロブリン−ニチヤク

(1)

HBグロブリン−ニチヤク

(1)

ヴェノグロブリン−I

ベネシス

(2)

ヴェノグロブリン−IH他

(5)

抗D人免疫グロブリン−ヨシトミ他

(2)

H−BIG

(1)

ヘブスブリン−I

(1)

静注用ヘブスブリン−IH

(1)

ベニロン

化学及血清療法研究所

(7)

献血ベニロン−I

(2)

ヘパトセーラ

(0)

ガンマ・ベニン2.5g, 500mg, 250mg

CSLベーリング

(0)

ガンマ・ベニンP2.5g, 500mg

(1)

グロブリン−N

富士レビオ

(1)

ポリグロビンN

バイエル薬品

(1)

ガンマガード

バクスター

(5)

IVGG住友

大日本住友製薬

(1)

アンスロビンP

化学及血清療法研究所

アンチトロンビンIII製剤

(0)

ハプトグロビン注−ヨシトミ

ベネシス

ハプトグロビン製剤

(1)

献血トロンビン−ニチヤク

日本製薬

トロンビン製剤

(0)

フィブロガミン

CSLベーリング

血液凝固第XIII因子製剤

(4)

フィブロガミンP

(4)

ベリプラストP

CSLベーリング

生体組織接着剤

(3)

ベリプラスト

14(13)

ベリプラストPコンビセット

(0)

タココンブ

(7)

ボルヒール

化学及血清療法研究所

(3)

ティシール−デュオ

日本臓器製薬

(3)

135(110)

注)()内は、C型肝炎(疑いを含む。)と報告された症例数。

II 医薬食品局が医療機関から報告を受けて保有していた症例情報に関する調査について

特定製剤を投与していた症例や、特定製剤以外の血漿分画製剤を投与していたところ、ウイルス性肝炎又はその可能性のあった症例として、医薬食品局が医療機関から報告を受けて局内に保有していたもの(獲得性傷病への投与のもの。今回公表分を含め企業が保有し既に公表されている症例※1 を除く。)につき、ご本人の特定につながる可能性のある症例情報を含むもの※2 を整理したところ、その概要は以下のとおり。

※1 企業が提出した症例の医療機関名、原疾患、初回投与日、症状発現日等の情報が一致しているもの。

※2 医療機関が特定され、かつ、初回投与日、症状発現日、患者の実名又はイニシャル等の症例情報がわかるもの、又は、医療機関が特定されないものの、患者の実名及び住所がわかるもの。

○ご本人の特定につながる可能性のある症例情報は52例。すべて、医療機関名がわかるものであった。

 

件数

製剤名及び症例数

特定製剤を含む投与例:
・うち、肝炎ウイルス感染等の記載があったもの

47例※1
(7例)※2

フィブリノゲン:47例

特定製剤以外の血漿分画製剤の投与例であって、投与製剤との関連は不明ではあるが、ウイルス性肝炎又はその可能性のある症状に関する記載があったもの

5例※3

献血ベニロン、ノイアート:1例
トロンビン−ヨシトミ:1例
ヴェノグロブリン-IH:1例
ヴェノグロブリン、アンスロビンP:1例
献血ベニロン、献血アルブミン25:1例

52例

 

※1 症例情報が記載されていた資料は、以下のとおり。

・平成16年の医療機関名公表に係る情報開示請求の手続きの際、医療機関から厚生労働省に提出された異議申立て等の資料に記載があったもの:10例

・平成16年のフィブリノゲン製剤納入医療機関名公表の確認手続きの際、医療機関から厚生労働省に提出された資料に記載があったもの:37例

※2 医療機関から提出された資料によれば、これら7例のうち5例は、フィブリノゲンの投与の事実をご本人又はそのご家族にお知らせしており、また、治療済み又は治療中であった。残り2例については、お知らせの状況は不明であるが、治療済み又は治療中であった。

※3 症例情報が記載されていた資料は、医療機関から医薬品安全性報告として提出されたもの。提出時期は、平成15年(2例)、平成16年(2例)、平成18年(1例)。

○これらの症例情報のうち、特定製剤を含む投与例については、医療機関が保有していると思われるものの、念のため、関係情報を医療機関に返戻する。それとともに、改めて医療機関に対し、特定製剤の投与の事実のお知らせ及び肝炎ウイルス検査の受診勧奨を行うよう、要請することとする。また、特定製剤投与による感染の場合における救済法の申請手続き等についても、併せてお知らせを行うよう依頼する。

○また、特定製剤以外の血漿分画製剤の投与例については、肝炎ウイルスへの感染が報告されており、これらの症例におけるウイルス性肝炎の早期発見・早期治療につなげるためにも、関係情報を医療機関に返戻するとともに、医療機関に対し、肝炎ウイルス検査の受診勧奨を行うよう要請する。
 さらに、これら製剤の投与とウイルス性肝炎との関連については、専門家に内容を精査いただく予定。

※ 上記のほか:

[1] 特定製剤以外の血漿分画製剤を投与していたところ肝機能検査値上昇等がみられたとの記載があったもの7例。これらについては、Iの4に示す症例と同様、専門家により精査いただく予定。

[2] 以下に示す既存の調査研究資料中に、医療機関から提出された特定製剤の投与例等に関する情報が含まれており、これらの情報についても、併せて、医療機関に返戻する(これらの調査の実施の際、既に可能な限り受診勧奨等が行われているが、改めて行うもの。)。

・「非加熱血液凝固因子製剤による非血友病患者HIV感染に関する調査」(平成8年公表)

・「非加熱血液凝固因子製剤を使用した血友病以外の患者における肝炎ウイルス感染に関する調査研究」(平成13年度厚生科学特別研究事業;14年公表)


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