厚 生 労 働 省 発 表
平成19年11月9日(金)

大臣官房地方課

課 長   及川 桂

地方支分部局法令遵守室

室 長   荒牧 英雄

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夜間直通 3502-6719


 

都道府県労働局に係る会計実地検査結果(超過勤務手当関係等)の概要及び処分について

1 経緯及び検査結果の概要

平成16年に判明した広島、兵庫両労働局の不正経理事案を端緒として、会計検査院が平成17年度以降2年間にわたり47全ての労働局を対象として、会計経理の執行状況の全般にわたり実地検査を実施し、昨年11月に公表された「平成17年度決算検査報告」において総括的な指摘が行われた(特定検査対象に関する検査状況報告・別紙参照)。

2年間にわたる会計実地検査においては、全国の労働局の各部署において保管する平成11年度以降の会計経理関係書類等に基づき全般的な検査が行われ、庁費、謝金、旅費、超過勤務手当など労働局の支出関係に係る不正経理や不適正な会計処理等について広く指摘されたところであるが、このうち初年度の平成17年次に検査が行われた25労働局については、超過勤務手当の支給状況について庁舎の機械警備記録の書類による検査が実施されていなかったことから、これらの労働局において庁舎の機械警備記録の書類による検査が再度行われ、本日公表された「平成18年度決算検査報告」において指摘された。

(指摘の概要等)

(1)昨年度の決算検査報告において超過勤務手当の不適正支給を指摘された14労働局(注1)の場合と同様に、庁舎等の施錠が行われ機械警備による庁舎警備が開始された後も、一部の職員が庁舎内において超過勤務に従事していたとして超過勤務手当が支給されているものなど超過勤務手当が不適正に支給されていたものが22労働局において、平成11年度から18年度までの間に計158,393,474円あった(注2)と指摘された。

上記指摘額のうち、職員に対する聴き取り調査の結果、超過勤務手当支給が過大となっていたものは17労働局において、計28,184,301円であった。

また、上記の他、2労働局では平成12年度から15年度までの間に旅費の不正支出591,700円があったと指摘された。

このような超過勤務手当の不適正支給が指摘された原因は、超過勤務命令及びその実績を毎日把握し、記録するという事務処理が適正に行われず、1ヶ月単位でまとめて記録するなどの不適正な事務処理が行われていたこと等により発生したものである。他方で、実際には超過勤務が行われていた日に、これに対応した記録がなされていないという事態も生じている。

(注1)昨年度の決算検査報告においては、平成18年次に庁舎の機械警備記録の書類等による検査が行われた22労働局のうち14労働局において、超過勤務手当の不適正支給として、計117,458,706円が指摘されている。

(注2)今回、超過勤務手当の不適正支給を指摘された額の大半(97.3%)は平成16年度までに発生したものであった。

〔指摘額の発生年度別内訳〕

平成11年度:5,814,030円
平成12年度:14,987,754円
平成13年度:28,740,329円
平成14年度:31,557,500円
平成15年度:36,081,484円
平成16年度:36,999,864円
平成17年度:4,089,694円
平成18年度:122,819円
158,393,474円

(2)なお、長野労働局に対する会計実地検査において、不適切な会計検査対応が行われていた事実が指摘された。

長野労働局では、平成18年次の会計実地検査に先立って行った自主点検により、複数の部署において超過勤務等命令簿と機械警備記録の不整合の事態が生じていたことを把握していたものの、会計実地検査では指摘がなされなかったことから、会計検査院に自主点検結果の説明を行った際に、当該不整合の事態については説明を行わず、その後、自主点検関係の書類を廃棄していた。

翌平成19年次の会計実地検査において、前年には発見されなかった超過勤務等命令簿と機械警備記録の不整合の事態の指摘がなされ、前年の自主点検結果の説明に際してそのことの報告がなかったことなどの顛末について説明を求められると、長野労働局長が関係部署に残存している自主点検関係の書類を廃棄するよう指示していたことが判明した。

(注) 本件事案が判明した端緒は、公益通報制度に基づく内部通報を、本省地方課地方支分部局法令遵守室において受理したことによるものであり、以後、会計検査院に対して通報するとともに、同院と連携のうえ、法令遵守室において調査を行ったものである。

2 対 応

(1)処分

641名の職員(本省籍職員で事案発生当時都道府県労働局で勤務していた者を含む。)について、本日付で処分を行った(注)。

《処分内容》 減給1名
戒告8名
訓告213名
文書厳重注意216名
口頭厳重注意203名
641名

(注)このうち長野労働局における不適切な会計検査対応に関しては、会計検査院の調査活動に対する不誠実かつ不適切な対応であるのみならず、会計経理の適正化に取り組む労働局の姿勢に対する信頼をも損ねるものであり、その責任は重大であることから、前長野労働局長を「減給1/10、3ヶ月」の懲戒処分とした(同局長は、11月8日付けで異動(大臣官房付)させた)。また、前長野労働局総務部長を「戒告」処分とした。

(2)不正に支出された額の弁済について

今回の検査により判明した労働局における指摘額のうち国庫に損害を与えた額(超過勤務手当については、指摘額のうち超過勤務手当の支給額算定の基礎とされた超過勤務実績時間が実際の超過勤務実績時間よりも過大となっていたものに限る。)28,776,001円については、関係局において関係職員等から早急に国に対して弁済させる。

(3)会計経理の適正化の取組みの更なる徹底について

今回、超過勤務手当の不適正な支給を指摘されたもののうち、最近の事例においては、超過勤務の実績等を1ヶ月単位でまとめて記録するなどの不適切な事務処理が是正された後においても、勤務時間管理員による確認誤り等の事務処理誤りが一部でみられたことから、事務処理の適正の確保についてあらためて各局に指示を行い徹底する。

また、長野労働局において不適切な会計検査対応が行われたことは誠に遺憾であり、各局に対し、事案の内容を具体的に示した上で、会計検査の本旨を踏まえた会計検査への協力及び適切な対応について指示を行い徹底する。

さらに、平成18年11月10日付各労働局長あて通達により指示して実施している会計経理の適正化の取組み(注)を改めて徹底する。

(注)会計経理の適正化の取組み

・  昨年の会計検査院の総括的な指摘を受けて、これまでの累次の再発防止策を強化しつつ、「不正経理等防止対策要綱」として取りまとめ、具体的な遵守事項等を指示することにより再発防止を徹底している。

・  地方管理者自らがチェックリストに基づく内部点検を行うとともに、本省において当該点検結果について外部の専門家が参画する地方支分部局法令遵守委員会に報告し、検証を行うなど、法令遵守に係る内部統制の確立のための取組みを進めている(平成18年度の労働局における不正経理等の再発防止策の実施状況の評価については厚生労働省ホームページで公表)。

・  なお、平成17年7月の通達において、今後、不正な金銭の作出を実行し又は指示した者は、懲戒免職を原則とし厳しい処分を行う方針を明示したところ。


(別紙)

昨年公表資料(平成18年11月10日公表)[概要]

平成18年度の会計検査院の実地検査結果の概要

(平成17年度決算検査報告)

全47労働局における実地検査の最終的な結果が公表。

(1) 不正経理

計12億2,465万円の不正経理が行われていたことが指摘された。

ア 労働局の支出関係(25労働局において計11億725万円)

i  物品購入等に係る庁費等の不正支出(計6億2,461万円)

ii  謝金等の不正支払(計1億6,646万円)

iii 旅費の不正支払(計1億7,048万円)

iV 超過勤務手当の不適正支給(計1億3,784万円)

V  国庫金等の領得(計787万円)

イ 委託事業(雇用安定・創出対策事業等及び緊急地域就職促進プロジェクト)の支出関係

委託費の目的外使用(37協議会において計1億1,739万円)

※ 不正経理の相当割合は兵庫労働局(5億9,753万円)及び広島労働局(1億8,303万円)関係で占められている。

※ 広島・兵庫両労働局以外における不正経理は、平成11年度及び12年度に集中している。

(2) 不適正な会計処理等

47労働局で計66億2,004万円の不適正な会計処理等が判明。

ア 労働局の支出関係

i 業務用物品購入等についての不適正な処理

○ 物品購入等に係る不適正な会計処理(業者への預け金、一括払い、物品納品前の先払い等)(計27億519万円)

○ 求人情報自己検索システムの複数年度契約(計23億5,847万円)

○ 競争入札の実施を偽装して契約締結(計6億322万円)

ii 相談員等に対する謝金(不適切な配置)(計9億181万円)

イ 委託事業の支出関係

不適切な事務処理(計5,137万円)

(注) 1  「不正経理」とは、いわゆるカラ雇用、カラ出張など関係書類を偽造するなどして国費を目的外に使用するなど不正に支出しているものであり、国庫に損害を与えるなど悪質性の高いものである。

「不適正な会計処理」とは、不正経理ほどの悪質性はないものの、会計法令に違反しており是正が図られるべきもの(例えば、業者に預け金を形成し、これを利用して必要な都度物品を納入させる等の会計処理)。

2 不正経理及び不適正な会計処理を合わせると、指摘総額は計78億4,469万円。

会計検査院に指摘された不正経理(超過勤務手当分除く)

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