厚生労働省発表
平成18年2月9日(木)
労働基準局労災補償部補償課
 補償課長  明治 俊平
職業病認定対策室
 室長  只野 祐
 室長補佐  天野 敬
   電話  5253−1111(内線)5569
夜間直通  3502−6750


石綿による疾病の労災認定基準の改正について


 石綿ばく露作業労働者に発症した肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患の業務上外を判断する労災認定基準を、本日2月9日付けで改正するとともに、全国労災補償課長会議において指示した。
 改正労災認定基準は、環境省と合同で開催した「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会」から、2月7日付けで提出された報告書を踏まえ作成したものである。
 改正労災認定基準は、2月9日以降に決定する請求事案について適用される。

 主な改正内容は次のとおりである。

 1  中皮腫については、これまで石綿肺の所見が得られない者に発症したものは、胸膜プラーク、石綿小体又は石綿繊維が認められるとの医学的所見を認定の要件としていたが、中皮腫の確定診断等がなされていることの確認ができていれば医学的所見を求めないこととしたこと。

 2  肺がんについては、これまで石綿肺の所見が得られない者に発症したものは、胸膜プラーク、石綿小体又は石綿繊維が認められるとの医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が10年以上あるものを業務上と認定していたが、石綿小体又は、石綿繊維量が一定量以上認められたものは、石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たなくても認定することとしたこと。

 3  びまん性胸膜肥厚については、これまで全ての事案を本省協議としていたものを、一定のものについて業務上と認定するための基準を示したこと。


 ・ 「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方」報告書(平成18年2月7日)
(1〜8ページ(PDF:368KB)  9〜19ページ(PDF:509KB)  20〜30ページ(PDF:452KB))



基発第0209001号
平成18年2月9日

 都道府県労働局長 殿

厚生労働省労働基準局長
(公印省略)


石綿による疾病の認定基準について

 標記については、平成15年9月19日付け基発第0919001号(以下「15年通達」という。)により指示してきたところであるが、今般、「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会」の検討結果を踏まえ、下記のとおり認定基準を改正したので、今後の取扱いに遺漏のないよう万全を期されたい。
 なお、本通達の施行に伴い、15年通達は廃止する。


1 石綿による疾病と石綿ばく露作業
 石綿による疾病
 石綿との関連が明らかな疾病としては、次のものがある。
(1)  石綿肺
(2)  肺がん
(3)  中皮腫
(4)  良性石綿胸水
(5)  びまん性胸膜肥厚
 石綿ばく露作業
 石綿ばく露作業とは、次に掲げる作業をいう。
(1)  石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
(2)  倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
(3)  次のアからオまでに掲げる石綿製品の製造工程における作業
 石綿糸、石綿布等の石綿紡織製品
 石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品
 ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品
 自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
 電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
(4)  石綿の吹付け作業
(5)  耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
(6)  石綿製品の切断等の加工作業
(7)  石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業
(8)  石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
(9)  石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)等)等の取扱い作業
(10)  上記(1)から(9)までに掲げるもののほか、これらの作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業
(11)  上記(1)から(10)の作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける作業

2 石綿による疾病の取扱い
 石綿肺(石綿肺合併症を含む。)
 石綿ばく露作業(前記第1の2の(1)から(11)までに掲げる作業をいう。以下同じ。)に従事しているか又は従事したことのある労働者(以下「石綿ばく露労働者」という。)に発生した疾病であって、じん肺法(昭和35年法律第30号)第4条第2項に規定するじん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺又は石綿肺に合併したじん肺法施行規則(昭和35年労働省令第6号)第1条第1号から第5号までに掲げる疾病(じん肺管理区分が管理4の者に合併した場合を含む。)は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)別表第1の2(以下「別表第1の2」という。)第5号に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 肺がん
(1)  石綿ばく露労働者に発症した原発性肺がんであって、次のア又はイのいずれかに該当する場合には、別表第1の2第7号7に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。
 次の(ア)又は(イ)の医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が10年以上あること。ただし、次の(イ)に掲げる医学的所見が得られたもののうち、肺内の石綿小体又は石綿繊維が一定量以上(乾燥肺重量1g当たり5000本以上の石綿小体若しくは200万本以上(5μm超。2μm超の場合は500万本以上)の石綿繊維又は気管支肺胞洗浄液1ml中5本以上の石綿小体)認められたものは、石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たなくとも、本要件を満たすものとして取り扱うこと。
(ア) 胸部エックス線検査、胸部CT検査等により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められること。
(イ) 肺内に石綿小体又は石綿繊維が認められること。
(2)  石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たない事案であっても、上記(1)のイの(ア)又は(イ)に掲げる医学的所見が得られているものについては、本省に協議すること。
 中皮腫
(1)  石綿ばく露労働者に発症した胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫であって、次のア又はイに該当する場合には、別表第1の2第7号7に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。
 石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること。
(2)  上記(1)に該当しない中皮腫の事案については、本省に協議すること。
 良性石綿胸水
 石綿ばく露労働者に発症した良性石綿胸水については、石綿ばく露作業の内容及び従事歴、医学的所見、療養の内容等を調査の上、本省に協議すること。
 びまん性胸膜肥厚
(1)  石綿ばく露労働者に発症したびまん性胸膜肥厚であって、次のア及びイのいずれの要件にも該当するものは、別表第1の2第4号8に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 胸部エックス線写真で、肥厚の厚さについては、最も厚いところが5mm以上あり、広がりについては、片側にのみ肥厚がある場合は側胸壁の1/2以上、両側に肥厚がある場合は側胸壁の1/4以上あるものであって、著しい肺機能障害を伴うもの
 石綿ばく露作業への従事期間が3年以上あること。
(2)  上記(1)のアの要件に該当するものであって、かつ、イの要件に該当しないびまん性胸膜肥厚の事案については、本省に協議すること。

3 認定に当たっての留意事項
 中皮腫について
 中皮腫は診断が困難な疾病であるため、臨床所見、臨床検査結果だけでなく、病理組織検査に基づく確定診断がなされることが重要である。また、確定診断に当たっては、肺がん、その他のがん、結核性胸膜炎、その他の炎症性胸水、などとの鑑別も必要となる。
 このため、中皮腫の業務上外の判断に当たっては、病理組織検査記録等を収集し、確定診断がなされているか確認すること。
 なお、病理組織検査が行われていない事案については、臨床所見、臨床経過、臨床検査結果、他疾患との鑑別の根拠等を確認すること。
 びまん性胸膜肥厚について
 びまん性胸膜肥厚は石綿ばく露に起因するものの他、関節リウマチ等の膠原病に合併したもの、薬剤によるもの、感染によるもの等石綿ばく露と無関係なものもある。
 このため、びまん性胸膜肥厚の業務上外の判断に当たっては、その診断根拠となった臨床所見、臨床経過、臨床検査結果等の資料を収集し、石綿によるとの診断が適正になされていることを確認すること。
 びまん性胸膜肥厚が業務上疾病として療養の対象となる要件として、上記第2の5の(1)のアで「著しい肺機能障害を伴うこと」としたが、これは、じん肺法第4条でいう「著しい肺機能障害」と同様であること。



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