厚生労働省発表
平成18年2月1日
職業能力開発局能力評価課
 課長  小林 洋司
 課長補佐  桃井 竜介
 電話  03(5253)1111(内線5969)
 夜間直通  03(3502)6958
中央職業能力開発協会
 能力評価部次長  内藤 眞紀子
 評価制度開発課長  山浦 晃
 電話  03(5800)3689(直通)


「フィットネス産業」、「パン製造業」の能力評価基準が完成



(ポイント)
 現在、厚生労働省では職業能力が適正に評価される社会基盤づくりを進めており、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる能力評価基準の策定に取り組んでいる。これまで、経理・人事等の「事務系職種」に関する横断的な能力評価基準のほか、電気機械器具製造業、ホテル業、自動車製造業等20業種の能力評価基準が策定されたところである。

 「フィットネス産業」、「パン製造業」の能力評価基準は、それぞれ業界団体との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて能力評価基準が定められた。

 能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。
 このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待される。

 また、能力評価基準とともに、「フィットネス産業」では[能力評価シート]、[能力レベル別要員計画表]、[育成計画マップ]、「パン製造業」では[OJTシート]、[キャリア設計シート]など、具体的な活用例も示している。

 現在、総合工事業等、幅広い業種において能力評価基準の策定を進めているところである。

 なお、上記の報告書及び能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。
[中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp


I  フィットネス産業業
 1  能力評価基準の策定までの経緯
(1)  フィットネス産業については、(社)日本フィットネス産業協会(会長・石原 悟)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・原田 宗彦:早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)を設置し、検討を行った。
(2)  同委員会は、フィットネス産業に特有の職種に絞り、店舗系と本社・本部系の3職種について能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
 具体的には、(1)トレーニングジム・スタジオ・プールにおける専門分野のインストラクターとして、参加者が適切かつ安全に運動できるよう指導・支援する「インストラクション」、(2)店舗目標を達成するための店舗マネジメント、オフィス業務やイベント企画等の運営事務及びフロント業務を行う「店舗運営」、(3)業態開発や新規出店のための市場調査、マーケティング企画等の営業・店舗開発、営業企画やエリア店舗統括等を行う「営業・店舗開発」の3職種について能力評価基準の策定を行った。
(3)  フィットネス産業では、インストラクターは中核をなす職種であるが、サービスマインドと高い専門スキルを併せ持つほか、店舗のマネジメントにも係わることができる人材を育成していくことが重要な課題となっており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1  フィットネス産業の能力評価基準の全体構成

図1 フィットネス産業の能力評価基準の全体構成


 2  4つのレベルを設定
 能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定している。
 能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、企業において期待される役割に着目して店舗部門、本社・本部ごとにフィットネス産業におけるレベル区分の目安を設定した。(図2参照)。


図2  フィットネス産業のレベル区分の目安

図2 フィットネス産業のレベル区分の目安


 3  能力評価基準の活用例も示す
 能力評価基準とともに、同基準の3種類の様式ごとに次のような具体的な活用手法の例も示している(図3参照)。
(1)  能力ユニット別職業能力評価基準(様式3)を活用した「能力評価シート」の例を示した(活用例(1))。
 「能力評価シート」は、「職務遂行のための基準」を評価項目として設定しており、人事評価等の手段としての活用を想定している。
(2)  全体構成図(様式1)を活用した「能力レベル別要員計画表」の例を示した(活用例(2))。
 「能力レベル別要員計画表」は、対象となる職種に関する自社の人材レベルの充足度が一目でわかるように作られており、必要人材の洗い出し及び適切な採用計画の活用を想定している。
(3)  職種別能力ユニット一覧(様式2)を活用した、「育成計画マップ」の例を示した(活用例(3))。
 「育成計画マップ」は、マップ内に特定の個人名と矢印が記載され、人材育成計画に基づき「ローテーション予定」、「配置変え予定」、「育成計画」などの今後の方向性を示しており、従業員一人ひとりのキャリア開発、適切な人材配置やジョブローテーションへの活用を想定している。

(図3) フィットネス産業における活用手法の例
(図3)フィットネス産業における活用手法の例


II  パン製造業
 1  能力評価基準の策定までの経緯
(1)  パン製造業については、全日本パン協同組合連合会(会長・小此木 博)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・小此木 博 同連合会会長)を設置し、検討を行った。
(2)  同委員会は、パンの製造小売を主とする「リテール・ベーカリー」に焦点をあて、2職種について能力評価基準の策定を行った(図4参照)。
 具体的には、(1)工場や工房においてパンを製造し、製造に伴う生産管理や製造の視点からの製品開発などを行う「製造」、(2)製造部門が製造した製品を顧客に販売し、販売に付随する店舗運営や顧客対応、また販売の視点からの商品開発を行う「販売」の2職種について能力評価基準の策定を行った。
(3)  パン製造業では、消費者ニーズが変化・多様化する中で、値頃感ある付加価値商品やボリューム感ある商品が求められている。単に質の高い製品を作りあげようとする姿勢だけでは十分ではなく、消費者ニーズを捉え、お客様満足度を高めていく魅力ある製品を開発・製造・販売できるマーケット感覚を兼ね備えた人材も求められており、こうした現状も踏まえつつ能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図4  パン製造業の能力評価基準の全体構成

図4 パン製造業の能力評価基準の全体構成


 2  4つのレベルを設定

 また、能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、パン製造業におけるレベル区分の目安を設定した(図5参照)。


図5  パン製造業のレベル区分の目安

図5 パン製造業のレベル区分の目安


 3  能力評価基準の活用例も示す
 パン製造業における能力評価基準の活用例として、同基準を人材育成に向けた取り組みに活用していくための「OJTシート」及び「キャリア設計シート」の例を示している。能力評価基準は昇進・昇格等、人事考課のための評価基準としての活用も考えられるところであるが、従業員規模が比較的小さく、人材育成に十分な労力と時間をかけることが難しいとされるリテールベーカリーの現状を踏まえ、日常業務の中で行われる教育訓練に視点をあてた活用例を示した(図6参照)。
(1) 「OJTシート」は、従業員のレベルに応じて、日々の業務において行うべき事項(職務遂行能力)が記載されたものであり、本人(部下)による「自己評価」と「上司評価」を踏まえ、具体的な教育訓練目標を設定することにより、計画的なOJTの実施と効果的な能力開発の促進を目的とするものである。
(2) 「キャリア設計シート」は、現在のレベル(レベル1)における評価結果について、次のレベル(レベル2・3・4)で求められる職務遂行能力と併せて見ることで、目指すべき目標を与え、さらなる能力向上に向けた自己啓発・能力開発の動機付けを促進させる際の参考となるものである。

(図6) パン製造業における活用手法の例
(図6)パン製造業における活用手法の例

(図6)パン製造業における活用手法の例


IV  能力評価基準の記述内容
 能力評価基準の具体的な記述に当たっては、単に知識があるということにとどまらず、当該職務を確実に遂行できるか否かの判断基準となるように典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している(図7,8参照)。


V  能力評価基準を活用するメリット
 能力評価基準が明らかになることによって、的確なキャリア形成を図ることができる環境が整備され、また、職業能力に関するミスマッチが縮小することが期待される。
 1  求職者・労働者にとっては、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組みにつなげることができる。
 2  企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化、人材育成への効果的な投資、能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関する新しいスタンダードとして活用できる。
 3  ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。
 4  教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。


VI  今後の事業の取組み
 現在、総合工事業等について、能力評価基準の策定作業を進めているところである。今後も引き続き、幅広い分野について能力評価基準の整備を行うこととしている(図9参照)。
 また、今までに策定されてきた能力評価基準がどのように使われてきたのか、活用手法の具体的な好事例を活用事例集としてとりまとめ、更なる活用・普及促進を図ることとしている。


VII  「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」及び「能力評価基準」の入手先
 広く活用を図るため能力評価基準データを自由に閲覧・ダウンロードできるよう中央職業能力開発協会のHPで公開を行っている。
 今年度は、より使いやすいHPとするために改修を行うこととしている。
 また、HP上において、今後の策定の参考となるようアンケート調査を実施している。


中央職業能力開発協会 能力評価部
〒112-8503 東京都文京区小石川1-4-1 住友不動産後楽園ビル
http://www.hyouka.javada.or.jp (こちらよりダウンロードできます)
E-mail hyouka@javada.or.jp TEL 03-5800-3689


(図7) フィットネス産業の能力評価基準の例
(図7)フィットネス産業の能力評価基準の例


(図8) パン製造業の能力評価基準の例
(図8)パン製造業の能力評価基準の例


(図9) 能力評価基準の策定状況
(図9)能力評価基準の策定状況

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