おわりに

 はじめにも触れたように、現在のモニター報告は治療を目的に来院する患者から原因と思われる家庭用品等について情報を収集するシステムである。特定の家庭用品による健康被害の報告の変動があれば、その情報の周知を図り、当該物品による被害の拡大を防止すること、また、必ずしも容易ではないが、そこから原因となった化学物質を特定し、必要な対策をとることにより新たな健康被害を未然に防止することを目指している。また、(財)日本中毒情報センターに問い合わせのあった事例に関する情報は、主に電話とアンケート調査によって収集されたものであり、医学的により詳細な内容を把握したり、予後を明確にすることは困難であるが、モニター病院で収集している以外の情報が消費者より直接寄せられており、家庭用品等による健康被害をモニターする上で重要な役割を果たしている。
 本モニター報告は平成16年度で26回目となった。ここ数年、報告件数において上位を占める製品はほとんど変動していない。それだけ広く普及し、使用されているものでもあるのだが、引き続き注意の喚起と対策の整備を呼びかけ、注意により避けられる健康被害例を減少させるべく努めていく必要がある。特に、次亜塩素酸系(塩素系)の洗浄剤・漂白剤と酸性洗浄剤の混合による塩素ガス発生死亡事故が過去に発生し、これらの混合使用に対して広く注意喚起が行われて久しいが、幸い死亡という痛ましい事例はないにせよ、いまだにガス発生事例の報告が存在している。家庭用品を主な原因とする皮膚障害については、原因製品の使用を継続したり、原因製品と同じ素材の製品を使用すると、症状の悪化を招き後の治療が長引く場合がある。小児科領域におけるタバコの誤飲事例は引き続き報告の3割以上を占め、医薬品・医薬部外品の誤飲では入院事例が毎年報告されている状況にある。
 これらの注意喚起に加え、今までにない化学物質による、新たな健康被害が生じていないか、特に注意すべき事例はないか等、引き続きモニターしていくことも本制度に課せられた役割である。
 昨今、危機管理ということが盛んに叫ばれているが、危機管理というものは常日頃の連絡体制を効率よく運営することにより十分なされ得ることであり、平時のそのシステムの構築こそが最も重要である。本制度がそれに応え得るよう今後とも継続・充実を図っていきたい。

トップへ