(財)日本中毒情報センターは、一般消費者若しくは一般消費者が受診した医療機関の医師からのあらゆる化学物質による急性の健康被害に関する問い合わせに応ずる機関である。毎年数万件の問い合わせがあるが、このうち、最も多いのが幼少児の化粧品やタバコの誤飲誤食で、それぞれ年間3,000件に達し、これらは全問い合わせ件数の20%近くを占める。
この報告は、これら問い合わせ事例の中から、家庭用品等による吸入事故及び眼の被害に限定して、収集・整理したものである。なお、医薬品など、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」上の家庭用品ではないものも一部含まれている。
全事例数は724件で、昨年度(742件)とほぼ同程度であった。原因と推定された家庭用品等を種別で見ると、前年度と同様、殺虫剤の報告件数が最も多く、168件(23.2%)であった。次いで洗浄剤(住宅用・家具用)97件(13.4%)、芳香・消臭・脱臭剤73件(10.1%)、漂白剤59件(8.1%)、園芸用殺虫・殺菌剤48件(6.6%)、消火剤43件(5.9%)、洗剤(洗濯用・台所用)32件(4.4%)、除草剤20件(2.8%)、灯油14件(1.9%)、防水スプレー14件(1.9%)の順であった(
表5)。また、防水スプレーは平成14年度に12件、平成15年度11件、今年度は14件の報告があった。
製品の形態別の事例数では、「スプレー式」が280件(そのうちポンプ式が128件)、「液体」209件、「粉末状」94件、「固形」60件、「蒸散型」58件、その他9件、不明が14件であった。ここでいう蒸散型とは、閉鎖空間等において一回の動作で容器内の薬剤全量を強制的に蒸散させるタイプの薬剤で、くん煙剤(水による加熱蒸散タイプを含む)、全量噴射型エアゾール等が該当する。蒸散型の健康被害は年々増加し、5年前の報告が18件であったのに対し、今年度は58件の報告があった。また、蒸散型は医療機関からの問い合わせが多いのも特徴である。
年齢から見ると、0〜9歳の子供の被害報告事例が317件(43.8%)で、前年度と同様、最も多かった。次いで30歳代が多く、その他の年齢層は総件数、該当人口あたりの件数ともほぼ同じであった。年齢別事例数は製品によって偏りが見られるものがあり、漂白剤や洗浄剤(住宅用・家具用)は0〜9歳以外に30歳代にピークが見られ、殺虫剤は0〜9歳とともに、50歳代以上で報告件数が多かった。
性別では、女性が376件(51.9%)、男性が300件(41.4%)、不明が48件(6.6%)で男女比は前年度とほぼ同等であった。電話での問い合わせのため、記載漏れ等があり、被害者の性別不明例が多少存在する。
健康被害の問い合わせ者は、一般消費者からの問い合わせ事例が523件、受診した医療機関等医療関係者からの問い合わせ事例が201件であった。
症状別に見ると、症状の訴えがあったものは473件(65.3%)、なかったものは240件(33.1%)、不明のものが11件(1.5%)であり、症状の訴えがあったものの割合は前年度とほぼ同程度であった。症状の訴えがあった事例のうち、最も多かったのが、悪心、嘔吐、腹痛等の「消化器症状」を訴えたもの178件(24.6%)で、次いで、咳、喘鳴等の「呼吸器症状」を訴えたもの166件(22.9%)、眼の違和感、痛み、充血等の「眼の症状」を訴えたものが145件(20.0%)、頭痛、めまい等の「神経症状」を訴えたものが113件(15.6%)であった。前年度と比べて上位に占める症状はほとんど変動していない。
発生の時期を見ると、品目別では、殺虫剤による被害が4〜10月に多い。洗浄剤(住宅用・家具用)については、昨年度と同様、季節による目立った傾向は見られなかった。曜日別にも解析を行ったところ、曜日間で有意差は認められなかった。時間別では午前8時〜午後9時の間にほぼ均等に発生しており、午前0時から午前7時頃までが少なくなっていた。これらの発生頻度は前年度と比較して際だった変化はなく、生活活動時間に比例して多くなっている。
殺虫剤・防虫剤に関する事例は181件(有症率70.2%)で、そのうち、殺虫剤が168件(前年比0.9倍)、防虫剤13件(前年比0.7倍)といずれも減少していた。
被害事例の状況として
1. |
乳幼児・認知症患者など危険認識能力が十分にないものによる事例 |
2. |
用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生した事例、若しくはそれが懸念された事例 |
3. |
蒸散型の薬剤を使用中、入室してしまった事例 |
4. |
換気を十分せずに使用した事例 |
5. |
ヒトの近辺で使用し、影響が出た事例 |
6. |
適用量を明らかに超えて使用した事例 |
7. |
本来の用途以外の目的で使用した事例 |
8. |
エアゾールの廃棄時に、薬剤が残存していた事例 |
9. |
薬剤が飛散し、吸入したあるいは眼に入った事例 |
10. |
薬剤を使用中であることを周知しなかったことによる事例 |
等が挙げられる。手軽に使用できるエアゾールやここ数年で増加した蒸散型は、使用方法を誤ると健康被害につながる可能性が高く、使用の際には細心の注意が必要である。特に近年はハチ・アブ等の駆除を目的とした強力噴射タイプのエアゾール等、新たな商品も販売されている。使用前に製品表示を熟読し、よく理解した上で正しく使用するべきであり、保管、廃棄の際にも注意が必要である。また、従来から広く利用されている防虫剤においても、入院を要した症例が見受けられ、使用量の遵守等を心がけることが重要である。
家庭用に販売される不快害虫防除を目的とした殺虫剤に関して、本年7月に家庭用不快害虫用殺虫剤安全確保マニュアル作成の手引きが作成された。製造・輸入を行う事業者においては、当該マニュアル作成の手引きに基づき安全性の確保や表示の方法等に対する適切な取組みが期待される。
◎ |
事例1 【原因製品:殺虫剤(全量噴射型エアゾール)】
患者 |
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2歳 女児、成人 女性 |
状況 |
床に置いていた全量噴射型エアゾール式の殺虫剤を子供がいたずらし、誤作動させて顔にかかった。母親も吸入した。 |
症状 |
女児:充血、女性:咳 |
処置・転帰 |
女児:洗眼後、眼科にて点眼薬を処方、充血は2日で治まった。
女性:1時間程度で症状が治まり、受診せず。 |
|
◎ |
事例2 【原因製品:殺虫剤(エアゾール)】
患者 |
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60歳 男性 |
状況 |
屋根裏でハチの巣に向けて屋外専用の強力噴射タイプのエアゾールを使用して吸入した。 |
症状 |
四肢の脱力、全身倦怠感 |
処置・転帰 |
不明 |
|
◎ |
事例3 【原因製品:殺虫剤(エアゾール)】
患者 |
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55歳 女性 |
状況 |
廃棄のため殺虫剤のエアゾール缶に穴を開けた際、残っていた薬剤が噴出し、顔にかかった。洗顔、含嗽後も症状が持続するため受診。 |
症状 |
咽頭痛、胸部不快感、嘔気、嘔吐、めまい |
処置・転帰 |
制吐剤の点滴、含嗽剤投与、その後入院(2日)。 |
|
◎ |
事例4 【原因製品:殺虫剤(粉末)】
患者 |
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34歳 女性 |
状況 |
粉末の殺虫剤を散布した際、舞い上がった粉を吸入し、翌日から症状が出現した。 |
症状 |
手足の倦怠感 |
処置・転帰 |
不明 |
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◎ |
事例5 【原因製品:防虫剤】
患者 |
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66歳 女性 |
状況 |
防虫剤を一時に部屋で大量に使用した。 |
症状 |
下口唇のしびれ、味覚異常 |
処置・転帰 |
入院(2日) |
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2) |
洗浄剤(住宅用・家具用)、洗剤(洗濯用・台所用) |
洗浄剤(住宅用・家具用)・洗剤(洗濯用・台所用)に関する事例は129件(有症率66.7%)で、前年度(159件)と比較し減少した。そのうち、洗浄剤(住宅用・家具用)に関する事例は97件(前年比0.8倍)、洗剤(洗濯用・台所用)に関する事例は32件(前年比1.0倍)であった。最も多いのは、次亜塩素酸ナトリウムなど、塩素系の製品によるもの(57件)であり、製品形態で多いのはポンプ式スプレー製品(67件)であった。
被害事例の状況として
1. |
乳幼児・認知症患者など危険認識能力が十分にないものによる事例 |
2. |
マスク等の保護具を装着していなかったことによる事例 |
3. |
複数の薬剤が作用し、有毒ガスが発生した事例 |
4. |
液体や粉末の薬剤が飛散し、吸入したあるいは眼に入った事例 |
5. |
適用量を明らかに超えて使用した事例 |
等があり、被害を防ぐには、保護具を着用する、換気を十分に行う、長時間使用しない、適量を使用すること等に気を付ける必要がある。また、塩素系の洗浄剤と酸性物質(事故例の多いものとしては塩酸や有機酸含有の洗浄剤、食酢等がある)との混合は有毒な塩素ガスが発生して危険である。これらの製品には「まぜるな危険」との表示をすることが徹底されているが、いまだに発生例が見られ、一層の啓発が必要である。なお、乳幼児の事故事例は、保管場所を配慮することによって防止できるものが多い。
◎ |
事例1 【原因製品:洗濯用洗剤(粉末)】
患者 |
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1歳 男児 |
状況 |
棚の上の洗濯用粉末洗剤をいたずらして箱を落とした。中の粉を全身にかぶり、吸入し、眼にも入った。 |
症状 |
咳、眼の違和感 |
処置・転帰 |
外来にて洗眼処置。 |
|
◎ |
事例2 【原因製品:カビとり用洗浄剤(ポンプ式スプレー)】
患者 |
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40歳 女性 |
状況 |
浴室で換気をし、手袋を着用していたがマスクは着用せず、塩素系カビとり用洗浄剤を使用した。 |
症状 |
息苦しさ、鼻閉感、咽頭痛、胸痛 |
処置・転帰 |
X線検査(異常なし)、酸素投与、輸液、ステロイド薬投与により、4時間後に帰宅した。 |
|
◎ |
事例3 【原因製品:トイレ用洗浄剤(塩素系)/トイレ用洗浄剤(酸性)】
患者 |
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63歳 女性 |
状況 |
喘息の既往のある患者。少量ずつ残っていた2種類のトイレ用洗浄剤をトイレ掃除に使用した際、混合して発生した刺激臭のあるガスを5分間吸入した。 |
症状 |
喘鳴、息苦しさ、嗄声、咽頭浮腫 |
処置・転帰 |
胸部X線検査(異常あり)、酸素投与、輸液、吸入薬投与、入院(13日) |
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◎ |
事例4 【原因製品:住宅・家具用洗剤(ポンプ式スプレー)】
患者 |
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3歳 男児 |
状況 |
ポンプ式スプレーのアルカリ性の住宅・家具用洗剤を使用中、近くにいた子供の目に入った。 |
症状 |
眼の痛み、充血 |
処置・転帰 |
不明 |
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◎ |
事例5 【原因製品:ハウスダストクリーナー(ポンプ式スプレー)】
患者 |
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1歳 女児 |
状況 |
ポンプ式スプレーのハウスダストクリーナーをいたずらし、顔に噴射して眼にも入った。 |
症状 |
眼の充血 |
処置・転帰 |
洗眼後受診し、点眼薬処方により翌日には軽快した。 |
|
芳香・消臭・脱臭剤に関する事例は73件(有症率54.8%)で、前年度(58件)より増加した。被害状況としては、
1. |
乳幼児・認知症患者など危険認識能力が十分にないものによる事例 |
2. |
エアゾールで噴射方向を誤ったことによる事例 |
3. |
こぼれた薬剤を吸入した事例 |
4. |
用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生した事例若しくは、それが懸念された事例 |
5. |
エアゾールの廃棄時に薬剤が残存していた事例 |
等が見られた。多種多様な製品が販売されており、事故の発生状況も製品の形態や使用法により様々である。増加傾向にあり、今後も注意が必要である。
◎ |
事例1 【原因製品:脱臭・消臭・芳香剤(ポンプ式スプレー)】
患者 |
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1歳 男児、5歳 男児 |
状況 |
兄弟でポンプ式スプレーの消臭剤をいたずらし、顔にかけ合った。眼をこすって充血していたため、眼に入った可能性がある。 |
症状 |
充血 |
処置・転帰 |
水洗後、症状は治まり、受診せず。 |
|
◎ |
事例2 【原因製品:脱臭・消臭・芳香剤(液体)】
患者 |
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21歳 女性 |
状況 |
液状の消臭剤を全容量の半分以上こぼし、拭き掃除中に気分不良となった。 |
症状 |
気分不良 |
処置・転帰 |
外気を吸い、数時間で症状が治まり、受診せず。 |
|
◎ |
事例3 【原因製品:脱臭・消臭・芳香剤(液体)】
患者 |
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58歳 女性 |
状況 |
滴下タイプのトイレ用携帯消臭剤を点眼薬と一緒にポケットに入れていて、間違えて消臭剤を眼にさした。洗眼後、目の前が白くなってきた。 |
症状 |
眼の痛み、眼の傷 |
処置・転帰 |
眼科受診、点眼薬等を処方。 |
|
園芸用殺虫・殺菌剤類等に関する事例は72件(有症率84.7%)、そのうち、園芸用殺虫・殺菌剤類に関する事例は48件、除草剤は20件、肥料2件であり、園芸用殺虫・殺菌剤類と除草剤については前年度と比較して増加し、肥料については減少した。成分別では有機リン含有剤24件、ピレスロイド含有剤13件、グリホサート含有剤10件、石灰硫黄合剤3件、尿素系除草剤含有剤2件であった。
被害状況としては
1. |
マスク等の保護具を装着していなかったことによる事例 |
2. |
ヒトの近辺で使用し、影響が出た事例 |
3. |
乳幼児・認知症患者など危険認識能力が十分にないものによる事例 |
4. |
薬剤を使用中であることを周知しなかったことによる事例 |
5. |
本来の用途以外の目的で使用した事例 |
等が見られた。屋外で使用することが多く、使用者以外にも健康被害が発生しているのが特徴である。家庭園芸用であっても十分な注意喚起を図る必要がある。
◎ |
事例1 【原因製品:園芸用殺虫・殺菌剤(顆粒)】
患者 |
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62歳 男性 |
状況 |
自宅の庭でマスク・手袋を着用せず殺虫剤を散布した際に吸入した。皮膚にも付着した。 |
症状 |
嘔吐、下痢、ふらつき |
処置・転帰 |
皮膚洗浄、輸液、入院(2日) |
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◎ |
事例2 【原因製品:園芸用殺虫・殺菌剤(ポンプ式スプレー)】
患者 |
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4歳 性別不明 |
状況 |
ポンプ式スプレーの殺虫剤を使用した際、そばにいて吸入した。 |
症状 |
咳、顔面浮腫、じんましん |
処置・転帰 |
ステロイド薬投与 |
|
◎ |
事例3 【原因製品:園芸用殺虫・殺菌剤(ポンプ式スプレー)】
患者 |
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5歳 男児 |
状況 |
ベランダでポンプ式スプレーの殺虫殺菌剤をいたずらでほぼ全量噴射し、吸入した。 |
症状 |
気分不良(ただし受診時には改善) |
処置・転帰 |
外来受診、経過観察 |
|
◎ |
事例4 【原因製品:除草剤(液体)】
患者 |
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38歳 男性 |
状況 |
マスクをせずに除草剤を半日噴霧し、吸入した。 |
症状 |
翌日より悪心、嘔吐、過呼吸、発熱、手足のしびれ、味覚異常 |
処置・転帰 |
外来受診、X線検査(異常なし)、経過観察 |
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漂白剤に関する事例は59件(有症率72.9%)で、このうち塩素系が52件と最も多く、大半を占めた。
被害事例の状況として
1. |
複数の薬剤が作用し、有毒ガスが発生した事例 |
2. |
乳幼児・認知症患者など危険認識能力が十分にないものによる事例 |
等があり、注意が必要である。塩素系の漂白剤と酸性物質とを混合し発生した塩素ガスを吸入した事例も相変わらず見られ、前述の洗浄剤と合わせると混合による塩素ガス発生事例は12件(うち症状有10件)であった。塩素ガスを発生させる恐れのあるものには「まぜるな危険」の表示、そうでなくとも「他剤と混合しない」という注意書きがなされているところではあるが、これら混合の危険性について更に一層の啓発を図る必要がある。
◎ |
事例1 【原因製品:漂白剤(塩素系)/トイレ用洗浄剤(酸性)】
患者 |
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35歳 女性 |
状況 |
便器に塩素系漂白剤をかけて放置したが汚れが落ちなかったため、その上から酸性トイレ用洗浄剤をかけた。刺激臭のあるガスが発生し、これを吸入した。窓を開けていたが、マスクは着用していなかった。 |
症状 |
のどの痛み |
処置・転帰 |
しばらくして症状は治まったため、受診せず。 |
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◎ |
事例2 【原因製品:漂白剤(塩素系)】
患者 |
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1歳 男児 |
状況 |
塩素系漂白剤を兄弟でいたずらし、上の子が原液をおそらく100ml以上患児の頭にかけた。 |
症状 |
顔の発赤、充血 |
処置・転帰 |
すぐに全身を水洗し、救急外来受診、洗眼処置、目薬処方。翌日改めて眼科を受診したが、異常なし。 |
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◎ |
事例3 【原因製品:漂白剤(塩素系)】
患者 |
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72歳 女性 |
状況 |
台所でポンプ式スプレーの塩素系漂白剤を噴射した際、液がはね返って眼に入った。 |
症状 |
眼の痛み、充血(20分洗眼後も残存) |
処置・転帰 |
2時間〜3時間後、症状は治まり受診せず。 |
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消火剤に関する事例は43件(有症率55.8%)であり、前年度(36件)より増加した。被害状況としては、消火器が倒れて消火剤が噴出した例、誤って噴射し吸入した例等、使用時以外の被害が目立ち、取扱いや保管には十分な注意が必要である。また、火災のため使用の際や、その後の清掃時に吸入する事例も見られ、清掃時にはマスクをするなど、吸い込んだり、目や皮膚に付着しないよう注意が必要である。
◎ |
事例1 【原因製品:粉末消火剤】
患者 |
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26歳 男性 |
状況 |
粉末消火剤を倒して、中身が噴出した。マスクを着用せずに後始末を2時間〜3時間行い、吸入した。翌々日に受診した。 |
症状 |
呼吸困難、全身倦怠感、頭重感、胸部違和感 |
処置・転帰 |
X線検査(異常なし)、血液検査(異常なし) |
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◎ |
事例2 【原因製品:粉末消火剤】
患者 |
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40歳 女性、42歳 男性 |
状況 |
天ぷら油に引火したため、粉末消火剤を使用した。消火後も消火剤の噴射が止まらず、部屋中に充満して吸入した。 |
症状 |
咳、眼の違和感、気分不良 |
処置・転帰 |
直後に換気を行い、しばらくして症状が治まり、受診せず。 |
|
防水スプレーに関しては、過量使用、換気不良等による事故が相変わらず発生しており、使用にあたっては十分な注意を払うよう、改めて注意喚起したい。また、昨今色々な商品が発売されているが、それに伴って家庭の中でも様々な目新しい商品による事故の発生例が報告されている。
◎ |
事例1 【原因製品:防水剤・はっ水剤(エアゾール)】
患者 |
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59歳 男性 |
状況 |
屋外でスキーウェアにエアゾール式の防水剤を1本使用し、風が吹いて少量吸入した。 |
症状 |
翌日嘔気、めまい |
処置・転帰 |
様子を見たところ、2日〜3日で症状が治まり、受診せず。 |
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◎ |
事例2 【原因製品:動物忌避剤(エアゾール)】
患者 |
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41歳 女性 |
状況 |
メガネ、手袋を着用し、エアゾール式の動物忌避剤のノズルを装着する際、薬剤が少量噴出してミスト状の液が目に入った。 |
症状 |
直後眼の刺激感、水洗後、眼の違和感 |
処置・転帰 |
経過観察の後、再び水洗し、症状は治まり、受診せず。 |
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◎ |
事例3 【原因製品:冷却シート】
患者 |
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38歳 女性 |
状況 |
あおむけで使用後の冷却シートを手に持って触っていたところ、ゲル中に分散されているメントール含有の青い粒がはじけ眼に入った。 |
症状 |
眼の痛み、充血 |
処置・転帰 |
十分洗浄したところ、症状は治まり、受診せず。 |
|
この報告は、医療機関や一般消費者から(財)日本中毒情報センターに問い合わせがあった際、その発生状況から健康被害の原因とされる製品とその健康被害について聴取したものをまとめたものである。医療機関に対してはアンケート用紙の郵送により、また一般消費者に対しては電話によって追跡調査を行い、問い合わせ時以降の健康状態等を確認しているが、一部把握し得ない事例も存在する。しかしながら、一般消費者等から直接寄せられるこのような情報は、新しく開発された製品を含めた各製品の安全性の確認に欠かせない重要な情報である。
本報告の情報収集の対象は、吸入事故及び眼の被害に限定しているが、製品については医薬品など「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」上の家庭用品ではないものも集計に加えている。
今年度も前年度同様、子供の健康被害に関する問い合わせが多くあった。保護者は家庭用品等の使用時やその保管方法に十分注意するとともに、製造者も子供のいたずらや誤使用等による健康被害が生じないような対策を施した製品開発に努めることが重要である。
製品形態別では、スプレー式の製品による事故が多く報告された。スプレー式の製品は内容物が霧状となって空気中に拡散するため、製品の種類や成分に関わらず吸入や眼に入る健康被害が発生しやすい。使用にあたっては換気状況を確認すること、一度にたくさんの量を使用しないこと等の注意が必要である。
主成分別では、塩素系の洗浄剤等による健康被害報告例が相変わらず多く見られた。塩素系の成分は、臭いなどが特徴的で刺激性が強いことからも報告例が多いものと思われるが、使用方法を誤ると重篤な事故が発生する可能性が高い製品でもある。製造者においては、より安全性の高い製品の開発に努めるとともに、消費者に製品の特性等について表示等による継続的な注意喚起と適正な使用方法の推進を図る必要がある。
また、事故の発生状況を見ると、使用方法や製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例や、わずかな注意で防ぐことができた事例も多数あったことから、消費者にあっては、日頃から使用前には注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることが大切である。万一事故が発生した場合には、症状の有無に関わらず、(財)日本中毒情報センターに問い合わせをし、必要に応じて専門医の診療を受けることを推奨したい。