1. 家庭用品等に係る皮膚障害に関する報告

(1) 原因家庭用品等カテゴリー、種別の動向
 原因と推定された家庭用品をカテゴリー別に見ると、装飾品等の「身の回り品」が64件で最も多く、次いで洗剤等の「家庭用化学製品」が50件であった(表1)。
 家庭用品の種類別では「洗剤」が36件(21.1%)で最も多く報告された。次いで「装飾品」が35件(20.5%)、「ゴム・ビニール手袋」が17件(9.9%)、「下着」が11件(5.8%)、「洗浄剤」が9件(5.3%)、「ベルト」が8件(4.7%)、「時計バンド」が7件(4.1%)、「時計」及び「スポーツ用品」が各5件(2.9%)、「ブラウス」及び「靴下」が各4件(2.3%)の順であった(表2)。

  注)  「洗剤」 :野菜、食器等を洗う台所用及び洗濯用洗剤
   「洗浄剤」 :トイレ、風呂等の住居用洗浄剤

 報告件数上位10品目について平成15年度と比較すると、上位2品目について「洗剤」と「装飾品」の順位に変動があった。報告件数については、「洗剤」の報告件数は2件減少したものの、全体に対しての割合は約4ポイント増加した。「装飾品」の報告件数は13件減少し、全体に対する割合も約1ポイント減少した。「ゴム・ビニール手袋」については、報告件数は17件で昨年より1件減少したが、全体に対する割合は約2ポイント増加した。また、下着の報告件数が6件増加し、全体に対する割合も4ポイント増加した。更にブラウス、靴下の報告件数が増加し、新たに上位10位に入った等、繊維製品の報告件数の増加が目立った(表2)。その他の上位品目については、報告数、割合に変動があったものの概ね過去の上位10品目と同様の品目で占められていた。
 上位10品目の全報告件数に占める割合を長期的な傾向から見ると、変動はあるものの「洗剤」と「装飾品」の割合が常に上位を占めており(図1)、平成16年度も同様であった。


(2) 各報告項目の動向
 患者の性別では女性が110件(72.8%)と大半を占めた。そのうち30代が30件と全体の19.9%を占め、例年の20歳代に代わり、最も高い割合となっている。この30件中15件はアレルギー性の接触皮膚炎で、このうち7件が金属アレルギーによるものであった。
 障害の種類としては、「アレルギー性接触皮膚炎」が62件(41.1%)と最も多く、次いで「KTPP*型の手の湿疹」が33件(21.9%)、「刺激性皮膚炎」24件(15.9%)、「湿潤型の手の湿疹」が16件(10.6%)、であった。

 注)  KTPP(keratodermia tylodes palmaris progressiva:進行性指掌角皮症)
 手の湿疹の1種で、水仕事、洗剤等の外的刺激により起こる。まず、利き手から始まることが多く、皮膚は乾燥し、落屑、小亀裂を生じ、手掌に及ぶ。程度が進むにつれて角質の肥厚を伴う。

 症状の転帰については、「全治」と「軽快」を合計すると89件(58.9%)であった。なお、本年も「不明」が59件(39.1%)あった。このような転帰不明の報告例は、症状が軽快した場合に受診者が自身の判断で途中から通院を打ち切っているものと考えられる。


(3) 原因製品別考察
 1) 洗剤
 平成16年度における洗剤に関する報告件数は36件(21.1%)であった。報告件数は前年度38件(17.2%)より減少したものの、全報告件数に対する割合は約4ポイント増加し、全体に対する割合は1位に上がった(表2)。
 内訳を見ると、台所用洗剤が原因となった例が20件(55.6%)と過半数を占めた。なお、複数の製品によるものが4件、用途が特定できないものは12件であった。
 洗剤が原因となった健康障害の種類は、KTPP型の手の湿疹が22件(61.1%)、湿潤型の手の湿疹が11件(30.6%)、刺激性皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎がそれぞれ2件(5.6%)であった。
 皮膚を高頻度で水や洗剤にさらすことにより、皮膚の保護機能が低下し、KTPP型の手の湿疹や刺激性皮膚炎が起こりやすくなっていたり、また高濃度で使用した場合に障害が起こったりというように、症状の発現には、化学物質である洗剤成分と様々な要因(皮膚の状態、洗剤の使用法・濃度・頻度、使用時の気温・水温等)が複合的に関与しているものと考えられる。基本的な障害防止策としては、使用上の注意・表示をよく読み、希釈倍率に注意する等、正しい使用方法を守ることが第一である。また、必要に応じて、保護手袋を着用することや、使用後、クリームを塗ることなどの工夫も有効な対処法と思われる。それでもなお、症状が発現した場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、早期に専門医を受診することを推奨したい。

  ◎ 事例1【原因製品:台所用洗剤】
 患者    65歳 女性
 症状  毎年秋〜冬に両手の痒み、鱗屑、亀裂が出現する。10日前より症状が増悪、両手の腫脹を認める。手袋を使用せずに台所用洗剤を使用している
 障害の種類  手の湿疹(乾燥型、いわゆるKTPP型)。
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  軽快(1週間)

<担当医のコメント>
 手袋の使用、外用剤による治療で短期間のうちに著しく軽快。水仕事による一次刺激反応と考える。

  ◎ 事例2【原因製品:洗剤】
 患者    23歳 女性
 症状  受診3日前、洗剤を素手で触って洗った後、両手に痒みを伴う小水疱が多発。
 障害の種類  手の湿疹(浸潤型)
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用、抗アレルギー薬内服
 転帰  軽快

<担当医のコメント>
 急激な発症と皮疹の形態からアレルギー性接触皮膚炎と考えられるが、パッチテストは未実施。

  ◎ 事例3【原因製品:台所用洗剤】
 患者    33歳 男性
 症状  食器用洗剤を長靴の中にこぼしたが、そのまま履いていたところ、足関節〜足背に痒み、落屑を伴う紅斑が出現。
 障害の種類  刺激性皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  全治(7日)

<担当医のコメント>
 経過、症状から、食器用洗剤が誤って長靴に入ったことによる刺激性皮膚炎と判断した。


 2) 装飾品
 平成16年度における装飾品に関する報告件数は35件(20.5%)であった。前年度48件(21.7%)と比較すると報告件数及び、全報告件数に対する割合は共に減少した(表2)。
 原因製品別の内訳は、ネックレスが16件、ピアスが13件、指輪が2件、不明が4件であった。
 障害の種類では、アレルギー性接触皮膚炎が22件(62.9%)と最も多かった。
 金属の装飾品について、19件のパッチテスト施行例が報告され、前年度同様、ニッケルにアレルギー反応を示した例が12件と最も多かった(表3)。このパッチテストは同時に複数の金属について行われたが、ほとんどの場合、被験者は複数の金属に対して強弱の差はあるが、陽性反応を示していた。
 このような金属による健康障害は、金属が装飾品より溶けだして症状が発現すると考えられる。そのため、直接皮膚に接触しないように装着することにより、被害を回避できると考えられる。しかしながら、夏場や運動時等、汗を大量にかく可能性のある時には装飾品類をはずす等の気を配ることが被害を回避する観点からは望ましい。また、ピアスは耳たぶ等に穴を開けて装着するため、表皮より深部と接触する可能性が高いため、初めて装着したり、種類を変えたりした後には、アレルギー症状の発現などに対して特に注意を払う必要がある。
 症状が発現した場合には、原因製品の装着を避け、装飾品を使用する場合には別の素材のものに変更することが症状の悪化を防ぐ上で望ましい。更に、早急に専門医の診療を受けることを推奨したい。ある装飾品により金属に対するアレルギー反応が認められた場合には、金属製の別の装飾品、めがね、時計バンド、ベルト、ボタン等の使用時にもアレルギー症状が起こる可能性があるので、同様に注意を払う必要がある。例えば、最も症例の多いニッケルアレルギーの場合、金色に着色された金属製品はニッケルメッキが施されている場合が多いので注意が必要である。

  ◎ 事例1【原因製品:ネックレス】
 患者    57歳 女性
 症状  4年くらい前より、両足底に掌蹠膿疱症。以前より、イヤリング、ネックレスにかぶれていた。
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  ニッケル(++)、水銀(+)、パラジウム(+)、プラチナ(+)
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  軽快

 注)  掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)(Pustulosis Paimaris et Plantaris;PPP)
 1日20本以上20年間以上の長期喫煙者に多く発症するが、扁桃炎、虫歯、歯科金属アレルギー等が原因で起こる場合もある。手掌、足の裏に小水疱が多発し、更に化膿して周囲は紅斑となり、融合して局面を形成する。痒みを認めることがあるが、通常軽度で、長期にわたって軽快、悪化を繰り返す。合併症として、鎖骨に腫れ、痛みを生じる(胸肋鎖関節炎)こともある。

  ◎ 事例2【原因製品:ネックレス】
 患者    62歳 女性
 症状  金のネックレスをして首に湿疹、紅斑、痒み
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  金(++)、コバルト(+)、ニッケル(+)、クロム(+)
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  全治(14日)

<担当医のコメント>
 パッチテストの結果(金(++))より、金が原因であることは明らかである。


 3) ゴム・ビニール手袋
 平成16年度における報告件数は17件(9.9%)であった。全報告件数に対する割合は、前年度(8.1%)に比べ約2ポイント増加した。素材別の内訳は、ゴム手袋が15件、複数の製品によるものが1件、不明のものが1件であった。
 障害の種類としては、KTPP型の手の湿疹が7件(41.2%)、アレルギー性の接触皮膚炎が6件(35.3%)、湿潤型の手の湿疹が4件(23.5%)、接触じんましんが1件(5.9%)報告された。
 材質に対する反応は個人差があり、特にラテックスアレルギーは、じんましんや発疹と共に、時にアナフィラキシーショック状態等、重篤な障害を招く恐れがあるので、製造者において、天然ゴム製品中のラテックス蛋白質の含有量を低減する努力が引き続き行われることが重要であるとともに、天然ゴムラテックスに対するアレルギー反応の有無等、自己の体質にも注意が必要である。基本的には、既往歴があり、ゴム・ビニール手袋による皮膚障害が心配される場合には、以前問題が生じたものとは別の素材のものを使うようにする等の対策をとる必要がある。はじめ軽度な障害であっても、当該製品の使用を継続することにより症状が悪化してしまうことがあり得る。また、原因を取り除かなければ治療効果も失われてしまうので、何らかの障害が認められた場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、専門医を受診することを推奨したい。

  ◎ 事例1【原因製品:ゴム手袋】
 患者    23歳 男性
 症状  ゴム手袋を着用したところ、24時間後に両手に痒みを伴う紅斑、腫脹が出現。
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ゴム手袋の着用を避ける
 転帰  不明

<担当医のコメント>
 急激な発症と皮疹の形態からゴム手袋による接触じんましんを疑ったが、ラテックスによるプリックテストは陰性で、ラテックスアレルギーは否定的。


 4) 下着
 平成16年度における下着に関する報告件数は11件(6.4%)であった。前年度は4件(1.8%)であり、報告件数は増加した(表2)。
 障害の種類としては、刺激性皮膚炎が7件(63.6%)、アレルギー性接触皮膚炎が3件(27.3%)、接触じんましんが1件(9.1%)であった。
 下着の種類としては、ガードル、パンツ、ブラジャー等、様々な製品が報告されているが、矯正下着等伸縮性の強いものや繊維以外のシリコン等、新しい材質の下着による報告もあり、引き続き注目する必要がある。原因物質としては、化学繊維が3件、ゴムが1件、不明が8件見られた(重複事例含む)。下着は長時間にわたって直接触れるため、何らかの障害が認められた場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、専門医を受診することを推奨したい。

  ◎ 事例1【原因製品:下着】
 患者    32歳 女性
 症状  初診4日前からダイエットパンツを履いたところ、痒い皮疹が出現。
 障害の種類  接触じんましん
 パッチテスト  不明
 治療・処置  抗アレルギー薬内服
 転帰  全治(7日)

  ◎ 事例2【原因製品:下着】
 患者    41歳 女性
 症状  シリコン製下着を胸に付けた翌日、痒み、皮膚の発赤出現。
 障害の種類  刺激性皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  なし。使用を避ける
 転帰  全治(14日)

<担当医のコメント>
 密着度の高い下着は、発汗時等に刺激性の皮膚炎を起こすことがあるので注意が必要。


 5) 洗浄剤
 平成16年度における洗浄剤に関する報告件数は9件(5.3%)であった。前年度8件(3.6%)と比べると報告件数、全報告件数に対する割合とも増加していた(表2)。
 障害の種類は、KTPP型の手の湿疹が4件(44.4%)、化学傷害、刺激性皮膚炎、湿潤型の手の湿疹がそれぞれ2件(22.2%)であった(重複事例含む)。
 洗浄剤には酸やアルカリを含むものがあり、特にアルカリ性のものは皮膚に付いた時の刺激は少ないが、放置すると色素沈着を起こしたり、更にひどい場合には化学傷害を起こしてしまうことがある。基本的に、使用に際しては手袋等を着用し、皮膚についてしまったらすぐに水でよく洗い流すことが重要である。また、洗剤と類似の成分を含有するものもあり、この場合洗剤の頁と同様の注意をすることが望ましい。

  ◎ 事例1【原因製品:住宅用洗浄剤】
 患者    28歳 男性
 症状  手袋をした上で、住宅用洗浄剤(業務用)を使用したところ、気付かないうちに洗浄剤に接触し、2時間後から両手関節付近に滲出を伴うびらん、発赤、疼痛が出現。
 障害の種類  化学傷害
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  軽快

<担当医のコメント>
 業務用洗浄剤は消費者製品に比べて、濃度が高く傷害を起こしやすいので注意が必要である。

  ◎ 事例2【原因製品:風呂用洗浄剤】
 患者    84歳 女性
 症状  誤って1か月前に風呂用洗浄剤に接触してから、右足の痒み、皮疹。
 障害の種類  刺激性皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  軽快


 6) その他
 その他、被害報告件数が多かったものはベルトが8件(4.7%)、時計バンドが7件(4.1%)、時計及びスポーツ用品が各5件(2.9%)、ブラウス及び靴下が各4件(2.3%)であった。

  ◎ 事例1【原因製品:ベルトのバックル】
 患者    30歳 女性
 症状  10年以上前より、腕時計やベルトのバックルでかぶれている。今回もベルトでかぶれて来院。
 傷害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  ニッケル(+++)、クロム(+)、水銀(+?)金(+?)、パラジウム(+)、プラチナ(+?)亜鉛(+?)
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  軽快

<担当医のコメント>
 ローライズのジーンズの流行などで、ベルトが直接肌に触れることが多くなると、こうした症状を発現する可能性が高くなり、注意が必要である。

  ◎ 事例2【原因製品:ベルト】
 患者    36歳 男性
 症状  革製ベルトが当たる下腹部に痒みが広がってきた。
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  p-tBTFR(+++)、コロフォニ(++)、クロム(+?)、プラチナ(+?)
 治療・処置  ステロイド薬外用、抗アレルギー薬外用
 転帰  全治(20日)

<担当医のコメント>
 p-tBTFR(+++)より、おそらく接着剤が原因と考えられる。

  ◎ 事例3【原因製品:時計・時計バンド】
 患者    49歳 女性
 症状  3か月前にも革製の時計バンドでかぶれたが、2,3日前より、同じ時計バンドを装着して、左手首に発疹出現。
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  全治(30日)

  ◎ 事例4【原因製品:サンダル】
 患者    27歳 男性
 症状  小児期よりアトピー性皮膚炎あり。数年前より素足でプラスチックのサンダルを履いていたところ、3か月くらい前より両足背に色素沈着、2,3日前より右足背に水疱出現。
 障害の種類  刺激性皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  軽快

<担当医のコメント>
 夏場に素足でサンダル等を履くと、摩擦や化学物質による刺激性皮膚炎を生じることがあるので注意が必要である。

  ◎ 事例5【原因製品:金属チェーン】
 患者    27歳 女性
 症状  金属製の肩ひもが付いた洋服を着て、翌日、両肩に紅色発疹多発。
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  不明

<担当医のコメント>
 以前にネックレスでかぶれた既往がある。金属アレルギーのある人は、衣服にも留意する必要がある。

  ◎ 事例6【原因製品:ビューラー】
 患者    37歳 女性
 症状  2か月前から眼囲皮疹あり。ビューラーを使っている。
 障害の種類  アレルギー性接触皮膚炎
 パッチテスト  ニッケル(++)
 治療・処置  ビューラーの使用を中止
 転帰  全治(14日)

  ◎ 事例7【原因製品:スプレー式エアクリーナー】
 患者    39歳 男性
 症状  駅の階段から転倒した際、パソコン周辺機器のほこり除去用のスプレー式エアクリーナーを両足首に噴射し、弛緩性水疱を伴う暗紅色斑を認めた。
 障害の種類  化学傷害
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用
 転帰  不明

<担当医のコメント>
 スプレー中の成分の冷却作用による凍傷が疑われる。

  ◎ 事例8【原因製品:灯油】
 患者    62歳 男性
 症状  シロアリが発生したため、灯油を散布した。2日後より両前腕に痒い皮疹を生じた。両前腕伸側に淡紅色の浮腫性紅斑、丘疹を認める。
 障害の種類  刺激性皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用、抗アレルギー薬内服
 転帰  不明

<担当医のコメント>
 シロアリ駆除に用いた灯油による刺激性皮膚炎と考えた。灯油が皮膚に付着した際に水で洗ったのみであった。

  ◎ 事例9【原因製品:ナイロンタオル】
 患者    79歳 男性
 症状  1週間前より全身の痒みが生じ受診。後頚〜上背部に色素沈着が見られる。下腿に乾燥性皮膚、上肢に鱗屑を伴う紅斑が認められた。ナイロンタオルを使用している。
 障害の種類  色素沈着・皮脂欠乏性皮膚炎
 パッチテスト  未実施
 治療・処置  ステロイド薬外用、保湿薬外用
 転帰  不明

<担当医のコメント>
 患者は、ナイロンタオルが摩擦黒皮症や皮脂欠乏性皮膚炎の発症に関与した可能性に気付いていないことが多いため、啓発が必要である。


(4) 全体について
 平成16年度の家庭用品等を主な原因とする皮膚障害の種類別報告全171件のうち、62件はアレルギー性接触皮膚炎であった。この中でも、装飾品、めがね、ベルトの留め金、時計や時計バンドなどで見られた金属アレルギーが約半数を占めた。
 家庭用品を主な原因とする皮膚障害は、原因家庭用品との接触によって発生する場合がほとんどである。家庭用品を使用することによって接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる家庭用品の使用は極力避けることが望ましい。故意、若しくは気付かずに原因製品の使用を継続すると、症状の悪化を招き、後の治療が長引く可能性がある。
 症状が治まった後、再度使用して同様の症状が発現するような場合には、同一の素材のものの使用は以後避けることが賢明であり、症状が改善しない場合には、専門医の診療を受けることが必要である。本年は報告されなかったが、天然ゴム手袋のラテックス蛋白質に対するアナフィラキシーショックのように重篤なものもあるので、注意が必要である。
 また、日頃から使用前には必ず注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることや、化学物質に対して感受性が高くなっているアレルギー患者等では、自分がどのような化学物質に反応する可能性があるのかを認識し、使用する製品の素材について注意を払うことも大切である。

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