厚生労働省発表
平成17年12月7日
担当 厚生労働省労働基準局安全衛生部
 安全課長  高橋 哲也
 技術審査官  安井省侍郎
 電話 03-5253-1111(内線5488)


全国の高速道路会社等に対するETCレーン
における労働災害防止の徹底について

−料金収受員の労働災害防止のための設備的な安全対策について指導−


 全国の高速道路会社等において設置が進められている有料道路自動車料金収受システム(ETC)において、その異常処理業務等に伴い、料金収受員がETCレーンを横切る際に通過車両により被災する労働災害が続発しており、去る9月22日にも首都高速道路料金所において収受員が死亡するなど、平成14年以降、4件の死亡災害を含め、20件の死傷災害が発生している。今後、ETCの更なる普及に伴って、こうした災害の増加が懸念される。
 ETCレーンにおいては、車が停止することなく当該レーンを通過することから、労働災害の防止のためには、高速道路会社等による安全通路の確保等の設備的な安全対策の実施が必要不可欠である。
 このような状況を踏まえ、同種災害の防止の徹底を図るため、厚生労働省労働基準局長は、都道府県労働局長を通じて、別添の内容により管内の高速道路会社等に対し、ETCレーンにおける労働災害を防止するための設備的な安全対策等の実施を指導する。また、併せて、本日、国土交通省に対し、各高速道路会社等に対する指導等を要請した。

 対象
 東日本高速道路(株)、中日本高速道路(株)、西日本高速道路(株)、本州四国連絡高速道路(株)、首都高速道路(株)、阪神高速道路(株)及び地方道路公社(13社)
 実施内容
(1)都道府県労働局長から管内の高速道路会社等に対し、12月21日までに別添の事項について指導を行うとともに、措置内容について報告を求める。
(2)(1)の報告を踏まえ、都道府県労働局において継続的な指導を実施する。



(別添)

高速道路会社等に対する指導事項


 ETCにおける収受員の交通労働災害を防止するため、ETCレーンにおいて、以下の措置を講ずること。

 (1)ETCに異常が発生した場合の対処等のため、労働者が異常が発生した場所に安全に到達できるようにするため、以下の措置を講ずること。
 地下通路、屋上連絡通路等による安全通路を確保し、ETCレーンを横切ることなく異常箇所に到達できるようにするとともに、柵等により、労働者がETCレーンに容易に立ち入れないようにする設備的措置を実施すること。
 設備の構造上の制約等により、アによる措置が実施困難な場合、アイランドからETCレーンに立ち入る際に、(1)信号、誘導表示等をブース内で切り替え可能とするとともに、(2)遠隔操作等により当該ETCレーンの車両の通行を物理的に遮断できる設備的対策を講じること。
 ア又はイの措置を実施した上で、ETCに異常が発生した場合の対処等のためのマニュアルを整備するとともに、安全教育を実施し、収受員に周知徹底すること。

 (2)(1)の措置が直ちに実施できない場合は、年次計画を作成し、(1)の措置を実施できる時期を明確にした上で計画的に実施すること。その上で、(1)の措置が実施されるまでの間、以下の対策を実施すること。
 アイランドからETCレーンに立ち入る際に、信号を赤信号へ、誘導表示内容を「閉鎖」等に切り替えること。
 アイランドからETCレーンに立ち入れる箇所を限定した上で、当該箇所にそれを開放しなければETCレーンに立ち入れない横棒・ロープ等の設備的措置を講ずること。
 (1)ウのマニュアルに加え、(2)のア及びイの措置を講ずるための実施事項及びETCレーンを横切る際の注意事項を定めたマニュアルを整備するとともに、安全教育を実施し、収受員に周知徹底すること。

 (3)料金収受業務を外部業者に委託する場合は、受託業者が(1)ウ及び(2)ウのマニュアル作成及び安全教育を適切に実施できるよう、受託業者に対し、資料の提供等必要な指導援助を行うこと。



(参考)
ETCレーンに関連する労働災害発生状況


 災害発生状況(平成14年〜平成17年11月末)
  平成14年 平成15年 平成16年 平成17年
死傷災害 20
うち死亡災害
(注)死亡災害は厚生労働省調べ。死亡災害以外については、各高速道路会社等からの情報による。

 死亡災害事例
事例1
 発生日 平成15年9月
 発生場所 阪和自動車道和歌山インターチェンジ
 発生状況
 被災者は8レーンのブースに行ったが鍵を管理事務所に忘れてきたことから、10レーンの従業員に鍵を借りるため、地下道を経由せず、8レーンとETC専用レーンである9レーンを横断して10レーンのブースへ移動し、鍵を借りて戻るときに9レーンで10トントラックに接触した。
 なお、地下道を通じて偶数レーンに付随するアイランド(料金収受ブースほか各種機材の設置された区画)に出られるようになっている。

事例2
 発生日 平成15年12月
 発生場所 東北自動車道上り線浦和本線料金所
 発生状況
 ETC専用レーン(レーン13)での通行料金決済ができなかったため停車していた貨物自動車を進入禁止となっているレーン11に誘導し、通行料金支払い用クレジットカードを運転手より受け取り一般車両通行可能として開いていたレーン17の料金収納機で料金支払いの処理をした。
 その後、クレジットカードを待機していた貨物自動車運転手に返すためETC専用レーン(レーン12)を、信号を赤に切り替える等車両の通行を遮断することなく横断中、同レーンに進入してきた貨物自動車にはねられた。
 なお、一つおきのレーンをつなぐ地下通路が設備されており、ETC専用レーンには車線横断注意バーが取り付けられていた。

事例3
 発生日 平成16年5月
 発生場所 阪神高速池田線大阪空港本線料金所
 発生状況
 被災者が収受していた第2レーンが混在運用からETC専用運用に切り替えられたことにより、第2ブースでの収受金等を整理し、第3ブースに移した後、再び第2ブースへ移動する際に第2レーンを横断中、レーンに進入してきた大型タンクローリ車の車両右前部にはねられた。
 なお、各ブース間には、陸橋が設けられている。

事例4
 発生日 平成17年9月
 発生場所 首都高速4号新宿線初台下り料金所
 発生状況
 被災者2名がETC混在レーン(第2レーン)で料金収受業務を行っていたところ、ETC専用レーン(第1レーン)において異常が発生したため、被災者が状況確認をしようと第2ブースを出てETC混在レーン(第2レーン)を横切ろうとしたところ、同レーンに進入してきた大型トラックにはねられた。
 なお、本料金所は2レーンであり、地下通路等は設けられていない。

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