第4  地方労働行政展開に当たっての基本的対応
 1  総合的労働行政機関としての機能(総合性)の発揮
 都道府県労働局における労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政がそれぞれの専門性を一層発揮しつつ、厳しさの残る雇用情勢下での労働条件の確保、雇用の安定等三行政が連携して取り組む必要のある課題や、少子・高齢化の下での働き方の見直しや仕事と子育ての両立支援等それぞれの行政分野の枠組みを超えて一体となった対応が必要となる課題も増加していることから、こうした課題について、三行政の連携をより一層密にし、労働保険適用徴収業務や総合労働相談業務も含め、総合労働行政機関としての機能を発揮していく必要がある。
 複数の行政分野による対応が求められている課題について、都道府県労働局内関係部室の連携、労働基準監督署内又は公共職業安定所内の関係部門間の連携を図り、局署所が一体となって機動的かつ的確な対応を図る。
 また、それぞれの重点課題への対応に当たっては、他の行政分野において実施される集団指導、説明会など事業主や労働者が一堂に会する場を積極的に活用し、合同開催とするなど効果的・効率的な方策を講ずるものとする。
 こうした取組を推進するため、都道府県労働局内の各部室並びに管内の労働基準監督署及び公共職業安定所で実施を予定している行事等についての情報を相互に共有し活用するとともに、部局内の会議について、創意工夫をこらした業務展開の在り方、行政間連携方策等を検討する場として機能するよう活用する。

 2  計画的・効率的な行政運営
(1)  計画的な行政運営
 都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所における行政運営に当たって、各行政分野ごとの課題及び分野横断的な課題について的確に対応していくため、各地域の実情を踏まえた重点施策を盛り込んだ行政運営方針を策定し、これに基づいて計画的な行政運営に努める。
 また、行政運営方針等に基づき、業務運営の進捗状況を定期的に分析し、当初の目標に沿った実施状況となっているかフォローアップを行うよう努める。
(2)  事務の簡素合理化と業務運営の重点化
 国の行政組織等の簡素・効率化については、中央省庁等改革以来の行政の構造改革を着実に推進することが求められており、地方労働行政もこうした趣旨を踏まえて、行政事務の簡素合理化や行政需要の変化に対応した業務運営の見直しを図る必要がある。このため、
 第一に、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所において、これまでにも増して独自の工夫を凝らして事務の簡素合理化を進める。
 第二に、経済社会の構造的な変化に伴い、労働行政における課題が増大するとともに複雑困難化する中で、都道府県労働局を中心として時々の地方労働行政における重要かつ困難な課題へ対応するため、限りある行政資源を集中的に投入するなどそれぞれの行政分野に応じて業務運営の重点化を強力に推進する。
 第三に、庶務関係業務等の都道府県労働局への集中化について着実に推進することにより、事務の効率化を図る。
(3)  既存の業務執行体制の在り方の見直し
 都道府県労働局において、地域経済の動向も分析した上で、行政需要の変化を具体的な指標に基づいて把握し、その結果を踏まえて署所も含めた業務の運営方法や職員の配置等の業務執行体制について積極的に見直しを進めることはもとより、行政需要に的確に対応するための行政体制のあるべき姿についても検討し、可能なものから逐次実施する。
(4)  行政情報化への対応
 都道府県労働局の情報化については、労働局総務情報システム、労働基準行政情報システム、職業安定行政システム及び雇用均等行政情報システム(平成17年度からは労働局総務情報システムのサブシステムとして稼働)等を積極的に活用して行政事務の情報化を推進する。
 また、官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)及び電子入札システムを活用して、会計事務及び入・開札事務の適正化、効率化を図るとともに、労働局総務情報システムのサブシステムであるりん議・決裁システム及び電子公文書発行システムの活用により、都道府県労働局の行政事務の一層の効率化を図る。
 国民等と行政との間の申請・届出等手続の電子化への対応に関しては、平成15年10月より労働保険適用徴収システムによる電子申請が稼働したほか、平成16年3月以降、都道府県労働局が所掌する申請・届出等手続について、インターネットを利用してオンラインで行えることとされたことを踏まえ、その的確な受付審査の実施により、国民の利便性・サービスの向上を図る。
 情報セキュリティに関しては、厚生労働省情報セキュリティポリシーに基づき、本省システム及び各都道府県労働局独自システムの各情報セキュリティ実施手順等に従って、情報セキュリティの確保の徹底を図る。

 3  地域に密着した行政の展開
(1)  地域の経済社会の実情の的確な把握
 地方労働行政を取り巻く情勢及び課題を適切に踏まえた施策を企画、実施し、地域における行政ニーズに的確に応えていくため、都道府県労働局においては、総合労働相談コーナーに寄せられた相談をはじめ各部で得られた情報の活用に努める。また、関係行政機関及び関係団体等との連携を密にしつつ、地域経済情勢、地域における主要産業・企業の動向等を逐次、綿密に把握し、その的確な分析の上に立って適切な行政課題を設定し、それに対し、的確な行政運営に努める。
(2)  地方公共団体等との連携
 雇用施策を始めとする労働施策について、国と地方公共団体はそれぞれが行う施策が密接な連携の下に円滑かつ効果的に実施されるよう相互に連絡・協力することが重要である。このため、業務執行面で恒常的に窓口同士の接触が不可欠となる業務の円滑化を一層進めるとともに、労働関係連絡会議の開催等都道府県労働局長と知事等都道府県幹部が労働施策全般にわたり、実のある意見交換を行う場を通じて、相互の連携基盤を強化する。
 また、地域の実情に即した雇用施策の推進に係る具体的な連絡調整、情報交換等を行う場として、引き続き、雇用対策連絡調整会議を開催する。
 さらに、市町村、他の地方支分部局等との連携にも十分配意する。
(3)  労使団体等関係団体との連携
 地域における行政ニーズに即応した地方労働行政を展開するためには、労使団体の要望を適切に把握し、これを業務運営に適切に反映するとともに、都道府県労働局から労使団体に対して必要な働きかけを適時適切に行っていくことが必要である。このため、都道府県労働局長以下局の幹部が地域を代表する労使団体の幹部から労働行政全般にわたって率直な意見や要望を聞くとともに、幅広い闊達な意見交換を行う場である地域産業労働懇談会の開催や日常的な意見交換を通じて、労使団体との連携を図る。
 また、地域の実情に応じた施策の効果的な推進を図るため、地方労働審議会において、公労使の意見をきめ細かく把握し、行政運営に的確に反映するよう努めるとともに、関係団体、有識者及び調査研究機関等とも緊密な連携を図る。
(4)  積極的な広報の実施
 広報活動は、労使はもとより国民全体の労働行政に対する理解と信頼を高めるために重要であることから、適切な時期・手段により、必要に応じ関係団体等との連携を図りつつ、創意工夫を凝らした広報活動を積極的に推進する。
 特に、都道府県労働局において、局幹部とマスコミ関係者との定期的な懇談の場を設けるとともに、各行政における重要施策、法制度の改正等の動向及び主要な統計資料等を分かりやすく適時適切に提供すること等を通じて、マスコミとの日常的な接触に努める。
 また、重要施策等の周知に当たっては、都道府県・市町村や労使団体の広報誌等を活用し、幅広くかつ効果的な広報活動を推進する。
(5)  情報公開制度の適切かつ円滑な実施
 都道府県労働局における情報公開制度の実施に当たっては、総務部企画室を中心として国民からの開示請求に対して適切に対応するとともに、「情報公開事務処理の手引」に基づく的確な処理に努めることにより、情報公開法の適正かつ円滑な運用を図る。
 また、情報公開制度を適正かつ円滑に運用するために、各都道府県労働局の文書管理規程に基づく適正な文書管理に努めることにより、行政文書の保存期間内の保存を徹底するとともに、定期的に行政文書ファイル管理簿の適正な見直し及び整備を図ることにより、行政文書ファイル管理簿に記載する行政文書の一層の適正化を図る。
(6)  行政機関個人情報保護法の円滑な施行等
 行政機関個人情報保護法の円滑な施行
 平成17年4月から「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」が施行されることに伴い、国の行政機関においては、開示請求、訂正請求及び利用停止請求に対し、同法に定めるものを除いて保有する個人情報の開示、訂正又は利用停止等を行うこととなることから、行政事務の適正かつ能率的な遂行はもとより、同法の適正かつ円滑な運用に資するためにも、個人情報の適正な管理を図る。
 雇用管理に関する個人情報の適切な取扱い
 個人情報保護法及び同法に基づく「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」が、平成17年4月から施行されることから、総務部企画室及び関係部室において、同法及び同指針の内容等の周知徹底に努めるとともに、雇用管理に関する個人情報に係る苦情処理・相談受付や、個人情報取扱事業者に対する助言、勧告・命令等の手続を的確に実施する。
 また、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成16年10月29日付け基発第1029006号)の周知徹底を図る。

 4  綱紀の保持と行政サービスの向上
(1)  綱紀の保持
 労働行政は、労使を始め国民全体の信頼を得て初めて業務が円滑に施行されるものであり、その有する権限も大きいことから、国民の信頼と期待を裏切ることがないよう、管理者はもとよりすべての職員が綱紀の厳正な保持と徹底を図るよう、特に以下の点に万全を期する。
 国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程等を踏まえ、一層の綱紀の保持に努める。
 会計経理事務、徴収事務等金銭に関わる業務については、定められた事務処理手順の徹底、責任体制の明確化、職員相互の内部牽制体制の確立等による適正な事務処理の徹底を図る。さらに、契約事務の適正化、支払事務の一層の厳格化、公印等の適正な管理について、徹底する。
(2)  行政サービスの向上
 国民から信頼される行政を実現するためには、利用者の立場に立った親切でわかりやすい窓口対応、事務処理の迅速化等行政サービスの向上に努める必要がある。平成14年度から平成16年度まで、「さわやか行政サービス推進委員会点検計画」を実施してきたところであるが、同計画の期間終了後も、引き続き、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の窓口を中心に、職員の応接態度や事務処理の迅速化等行政サービスの改善に努める。

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