厚生労働省発表
平成17年3月30日

厚生労働省労働基準局労働保険徴収課
 課長  森岡 雅人
 課長補佐  入江 祥二
 電話  03-5253-1111(内線5156)
  03-3502-6722(夜間直通)

労働保険未手続事業一掃対策の実施について


【要旨】
 労働保険(労災保険・雇用保険)の未手続事業の解消については、労働保険制度の健全な運営、費用の公平負担、労働者の福祉の向上等の観点から極めて重要である。
 未手続事業の解消に当たっては、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所との連携を強化するとともに、労働保険事務組合を活用した適用促進を強化させる。
 都道府県労働局職員等の手続指導によっても、自主的に成立手続を取らない事業主については、職権により成立手続を行う。

 趣旨
 労働保険(労働者災害補償保険・雇用保険)は、昭和50年に全面適用となっており、現行制度では、原則として労働者を一人でも雇用している事業主は、すべて保険関係成立の手続をしなければならないこととなっている。しかしながら、現在においても商業・サービス業等の小規模零細事業を中心に保険関係成立の手続が未手続の事業がなお相当数残されている実情にある。
 これら未手続事業の解消は、これまでも重点施策の一つとして取り組んできたところであるが、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)においても職権の積極的行使等による未手続事業の一掃が盛り込まれるなど、早急な取組が求められているところであり、労働保険制度の健全な運営、費用の公平負担、労働者の福祉の向上等の観点から極めて重要である。
 このため、厚生労働省では、平成17年度から、これらの未手続事業を一掃させる取り組みを実施することとしており、平成17年3月31日に各都道府県労働局に対して、その取り組みについて通知をすることとしている。

 具体的な取組
 未手続事業の解消に当たっては、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の緊密な連携により取り組むこととしており、事業主に対する手続指導はもとより、未手続事業の情報を把握するに当たっては、労働保険適用徴収部門に限らず、他の担当部門や関係機関からの協力を得て的確に情報の把握を行う。
 また、労働保険の適用促進については、従来から全国の労働保険事務組合を構成員として組織された社団法人全国労働保険事務組合連合会に委託し、その統一的な指導の下に、労働保険事務組合を通じた労働保険の加入勧奨を積極的に推進してきているところであるが、その加入勧奨活動についても一層の強化を図ることとする。
 さらに、労働保険の保険関係成立の手続は、事業主が自主的に行うことが原則であるが、都道府県労働局、労働基準監督署、公共職業安定所及び労働保険事務組合による手続指導及び加入勧奨活動によっても、自主的に成立手続を取らない事業主については、職権により保険関係成立の手続を行い、労働保険料を認定決定する。



労働保険未手続事業の一掃対策について


 都道府県労働局と労働保険事務組合とが連携し、労働保険の未手続事業の解消に効果的に取り組む。


図



規制改革・民間開放推進3か年計画(抜粋)

(平成16年3月19日閣議決定)


II 重点計画事項

(分野横断的な取組)

 「規制改革推進のためのアクションプラン」の適切な実行

14 労災保険の見直し及び雇用保険事業の民間開放の促進など

 (1)労災保険

(1) 労災保険強制適用事業所のうち未手続事業所の一掃(職権による成立手続の徹底等)【平成16年度中に結論】
 労災保険の現行制度の下では、原則として、ある事業所が労働者を1人でも使用すれば、当該事業所は「強制適用事業所」となり、事業が開始された日から自動的に保険関係が成立する。このため、保険関係成立届を届け出ていない(保険料未納付である)事業所で生じた労災事故についても、労働者保護の観点から、被災労働者は給付を受けることができる仕組みとしている。
 こうした中で、すべての強制適用事業所のうち、現に保険関係成立届を届け出ている事業所数は約270万であるが、他方、未手続事業所は、最大限約60万(全体の約14%)存在するとされている(平成13年度推計値・厚生労働省提出資料より)。
 このように、労災保険は、本来、強制適用保険制度であるにもかかわらず、事業主の中にはそれを十分に認識していないケースや、未手続事業所に対し労働基準監督署の職権による成立手続を十分に行っていないことなどにより、事業所間の公平性等が保たれていない。
 なお、使用者が故意または重過失により労災保険に加入していない期間に事故が発生した場合には、療養開始後3年以内の場合に限って、保険料のほか、保険給付額の全部又は一部(最大限40%程度)を徴収することとしている。法律上、保険給付に要した費用の全部を徴収できるにもかかわらず、そのような運用をしていないことや、故意又は重過失のある場合を限定的に解していることについて、厚生労働省は「使用者に対して経済的な過大な負担を強いることや、労災保険への加入手続が行われないこと自体を防ぐため」としているが、こうしたことが、一部使用者のモラルハザードを助長し、結果的に労災事故防止の妨げとなっていると考えられる。
 したがって、こうした未手続強制適用事業所を一掃するため、周知・啓発や加入勧奨にとどまらず、労働基準監督署の職権等の積極的な行使などの措置を講ずる。

トップへ