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平成16年12月22日
照会先  厚生労働省医薬食品局
 審査管理課化学物質安全対策室
 室長 成田 昌稔 (2421)
 室長補佐 野村 由美子 (2423)
 専門官 中島 宣雅 (2910)
 電話代表 5253-1111


平成15年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告について



 厚生労働省は家庭用品に係る健康被害病院モニター報告制度により、家庭用品等に係る健康被害の実態を把握し公表することにより、家庭用品の安全対策を一層推進することを目的として、皮膚科領域8病院、小児科領域8病院、(財)日本中毒情報センターの協力を得て健康被害情報を収集している。今般、平成15年度の報告を家庭用品専門家会議(危害情報部門)(座長:新村眞人 東京慈恵会医科大学皮膚科名誉教授)において検討し、その結果をとりまとめた。概要は別添のとおり。
 厚生労働省としては、地方公共団体、関係業界団体等に対し本報告を周知するとともに引き続き本制度を通じ、家庭用品に含有される化学物質による健康被害の実態の把握に努めることとする。
 なお、本調査は、家庭用品による健康被害の発生を網羅的に把握するための実態調査ではなく、健康被害防止の観点から現状をモニターし必要な対応を行うための制度である。




(別添)

平成15年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告(概要)


 本制度は、モニター病院(皮膚科8施設、小児科8施設)の医師が家庭用品等による健康被害とした事例(皮膚障害、小児の誤飲事故)について、また、(財)日本中毒情報センターが収集した家庭用品等による吸入事故等と思われる事例について、それぞれ厚生労働省に報告する方法により行っているものである。
 平成15年度に報告された事例の件数は、皮膚科194件(前年度172件)、小児科859件(同672件)、吸入事故等742件(同681件)で合計1,795件(同1,525件)であった。なお、昨年度より多くの報告がなされているが、これはモニター病院の追加等により調査範囲が広がったこと、昨年度の報告件数が例年より少なかったことなどによるものである。

(1) 家庭用品が原因と考えられる皮膚障害に関する報告
 (1) 調査結果の概要と考察
原因家庭用品は、装飾品が48件、洗剤が38件、ゴム・ビニール手袋が18件等であった(参考参照)。これは例年と同様の傾向であった。
患者の性別では、女性が146件(75.3%)と大半を占めた。そのうち20代の女性が43件と全体の22.2%を占め、年齢・性別集計で最も多かった。
障害の種類のうち主なものは、アレルギー性接触皮膚炎が75件、刺激性皮膚炎が58件、KTPP型の手の湿疹が27件等であった。
KTPP(keratodermia tylodes palmaris progressiva:進行性指掌角皮症)
 手の湿疹の1種で、水仕事、洗剤等の外的刺激により起こる。まず、利き手から始まることが多く、皮膚は乾燥し、落屑、小亀裂を生じ、手掌に及ぶ。程度が進むにつれて角質の肥厚を伴う。

 家庭用品との接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる家庭用品の使用を極力避けることが望ましい。再度使用して同様の症状が発現する場合には、同一の素材のものの使用は避けることが賢明であり、症状が改善しない場合には、専門医の診療を受けることが必要である。また、日頃から使用前には必ず注意書をよく読み、正しい使用方法を守ること、自己の体質について認識し、製品の素材について注意を払うことも大切である。

 (2) 原因製品別結果と考察
(装飾品)
装飾品に関する報告件数は48件(21.7%)であり、製品別の内訳は、ネックレスが19件、ピアスが17件、指輪が4件等であった。
障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎が29件(60.4%)と最も多かった。
25件についてパッチテストが実施され、前年度同様ニッケルにアレルギー反応を示した例が15件と最も多かった。

 汗を大量にかくような運動をする際には装飾品類をはずすことが望ましい。また、ピアスは表皮より深部に接触する可能性が高く、初めて装着したり、種類を変更したりした後には、症状の発現に特に注意して使用する必要がある。
 症状が発現した場合には、原因製品の装着を避け、装飾品を使用する場合には別の素材のものに変更することが必要である。また、早急に専門医の診療を受けることを推奨したい。

(洗剤)
洗剤に関する報告件数は38件(17.2%)であり、製品別の内訳は、台所用洗剤が20件、洗濯用洗剤が2件等であった。
障害の種類は、KTPP型の手の湿疹が16件、刺激性の皮膚炎が14件、湿潤型の手の湿疹が10件等であった。

 原液での使用など、不適切な使用法を避け、使用上の注意・表示をよく読んで正しく使用することが重要である。また、必要に応じて、保護手袋を着用することや、使用後保護クリームを塗ることなどの工夫も有効と思われる。それでもなお、症状が発現した場合は原因と思われる製品の使用を中止し、専門医を受診することを推奨したい。


(2) 家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告
 (1) 調査結果の概要と考察
誤飲事故の原因製品は、タバコが350件、医薬品・医薬部外品が99件等であった(参考参照)。これは例年と同様の傾向であった。
上位品目の全件数に占める割合の長期的傾向を見ると、変動はあるもののタバコの占める割合が依然として多かった。
誤飲事故全体の約55.6%が午後4時から午後10時の間に発生していた。

 乳幼児は、身の回りのあらゆるものを分別なく口に入れてしまうことから、保護者は子供の周囲の環境に気を付けなければならない。乳幼児の口に入るサイズはおよそ直径3cmといわれており、このサイズ以下のものには注意が必要である。食品類であっても状況次第では危険なものになるいうことを認識する必要がある。特に報告事例も多く、重篤な事例に陥る可能性のあるタバコや医薬品・医薬部外品等には注意を怠らないよう努める必要がある。

 (2) 原因製品別結果と考察
(タバコ)
タバコに関する報告件数は350件(40.7%)で、小児科報告件数の約4割を占めていた。
事故は生後6〜11か月の乳児に発生が集中(211件,61.4%)しており、さらに12〜17か月の幼児とあわせると報告例の88.3%を占めた。

 タバコや灰皿は乳幼児の手の届かないところに保管するなど、それらの取扱いや置き場所に配慮が必要である。特に子供が生後6か月から1年6か月の場合には細心の注意を払う必要がある。

(医薬品・医薬部外品)
医薬品・医薬部外品に関する報告件数は99件(11.5%)であり、入院事例も報告されている。
誤飲事故は、各年齢層においてみられたが、特に1〜2歳児に多く、報告件数は74件(74.7%)であった。

 誤飲事故の大半は、医薬品等の保管を適切に行っていなかった場合や、保護者が目を離したすきに発生していた。小児の医薬品の誤飲は症状が発現する可能性が高く、保管・管理に十分注意する必要がある。

(その他)
今年度は玩具の誤飲が例年より多く報告されている(91件)。製品別の内訳は、おはじき、キーホルダー、ビー玉、ビーズなど多様である。
新たに誤飲が増えてきているものとしては、携帯電話のストラップや蓋など携帯電話関連の製品があげられる(5件)。

(3) 家庭用品が原因と考えられる吸入事故等に関する報告
 (1) 調査結果の概要と考察
吸入事故等の原因製品は、殺虫剤類(医薬品等を含む)が195件、洗浄剤が127件、 芳香・消臭・脱臭剤が58件等であった(参考参照)。これは例年と同様の傾向であった。
主な製品形態は、スプレー式の製品が298件(うち、ポンプ式142件)、次いで液状の製品が204件等であった。
年齢別の内訳では275件(37.1%)が9歳以下の子供の事例であった。
性別の内訳では女性が402件と全体の54.2%を占めた。

 今年度も子供の健康被害に関する問い合わせが多くあった。保護者は家庭用品等の使用や保管には十分注意するとともに、事業者も子供のいたずらや誤使用等による健康被害が生じないような方策を施した製品開発が重要である。
 事故の発生状況をみると、使用方法や製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例も多数あったことから、消費者も日頃から使用前には必ず注意書をよく読み、正しい使用方法を守ることが重要である。
 事業者にあっては、より安全性の高い製品開発に努めるとともに、消費者に製品の特性等について表示等により継続的な注意喚起をし、適正使用方法の推進を図る必要がある。

 (2) 原因製品別結果と考察
(殺虫剤)
殺虫剤(医薬品等を含む)に関する事例は195件(26.3%)であり、不適切な使用の事例も多く見られた。
不適切な使用の事例として極端な大量使用や燻煙後に十分に換気をせずに室内に入った事例などがある。

(洗浄剤、漂白剤、洗剤)
洗浄剤に関する事例は159件(21.4%)であり、そのうち最も多かったのが、次亜塩素酸系の製品で74件であった。
そのうちの多くはポンプ式スプレー製品であった。
風呂場やトイレのような狭い場所で十分な換気をせずに使用した事例があった。また、塩素系の製品と酸性の製品とを混合し、塩素ガスを発生させてしまった事例も未だにみられた。
微粒子化された洗濯用洗剤(粉末)については乳幼児が頭からかぶり入院した事例が複数報告されている(3例)。

 洗浄剤を屋内で使用する際には、換気状況が良好であることを確認のうえ、適正量を使用することが重要である。次亜塩素酸系(塩素系)の洗浄剤・漂白剤と酸性洗浄剤の混合使用など複数の洗浄剤の使用による塩素ガス等の発生にも注意が必要である。また、洗剤を吸入した場合、重篤化することがあるので乳幼児の手が届かないところに保管するなどの配慮が必要である。

(その他)
防水スプレーに関する報告件数は、平成13年度は3件に減少したが、平成14年度、平成15年度はそれぞれ14件、13件が報告されている。

[参考]平成15年度・分野別・家庭用品による健康被害のべ報告件数(上位10品目及び総計)

皮膚障害 小児の誤飲事故 吸入事故
装飾品 48(21.7%) タバコ 350(40.7%) 殺虫剤 195(26.3)
洗剤 38(17.2%) 医薬品・医薬部外 99(11.5%) 洗浄剤(住宅・家具用) 127(17.1)
ゴム・ビニール手袋 18( 8.1%) 玩具 91(10.6%) 芳香・消臭・脱臭剤 58( 7.8)
時計バンド 10( 4.5%) 金属製品 57( 6.6%) 漂白剤 44( 5.9)
めがね 9( 4.1%) プラスチック製品 41( 4.8%) 消火剤 36( 4.9)
洗浄剤 8( 3.6%) 洗剤・洗浄剤 39( 4.5%) 洗剤(洗濯用・台所用) 32( 4.3)
時計 7( 3.2%) 化粧品 26( 3.0%) 園芸用殺虫・殺菌剤 32( 4.3)
ナイロンタオル 7( 3.2%) 硬貨 25( 2.9%) 防虫剤 19( 2.6)
ベルト 5( 2.3%) 電池 21( 2.4%) 除草剤 14( 1.9)
下着/ズボン 4( 1.8%) 食品類 17( 2.0%) 灯油 14( 1.9)
総数 221(100 %) 総数 859(100 %) 総数 742(100 %)


平成15年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告(PDF:136KB)



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