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厚生労働省発表
平成16年6月18日(金)
厚生労働省 雇用均等・児童家庭局
短時間・在宅労働課
 課長  内野 淳子
 調査官  阿部 優子
 課長補佐  山田 航
  電話番号  03-5253-1111(内線7873)
  夜間直通  03-3595-3273


多様就業型ワークシェアリング

制度導入意識調査・制度導入状況実態調査報告書について



 雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善しているところであるが、少子高齢化や経済構造の変化が進展する中、国民の価値観の多様化や仕事と家庭の両立などのニーズに対応して、働き方やライフスタイルの見直しが急務となっており、雇用機会の維持・創出を図ることを目的として労働時間の短縮を行うワークシェアリングの中でも、多様な働き方の選択肢を拡大する多様就業型ワークシェアリングを推進していくことが必要とされている。
 そこで、国民各層の多様な働き方の選択に関する意識やニーズの実態、企業における多様な就業形態に関する制度の導入状況と今後の導入意向について把握し、多様就業型ワークシェアリングの普及促進を図る方策の検討に資するため、財団法人社会経済生産性本部において「多様就業型ワークシェアリング制度導入調査委員会」(主査:今野浩一郎学習院大学経済学部教授)を開催し、調査研究を行った。その概要は別添のとおりである。
(備考)本調査研究は、財団法人社会経済生産性本部への委託により実施した。


【報告書のポイント】

I 個人調査の結果(別添1〜11ページ
1.ライフステージ別にみた多様な働き方の希望
(1)「短時間正社員」の希望
 「短時間正社員」の希望が多いのは「介護を必要とする家族がいる時期」、「高齢期」、「学習活動に取り組みたい時期」が7割台と多く、性別にみると男女ともに、これらの時期の希望が7割を超えているが、女性は「子どもが小・中学生の時期」が79%で最も多く、全般的に男性よりも希望が多い。(図表1011
(2)「在宅勤務」の希望
 「在宅勤務」の希望が多いのは「介護を必要とする家族がいる時期」が75%、「高齢期」が69%、「子どもが未就学の時期」が67%となっているが、性別にみると、介護以外では男性は「高齢期」、「学習活動に取り組みたい時期」が約7割と多く、女性は「子どもが未就学の時期」、「子どもが小・中学生の時期」が7割を超えて多くなっている。(図表1213

2.現時点での多様な働き方に対する希望
(1)短時間正社員
 現時点で短時間正社員という働き方を希望する者は37%となっているが、性・年齢別にみると、30歳代の女性が6割以上で最も多く、男性も20歳代で約4分の1が希望している。(図表18
(2)在宅勤務
 現時点で在宅勤務という働き方を希望する者は39%となっており、性・年齢別にみると男女とも30歳代の希望が最も高くなっている。(図表20

3.多様な働き方をする場合の課題
(1)仕事の進め方に関する問題点
 短時間正社員では「顧客等会社外部への対応で支障」、「仕事の配分」、「フルタイム正社員への仕事のしわ寄せ」、「責任の所在」がそれぞれ4割を超えている。
 在宅勤務では、「他の社員とのコミュニケーション」が65%で最も多く、次いで「社内での打ち合わせや会議で支障」が54%と社内のコミュニケーションに係る点が問題として多く挙げられている。(図表25
(2)処遇上の心配点
 短時間正社員では「賃金の減少」が75%で最も多く、「希望した時にフルタイム正社員になれるかどうか」、「退職金の取り扱い」、「公的年金の取り扱い」もそれぞれ約5割となっている。
 在宅勤務では、「賃金の減少」が56%で最も多く、次いで「希望した時に通常勤務の正社員になれるかどうか」が41%となっているが、全般的に短時間正社員よりも心配している点は少ない。(図表26

II 企業調査の結果(別添12〜20ページ
1.多様な働き方の制度の導入状況
(1)多様な働き方の制度の導入状況点
 各制度の導入状況は、正社員の所定労働時間を一時的に短くする短時間正社員制度(以下「短時間正社員制度(タイプI)」という。)は28%、所定労働時間をフルタイムの正社員より短く設定する短時間正社員制度(以下「短時間正社員制度(タイプII)」という。)は7%、在宅勤務制度は3%となっている。(図表29
(2)短時間正社員制度の対象者点
 制度を導入している企業において、短時間正社員制度(タイプI)の対象となる社員は、「家庭内に要介護者を持つ正社員」と「未就学の子どもを持つ正社員」が8割弱と多く、その他の事由はほとんどない。
 短時間正社員制度(タイプII)では、対象となる社員は「未就学の子どもを持つ正社員」が54%、「家庭内に要介護者を持つ正社員」が44%と多いが、「理由を問わず短時間勤務を希望する正社員全員」、「短時間正社員として勤務することを希望する新規採用者」、「短時間正社員への転換を希望するパート等の非正社員」もそれぞれ1割程度ある。(図表30

2.多様な働き方の制度に対する考え方
(1)仕事面からみた制度の対象社員点
 短時間正社員制度(タイプII)の導入が比較的容易とされているのは、「再雇用等の定年後の高齢者」、「定年前の中高年正社員」、「事務職」、「勤務地に限定のある社員」であり、最も困難とされているのは、「管理職」となっている。在宅勤務制度では、短時間正社員制度と同様の傾向にあるものの、短時間正社員制度よりも全般に導入が困難とされている。(図表31
(2)生活面からみた制度の対象社員
 社員の生活面からみた制度の導入・充実の必要性については、短時間正社員制度(タイプII)で、「家庭内に要介護者を持つ社員」が78%、「未就学の子どもを持つ社員」が66%、在宅勤務制度も「家庭内に要介護者を持つ社員」が57%、「未就学の子どもを持つ社員」が45%と多く、他の事由は少なくなっている。(図表32
(3)制度導入の効果
 制度を導入した場合の効果について、短時間正社員制度(タイプII)では、「雇用の維持」が55%、「人件費の削減」が47%、「人材の有効活用」が45%となっている。(図表33
 在宅勤務制度では「人材の有効活用」が45%、「事務所スペースの節約」が36%、「仕事の能率の向上」が31%となっている。(図表34

3.多様な働き方を導入する場合の課題
(1)仕事の進め方の留意点
 短時間正社員制度(タイプII)では、「フルタイム正社員に仕事のしわ寄せがいかないようにする」、「顧客等会社外部への対応で支障が生じないようにする」が約7割となっており、在宅勤務制度では、「顧客等会社外部への対応で支障が生じないようにする」、「社内での打ち合わせや会議に支障が生じないようにする」、「通常勤務の正社員に仕事のしわ寄せがいかないようにする」が約6割となっている。
 両制度を比較すると短時間正社員制度(タイプII)では、フルタイム正社員へのしわ寄せが、在宅勤務制度では会議等による社内の調整や仕事の目標設定が課題として挙げられている。(図表3536
(2)処遇面の留意点
 短時間正社員制度(タイプII)では「賃金制度」90%、「評価制度」72%が多く、「退職金制度」も52%と半数を超えている。
 在宅勤務制度では「評価制度」が78%で最も多く、次いで「賃金制度」72%となっている。(図表3738

III 個人調査と企業調査の結果からみた特徴(別添21〜24ページ
1.多様な働き方に対する個人と企業の考え方の相違
(1)多様な働き方の制度に対する現時点のニーズの違い
 短時間正社員制度、在宅勤務制度ともに約4割の個人が希望しているが、制度を導入あるいは検討中の企業は短時間正社員制度(タイプI)では3割となっているものの、短時間正社員制度(タイプII)、在宅勤務制度は1割に満たない。(図表43
(2)多様な働き方の制度に対するライフステージ別にみたニーズの違い
 個人、企業ともに「家庭内に要介護者を持つ社員(個人)」と「未就学の子どもを持つ社員(個人)」には、短時間正社員制度と在宅勤務制度が必要であると考えているが、その他の事由では、個人と企業のニーズの違いは大きい。(図表44

2.短時間正社員に対するニーズの性別比較
(1)現在の本人のニーズ
 男性より女性のニーズが強く、夫と妻の就業形態の組合せによってもニーズの強さが異なる。(図表45
(2)ライフステージ別にみた本人の潜在的ニーズ
 「子どもが未就学」、「子どもが小・中学生」、「子どもが高校・大学生」の時期を中心に男性より女性のニーズが強い。(図表45
(3)ライフステージ別にみた配偶者に対する潜在的ニーズ
 男性は、「子どもが未就学」、「子どもが小・中学生」、「子どもが高校・大学生」の時期に配偶者(妻)に短時間正社員型の働き方を求めるニーズが強い。(図45


多様就業型ワークシェアリング制度導入調査委員会

(主査) 今野 浩一郎 学習院大学 経済学部 教授
(委員) 上野 隆幸 松本大学総合経営学部 専任講師
北浦 正行 財団法人社会経済生産性本部 社会労働部長
黒澤 昌子 政策研究大学院大学 助教授
武石恵美子 東京大学 社会科学研究所 助教授

(作業部会) 西岡 由美 湘北短期大学 総合ビジネス学科 助手
畑井 治文 福島学院短期大学 情報ビジネス科 専任講師
藤波 美帆 財団法人社会経済生産性本部客員研究員
(学習院大学大学院博士課程)



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