厚生労働省発表 平成16年5月19日 |
|
・民事上の個別労働紛争相談件数 | 14万件 |
・あっせん申請受理件数 | 5千件 |
個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から2年半を経過したところであるが、人事労務管理の個別化等の雇用形態の変化、厳しい経済・雇用情勢等を反映し、全国約 300ヵ所の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争に係る相談件数は14万件を超えている(総合労働相談件数は73万件超)。また、助言・指導申出受付件数は4千件、あっせん申請受理件数は 5千件を超えるなど、制度の利用が進んでいる。
【 参考 】 |
『個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(別添5、6)』に基づく、個別労働紛争解決制度の平成15年度の施行状況は以下のとおりである(概要は別添3、都道府県労働局別一覧は別添4)。
◆相談受付状況
各都道府県労働局、主要労働基準監督署内、駅近隣の建物などにおいて、労働に関す
るあらゆる相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナー(約300ヵ所)を開設しているところであるが、平成15年度1年間に寄せられた相談は73万4,257件であった。
このうち、労働関係法上の違反を伴わない、解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関するものが14万822件である。年度ごとの推移をみると、確実に件数が増えている。(第1図)
また、民事上の個別労働紛争にかかる相談内容の内訳は、解雇に関するものが29.8%と最も多く、次いで労働条件の引下げが15.8%、いじめ・嫌がらせ7.4%と続いている(第2図)。
平成15年度1年間に申請を受理した事案の都道府県労働局における処理状況をみると、手続きを終了したものは5,100件であり、このうち、合意が成立したものは2,154件(42.2%)、自主的解決等により申請が取り下げられたものは467件(9.2%)、紛争当時者の一方が手続きに参加しない等の理由により、あっせんを打ち切ったものは2,439件(47.8%)となっている。処理に要した期間は、1ヶ月以内が64.2%、1ヶ月を超え2ヶ月以内が28.1%となっている。
申請人は、労働者が5,234件(97.8%)と大半を占めるが、事業主からの申請も101件(1.9%)となっており、労使双方からの申請も17件(0.3%)あった。労働者の就労状況は、正社員が65.1%と最も多いが、パート・アルバイトが17.0%、派遣労働者・期間契約社員も12.3%を占めている。事業所の規模は、10〜49人が33.5%と最も多く、次いで10人未満が21.0%、50〜99人が10.1%となっている。また、労働組合のない事業所の労働者が66.0%である。
【 紛争調整委員会とは 】 弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されている。この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施するものである。 |
平成15年度1年間に申出を受け付けた事案について都道府県労働局における処理状況をみると、平成16年3月までに手続きを終了したものは4,339件であり、このうち助言・指導を実施した件数は3,954件(91.1%)、申出が取り下げられたものは181件(4.2%)、処理を打ち切ったものは158件(3.6%)であった。処理に要した期間は、1ヶ月以内が90.1%となっている。
申出人は、労働者が97.2%とほぼ大半を占めるが、事業主からの申出も122件(2.8%)あった。就労状況は、正社員が63.4%と最も多いが、パート・アルバイトが19.1%、派遣労働者・期間契約社員も11.4%を占めている。事業所の規模は、10〜49人が35.0%と最も多く、次いで10人未満23.2%、100〜299人が10.7%となっている。また、労働組合のない事業所の労働者が71.4%である。
なお、助言・指導の実施事例は、別添2のとおりである。
○整理解雇に係るあっせんの事例 | |
事案の概要 | 申請人は、会社から、事業縮小を理由として整理解雇の通告を受けた。 申請人は、事業縮小に伴う人員削減については仕方がないと思うが、突然の解雇で生活設計に大きな影響があり、整理解雇対象者の人選についても納得がいかず、賃金○ヶ月相当額の補償金の支払いを求めてあっせん申請を行った。 あっせんの結果、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立したもの。 |
あっせんのポイント | 会社は、和解金による解決に理解を示し、一方、申請人も和解金額に譲歩を示し、双方の合意が成立した。 |
○いじめ・嫌がらせをめぐるあっせんの事例 | |
事案の概要 | 申請人は、所長から「仕事が向いていないから辞めろ」と言われたり、他の社員の前で体重を測定され「デブ」と言われるなど侮辱されたほか、雑巾で顔をはたかれるなどの暴力を再三にわたって受けたことから、会社を休業するに至ったため、申請人が、会社に対し精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料等の支払いを求め、あっせん申請を行ったもの。 あっせんの結果、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立したもの。 |
あっせんのポイント | 紛争当事者双方の主張が大きく隔たっていたが、あっせん委員の調整により、会社は、解決金の支払いによる解決に理解を示し、解決金の額についても合意が成立した。 |
○懲戒解雇に係る助言・指導の事例 | |
事案の概要 | 申出人は、鋼鉄製品の製造工場の製造部門において勤務していたが、工場の規模縮小に伴い、従事していた生産ラインがなくなったため、配置転換により同工場の事務職に就くこととなったが、不慣れな業務にストレスを感じ、同僚とトラブルを起こし、これが原因で解雇処分を受けた。 申出人は、自分にも非があるものの、解雇は重すぎると処分の撤回を求めて、労働局長の助言・指導を求めたもの。 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、トラブルのあった会社で勤務するよりは、同業他社で勤務したいとの申出人の意向もあったため、申出人は関連企業の生産部門で勤務することとなった。 |
助言・指導の内容 | 懲戒解雇処分について、処分の対象となった同僚とのトラブルが、就業規則の懲戒事由のどれに該当するのか、どの懲戒処分を適用するのか等について、十分に調査・検討を行ったうえで、慎重に判断すること。 |
○労働条件の不利益変更に係る助言・指導の事例 | |
事案の概要 | 申出人は、ホテルにおいてパートタイムで客室清掃業務に勤務する者であるが、被申出人から一方的に勤務日数を週5日から週3日に減らされ、賃金が減少することとなったため、減少分の賃金の補償と、従来どおりの週5日の労働日数に戻してほしいとして、労働局長の助言・指導を求めたもの。 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、減少分の賃金○万円を補償した上で、週5日の労働日数の調理業務に勤務することで合意した。 |
助言・指導の内容 | 労働者にとって、不利益な変更内容と判断される労働条件の変更については、基本的には労使の合意が必要となることから、当事者間でよく話し合うこと。 |
1総合労働相談コーナーに寄せられた相談 734,257件 | |
相談者の種類 労働者 460,446件 事業主 205,631件 その他 68,180件 |
|
2民事上の個別労働紛争に係る相談の件数 140,822件 | |
(1)相談者の種類 労働者 115,160件 事業主 16,645件 その他 9,017件 (2)紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が158,378件となる。) 普通解雇 34,910件 整理解雇 7,783件 懲戒解雇 4,484件 労働条件の引下げ 25,070件 退職勧奨 10,744件 出向・配置転換 5,451件 その他の労働条件 29,460件 セクシュアルハラスメント 2,948件 女性労働問題 1,722件 募集・採用 2,296件 雇用管理等 1,958件 いじめ・嫌がらせ 11,697件 その他 19,855件 |
|
3 都道府県労働局長による助言・指導の件数 | |
(1) 助言・指導の申出の受付を行った件数 4,377件 | |
紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が4,491件となる。) 普通解雇 1,215件 整理解雇 273件 懲戒解雇 118件 労働条件の引下げ 577件 退職勧奨 241件 出向・配置転換 182件 その他の労働条件 850件 セクシュアルハラスメント 34件 女性労働問題 3件 募集・採用 55件 雇用管理等 58件 いじめ・嫌がらせ 293件 その他 592件 |
|
(2) 助言・指導の手続を終了した件数 4,339件 | |
終了の区分 助言を実施 3,920件 指導を実施 34件 取下げ 181件 打切り 158件 その他 46件 |
|
4 紛争調整委員会によるあっせんの件数 | |
(1) あっせんの申請の受理を行った件数 5,352件 | |
紛争の内容(※内訳が複数にまたがる事案もあるため、計が5,480件となる。) 普通解雇 1,867件 整理解雇 454件 懲戒解雇 150件 労働条件の引下げ 566件 退職勧奨 317件 出向・配置転換 173件 その他の労働条件 924件 セクシュアルハラスメント 153件 女性労働問題 5件 雇用管理等 38件 いじめ・嫌がらせ 365件 その他 468件 |
|
(2) あっせんの手続を終了した件数 5,100件 | |
終了の区分 当事者間の合意の成立 2,154件 申請の取下げ 467件 打切り 2,439件 その他 40件 |
1 | 趣旨 企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働関係紛争」という。)が増加していることにかんがみ、これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整委員会のあっせん制度の創設等により総合的な個別労働紛争解決システムの整備を図る。 |
2 | 概要
|