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厚生労働省発表
平成16年4月14日
厚生労働省労働基準局
監督課
課長  及川 桂
調査官  土屋喜久
電話番号 03-5253-1111
 (内線5544)
夜間直通 03-3502-3202


「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」の開催について
―労働契約のルールについて、包括的に検討―



 近年、産業構造の変化が進む中で、人事管理に関する企業の意識が変化し、人事管理の個別化・多様化等が進むとともに、就業形態や就業意識の多様化が進んでおり、このような状況の大きな変化の下で、労働契約をめぐる紛争が増加する傾向にある。
 一方、労働契約に関するルールについては、実定法や判例法理においてルールが明確となっていない場合があること、判例法理では労使にとって具体的な事案への当てはめが容易でないこと、再検討を要する場合も生じていること等、状況の変化に十分に対応できていないと考えられる。
 このため、労働者が納得・安心して働ける環境づくりや今後の良好な労使関係の形成に資するよう、労働契約に関するルールの整理・整備を行い、その明確化を図ることが必要となっている。
 また、平成15年の労働基準法改正に対する附帯決議においても、「労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め」るべきことが指摘されている。
 そこで、厚生労働大臣が学識経験者の参集を求めて「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」を発足させ、今後の労働契約法制の在り方について法律的な論点を中心に包括的な検討を行うこととした。本研究会においては、平成17年秋を目途に報告書を取りまとめる予定である。
 なお、第1回研究会は、下記のとおり開催することとしている。




 開催日時
 平成16年4月23日(金)17時〜19時

 開催場所
 厚生労働省9階 省議室(東京都千代田区霞が関1−2−2)

 議題
(1)今後の研究の進め方について
(2)今後の労働契約法制の在り方に関する検討について(総論的論点の検討)
(3)その他

 傍聴
 別紙「第1回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会の開催について」のとおり。


労働契約法制の検討について
〜今後の労働契約法制の在り方について、包括的に検討〜


現状
労働契約関係を取り巻く状況は大きく変化
環境
産業構造の変化
(サービス経済化、情報化等の進展)
経済の低成長の中で進む雇用調整
(雇用調整を行う企業の割合が高水準で推移)
企業
人事管理面での意識の変化
(長期雇用慣行、年功的賃金体系の見直し等)
能力主義、成果主義志向の賃金制度の導入
人事管理の個別化・多様化
(勤務地限定採用、社内公募制度等)
働く者
就業形態の多様化
非正規雇用で就業する労働者の増大等
就業意識の多様化
仕事と生活の調和を求める意識
能力発揮意欲の高まり
転職意識の高まり  等
このような変化の下で、個々の労働契約の権利義務関係をめぐる紛争が増加傾向

法制面の問題点
実定法と判例法理に関して、
 実定法上は、部分的にのみルールが規定されてきたに過ぎない
 判例法理によるルールを含めても、網羅的に整備されていない
 判例法理は、労使当事者にとって、内容の理解や具体的な事案へのあてはめによる予測が困難

労働条件の決定・変更に際して、労働者の意思が反映される仕組みが不十分ではないか
(団体交渉等による集団的な労働条件決定システムの機能が相対的に低下)

現行のルール自体が、労働契約関係の実情に照らせば再検討を要する場合も発生
労働契約関係を取り巻く状況の変化に十分に対応できていない
(参考)
 ○ 労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
(平成15年6月  衆・参 厚生労働委員会)
 労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること。

対処方針
労働契約に関する包括的なルールの整備・整理を行い、その明確化を図ることが必要
時代の変化に対応した労働契約のルールについて、法的論点を包括的に検討
《「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」を開催》
〈検討の視点〉
労使当事者が自主的な決定を円滑に行うための環境の整備
労使当事者間の権利義務関係の明確化
労働者が納得・安心して働ける環境づくり
今後の良好な労使関係の形成
我が国経済社会の活力の維持・向上

検討事項
総論的論点
労働契約法制の対象とする者の範囲

労働契約法制の機能
規定の性格(どのような履行確保・紛争解決の方法を活用するかの検討を含む)
現行法との関係の整理

労働条件設定システムの在り方
各論的論点 労働契約の成立 労働契約の展開 労働契約の終了
採用内定

試用期間

就業規則による労働条件変更

配置転換、出向、転籍

昇進、昇格、降格

服務規律、懲戒

労働契約に伴う権利義務関係
 等
解雇

変更解約告知


今後の労働契約法制の在り方に関する研究会開催要綱


 趣旨・目的
 近年、産業構造の変化が進む中で、人事管理に関する企業の意識が変化し、人事管理の個別化・多様化等が進むとともに、就業形態や就業意識の多様化が進んでおり、このような状況の大きな変化の下で、労働契約をめぐる紛争が増加する傾向にある。
 一方、労働契約に関するルールについては、実定法や判例法理においてルールが明確となっていない場合があること、判例法理では労使にとって具体的な事案への当てはめが容易でないこと、ルールの再検討を要する場合も生じていること等、状況の変化に十分に対応できていないと考えられる。
 このため、労働契約に関するルールについて、労働者が納得・安心して働ける環境づくりや今後の良好な労使関係の形成に資するよう、包括的なルールの整理・整備を行い、その明確化を図ることが必要となっている。
 そこで、今後の労働契約法制の在り方について包括的な検討を行うことを目的として、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」を開催する。

 検討事項
 本研究会においては、次に掲げる事項を中心として調査・研究を行う。
 労働契約法制の対象とする者の範囲
 労働契約の成立、展開、終了に係るルールの在り方
 労働条件設定システムの在り方
 労働契約法制の機能

 運営
(1) 本研究会は、厚生労働大臣が学識経験者の参集を求めて開催する。
(2) 本研究会においては、必要に応じ、実務経験者等の出席を求めることがある。
(3) 本研究会の議事については、別に本研究会において申し合わせた場合を除き、公開とする。
(4) 本研究会の庶務は、厚生労働省労働基準局監督課において行う。

 スケジュール
 平成16年4月に第1回会合を開き、以降月1〜2回程度開催し、平成17年秋を目途に報告書を取りまとめる。


「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」参集者


荒木 尚志 東京大学大学院法学政治学研究科教授

内田  貴 東京大学大学院法学政治学研究科教授

春日偉知郎 慶応義塾大学大学院法務研究科教授

菅野 和夫 前・東京大学法学部長

曽田 多賀 弁護士

土田 道夫 同志社大学法学部教授

西村健一郎 京都大学大学院法学研究科教授

村中 孝史 京都大学大学院法学研究科教授

山川 隆一 慶応義塾大学大学院法務研究科教授

吉田  徹 法務省民事局参事官

(敬称略・50音順)


労働契約法制の検討に関する指摘


 労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
 (平成15年6月4日 衆議院厚生労働委員会)

 労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること。



 労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
 (平成15年6月26日 参議院厚生労働委員会)

 労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること。



 労働政策審議会建議(抄)(平成14年12月26日)

I 労働契約に係る制度の在り方
 3 労働契約終了等のルール及び手続
 (3)その他
 労働条件の変更、出向、転籍、配置転換等の労働契約の展開を含め、労働契約に係る制度全般の在り方について、今後引き続き検討していくことが適当である。


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