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2.家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告

(1)原因家庭用品等種別の動向
 小児の誤飲事故の原因製品としては、「タバコ」が281件(41.8%)で最も多かった。次いで「医薬品・医薬部外品」が101件(15.0%)、「金属製品」が45件(6.7%)、「玩具」が44件(6.5%)、「硬貨」が32件(4.8%)、「プラスチック製品」が25件(3.7%)、「化粧品」が23件(3.4%)、「洗剤・洗浄剤」が22件(3.3%)、「乾燥剤」が14件(2.1%)、「電池」が14件(2.1%)であった(表4)。
 報告件数上位10品目までの原因製品については、順位に若干の変動はあるものの、4年連続同一品目により占められていた。また、上位2品目については、小児科のモニター報告が始まって以来変化がなく、本年も同様であった。


(2)各報告項目の動向
 障害の種類については、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等の「消化器症状」が認められたものが56件(8.3%)と最も多かった。次いで咳、喘鳴等の「呼吸器症状」が認められたものが42件(6.3%)となっていた。全体として症状の発現が見られたものは122件(18.2%)であったが、これらには複数の症状を認めた例も含んでいた。本年度は幸い命が失われるといった重篤な事例はなかったが、「入院」、「転科」及び「転院」となったものが20件あった。それ以外はほとんどが「帰宅」となっていた。
 誤飲事故発生時刻については、例年同様夕刻以降に発生件数が増加するという傾向が見られ、午後4時〜10時の時間帯の合計は346件(52.8%:発生時刻不明を除く報告件数に対する%)であった(図3)。
 誤飲事故発生曜日については、曜日間による差は特に見られなかった。


(3)原因製品別考察
 1)タバコ
 平成14年度におけるタバコの誤飲に関する報告件数は281件(41.8%)であった。前年度401件(45.3%)と同様、依然全報告例の約半数を占めていた(表4)。
 その内訳を誤飲した種別で見ると、タバコ177件、タバコの吸い殻**89件、タバコの溶液***15件、となっていた。
 タバコを誤飲した年齢について見ると、例年と同様、ハイハイやつかまり立ちをはじめる6〜11か月の乳児に報告例が集中しており、186件(66.2%)にのぼった。これに12〜17か月の幼児(65件)と合わせると89.3%を占めた(図4)。乳幼児は1歳前後には独力で室内を移動できるようになり、1歳6か月以降には動きも早くなって、両手で容器を持ち飲水できるようにもなる。タバコの誤飲事故の大半は、この1歳前後の乳幼児に集中してみられ、この時期を過ぎればタバコの誤飲例は急激に減少する。期間にしてわずか1年に過ぎないこの期間に注意を払うことにより、タバコの誤飲事故は大幅に減らすことができるはずである。子供の保護者は、この年齢の時期に、タバコ、灰皿を子供の手の届く床の上やテーブルの上等に放置しないこと、飲料の空き缶等を灰皿代わりに使用しないこと等、その取扱いや置き場所に細心の注意を払うことが必要である。特に、タバコの水溶液の場合はニコチンが吸収され易い状態にあるので、タバコ水溶液の誤飲の原因となりかねないジュースの空き缶を灰皿代わりにするなどの行為は避けるべきである。
 タバコの誤飲による健康被害を症状別に見ると、症状を訴えた31件中、消化器症状の訴えがあった例が21件と最も多かった。9割以上が受診後帰宅している。幸いなことに大事には至らなかったが、本年は入院の事例が1件報告されている。
 来院前に応急処置を行った事例は155件あった。行った処置としては何も飲ませずに「吐かせた」及び「吐かせようとした」事例が、あわせて72件と最も多かった。応急処置として、何らかの飲料を飲ませた例は29件あった。タバコの誤飲により問題となるのは、タバコに含まれるニコチン等を吸収してしまうことである。タバコを吐かせるのはニコチン等の吸収量を減らすことができるので有効な処置であるが、この際飲料を飲ませると逆にニコチンが吸収され易くなってしまう可能性がある。吐かせようとして飲料を飲ませても吐かなかった例もかなり見られており、タバコを誤飲した場合には飲料は飲ませず直ちに受診することが望ましい。

  *:「タバコ」:未服用のタバコ
  **:「タバコの吸い殻」:服用したタバコ
  ***:「タバコの溶液」:タバコの吸い殻が入った空き缶、空瓶等にたまっている液


  ◎事例1【原因製品:タバコ
 患者 1歳 男児
症状なし
誤飲時の状況床に落ちていたタバコを拾って、3分の1本を食べてしまった。
来院前の処置指を突っ込んで催吐した。水を飲ませた。
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過胃洗浄のち帰宅


  ◎事例2【原因製品:タバコの吸い殻**
 患者 1歳 男児
症状なし
誤飲時の状況外出していた時、道におちていたタバコの吸殻を口の中に入れた。
来院前の処置すぐにかき出し、牛乳を飲ませた。
受診までの時間1時間〜1時間30分未満
処置及び経過なしのち帰宅

<担当医のコメント>
基本的には誤飲後、30分以内に受診することが望ましい。


  ◎事例3【原因製品:タバコの溶液***
 患者 5歳8ヶ月 男児
症状なし
誤飲時の状況灰皿代わりにした缶ジュースの中身を飲んでしまった。
来院前の処置なし
受診までの時間30分未満
処置及び経過胃洗浄のち帰宅

 
<担当医のコメント>
 ニコチンは溶液中には大量に溶出するので危険である。飲料の缶を灰皿の代わりにすることは、絶対に止めるべきである。万が一、タバコを浸した溶液を飲んでしまった場合は、なるべく早く(30分以内に)受診して下さい。


 2)医薬品・医薬部外品
 平成14年度における医薬品・医薬部外品に関する誤飲の報告件数は101件(15.0%)であった。前年度は122件(13.8%)であり、件数は減少したものの全体に対する割合は増加した(表4)。症状の認められた23件中、傾眠などの神経症状が認められた例が10件と最も多く、次いで悪心、嘔吐、腹痛、下痢等の消化器症状症状が認められた例が7件あった。入院を必要とした事例も10件あった。入院例の多くの場合は保護者が注意をそらせている間に薬品を大量服用してしまっている例であった。
 誤飲事故を起こした年齢について見ると、タバコとは異なり、例年と同様各年齢層にわたっているものの、特に1〜2歳児にかけて多く見られていた(48件,47.5%)。このころには、自らフタや包装を開けて薬を取り出せるようになり、また家人が口にしたものをまねて飲んだりもするため、誤飲が多くなっているものと思われた。また、誤飲の発生した時刻は、昼や夕刻の食事前後と思われる時間帯に高い傾向があった。本人や家人が使用した薬が放置されていたものを飲んだり、家人が口にしたのをまねて飲むこと等が考えられ、使用後の薬の保管には注意が必要である。
 原因となった医薬品・医薬部外品の内訳を見ると、中枢神経系の薬が32件で最も多いなど、一般の家庭に常備されている医薬品・医薬部外品だけではなく、保護者用の処方薬による事故も多く発生していた。
 医薬品・医薬部外品の誤飲事故の大半は、薬がテーブルの上に放置されていた等、医薬品の保管を適切に行っていなかった時や、薬を飲ませた直後等のように保護者が目を離した隙、等に発生している。また、シロップ等、子供が飲みやすいように味付けしてあるもの等は、子供がおいしいものとして認識し、冷蔵庫に入れておいても目につけば自ら取り出して飲んでしまうこともある。小児の医薬品の誤飲は、大量に誤飲したり、効力の強い薬を誤飲した場合には、時に重篤な障害をもたらす恐れがある。家庭内での医薬品類の保管・管理には十分な注意が必要である。

  ◎事例1【原因製品:錠剤】
 患者 2歳7か月 男児
症状興奮
誤飲時の状況母親が寝ている間に枕元においてあった精神安定剤4錠がなくなっていた。児が変な笑い方をし、フラフラして、ろれつがまわらない、反応が悪い等の症状が出現した。
来院前の処置なし
受診までの時間1時間30分〜2時間未満
処置及び経過胃洗浄、点滴のち帰宅

 
<担当医のコメント>
 内服直前に水を取りに行った隙に誤飲することも多く、服用したら必ず片付けるようにこころがけること。万が一、誤飲した場合は、必ず飲んだ薬や薬の説明書をもって病院を受診してください。


  ◎事例2【原因製品:錠剤】
 患者 2歳3か月 女児
症状なし
誤飲時の状況兄(5歳)と一緒に居間においてあった薬を1錠食べた。
来院前の処置なし
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過胃洗浄のち帰宅


 3)電池
 平成14年度の電池の誤飲に関する報告件数は14件(2.1%)であった。前年度18件(2.1%)と比較して件数、割合とも横ばいであり、単独製品による事故数としては依然軽視できない数である(表4)。
 誤飲事故を起こした年齢について見ると、本年は特に2歳に多く見受けられたが、依然幅広い時期に発生している。
 誤飲した電池の大半は、ボタン電池であった(10件)が、単4サイズの小さい乾電池を誤飲した事例の報告もあった。電卓やキッチンタイマー等ボタン電池を使用した製品が多数出回っているが、電池の誤飲事故は幼児がこれらの製品で遊んでいるうちに電池の出し入れ口のフタが何らかの理由で開き、中の電池が取り出されてしまったために起こっている場合が多い。また、交換した後に放置されたボタン電池を誤飲した事例もあった。製造業者は、これらの製品について幼児が容易に電池を取り外すことができないような設計を施すなどの配慮が必要であろう。また保護者は、電池の出し入れ口のフタが壊れていないか確認するとともに、電池を子供の手の届くところに置かないことが必要である。特に放電しきっていないボタン電池は、体内で消化管等に張り付き、せん孔の可能性があるので、子供の目につかない場所や手の届かない場所に保管するなどの配慮が必要である。

  ◎事例1【原因製品:ボタン電池】
 患者 3歳11か月 男児
症状なし
誤飲時の状況補聴器の電池をはずしたまま、少しその場を離れた。その間に口の中に電池を入れてしまった。
来院前の処置なし
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過X線検査で胃内に異物確認、摘出術のち帰宅


 4)食品
 本年度は飴を飲み込んで気道が一時ふさがれたと思われる事例が見られた。飴等は、気道に入りやすい大きさ、形状及び硬さを有しているので、特に2歳未満の乳幼児においては、誤飲事故の原因となりやすい。しかもこのような食品は、気道に入ってしまうと摘出が困難であり、乳幼児にそのまま食べさせること自体禁忌である。これらによる死亡事故の報告もあり、保護者自身が十分に注意する必要がある。
 酒類については2件の報告があった。放置されたものの誤飲や保護者が誤って飲ませてしまった例などであった。全般的に言えることであるが、誤飲の危険のあるものを放置しないようにすることが重要である。また、酒類の保管方法や子供に飲料を与える前には内容を確認する等の注意も必要である。
 なお、未だ協力施設からの報告例はないが、過去にこんにゃくゼリーの誤飲による死亡事故が発生している。カナダや米国において一部製品が回収や警告の措置をうけたとの報告もある。当該事故後に硬さや形状の工夫等の対策はとられているが、こんにゃくのようなものは、噛み切りにくく、いったん気道へ詰まってしまうと、重篤な呼吸器障害につながる恐れがある。食品の誤飲で重篤な症状に至るもののほとんどは気道に詰まって窒息を起こすものである。食品を乳幼児等に与える際には、保護者はこのような点にも十分に注意を払う必要がある。

  ◎事例1【原因製品:飴】
 患者 3歳3か月 女児
症状咳、チアノーゼ
誤飲時の状況1.5〜2cm大の飴玉を飲み、むせて苦しそうになり、口唇にチアノーゼがでていた。
来院前の処置なし
受診までの時間不明
処置及び経過X線検査のち帰宅


 また、食品ではないが、食品の付属物や関連器具による誤飲例も下記のように見られている。同様な誤飲は昨年度も報告されており、誤飲の可能性のあるものとして注意が必要である。

  ◎事例1【原因製品:ビニール片】
 患者 8か月 女児
症状呼吸困難
誤飲時の状況お菓子のビニール袋を飲み込んでいた。
来院前の処置指を口の中に入れて、取り除いた
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過なしのち帰宅


  ◎事例2【原因製品:乾燥剤(シリカゲル)】
 患者 2歳7か月 女児
症状なし
誤飲時の状況ドーナッツの袋に入っていたシリカゲルの袋をかじっていた。
来院前の処置なし
受診までの時間1時間30分〜2時間未満
処置及び経過なしのち帰宅


 5)その他
 代表的な事例だけではなく、家庭内・外にあるもののほとんどが子供の誤飲の対象物となる可能性があり、子供のいる家庭においては保護者の配慮が必要である。1歳前であっても指でものを摘めるようになれば、以下に紹介する事例のように様々な小さなものを無分別に口に入れてしまう。床など子供の手の届くところにものを置かないよう注意が必要である。
 また、固形物の誤飲の場合は、誤飲したものが体内のどこにどんな状態で存在するかは一見したところではわからないので、専門医を受診し、経過を観察するか、必要に応じて摘出するかなど適切な判断を受けることが望ましい。誤飲製品が胃内まで到達すれば、いずれ排泄されると考えられることから問題はないとする向きもあるが、硬貨が胃内から長時間排泄されなかったり、小型磁石や先に別途例示されたボタン電池等の場合に腸壁に張り付きせん孔してしまったりして、後日腹痛や障害を発生させる可能性もあるので、排泄の確認はするようにしたい。
 本年も防虫剤の誤飲事例があったが、衣類用の防虫剤は見かけ上は皆よく似ているが、よく使用されている成分には数種類あるので、医療機関等に相談する場合は何を誤飲したかを正確に伝えた方がよい。またこれらの防虫剤を誤飲した場合は、吸収を促進することになるので応急処置として牛乳を飲ませてはいけない。

  ◎事例1【原因製品:入浴剤】
 患者 2歳7か月 女児
症状なし
誤飲時の状況保護者が電話をしていたところ、浴室から入浴剤を鼻につめたらしく、左鼻から泡と赤い着色料が出てきた。
来院前の処置なし
受診までの時間1時間30分未満〜2時間未満
処置及び経過なしのち帰宅


  ◎事例2【原因製品:マッチ棒】
 患者 9か月 男児
症状なし
誤飲時の状況目を離しているうちにマッチの箱を開け、マッチ棒を舐めていた。3本のマッチはいずれも先が舐めきって溶けて無くなっていた。
来院前の処置なし
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過胃洗浄のち帰宅


  ◎事例3【原因製品:消毒剤(液体)】
 患者 4歳11か月 男児
症状なし
誤飲時の状況プールサイドに置いてあったコップに入った消毒剤を飲んでしまった。
来院前の処置なし。
受診までの時間1時間〜1時間30分未満
処置及び経過採血、点滴、入院


  ◎事例4【原因製品:硬貨】
 患者 2歳2か月 男児
症状なし
誤飲時の状況50円玉をもって遊びになり口に入れた。父親が注意したが、その直後に飲み込んでしまった。
来院前の処置なし
受診までの時間30分未満
処置及び経過X線検査のち帰宅


  ◎事例5【原因製品:ストラップの人形】
 患者 1歳 男児
症状なし
誤飲時の状況母親がトイレに行って戻ってくると携帯電話のストラップについている人形を口に咥えていて、3つあるうちの1つが無くなっていた。
来院前の処置なし
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過X線検査のち帰宅

<担当医のコメント>
 最近、携帯電話のストラップについている一部を誤飲する機会が増えている。子供が噛んで引っ張ると容易に壊れ、飲み込むので要注意です。


  ◎事例6【原因製品:おはじき】
 患者 2歳 女児
症状なし
誤飲時の状況兄(6歳)が遊んでいたところ、児がおはじきを飲んでしまった。
来院前の処置なし
受診までの時間12時間以上
診察所見なし
処置及び経過X線検査(おはじきあり)のち帰宅

 
<担当医のコメント>
 おはじきはガラスや瀬戸物で1cm位の大きさで厚さも軽さも誤飲しやすいおもちゃです。X線写真に写らないものも多く、診断できないこともあります。このようなおもちゃで遊んでいるときには目を離さないように気をつけてください。


  ◎事例7【原因製品:台所用洗剤】
 患者 2歳1か月 男児
症状なし
誤飲時の状況水で薄めた洗剤をごく少量飲んだ。
来院前の処置吐かせた。
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過なし

 
<担当医のコメント>
 水で薄めたものであっても、洗剤、漂白剤等を容器に入れて放置することは危険である。特にコップ等日常飲食に使用する容器に入れておくと、幼小児のみならず、年長児でも誤って飲み込んでしまうことがある。


  ◎事例8【原因製品:台所用漂白剤】
 患者 4歳9か月 男児
症状なし
誤飲時の状況台所の流しにおいてあった漂白剤を水で薄めたものを飲んだ。
来院前の処置水を飲ませた。
受診までの時間30分未満
処置及び経過なしのち帰宅


  ◎事例9【原因製品:芳香剤】
 患者 2歳6か月 男児
症状なし
誤飲時の状況台所のすみに置いてあった芳香剤を舐めた。
来院前の処置口を洗って、水を飲ませた。
受診までの時間30分未満
処置及び経過なしのち帰宅


  ◎事例10【原因製品:香水】
 患者 1歳1か月 男児
症状なし
誤飲時の状況母の香水を飲んでしまった。
来院前の処置吐かせた。
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過胃洗浄のち帰宅

 
<担当医のコメント>
 香水や芳香剤はメチルアルコールが主成分で、子供の限界量は体重1kg当たり3mLといわれています。子供の手が届く鏡台はしっかり引き出しを閉めることと、子供の前では化粧をしないことを心がけることが必要です。


  ◎事例11【原因製品:カビ取り剤】
 患者 1歳11か月 男児
症状なし
誤飲時の状況アルカリ性カビ取り剤を手にとって噴霧し、噴霧口を口に入れて遊んでいるところを発見した。
来院前の処置水を飲ませた。
受診までの時間30分〜1時間未満
処置及び経過なしのち帰宅


  ◎事例12【原因製品:クリップ】
 患者 4か月 男児
症状なし
誤飲時の状況クリップを食べた。
来院前の処置なし
受診までの時間2時間〜3時間未満
処置及び経過X線検査のち帰宅


(4)全体について
 小児による誤飲事故は相変わらずタバコによるものが多い。タバコの誤飲事故は生後6か月からの1年間に発生時期が集中しており、この1年間にタバコの管理に特段の注意を払うだけでも相当の被害の軽減がはかれるはずである。一方、医薬品の誤飲事故はむしろこれよりも高い年代での誤飲が多い。それ自体が薬理作用を有し、子供が誤飲すれば症状が発現する可能性が高いものなのでその管理には特別の注意を払う必要がある。食品であってもそのものが気道を詰まらせ、重篤な事故になるものもあるので、のどに入るような大きさ・形をした物品には注意を怠らないように努めることが重要である。発生時間帯は夕刻以降の家族の団らんの時間帯に半数近くが集中しているという傾向が続いている。保護者が近くにいても、乳幼児はちょっとした隙に、身の回りのものを分別なく口に入れてしまう(本年度事故例中の約半数で保護者はそばにいた。)ので注意が必要である。
 一方、今年度は保育所や幼稚園等、多数の子供が生活している施設で起こった誤飲の報告事例は少数で、このことからも、誤飲は避けられない事故ではなく、誤飲をする可能性があるものを極力子供が手にする可能性のある場所に置かないことが最も有効な対策であることが窺い知れる。乳幼児のいる家庭では、乳幼児の手の届く範囲には極力、乳幼児の口に入るサイズのものは置かないようにしたい。特に、歩き始めた子供は行動範囲が広がることから注意を要する。口に入るサイズはおよそ直径3cmの円に入るものであるとされている。
 誤飲時の応急処置は、症状の軽減や重篤な症状の発現の防止に役立つので重要な行為であり、応急処置に関して正しい知識を持つことが重要である。
 なお、(財)日本中毒情報センターにより、小児の誤飲事故に関する注意点や応急処置などを記した、啓発パンフレットが作成され、全国の保健センター等に送付されている。


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