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行動計画策定指針(抄)

平成15年国家公安委員会、文部科学省、厚生労働省、
農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省告示第1号)


 次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)第7条第1項の規定に基づき、行動計画策定指針を次のように定めたので、同条第5項の規定により告示する。

 背景及び趣旨

 政府においては、中長期的に進めるべき総合的な少子化対策の指針である「少子化対策推進基本方針」(平成11年12月17日少子化対策推進関係閣僚会議決定)、「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」(平成11年12月19日大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6大臣合意)、「仕事と子育ての両立支援策の方針について」(平成13年7月6日閣議決定)に基づく「待機児童ゼロ作戦」等により、子育てと仕事の両立支援を中心として、子どもを生み育てやすいようにするための環境整備に力点を置いて、様々な対策を実施してきたところである。
 しかしながら、平成14年1月に発表された「日本の将来推計人口」によれば、従来、少子化の主たる要因であった晩婚化に加え、「夫婦の出生力そのものの低下」という新しい現象が見られ、現状のままでは、少子化は今後一層進行すると予想されている。
 急速な少子化の進行は、今後、我が国の社会経済全体に極めて深刻な影響を与えるものであることから、少子化の流れを変えるため、改めて国、地方公共団体、企業等が一体となって、従来の取組に加え、もう一段の対策を進める必要がある。
 こうした観点から、平成14年9月には、厚生労働省において「少子化対策プラスワン」を取りまとめ、保育に関する施策等「子育てと仕事の両立支援」が中心であった従来の取組に加え、「男性を含めた働き方の見直し」、「地域における子育て支援」、「社会保障における次世代支援」、「子どもの社会性の向上や自立の促進」という四つの柱に沿って、総合的な取組を推進することとした。
 また、これを踏まえ、平成15年3月には、少子化対策推進関係閣僚会議において、政府における「次世代育成支援に関する当面の取組方針」を取りまとめた。
 あわせて、平成15年3月には、地方公共団体及び企業における10年間の集中的・計画的な取組を促進するための「次世代育成支援対策推進法案」及び地域における子育て支援の強化を図るための「児童福祉法の一部を改正する法律案」を国会に提出し、同年7月に成立したところである。
 次世代育成支援対策推進法(以下「法」という。)においては、次世代育成支援対策に関し、市町村にあっては、法第8条第1項の市町村行動計画(以下「市町村行動計画」という。)を策定することとされ、都道府県にあっては、法第9条第1項の都道府県行動計画(以下「都道府県行動計画」という。)を策定することとされている。また、国及び地方公共団体以外の事業主(以下「一般事業主」という。)であって、常時雇用する労働者の数が300人を超えるものにあっては、法第12条第1項の一般事業主行動計画(以下「一般事業主行動計画」という。)を策定し、その旨を届け出ることとされ、常時雇用する労働者の数が300人以下の一般事業主にあっては、一般事業主行動計画を策定し、その旨を届け出るよう努めることとされている。さらに、国及び地方公共団体の機関等(以下「特定事業主」という。)にあっては、法第19条第1項の特定事業主行動計画(以下「特定事業主行動計画」という。)を策定することとされている。このため、主務大臣はこれらの行動計画の策定に関する指針(以下「行動計画策定指針」という。)を定めることとされている。
 この行動計画策定指針は、市町村行動計画、都道府県行動計画、一般事業主行動計画及び特定事業主行動計画の指針となるべき、(1)次世代育成支援対策の実施に関する基本的な事項、(2)次世代育成支援対策の内容に関する事項、(3)その他次世代育成支援対策の実施に関する重要事項を定めるものである。

 次世代育成支援対策の実施に関する基本的な事項 〈略〉

 基本理念

 行動計画の策定の目的

 次世代育成支援対策の推進に当たっての関係者の連携

 次世代育成支援対策地域協議会の活用

 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に関する基本的な事項 〈略〉

 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に当たっての基本的な視点

 市町村行動計画及び都道府県行動計画の策定に当たって必要とされる手続

 市町村行動計画及び都道府県行動計画策定の時期等

 市町村行動計画及び都道府県行動計画の実施状況の点検及び推進体制

 他の計画との関係

 市町村行動計画及び都道府県行動計画の内容に関する事項  〈略〉

 市町村行動計画

 都道府県行動計画

 一般事業主行動計画の策定に関する基本的な事項 〈略〉

 一般事業主行動計画の策定に当たっての基本的な視点

 一般事業主行動計画の計画期間

 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標

 その他基本的事項

 一般事業主行動計画の内容に関する事項 〈略〉

 雇用環境の整備に関する事項

 その他の次世代育成支援対策に関する事項

 特定事業主行動計画の策定に関する基本的な事項

 特定事業主行動計画の策定に当たっての基本的な視点

(1)  職員の仕事と子育ての両立の推進という視点
 子育てをする職員が子育てに伴う喜びを実感しつつ、仕事と子育ての両立を図ることができるようにするという観点から、職員のニーズを踏まえた次世代育成支援対策を実施することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である。

(2)  機関全体で取り組むという視点
 特定事業主による次世代育成支援対策は、業務内容や業務体制の見直し等をも必要とするものであることから、それぞれの機関全体での理解の下に取組を進めることが必要である。このため、大臣や地方公共団体の長等の各機関の長を含め、機関全体で次世代育成支援対策を積極的に実施するという基本的な考え方を明確にし、主導的に取り組んでいくことが必要である。

(3)  機関の実情を踏まえた取組の推進という視点
 各機関においては、その機関の任務、所在する地域等により、勤務環境や子育てを取り巻く環境は異なることを踏まえつつ、その機関の実情に応じて効果的な次世代育成支援対策に取り組むことが必要である。

(4)  取組の効果という視点
 次世代育成支援対策を推進することは、将来的な労働力の再生産に寄与することを踏まえつつ、また、当該機関のイメージアップや優秀な人材の確保、定着等の具体的なメリットが期待できることを理解し、主体的に取り組むことが必要である。

(5)  社会全体による支援の視点
 次世代育成支援対策は、家庭を基本としつつも、社会全体で協力して取り組むべき課題であることから、様々な担い手の協働の下に対策を進めていくことが必要であり、特に、職員の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするための環境の整備が強く求められている中で、特定事業主においては、率先して、積極的な取組を推進することが必要である。

(6)  地域における子育ての支援の視点
 各機関に勤務する職員は、同時に地域社会の構成員であり、その地域における子育て支援の取組に積極的に参加することが期待されていることや、地域において、子育てしやすい環境づくりを進める中で各機関にも期待されている役割を踏まえた取組を推進することが必要である。

 特定事業主行動計画の計画期間

 特定事業主行動計画は、経済社会環境の変化や職員のニーズ等を踏まえて策定される必要があり、計画期間内において、一定の目標が達成されることが望ましい。したがって、計画期間については、各特定事業主の実情に応じて設定することができるものの、平成17年度から平成26年度の10年間のうち、おおむね5年間を1期とし、おおむね3年ごとに見直すことが望ましい。

 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標

 特定事業主行動計画においては、各特定事業主の実情を踏まえつつ、より一層職員の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な勤務環境の整備その他の次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標を定めることが必要である。
 目標については、育児休業の男女別取得率等の制度の利用状況に関するもの、仕事と子育ての両立が図られるようにするための取組に関するもの等の幅広い分野から各機関の実情に応じた目標を設定すべきものであるが、可能な限り定量的な目標とする等、その達成状況を客観的に判断できるものとすることが望ましい。

 特定事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に係る手続

(1)  推進体制の整備
 特定事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施を実効あるものとするため、まず、管理職や人事担当者に対し、その趣旨を徹底することが必要であるとともに、子育てを行う職員を含めたすべての職員の理解を得ながら取り組んでいくことが重要である。このため、各機関における次世代育成支援対策の推進体制の整備を図ることが必要であり、その方策として次のような措置を講ずることが必要である。
 次世代育成支援対策を効果的に推進するため、各部局における人事担当者等を構成員とした特定事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施のための委員会の設置等
 次世代育成支援対策に関する管理職や職員に対する研修・講習、情報提供等の実施
 仕事と子育ての両立等についての相談・情報提供を行う窓口の設置及び当該相談・情報提供等を適切に実施するための担当者の配置

(2)  職員の意見の反映のための措置
 仕事と子育ての両立を図るための勤務環境の整備に対する職員のニーズは様々であり、必要な勤務環境の整備を効果的に実施するためには、こうした職員のニーズも踏まえることが重要である。このため、職員に対するアンケート調査や意見聴取等の方法により、次世代育成支援対策に関する職員の意見の反映について、機関の実情に応じて工夫することが必要である。

(3)  計画の公表
 法第19条第3項では、特定事業主は、特定事業主行動計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないとされていることから、広報誌やホームページへの掲載等により適時かつ適切に公表することが必要である。

(4)  計画の周知
 策定した特定事業主行動計画に定めた目標の達成に向けて、機関全体で取り組むため、計画を機関内に周知し、機関全体で取組を推進することが重要である。
 このため、策定した特定事業主行動計画については、啓発資料の作成・配布、研修・講習の実施等により、職員に対して周知を行うことが期待される。特に、次世代育成支援対策を機関全体で推進するという意識を浸透させるため、大臣や地方公共団体の長等の各機関の長等の主導の下、管理職や人事担当者に対する周知を徹底することが期待される。

(5)  計画の実施状況の点検
 特定事業主行動計画の推進に当たっては、計画の実施状況を一括して把握・点検できる体制を整えた上で、各年度において、把握等をした結果を踏まえて、その後の対策の実施や計画の見直し等に反映させることが必要である。

 特定事業主行動計画の内容に関する事項

 七の特定事業主行動計画の策定に関する基本的な事項を踏まえ、計画期間、次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標並びに実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期を記載した特定事業主行動計画を策定する。
 計画の策定に当たっては、次世代育成支援対策として重要なものと考えられる次のような事項を踏まえ、各特定事業主の実情に応じて、必要な事項をその内容に盛り込むことが望ましい。

 勤務環境の整備に関する事項

(1)  妊娠中及び出産後における配慮
 母性保護及び母性健康管理を適切かつ有効に実施するため、妊娠中及び出産後の職員に対して、次の制度等について周知する。
 危険有害業務の就業制限
 深夜勤務及び時間外勤務の制限
 健康診査及び保健指導のために勤務しないことの承認
 業務軽減
 通勤緩和
 また、あわせて、出産費用の給付等の経済的な支援措置についても、職員に対して周知する。

(2)  子どもの出生時における父親の休暇の取得の促進
 子育ての始まりの時期に親子の時間を大切にし、子どもを持つことに対する喜びを実感するとともに出産後の配偶者を支援するため、子どもが生まれて父親となる職員について、配偶者が出産するときの特別休暇制度について周知するとともに、例えば5日間程度の年次休暇等の取得を促進する。
 また、このような休暇を取得することについて、職場における理解が得られるための環境づくりを行う。

(3)  育児休業等を取得しやすい環境の整備等
 育児休業や部分休業の取得を希望する職員について、その円滑な取得の促進等を図るため、次に掲げる措置を実施する。
 育児休業及び部分休業制度等の周知
 男性も育児休業を取得できることや、育児休業等の制度の趣旨及び内容や休業期間中の育児休業手当金の支給等の経済的な支援措置について、職員に対して周知する。
 育児休業等経験者に関する情報提供
 育児休業及び部分休業を実際に取得した職員の体験談をまとめた冊子の配布等を行うことにより、育児休業等を取得することのメリットを周知するとともに、育児休業等の取得を希望する職員の不安の軽減を図る。
 育児休業及び部分休業を取得しやすい雰囲気の醸成
 育児休業及び部分休業に対する職場の意識改革を進め、育児休業等を取得しやすい雰囲気を醸成する。
 育児休業を取得した職員の円滑な職場復帰の支援
 育児休業を取得している職員が円滑に職場に復帰できるよう、当該機関等が発刊している広報誌等の送付を行うとともに、職場復帰時に研修その他の必要な支援を行う。
 育児休業に伴う任期付採用及び臨時的任用制度の活用
 職員から育児休業の請求があった場合に、部内の人員配置等によって当該職員の業務を処理することが難しいときは、任期付採用及び臨時的任用制度の活用を図る。
 公共的施設における雇入れの促進等
 母子及び寡婦福祉法の規定に基づき、母子家庭の母等の公共的施設における雇入れの促進等を図る。

(4)  庁内託児施設の設置
 小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる職員が利用することができる庁内託児施設の設置について検討を行った上で、適切な対応を図る。

(5)  超過勤務の縮減
 超過勤務は、本来、公務のための臨時又は緊急の必要がある場合に行われる勤務であるという認識を深め、一層の縮減に向けた取組を進めていく必要があり、次に掲げる措置を実施する。
 小学校就学の始期に達するまでの子どものいる職員の深夜勤務及び超過勤務の制限の制度の周知
 小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる職員に対して、職業生活と家庭生活の両立を支援するための深夜勤務及び超過勤務の制限の制度について周知する。
 一斉定時退庁日等の実施
 国においては、既に「国家公務員の労働時間短縮対策について」(平成4年人事管理運営協議会決定)に基づき、全省庁一斉定時退庁日が実施されているところであるが、国又は地方公共団体を問わず、各機関の実情に応じて、独自に定時退庁日を設定する等の更なる取組を行う。
 事務の簡素合理化の推進
 事務の簡素合理化について、業務量そのものの見直し、OA化の計画的な推進による事務の効率化、外部委託による事務の簡素化、事務処理体制の見直しによる適正な人員の配置及び年間を通じた業務量の平準化による更なる取組を推進する。
 超過勤務の縮減のための意識啓発等
 超過勤務の縮減のための取組の重要性について、管理職を始めとする職員全体で更に認識を深めるとともに、安易に超過勤務が行われることのないよう意識啓発等の取組を行う。

(6)  休暇の取得の促進
 休暇の取得を促進するため、職員の休暇に対する意識の改革を図るとともに、職場における休暇の取得を容易にするため、次に掲げる措置を実施する。
 年次休暇の取得の促進
 計画的な年次休暇の取得促進を図るため、おおむね四半期毎の年次休暇の計画表の作成及び職場の業務予定の職員への早期周知を図る等、年次休暇を取りやすい雰囲気の醸成や環境整備を行う。
 また、人事担当部局においては、職員の年次休暇の取得状況を定期的に把握し、取得率が低い部署については、その管理職等からのヒアリングや指導を行う等の必要な取組を行う。
 連続休暇等の取得の促進
 ゴールデンウィーク期間、夏季(7月〜9月)等における連続休暇、職員やその家族の誕生日等記念日における年次休暇、学校行事への参加等のための年次休暇等の取得の促進を図る。
 子どもの看護を行う等のための特別休暇の取得の促進
 子どもの看護を行う等のための特別休暇について、職員に周知を図るとともに、当該特別休暇の取得を希望する職員が、円滑に取得できる環境を整備する。

(7)  転勤についての配慮
 官署を異にする異動を命ずる場合において、それにより子どもの養育を行うことが困難となる職員がいるときは、その状況に配慮する。

(8)  宿舎の貸与における配慮
 子育てをしている職員に対して、仕事と子育ての両立にも配慮した宿舎の貸与に努める。

(9)  職場優先の環境や固定的な性別役割分担意識等の是正のための取組
 職場優先の環境や固定的な性別役割分担意識等の働きやすい環境を阻害する職場における慣行その他の諸要因を解消するため、管理職を含めた職員全員を対象として、情報提供、研修等による意識啓発を行う。

 その他の次世代育成支援対策に関する事項

(1)  子育てバリアフリー
 外部からの来庁者の多い庁舎において、子どもを連れた人が安心して来庁できるよう、乳幼児と一緒に安心して利用できるトイレやベビーベッドの設置等を適切に行う。

(2)  子ども・子育てに関する地域貢献活動
 子ども・子育てに関する活動の支援
 地域において、子どもの健全育成、疾患・障害を持つ子どもの支援、子育て家庭の支援等を行うNPOや地域団体等について、その活動への職員の積極的な参加を支援する。
 子どもの体験活動等の支援
 子どもの多様な体験活動等の機会の充実を図るため、職場見学を実施すること、子どもが参加する地域の行事・活動に庁舎内施設やその敷地を提供すること、各種学習会等の講師、ボランティアリーダー等として職員の積極的な参加を支援すること等に取り組む。
 子どもを交通事故から守る活動の実施や支援
 子どもを交通事故から守るため、地域の交通安全活動への職員の積極的な参加を支援するとともに、公務に関し自動車の運転を行う者に対する交通安全教育等の交通安全に必要な措置を実施する。
 安全で安心して子どもを育てられる環境の整備
 子どもを安全な環境で安心して育てることができるよう、地域住民等の自主的な防犯活動や少年非行防止、立ち直り支援の活動等への職員の積極的な参加を支援する。

(3)  子どもとふれあう機会の充実
 保護者でもある職員の子どもとふれあう機会を充実させ、心豊かな子どもをはぐくむため、子どもが保護者の働いているところを実際に見ることができる「子ども参観日」を実施する。
 また、各機関におけるレクリエーション活動の実施に当たっては、当該職員のみだけではなく、子どもを含めた家族全員が参加できるように配慮する。

(4)  学習機会の提供等による家庭の教育力の向上
 保護者でもある職員は、子どもとの交流の時間が確保しにくい状況にあるとともに、家庭教育に関する学習機会への参加が難しい状況にあるため、各機関内において、家庭教育講座等を開設する等の取組により、家庭教育への理解と参画の促進を図る。


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