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(別添2)

労働力需給のミスマッチの状況に関する調査結果について

 調査の概要
 労働力需給のミスマッチの要因を把握するため、平成15年12月、全国の公共職業安定所12所において求人者、求職者及び窓口担当者を対象に現状調査を行うとともに、求人受理後3週間経過しても求職者から応募がない求人及び最近増加しているといわれている派遣・請負求人の内容についても調査した(調査方法については、別記のとおり)。

2 調査結果の概要
 (1)  求職者の状況
 公共職業安定所12所において求職活動を行っている者のうち12,086人にアンケートを行ったところ、その結果は以下のとおり。
  ア 全般的な状況
   (ア)  早期就職の必要性
 早期就職の必要性を尋ねたところ、「すぐ就職する必要がある」と答えた者は、全体の44.8%となっている。一方、「すぐというわけではないが就職する必要がある」など就職を急がない者の割合は全体の半数を超えている。
早期就職の必要性のグラフ
   (イ)  求人への応募状況
 回答のあった者のうち、当日、公共職業安定所の窓口で求人に応募した者が1,691人(15.7%)、応募しなかった者が9,071人(84.3%)となっている。
求人への応募状況のグラフ
   (ウ)  求人に応募しなかった・した理由
 求人に応募しなかった理由としては、「希望する職種の求人がない」を理由とする者が39.3%と最も高い。次いで、「求人の求める能力・資格・経験等とあわない」を理由とする者が22.7%となっている。
 一方で、応募した理由についても、「希望する職種であった」を理由とする者が52.9%と最も高く、求職者は希望する職種の有無を応募するかどうかに当たり最大の判断要素としている。
 (応募しなかった理由)

求人に応募しなかった理由のグラフ

 (応募した理由)

求人に応募した理由のグラフ
   (エ)  求職期間
 求職者の求職期間をみると、3か月以内の者の割合が合計47.8%と5割弱の水準となっている。一方で「1年以上」の者も12.9%存在している。
 また、早期就職の必要性が高い者の中には、求職期間が6か月以上である者が35.6%となるなど、求職期間が長期化している者も少なくない。
求職期間のグラフ
   (オ)  希望職種
 求職者の希望職種をみると、事務的職業を希望する者の割合が33.4%と最も高く、次いで専門的・技術的職業を希望する者が15.1%となっている。
希望職種のグラフ
  イ 年齢別に見た状況
   (ア)  早期就職の必要性
 「すぐ就職する必要がある」と答えた者が若年層(30歳未満)で40.9%、中高年齢層(45歳以上60歳未満)で48.2%と、若年層に比べて中高年齢層で早期就職の必要性が高い。
早期就職の必要性のグラフ
   (イ)  求人に応募しなかった理由
 求人に応募しなかった理由として、若年層では「希望する職種の求人がない」が35.9%と最も高い。また、「求人の求める能力・資格・経験等とあわない」を理由とする者の割合が28.1%と中高年齢層と比べて高くなっている。
 また、中高年齢層でも同様に「希望する職種の求人がない」が43.0%と最も高い。また、「求人の募集年齢にあわない」を理由とする者が34.1%と若年層と比べて高くなっている。
求人に応募しなかった理由のグラフ
   (ウ)  求職期間
 求職期間を見ると、若年層では、3か月以内が合計58.9%と比較的短期の割合が高い。中高年齢層では、3か月以内が合計37.1%、1年以上が合計16.0%と全体に比べ長期の割合が高い。
求職期間のグラフ
   (エ)  希望職種
 若年層・中高年齢層とも事務的職業を希望する者が最も多いが、中高年齢層では若年層と比較して、専門的・技術的職業を希望する者が少なく、管理的職業等を希望する者が多くなっている。
早期就職の必要性のグラフ
 (窓口担当者の声)
  ・  若年層は、自分にとって身近な仕事を希望する傾向がある。
  ・  若年層は、職員のカウンセリングにより、希望賃金等の労働条件の変更に柔軟に応じるケースも多い。
  ・  家計の担い手である場合には賃金が下げられない場合も多い。
  ・  職場の年齢構成上の問題、定年制との関係などで、中高年齢層は年齢面で採用されないことがある。

  ウ 性別に見た状況
   (ア)  早期就職の必要性
 「すぐ就職する必要がある」と答えた者が男性で50.6%、女性が35.1%となっている。
早期就職の必要性のグラフ
   (イ)  求人に応募しなかった理由
 求人に応募しなかった理由として、男女とも「希望する職種の求人がない」が最も高い。
 また、男性では「求人の求める能力・資格・経験等とあわない」(24.5%)、「求人の賃金が低い」(22.0%)の割合が高く、女性では、「求人の就業場所が希望にあわない」(24.0%)の割合が高くなっている。
求人に応募しなかった理由のグラフ
   (ウ)  求職期間
 求職期間を見ると、男性では、3か月以内が合計43.3%、1年以上が17.0%と女性に比べて長期の者の割合が高い。
求職期間のグラフ
   (エ)  希望職種
 男性では販売の職業を希望する者(18.3%)が最も多く、女性では事務的職業を希望する者(59.8%)が最も多くなっている。
希望職種のグラフ
  エ 希望職種別に見た状況
   (ア)  求人に応募しなかった理由
 求人に応募しなかった理由として、管理的職業を希望する者では「希望する職種の求人がない」が51.7%と最も高く、「求人の賃金が低い」が35.5%と他の職種を希望する者よりも高くなっている。
 また、事務的職業を希望する者では、「求人の求める能力・資格・経験等とあわない」を理由とする者の割合が27.9%と希望職種別で最も高くなっている。
求人に応募しなかった理由のグラフ
 (2)求人の状況
  ア  求職者を採用しなかった理由
 公共職業安定所から求職者の紹介を行ったが、採用に至らなかった求人事業所のうち609事業所に対し、電話によるアンケートを行ったところ、その結果は次のとおり。
 公共職業安定所が紹介した求職者が採用に至らなかった理由については、「求人事業所の求める経験と求職者があわなかったため」を理由とする事業所が37.9%と最も高く、次いで、「求人事業所の求める能力と求職者があわなかったため」を理由とする事業所が37.1%となっており、能力、経験を理由としたものが大半を占めている。特に、専門的・技術的職業においては、経験を理由とする企業の割合が46.1%、能力を理由とする企業の割合が45.1%と他職種に比べ高くなっている。

求職者を採用しなかった理由のグラフ

 (窓口担当者の声)
  ・  企業からの求人は、即戦力重視の傾向が強まっており、求人条件にその仕事についての経験を必要とするものが増加してきている。

  イ 未充足求人の状況
   (ア)  職業別構成比
 求人受理後3週間経過しても求職者からの応募がない求人のうち求人条件の緩和指導等を行った19,422件の職業構成比を平成15年11月の新規求人の職業別構成比と比較すると専門的・技術的職業、サービスの職業で高く、事務的職業で低い。

職業別構成比のグラフ

 専門的・技術的職業では、資格や経験を有する仕事(例えば、医療、福祉関係の職業、建築土木技術者など)が多いことから未充足求人の比率が高く、サービスの職業では、飲食や接客の職業で未充足求人が多くなっている。

   (イ)  賃金水準
 未充足求人の平均賃金額は20万7千円と、平成15年11月における全国の新規求人の平均賃金額20万9千円と大きな差は見られない。
 しかしながら、職種別でみると専門的・技術的職業、管理的職業、事務的職業、販売の職業、サービスの職業等多くの職業において、未充足求人の平均賃金額は新規求人の平均賃金と比べて低い水準となっている。

未充足求人、求人平均賃金の差【15年11月】
(単位:千円)
  a未充足求人
平均賃金額
b新規求人の
平均賃金
aーb
職業計 207 209 ▲ 2
専門的・技術的職業 232 241 ▲ 9
管理的職業 243 272 ▲ 29
事務的職業 170 179 ▲ 9
販売の職業 203 215 ▲ 12
サービスの職業 183 192 ▲ 9
保安の職業 157 163 ▲ 6
農林漁業の職業 184 179 5
運輸・通信の職業 194 208 ▲ 14
生産工程・労務の職業 202 202 0

   (ウ)  事業所規模
 未充足求人における30人未満の事業所からの求人の占める割合は61.1%と全国の新規求人における30人未満の事業所の占める割合(56.3%)と比べて高くなっている。
事業所規模のグラフ
  ウ  労働者派遣業及び業務請負からの求人の状況
 労働者派遣業からの求人が調査を行った公共職業安定所の全求人の5.8%、同じく業務請負からの求人は全求人の28.1%となっており、両者を合わせると求人の33.9%を占めている。一方で、これらの充足率は、労働者派遣業で4.0%、業務請負では3.1%となっており、調査を行った公共職業安定所全体の充足率8.5%と比較しても低い水準となっている。

  (参考)  全国で、その他の事業サービス業中の「他に分類されない事業サービス業」(その大半が派遣・請負求人で占められている。)の新規求人数は、平成15年11月には47,454件と前年比55.4%増加し、全体の新規求人の増加幅(67,856人)の24.9%が「他に分類されない事業サービス業」の増加によるものとなっている。

  調査対象公共職業安定所合計
(%、人)
  新規求人数    
請負求人   派遣求人  
充足率 構成比 充足率 構成比 充足率
15年11月 59,367 8.5 16,664 28.1 3.1 3,459 5.8 4.0

 (窓口担当者の声)
  ・  派遣・請負求人が増加しているが、就業場所や雇用期間等労働条件が不明確であること等から充足されないものが他の事業に比べて多い。

 調査結果から見たミスマッチの要因
 労働力需給のミスマッチの要因については、従来、年齢、職種・技能、労働条件(賃金、労働時間等)があると言われておりながら、その要因については、これまで十分な調査が行われてこなかったが、今回、調査を行ったことにより、新たに次のことが明らかとなった。
 (1)  求職者側については、ミスマッチの主たる要因は「職種」であり、賃金の要因は比較的少ないこと。この場合、従来、「職種」のミスマッチとは、その職種に必要な技能、能力等が不足していることによるととらえられていたが、今回の調査では、求職者の「職種」に対する選好からもミスマッチが生じていることが明らかになったこと
 (2)  求人者側については、能力、経験を求人条件として重視する傾向がみられ、応募者を不採用にするに当たっても、能力(技能)や経験が不十分であるケースが大半であること
   この他、
 (1) 求職者側については、
  ア  若年層は、能力や経験面で不安を抱えることから求人に応募できない者が多いこと
  イ  中高年齢層は、求人の募集年齢にあわないことや賃金面を条件として重視するため求人に応募できない者が多いこと
  ウ  男性は、能力や経験、賃金面を理由に応募できない者が相対的に多いのに対し、女性は、就業場所を理由に応募できない者が相対的に多いこと
 (2) 求人者側については、
  ア  「専門的・技術的職業」について、能力や経験を有する者が不足していることが未充足につながっていること
  イ  未充足求人を平均した賃金は、生産工程・労務の職業等を除けば一般の求人より低位の状況にあること
  ウ  労働者派遣、業務請負については、就業場所や雇用期間等労働条件が不明確であること等を理由に充足されない場合が多いこと
 (3)  また、早期就職の必要性が高い者の中には、求職期間が長期化している者も少なくないこと(6か月以上が35.6%)
  等が明らかとなった。



別記

調査方法

 
 全国の公共職業安定所12所において、求人者及び求職者の状況を把握するための求職者へのアンケート調査(回答求職者数12,086人)及び求人者への聞き取り調査を実施(回答求人者数609事業所)し、あわせて窓口担当者へのヒアリングを実施
 (調査対象の公共職業安定所)
 秋田、埼玉、東京、山梨、新潟、愛知、大阪、兵庫、福岡の各地域の安定所のうち、下記の12安定所
 秋田:秋田所    埼玉:大宮所
 東京:新宿所、ヤングハローワーク    山梨:甲府所
 新潟:新潟所、三条所    愛知:名古屋中所
 大阪:大阪東所、ユースハローワーク    兵庫:西宮所
 福岡:福岡中央所

 求人受理後3週間経過しても求職者からの応募がない求人(未充足求人)のうち、平成15年12月の第2週(8日〜12日)に全国の公共職業安定所において求人条件の緩和指導を行った19,422件についてその内容の調査を実施

 最近増加しているといわれている派遣・請負求人の状況を把握するため、上述の公共職業安定所(東京においては新宿所のみ、大阪においては梅田所のみで実施)において平成15年11月に受理した派遣・請負と思われる求人の割合等を調査し、さらにその一部の求人を抽出し、内容の調査を実施


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