(照会先) 医薬食品局安全対策課 平山(内2747) 関野(内2748) |
1 経緯 | |
(1) | サリドマイドは、催奇形性の副作用のため既に承認が整理されている。 |
(2) | しかしながら、ハンセン病の治療薬として米国、ブラジル等で承認を取得するなどの有用性が見出され、最近では多発性骨髄腫をはじめとする悪性腫瘍等の領域における有効性が示唆されている状況にある。わが国では未承認薬であるが、医師の個人輸入により臨床使用されている。 |
(3) | このような状況において、サリドマイドによる副作用被害に係る患者団体等から、催奇形性による副作用被害の再発を防止する観点から、輸入、販売、管理、使用に関する規制の必要性が求められていた。 |
(4) | そのため、厚生労働省としては、平成14年度の厚生労働科学研究費補助金事業として、サリドマイドの使用実態を調査し、安全な使用のための方策について検討を行った。 |
(5) | 今般、本研究に係る報告書がとりまとめられたことを受けて、厚生労働省としては、本報告書を公表するとともに、報告書において提言されている安全使用のための方策について関係者への周知を図るため、通知を発出することとしたものである。 |
2 研究班の構成 | |
(研究課題名) | 未承認薬の個人輸入による使用実態及び適正使用のあり方に関する調査研究 |
(主任研究者) | 清水 直容(帝京大学医学部附属市原病院名誉教授) |
(分担研究者) | 土屋 文人(東京医科歯科大学歯学部付属病院薬剤部長) |
3 報告書の概要 |
I 使用実態を把握するためのアンケート調査結果について |
(1)アンケート調査の概況 |
(1) 薬監証明により国内にサリドマイドを輸入した医師86名、及び日本骨髄腫患者の会の協力によりサリドマイドを使用していることが明らかとなった医師69名の合計155名を対象に、サリドマイドの臨床使用の状況についてアンケート調査を行った。 |
(2) また、特定機能病院、国立病院・国立療養所及び国立高度専門医療センターの施設長274名を対象に、未承認薬の臨床使用の状況についてアンケート調査を行った。 なお、施設長に対しては(1)に係る調査票もあわせて送付し、施設内でサリドマイドの使用経験を有する医師がいる場合の協力も依頼した。 |
(2)調査票の発送・返送状況
発 送 | 返 送 | 返送率 | |
アンケート調査票(I) 特定機能病院等の施設長あて |
274 (274) |
131 (131) |
47.8% |
アンケート調査票(II) 特定機能病院等の施設長あて 個人の医師 輸入者 患者の会紹介者 |
429 (274) ( 86) ( 69) |
170 − − − |
39.6% − − − |
合 計(のべ数) | 703 | 301 | 42.8% |
(注1)調査票は無記名の返送であったが、個人の医師155名に宛てた分については、調査票発送にあたりあらかじめアンケート調査への協力について了解が得られた医師又は日本骨髄腫患者の会を通じて協力をいただいた医師であり、154名(99.4%)の医師からアンケート調査票(II)が返送されていることが確認できている。 |
(注2)回答のあった154名のうち、今回の調査において、サリドマイドを患者に使用した経験を有する医師は126名であったため、サリドマイドの使用実態については、当該126名からの回答を中心に検討を行うこととした。 |
(3)調査結果の概要(使用医師からの回答)
(1)医師としての使用経験の有無(有効回答数154名)
1.ある(1962年以前) | 0 | 0.0% |
2.ある(1962年以降) | 126 | 81.8% |
3.ある(1962年前後両方) | 0 | 0.0% |
4.ない | 25 | 16.2% |
5.未回答 | 3 | 1.9% |
(注)平成14年に限定すると、109名の医師が使用。 |
(2)サリドマイドの催奇形性についての認識(有効回答数126名)
1.よく知っている | 124 | 98.4% |
2.よく知らない | 2 | 1.6% |
3.知らない | 0 | 0.0% |
(3)使用理由(使用対象疾患)(複数回答可:有効回答数126名)
1.(多発性)骨髄腫 | 105 | 83.3% |
2.その他の悪性腫瘍 | 11 | 8.7% |
3.ハンセン病 | 10 | 7.9% |
4.その他 | 14 | 11.1% |
(4)入手方法(複数回答可:有効回答数126名)
1.輸入代行業者が手続き | 72 | 57.1% |
2.自ら手続き | 12 | 9.5% |
3.その他 | 38 | 30.2% |
4.未回答 | 6 | 4.8% |
(注)製品入手の際の情報入手の状況 |
|
(5)使用の手続き(複数回答可:有効回答数126名)
1.病院長の許可 | 45 | 35.7% |
2.医局長の許可 | 14 | 11.1% |
3.薬剤部(科)長の許可 | 11 | 8.7% |
4.治験審査委員会の許可 | 20 | 15.9% |
5.倫理審査委員会の許可 | 88 | 69.8% |
6.その他の手続き | 12 | 9.5% |
7.特にない | 5 | 4.0% |
8.未回答 | 3 | 2.4% |
(6)患者への説明と同意(有効回答数126名)
患者への説明 | 患者からの同意 | |
1.口頭 | 14(11.1%) | 17(13.5%) |
2.文書 | 2( 1.6%) | 107(84.9%) |
3.文書と口頭 | 108(85.7%) | 0( 0.0%) |
4.未回答 | 2( 1.6%) | 2( 1.8%) |
(7)閉経・妊娠の有無の確認(有効回答数126名)
閉経の有無 | 妊娠の有無 | |
1.確認している | 90(71.4%) | 74(58.7%) |
2.確認していない | 5( 4.0%) | 11( 8.7%) |
3.未回答 | 31(24.6%) | 41(32.5%) |
(注)「未回答」には、「女性への使用経験なし」及び「小児が対象」が含まれる。 |
(8)居宅での誤飲防止のための工夫(複数回答可:有効回答数126名)
1.患者に対して、子供らの手の届かない 場所で保管する旨説明している |
71(56.3%) |
2.チャイルドプルーフの容器に入れて、 小児等が勝手に薬剤を取り出せない ようにしている |
2( 1.6%) |
3.その他 | 11( 8.7%) |
4.特に考えていない | 27(21.4%) |
5.未回答 | 20(15.9%) |
(9)飲み残し薬の回収(有効回答数126名)
1.全員から回収している | 55 | 43.6% |
2.一部の患者から回収 | 19 | 15.1% |
3.回収していない | 15 | 11.9% |
4.未回答 | 37 | 29.4% |
(10)保管・管理体制(有効回答数126名)
1.院内の薬剤部(科) | 46 | 36.5% |
2.治験管理室 | 7 | 5.6% |
3.病棟 | 16 | 12.7% |
4.自らの机・ロッカー | 35 | 27.8% |
5.その他 | 16 | 12.7% |
6.未回答 | 6 | 4.8% |
(11)副作用への対処方法(有効回答数126名)
1.考えている | 103 | 81.7% |
2.考えていない | 17 | 13.5% |
3.未回答 | 6 | 4.8% |
(12)新たな被害防止のための方法(複数回答可:有効回答数126名)
1.使用する医師を制限する | 52 | 41.3% |
2.使用の際に届け出る | 69 | 54.8% |
3.管理・保管方法の厳格化 | 83 | 65.9% |
4.服用患者への教育・啓蒙 | 100 | 79.4% |
5.その他 | 13 | 10.3% |
6.未回答 | 3 | 2.4% |
(13)使用に関するガイドライン(有効回答数126名)
1.必要である | 97 | 77.0% |
2.必要でない | 9 | 7.1% |
3.わからない | 14 | 11.1% |
4.未回答 | 6 | 4.8% |
(14)薬事法上の承認取得(有効回答数126名)
1.必要と思う | 103 | 81.7% |
2.必要と思わない | 5 | 4.0% |
3.わからない | 16 | 12.7% |
4.未回答 | 2 | 1.6% |
(15)医師主導の治験(有効回答数103名)
1.必要と思う | 61 | 59.2% |
2.必要と思わない | 23 | 22.3% |
3.わからない | 18 | 17.5% |
4.未回答 | 1 | 1.0% |
(注)薬事法上の承認取得が必要と回答した103名が回答の対象。 |
II サリドマイドの安全な使用のための方策について
(1)未承認薬(サリドマイド)の臨床使用については、他の治療方法では治療効果が期待できない患者及び当該患者の担当医等により個別の医療を行う上で必要な選択肢として使用の中断等が困難である。
(2)そのような状況の下、サリドマイドの安全な使用のための方策について、サリドマイドの使用実態を踏まえて検討し、以下の提言をとりまとめた。
(3)サリドマイドの安全な使用を図るためには、薬事法上の承認を取得することが望ましいが、国内においてサリドマイドを製造又は輸入販売する者が存在しない現状においては、薬事法上の治験制度の下での使用を促進する必要がある。
(4)そのため、以下に取り組むこと。
4 厚生労働省における対応と今後の予定 |
(1)厚生労働省としては、
(2)また、今後、