○ | がん対策については「対がん10カ年総合戦略(昭和59年度〜平成5年度)」及び「がん克服新10か年戦略(平成6年度〜15年度)」により、「がんは遺伝子の異常によって起こる病気である」という概念が確立し、遺伝子レベルで病態の理解が進む等がんの本態解明の進展とともに、各種がんの早期発見法の確立、標準的な治療法の確立等診断・治療技術も目覚ましい進歩を遂げた。 |
○ | この間、胃がん、子宮がん等による死亡率は減少し、胃がん等の生存率は向上したが、一方で、大腸がん等の欧米型のがんは増加を続けており、がんは昭和56年以降、依然として日本人の死亡原因の第一位を占め、現在では、その約3割を占めるに至っている。また、より有効な対策がとられない限り、がん死亡者数は大幅に増加するとの試算もある。 |
○ | 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、平成15年3月31日の「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」報告書を踏まえ、平成16年度からの新たな10か年の戦略について、がんの罹患率と死亡率の激減を目指して、別紙の通り「第3次対がん10か年総合戦略」を定め、がんについて、研究、予防及び医療の総合的な推進に全力で取り組んでいくことを確認した。 |
(第3次対がん10か年総合戦略の戦略目標)
(1) | 進展が目覚ましい生命科学の分野との連携を一層強力に進め、がんのより深い本態解明に迫る。 |
(2) | 基礎研究の成果を幅広く予防、診断、治療に応用する。 |
(3) | 革新的ながんの予防、診断、治療法を開発する。 |
(4) | がん予防の推進により、国民の生涯がん罹患率を低減させる。 |
(5) | 全国どこでも、質の高いがん医療を受けることができるよう「均てん化」を図る。 |
(第3次対がん10か年総合戦略) | ||||||||||||
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1.がん研究の推進 |
(1) | 学横断的な発想と先端科学技術の導入に基づくがんの本態解明の飛躍的推進 |
(2) | 基礎研究の成果を積極的に予防・診断・治療へ応用するトランスレーショナル・リサーチの推進 |
(3) | 革新的な予防法の開発 |
(4) | 革新的な診断・治療法の開発 |
(5) | がんの実態把握とがん情報・診療技術の発信・普及 |
2.がん予防の推進 |
(1) | がんの有効な予防法の確立 生活習慣、環境要因等の相互作用と発がんリスクとの関連等の研究 より、がんの有効な予防法の確立を目指す。 |
(2) | がん予防に関する知識の普及の促進 がん予防に関する知識を広く国民に周知していく。また簡便で効果的な禁煙支援方法を開発し、広く普及する。 |
(3) | 感染症に起因するがん予防対策の充実 感染症に起因するがんの予防法を確立するとともに、感染の関与が明らかな肝がん、子宮頸がん、一部の胃がんや白血病の罹患率を減少させる。 |
(4) | がんの早期発見・早期治療 新しい検診技術の開発、検診に携わる医療関係者の研修等による検診技術の向上、有効ながん検診の普及及び受診率の向上により、がん検診をさらに充実し、がんの早期発見・早期治療を進める。 |
3.がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備 |
(1) | がん研究・治療の中核的拠点機能の強化等 がん研究及び推進事業をより統一的に強力に推進するために情報の集積、発信拠点機能等の充実を図るとともに、将来のがん研究の中核となる人材の育成を行う。 |
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(2) | がん医療の「均てん化」
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(3) | がん患者等の生活の質(QOL)の向上 機能温存・機能再建療法の開発や緩和医療技術の開発を進め、がん患者の苦しみの軽減を目指す治療法等の普及を図るとともに、全国的に緩和医療を提供できる体制を整備する。 |
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(4) | 国際協力・国際交流の促進並びに産官学協力の推進 国際交流や、国際協力を進めることにより国際的な情報交換を推進するとともに、がんの基礎研究から得られた成果を速やかに臨床の現場に応用できるように産官学の連携をさらに推進する。 |
昭和59年度から開始された「対がん10カ年総合戦略」及びそれに引き続き平成6年度から開始された「がん克服新10か年戦略」により、「がんは遺伝子の異常によって起こる病気である」という概念が確立し、遺伝子レベルで病態の理解が進む等がんの本態解明の進展とともに、各種がんの早期発見法の確立、標準的な治療法の確立等診断・治療技術も目覚ましい進歩を遂げた。
この間、胃がん、子宮がん等による死亡率は減少し、胃がん等の生存率は向上したが、一方で、大腸がん等の欧米型のがんは増加を続けており、がんは昭和56年以降、依然として日本人の死亡原因の第一位を占め、現在では、その約3割を占めるに至っている。また、より有効な対策がとられない限り、がん死亡者数は現在の約30万人から2020年には45万人まで増加するとの試算もある。
がん研究については、発がんの要因やがんの生物学的特性等について、依然としてその全貌が解明されるには至っていないことから、一層の研究の充実を図ることが求められている。また、がんの有効な予防対策の確立についても、ゲノム研究などの新分野や新技術の導入を含めた革新的な取り組みが必要である。さらに、膵がん等の難治性がんや大腸がん等増加しているがんに対する画期的な治療法の開発や全国どこでも最適ながん医療をうけることができる体制の整備が強く求められている。
このため、がんに関する基礎研究やその研究成果を幅広く応用転化する研究等のがん研究を一層推進するとともに、新しいがんの予防対策を推し進めつつ、より質の高いがん医療の「均てん化」等により全国どこでも最適ながん医療が受けられるようにすることにより、がんの罹患率と死亡率の激減を目指す。そのため、以下のとおり第3次対がん10か年総合戦略を策定し、これを強力に推進することとする。
【戦略目標】
我が国の死亡原因の第一位であるがんについて、研究、予防及び医療を総合的に推進することにより、がんの罹患率と死亡率の激減を目指す。
(具体的な戦略目標)○ | 進展が目覚しい生命科学の分野との連携を一層強力に進め、がんのより深い本態解明に迫る。 |
○ | 基礎研究の成果を幅広く予防、診断、治療に応用する。 |
○ | 革新的ながんの予防、診断、治療法を開発する。 |
○ | がん予防の推進により、国民の生涯がん罹患率を低減させる。 |
○ | 全国どこでも、質の高いがん医療を受けることができるよう「均てん化」を図る。 |
1. | がん研究の推進 |
がん研究についてはこれまで、新規のがん遺伝子、がん抑制遺伝子を発見する等発がん機構の理解が進んだ。特に、遺伝子レベル、分子レベルでの解析が飛躍的に進んだ結果、がんが「遺伝子の異常によって起こる病気である」という概念が確立し、その遺伝子レベル、分子レベルでの理解が飛躍的に進んだ。また、ヘテロサイクリックアミン類等環境中の発がん要因の同定、肝がん等一部のがんの誘因となる感染症の検査法の確立、ヘリカルCT(線源を回転移動させることにより、臓器全体を画像化し、観察できるCT)を用いた肺がん早期診断法の開発、前立腺がん等で局所制御率が高い粒子線治療の開発、内視鏡・体腔鏡手術の確立によって患者の負担を軽減する治療法の開発等着実に成果を挙げてきている。 しかし、がんは極めて複雑性に富んでおり、発がんの要因やがんの生物学的特性、がん細胞の浸潤能・転移能やがんと宿主免疫応答等の関係など、その全貌が十分に解明されているとはいえず、今後なお一層の努力が必要である。 このため、ヒトゲノムの解読完了を受け、ゲノムの機能解明(ゲノムネットワーク研究等)の一層の推進などにより、進展が目覚しい生命科学の分野とさらに連携を深め、学横断的な研究を推進することにより、がんの本態解明を進めるとともに、その成果を迅速にかつ幅広くがんの臨床研究に繋げるために、トランスレーショナル・リサーチを重点的に進め、一方で、臨床研究・疫学研究等の新たな展開により、革新的な予防、診断及び治療法の開発を推進する。また、その際、生命倫理に対し十分な配慮を行っていくことが必要である。 |
(1) | 学横断的な発想と先端科学技術の導入に基づくがんの本態解明の飛躍的推進 |
(2) | 基礎研究の成果を積極的に予防・診断・治療等へ応用するトランスレーショナル・リサーチの推進 |
(3) | 革新的な予防法の開発 |
(4) | 革新的な診断・治療法の開発 |
(5) | がんの実態把握と情報・診療技術の発信・普及 |
【重点的研究課題】
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2. | がん予防の推進 |
がん予防については、これまでも国立がんセンターにおいて「がん予防の12ヶ条」を策定したほか、「健康日本21」に基づく、たばこ対策の充実、食生活の改善、がん検診受診者数の増加等の取組を進めてきた。 この間、胃がんの罹患率は減少してきたが、一方で、大腸がん、肺がん、乳がん等の罹患率は上昇しており、これらの罹患率を減少させるためには、がん予防の研究成果に基づき、国民の生活習慣等の行動変容、有効ながん検診の拡充等を図っていくことが必要である。このため、がんの有効な予防法を確立するとともに、がん予防に関する知識を広く国民に周知し、さらに最新の研究成果に基づいてがん検診の効果を高めていくこととする。 |
(1) | がんの有効な予防法の確立 生活習慣、環境要因等の相互作用と発がんリスクとの関連等の研究により、がんの有効な予防法の確立を目指す。 |
(2) | がん予防に関する知識の普及の促進 がん予防の12ヶ条、食生活指針及び予防法の研究によって得られた新たな知見の普及啓発等をさらに推進することにより、がん予防に関する知識を広く国民に周知していく。また簡便で効果的な禁煙支援方法を開発し、広く普及する。 |
(3) | 感染症に起因するがん予防対策の充実 感染症に起因するがんの予防法を確立するとともに、感染の関与が明らかな肝がん、子宮頚がん、一部の胃がんや白血病の罹患率を減少させる。 |
(4) | がんの早期発見・早期治療 新しい検診技術の開発、検診に携わる医療関係者の研修等による検診技術の向上、有効ながん検診の普及及び受診率の向上により、がん検診をさらに充実し、がんの早期発見・早期治療を進める。 |
3. | がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備 |
がん医療については、これまでも国立がんセンター、大学病院、独立行政法人放射線医学総合研究所等における研究、治療に加えて、全国がんセンター協議会におけるがん医療の向上に関する活動、地方中核がんセンターと国立がんセンターとの情報ネットワーク化、地域がん診療拠点病院の整備などを行い、全国どこでも最適ながん医療が受けられる体制の整備を図っている。また、国際協力、国際交流の促進により、がん医療の向上を図ってきている。 今後は、国立がんセンター等のがん研究・治療の中核的拠点機能の強化、がん医療の「均てん化」等を強力に進めること等により全国どこでも最適ながん医療が受けられ、がんの治癒率が向上するとともに、がん患者の生活の質(QOL)が向上する社会を目指すこととする。 |
(1) | がん研究・治療の中核的拠点機能の強化等 がん研究及び推進事業をより統一的に強力に推進するために情報の集積、発信拠点機能等の充実を図る。 また、国立がんセンター・地方中核がんセンター等において、将来のがん研究を担う若手研究者を育成するリサーチレジデント制度のさらなる推進を図るとともに、研究支援者を活用することにより、将来のがん研究の中核となる人材の育成を行う。 さらに、独立行政法人放射線医学総合研究所を中心に重粒子線治療など、放射線治療の研究開発を行う。 |
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(2) | がん医療の「均てん化」
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(3) | がん患者等の生活の質(QOL)の向上 かつては、がんの患部を広く摘出すること等により、がん患者の生活の質(QOL)が著しく低下することがあったが、摘出範囲を最小限にする、複数の治療法を適切に組み合わせる、放射線治療を用いるなど、有効で負担の軽いがん検査・治療を普及させることにより、がん患者の視点に立った医療の普及を目指す。 具体的には、機能温存・機能再建療法の開発や緩和医療技術の開発を進め、がん患者の苦しみの軽減を目指す治療法等の普及を図る。 また、末期がん患者は、激しい痛みがあり、また、精神的な面で支援が必要なことから生活の質(QOL)の向上を図るため全国的に緩和医療の提供できる体制を整備する。 |
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(4) | 国際協力・国際交流の促進並びに産官学協力の推進 がん研究の進んでいる国との国際交流や、途上国との国際協力を進めることにより国際的な情報交換を推進し、その結果得られた成果を我が国のがん研究・医療の向上に役立てるとともに、各国への「均てん化」を図る。 また、がんの基礎研究から得られた成果を速やかに臨床の現場に応用できるように産官学の連携をさらに推進する。 |
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「第3次対がん10か年総合戦略」における今後の方向 |
1.がん研究の推進 |
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2.がん予防の推進 |
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がん予防の12ヶ条
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健康日本21の目標(抄)
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マルチスライスCTによるバーチャル内視鏡画像 |
3.がん医療の向上 |
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![]() 重粒子線治療 |