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平成15年7月11日
政策統括官社会保障担当参事官室

総合規制改革会議「規制改革推進のためのアクションプラン・12の重点検討事項に関する答申」に対する厚生労働省の考え方について

 7月11日に公表された総合規制改革会議の「規制改革推進のためのアクションプラン・12の重点検討事項に関する答申」に対する厚生労働省の考え方は、以下のとおりです。


(照会先)
厚生労働省政策統括官付
社会保障担当参事官室
室長補佐 渡辺
TEL03-5253-1111(内線7704)
   03-3595-2159(直通)


総合規制改革会議「規制改革推進のためのアクションプラン・12の重点検討事項に関する答申」に対する厚生労働省の考え方

平成15年7月11日
厚生労働省

 基本的考え方
 規制改革の重点12項目については、去る6月27日に閣議決定された「基本方針2003」に沿って、厚生労働省としても、取組みを進めていくこととしている。
 今回公表された総合規制改革会議の「答申」は、閣議決定された「基本方針2003」における対応方針を超える内容を含むものであるが、このような答申を閣議決定後間もない時期に出すに当たり、そもそも閣議決定事項及びそれに基づく取組みをどのように評価し、どのような議論を重ねたのかが明らかでない。
 また、これらの項目については、これまでの議論の積み重ねを踏まえ閣議決定を行ったものであるが、改めて検討対象とするのであれば、総合規制改革会議として、経済活性化効果との関連を含めその理由を定量的・体系的に示すことが、今後の議論に当たっても不可欠であると考える。
 さらに、この答申に添付されている「論点整理」については、これまでの議論に基づき、客観的かつ公平に整理すべきものと考える。
 個々の事項についての厚生労働省の考え方は、以下のとおりである。

 個別事項についての総合規制改革会議の主張と厚生労働省の考え方
総合規制改革会議の主張(要約)厚生労働省の考え方
(1)「株式会社等による医療機関経営の解禁」
 (1)特区において直ちに講ずべき措置
 ○ 株式会社の参入を認める「高度な医療」の内容については、あらかじめ国が限定するのではなく、事業者のニーズに基づく地方公共団体の判断により、幅広く認められるようにすべきである。
 (2)全国規模において講ずべき措置
 ○ 医療経営の分野に近代的な経営の担い手である株式会社が参入することにより、患者本位の医療サービスの提供を実現しやすくなる。
 ○ また、(1)現存する62の株式会社立病院は、公的保険による運営という「公共性」を維持しており、これまでに何ら患者にとっての弊害をもたらしていないこと、(2)現在の医療法人の大部分は、株式会社と同様に、出資者の財産が保全される点で税務上は非営利法人とはみなされない上、配当と同様、資金調達に対する当然の対価(支払いコスト)として、利子という形での「医療外への利益の流出」を行っていること、等から、株式会社等による医療機関経営を禁止する合理性は乏しく、参入規制の解除に向けた検討を進める必要がある。


 全国規模での株式会社の医療への参入については、事業活動により利益が生じた場合には株主に還元しなければならない株式会社の本質によって、
(1)医療費の高騰を招くおそれがあり、最大の課題の一つである医療費の抑制に支障を来しかねないこと
(2)利益が上がらない場合の撤退により地域の適切な医療の確保に支障が生じるおそれがあること
など様々な懸念があることから、構造改革特区における株式会社による医療機関経営の状況等を見ながら、慎重に検討する必要があると考えている。
 なお、現存する62の株式会社立病院は、従業員の福利厚生を目的として設立されたものや、国鉄等の旧公共企業体が設立し、その後、旧公共企業体自体が民営化されたことによって株式会社立となったものなどの歴史的経緯のある例外的なもので、これらの病院は従業員の福利厚生を主たる目的として設立されたものであり、このような例外的な株式会社立病院の存在をもって、一般的に株式会社立病院を認めることの根拠とすることは不適切である。
 さらに、金融機関からの借入金は、固定した「当然の支払いコスト」であるのに対し、株主への配当は、これとは性格を異にする。すなわち、株式会社は、株主の利益を最大化させる義務を有することから、株式会社の利益最大化目的の行動が地域医療に及ぼす影響の蓋然性は、借入金返済圧力のような債務弁済により消滅する事実上の影響より遙かに高いと考えられる。従って、借入金に伴う「利子」を「配当と同様」として株式会社等による医療機関経営を解禁する理由とすることは不適切である。
 いずれにせよ、6月27日に閣議決定した内容に沿って対応していく。
(2)いわゆる「混合診療」の解禁(保険診療と保険外診療の併用)
 例えば特定承認保険医療機関など、質の高いサービスを提供することができる医療機関においては、現行の特定療養費制度における高度先進医療のみならず、新しい医療技術についても、個別の承認を必要とせず、いわゆる「混合診療」を包括的に認める制度の導入を図るべき。


 我が国の医療保険制度においては、国民皆保険の下、「社会保障として必要十分な医療」は保険診療として確保することが原則である。
 他方、患者ニーズの多様化や医療技術の進歩に対応するため、適切なルールの下に保険診療と保険外診療の併用を可能とする特定療養費制度が設けられている(昭和59年に創設)。
 このような仕組みによらず無制限に保険外診療との組み合わせを認めることは、たとえ特定の医療機関に限ったとしても、不当な患者負担の増大を招くおそれや有効性、安全性が確保できないおそれがあるため、今後とも特定療養費制度の下で対応を図っていくことが適切であると考える。
 このような観点に基づき、6月27日に閣議決定した内容に沿って対応していく。
(3)労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象拡大
 医師・看護師等については、その不足が地域によっては特に深刻化する中、紹介予定派遣の方式にとどまらず、通常の派遣方式についても、その解禁を図るべき。


 医療機関における労働者派遣については、医療機関が派遣労働者を事前に特定できないため、医療資格者間の適切な連携に支障が生じることなどが懸念される。
 また、今回の労働者派遣法の改正により、紹介予定派遣については派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等が可能となった。
 こうした点を踏まえ、「医療分野における規制改革に関する検討会」において、紹介予定派遣であれば派遣労働者を事前に特定できることから、医療機関に導入しても差し支えないとの結論が出されたものである。
(4)医薬品の一般小売店における販売
 人体に対する作用が比較的緩やかな医薬品群については、少なくとも特例販売業や配置販売業と同様に、薬局・薬店以外のコンビニエンスストア、チェーンストアなどの一般小売店においても早急に販売できるようにすべきである。

 医薬品の販売の在り方は、第一義的には、消費者の利便性ではなく、国民の生命・健康の保護の観点から判断すべきものである。
 医薬品は、たとえ一般用医薬品であっても、過量使用や重複投与等による副作用の事例が相当数存在するため、専門知識を有する薬剤師等の関与の下で、使用されるべきである。
 実際、厚生労働省に報告のあった一般用医薬品によるものと考えられる副作用症例は、平成10年度から14年度までの間に合計約950例あり、そのうち110例を超える件数のものが薬剤師からの情報提供等により被害を防止又は軽減し得た事例と考えられる。
 特例販売業は、薬事法制定時、離島や山間へき地等の場合に経過的な例外的措置として認められたものである。従って、この特例販売業は、可能な限り縮小していくべきものであり、その数は年々減少している。こうした流れとは逆に、これを一般化し、都会等で多数の者を対象とすることを念頭に一般小売店での医薬品販売を可能とすることは適当でない。
 配置販売業は、その方法が家庭への配置に限定され、各家庭を定期的・継続的に訪問し適正使用のための情報提供等を行う相手方を限定した販売形態であり、また、薬事法上一定の要件を定め、専門的な知識を持つ者に対して認められるものであり、顧客の健康状態の継続的な把握を行っているなど、多くの点で店舗において不特定多数に販売する一般小売店と相違がある。したがって、単純に配置販売業者との比較で一般小売店での医薬品販売を認めることは適当でない。
 なお、閣議決定された「基本方針2003」においては、「安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品」について、一般小売店での販売を可能とすることとしており、これに沿って対応していくこととしているが、特例販売業や配置販売業で取り扱うことが認められている医薬品を対象とすべきとはされていない。
(5)幼稚園・保育所の一元化
 (1)少なくとも特区において講ずべき措置
 ○ 少なくとも特区においては、両施設に関する行政を一元化し、施設設備、職員資格、職員配置、幼児受入などに関する基準を統一化すべき。
 ○ 行政の一元化、基準の一元化に到達する前段階として、例えば保育所の調理室など、幼稚園と保育所のどちらか一方のみに課されている規制について、緩和・撤廃すべきである。
 ○ 必ずしも就業していない専業主婦であっても、その生活・ニーズが一層多様化していることにも鑑み、保育所について、「保育に欠ける子」のみならず誰もが入所できるよう、入所要件を緩和すべき。
 (2)全国規模において講ずべき措置
 ○ 平成18年度までに設置が検討される「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」については、その施設設備、職員資格、職員配置等に関する規制の水準を、それぞれ現行の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準以下とすべき。


 多様化する子育てニーズに対応するため、地域の子育て資源を効率的に活用することが重要であり、このような中で、保育所と幼稚園は、地域の実情を踏まえ、相互の連携をより一層強化することが重要。
 保育所の調理室は、(1)一人ひとりの子どもの状況に応じたきめ細やかな対応、(2)多様な保育ニーズへの対応、(3)食事を通じた児童の健全育成を図る観点から、必要不可欠であると考える。
 今年度においても、「規制改革推進3か年計画(再改定)」に基づき、(1)幼稚園教諭免許所有者が保育士資格を取得しやすいような措置や(2)余裕教室に保育所を設置する場合において、安全性等が確保される場合には、調理室を共同利用することを認める方向で検討、措置することとしている。
 平成18年度までに検討することとされている「総合施設」については、子どもの幸せとともに、利用者や地域のニーズを考え、保育所と幼稚園の共用施設や、構造改革特区における合同保育の実施状況も評価しながら検討することとしている。
(6)職業紹介事業の地方公共団体・民間事業者への開放促進
 (1)有料職業紹介事業に関する改革
 ○ 有料職業紹介事業に関する求職者からの手数料規制については、年収要件の更なる引き下げ・撤廃について、早急に検討を行うべき。
 (2)ハローワークに関する改革
 ○ 公共職業安定所(ハローワーク)については、その基本的な機能とサービスの質を維持した上で、民間委託の更なる拡大に加え、公設民営方式などの導入、独立行政法人化、地方公共団体への業務移管など、その組織・業務の抜本的な見直しについて、検討を進める必要がある。



 求職者からの手数料規制については、年収要件の大幅引下げ(年収1200万円超を例えば700〜800万円超へ)等を平成15年度中に実施することとしているところであるが、「年収要件の更なる引き下げ・撤廃」については、求職者保護に欠けることとなる恐れがあり、困難と考えている。
 職業紹介事業については、雇用保険の安定的な運営の確保、ILO第88号条約の要請、広域的な職業紹介の必要性から、今後とも、原則として国が実施していくことが必要である。
 一方、厳しい雇用情勢の下で、地方公共団体や民間事業者の創意や活力を活かした労働力需給調整を進めることは重要であることから、今後も、効果的と思われる分野についての民間委託を活用した就職支援を進めていく所存である。
(7)株式会社等による特別養護老人ホーム経営の解禁
 (1)少なくとも特区において講ずべき措置
 ○ 株式会社等が特別養護老人ホームの設置から運営まで一貫して行う、いわゆる「民設民営方式」を特区において解禁すべき。その際、施設整備費補助金等の適用を容認するなど、株式会社等と社会福祉法人との間において、同等の競争条件を確保する措置を講ずべき。
 (2)全国規模において講ずべき措置
 ○ 「PFI方式」又は「公設民営方式」のように、地方公共団体が直接事業に強く関与し、当該事業の保証を行うこと等により弊害の発生を極力抑制しているような特例措置については、早急に全国規模での規制改革に移行させるべきである。


 特区において、自治体が十分関与できる公設民営方式又はPFI方式の下で、特別養護老人ホームへの株式会社等の参入を容認したところであり、今後の展開については、特区における株式会社等による特別養護老人ホーム経営の状況や施設体系の在り方の見直しの状況をみながら、検討していく必要がある


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