厚生労働省発表 平成15年3月 |
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厚生労働省雇用均等・児童家庭局では、毎年、働く女性に関する動きを取りまとめ、「働く女性の実情」として紹介している。
今年は、「I 働く女性の状況」において、平成14年及び平成13年における働く女性の実態とその特徴を明らかにし、「II 多様な就業形態で働く労働者の意識と今後の課題」では、進展しつつある就業形態の多様化と女性の意識に焦点を当てて正社員、パートタイム労働者、派遣労働者及び在宅就業者を取り上げた。そしてそれぞれの就業形態における労働者の能力発揮の状況や働くことに関する意識に焦点を当てて実態と問題点について把握するとともに女性の起業についても取り上げ、取り組むべき課題等を探った。
I 働く女性の状況
II 多様な就業形態で働く労働者の意識と今後の課題 1 女性の働き方の変化 (1) M字型カーブの形状・構成は大きく変化 女性の年齢階級別労働力率について未既婚別構成の変化をみると、未婚者では20〜39歳層での増加が大きく、既婚者では45歳以上層の増加が著しい(第2−3図)。 年齢階級別有業率を学歴別にみると、短大卒、大学・大学院卒の女性の有業率は34歳までは他の学歴よりも高いもののM字型カーブの底となる35〜39歳層以降はより低くなっているが、これは有配偶者の有業率の影響を受けている(第2−4図)。また、国際的には女性の学歴別労働力率は学歴とともに高くなるが、日本の場合高卒以上の労働力率は各国より低水準にあり、特に大学・大学院卒では格差が大きい(第2−5図)。 女性の年齢階級別就業者の割合の変化を従業上の地位別にみると、年代を追うにつれほとんどの年齢層で雇用者割合が上昇し、雇用者割合がM字型カーブを形成するようになり、かつ、M字の底が上昇している(第2−6図)。雇用者でみたM字型カーブの内容を雇用形態の内訳別にみると、M字型の右山部分は主にパート・アルバイトにより支えられている(第2−7図)。 (2) 進展する就業形態、雇用形態の多様化 就業形態・雇用形態の多様化の進展の状況を平成6年と平成11年とで比較すると女性の方が男性よりも正社員割合の低下の度合いが大きく、その分パートタイム労働者等非正規社員の占める割合が上昇している。女性労働者の全体の就業構造を推計してみると、就業形態の多様化は主に女性を中心に進展している(第2−8図)。 2 働く女性の意識と就業形態の多様化 (1) 女性の職業に対する意識 女性の職業に対する意識は積極化しており、大学への進学や学部選択においても職業を意識する姿勢が男性以上にみられる(第2−9、11図)。 (2) 就業形態の多様化と女性労働者 (ア) 正社員で働く女性の実情と意識
3 女性の起業の動向 女性の働き方の選択肢の一つとして、起業への関心が高まっているが、起業したい理由としては、「年齢に関係なく働きたい」、「好きな分野・興味のある分野で仕事をしたい」「自分の裁量で仕事をしたい」などが多く、このほか「女性の昇進・昇格に限界がある」や「女性に任される仕事の範囲に限界がある」などもみられる(第2−24図)。 起業に当たり、必要とされている支援は「起業準備、事業計画、資金調達等のノウハウを修得するためのセミナー」、次いで「起業準備、事業計画、資金調達に関する相談窓口」、「人材、市場、技術等に関する情報提供」となっており、起業に必要な知識やノウハウの不足を補う機会が求められている。事業の発展段階に応じた専門家によるコンサルティングについては、既起業者、起業希望者ともニーズが高くなっており、起業に至った後も継続的な支援が必要とされている(第2−25図)。 4 まとめ 女性は男性と比べ多様な就業形態で働いているが、就業意識は積極的になっている。しかし、いずれの就業形態で働く女性も、より高度な業務に就くことや能力向上を希望する者が少なくないにもかかわらず、そうした希望が満たされていない点が問題である。 少子高齢化の進展の中、従来にも増して女性も含め意欲と能力のある者がその持てる力を存分に発揮できるようにしていく必要があるが、このためには、企業には(ア)ポジティブ・アクションを推進する等男女が均等に働ける職場づくりに向けた努力を行うこと(イ)職業生活と家庭生活の両立支援策を充実すること、及び(ウ)労働者の職業能力向上への要望を把握し、その実現に協力することが求められ、行政には(ア)企業に対してポジティブ・アクションを円滑に推進することができるような施策の展開(イ)女性労働者に対してはどのようにすれば職業能力を高められるかについての情報やキャリアプランの策定に役立つような情報を提供すること、が期待されている。 自ら起業をしようとする女性に対しては、起業時に必要な知識やノウハウの不足を補う機会の提供、人的ネットワークの不足を補うサービス等の支援の強化や、サービス、支援メニューについての情報の集約と提供体制も重要である。 |
女性の年齢階級別労働力率の未既婚別構成の変化を昭和50年と平成13年とで比較すると、未婚者の労働力人口構成については20〜39歳層での増加が大きく、有配偶者の労働力人口構成については45歳以上の層における増加が顕著である(第2−3図)。 |
年齢階級別労働力率の代替指標として有業率を用いて学歴別に比較すると、女性の年齢計では大学・大学院卒の有業率が67.6%で最も高く、以下短大・高専卒の64.6%、高校卒の57.2%、小学・中学卒の53.6%となっている。年齢階級別にみると短大卒、大学・大学院卒の女性の有業率は34歳までは他の学歴よりも高いものの、M字型カーブの底となる35〜39歳層以降は他の学歴よりも有業率が低い。これは有配偶者の有業率の影響を受けているもので、未婚者に限ってみれば男性とよく似た形状を示し、かつ高学歴の者ほどいずれの年齢階級でも有業率は高い(第2−4図)。また、女性の学歴別労働力率を国際比較すると、どの国も学歴が高まるにつれ労働力率が上昇していくが、日本の場合高卒以上の者の労働力率は各国より低水準にあり、特に大学・大学院卒者では格差が大きい(第2−5図)。 |
女性の年齢階級別就業者の割合の変化を従業上の地位別にみると、年代を追うにつれ、M字型の右肩部分に当たる中高年齢層を中心にほとんどの年齢層で雇用者割合が上昇し、雇用者割合がM字型を形成するようになり、かつ、M字の底が上昇している(第2−6図)。雇用者でみたM字型カーブの内容を雇用形態の内訳別にみると、M字型の右肩部分は主にパート・アルバイトにより支えられており、20〜24歳の若年層においても正規の職員・従業員比率が低下し、パート・アルバイト、派遣社員等それ以外の雇用形態での比率が上昇している。男性でもこうした特徴はみられるが、女性のパート・アルバイト比率が各年齢層にわたり2〜6割前後の比率でみられるのと比べて、男性については20〜24歳層と60歳以上層で目立つ程度である(第2−7図)。 |
女性の仕事に対する考え方は「子どもができてもずっと職業を続ける方がよい」が増加しており、一生を仕事と向き合いながら送る生き方を支持する意見が大勢を占めつつある(第2−9図)。しかし、子育て中の女性のうちには、子どもが小さい間は短時間勤務や在宅就業で働くことを望む者も少なくない(第2−10図)。また、新入社員の仕事・家庭観をみると男女とも約8割が「仕事と家庭の両立」を望むなど、男女とも仕事と家庭の両立を図ることができるライフスタイルへのニーズが高まっている。 (職業を意識した進路選択意識は男性以上、しかし実際の専門分野の専攻にはなお偏り) 女性の大学への進学理由をみると「希望する業種・職種に進みたい」など、職業を意識して進学する姿勢が男性以上にみられる(第2−11図)。学部選択にも職業意識が反映されているとみられるが、工学部系に進む女性は未だ少なく、諸外国との差が大きい(第2−12図)。 |
(男性に比べて少ない女性正社員) 正社員全体に占める女性の割合は30.3%となっている。年齢構成をみると男性に比べて勤続年数が相対的に短いこと等から、若い年齢層の比率が高い。学歴構成をみると大学・大学院卒者の割合が16.5%と男性の32.7%に比べて低くなっている。 (全体的には遅い女性の登用、外資系企業はややリード) 管理職に占める女性の割合は係長相当職7.7%、課長相当職2.6%、部長相当職1.6%と低水準にとどまっている。しかし、企業の種類によっては女性の登用は進んでおり、外資系企業では国内大企業等に比べて役職に就いている女性の割合が高くなっている(第2−1表)。 (仕事、業務の内容 〜習熟度が高い仕事に男女差〜 ) 業務の習熟度が高くなるほど「男女とも就いている」事業所の割合が少なくなり、男性のみが就く事業所の割合が高まる傾向がみられる(第2−13図)。しかし女性の登用が進んでいる外資系企業では仕事の配分も積極的で、判断力を要する仕事や専門的知識・技術を要する仕事が女性に与えられている(第2−1表)。 (仕事には概ね満足、でも男性との格差には不満。女性の意欲を高め、就業継続につながるのは男女均等な職場) 女性正社員の職場への満足度をみると、配置・昇進や評価・処遇について不満を持つ者の割合がともに約3割と、仕事の内容・やりがい(約2割)に比べて高く、男性(約2割)と比べても高くなっている。総合職女性でも4割以上が仕事について不満感を抱き、同期の総合職男性と比べて人事管理面で差があると感じている者が約6割を占めており、就業継続のために必要なこととして「女性を一人前に取り扱ってくれる企業風土」、「職場の上司の女性を活用する姿勢」、「やりがいのある仕事であること」等が多くあげられている。また、男女が同じような仕事をし、均等に取り扱われている職場であるほど、女性のキャリア意識が高いという関係がみられる。 (職場の均等実現に努力する企業のパフォーマンスは良好) ポジティブ・アクション(注)への取組や女性社員の管理職への登用が進んでいる企業ほど自社の経営業績を高く評価し、5年前と比較した売上高の増加率が高いという関係がみられる(第2−2表)。 |
(注) | ポジティブ・アクション:過去の取扱いなどが原因で生じている男女労働者間の事実上の格差を解消するための積極的かつ具体的な取組 |
正社員以外の就業形態で働く女性のうちパートタイム労働者、派遣労働者及び在宅就業者についての実情と意識を探った。 (パートタイム労働者、派遣労働者、在宅就業者の女性割合はいずれも7割以上) それぞれの就業形態で女性が占める割合はパートタイム労働者69.0%、派遣労働者77.8%、在宅就業者70.1%となっている。就業形態別の女性労働者の特徴をみると(第2−3表)、派遣労働者では若年者が多く、パートタイム労働者では40、50歳代の中高年齢者が多い。また、パートタイム労働者、在宅就業者では有配偶者の割合が7割以上と高い。学歴構成をみると大卒以上の者の割合は派遣労働者、在宅就業者が正社員よりも高く、また、いずれの就業形態についても男性の方が大卒以上の者の割合は高くなっている。 (男性に比べて専門性の高い分野での就業は少ない) 女性労働者の就業分野をみると、いずれの就業形態でも相対的に高度な専門性を要する分野に就く者の割合は男性に比べて低い。パートタイム労働者の職種構成をみると専門・技術、管理(課長相当職以上)の割合がそれぞれ7.1%、0.2%と男性(それぞれ8.2%、0.5%)に比べて低い(第2−14図)。係長、班長クラスも含めた役職に就くパートタイム労働者が増えているが、その割合は男性に比べて低く、役職に就いている場合でもより低位の役職が多い(第2−4表)。派遣労働者や在宅就業者については情報・技術分野の仕事に就く者の割合が男性に比べて低く、例えば在宅就業者では「設計・製図・デザイン」や「システム設計・プログラミング」で男女の差が大きくなっている(第2−15図)。 (より積極的な理由で選択されている在宅就業) それぞれの就業形態の選択理由をみると、女性のパートタイム労働者では「都合の良い時間(日)に働きたいから」(50.9%)、「勤務時間・日数が短いから」(34.2%)と時間的要素を考慮する者が多いが、「正社員として働ける会社がないから」(20.8%)も増加している。また、年齢階級別には育児期において正社員として働きたくても働けない事情や、育児が一段落した中高年層が正社員を希望しても就職が難しい等の事情も読みとれる(第2−17図)。女性の派遣労働者(登録型)でも「仕事内容が選べる」(29.3%)、「仕事の範囲や責任が明確」(22.4%)と並び「就職先が見つからなかった」が30.5%と男性(17.0%)に比べて高い。これに対し、女性の在宅就業者では消極的な選択理由は少なく、「家庭と仕事を両立できる」(59.7%)、「自分のペースで働ける」(45.2%)等の積極的理由で選択する者が多くなっている(第2−18図)。 (いずれの就業形態でも全体的には満足度は高い。パートタイム労働者の不満の多くは賃金、仕事を任されている者により高い不満) 女性のパートタイム労働者、派遣労働者は職業生活全体に対する評価は概ね満足度が高いが、正社員も含め「教育訓練・能力開発のあり方」、「評価・処遇のあり方」、「賃金」等では共通して低い満足度となっている。また、在宅就業者も自らの働き方への満足度は高い。 一方、仕事への不満についてみると、パートタイム労働者では「賃金が安い」(49.3%)について最も多く、「雇用が不安定であること」、「有給休暇がとりにくい」、「正社員になれない」が20%前後で並んでいる。また、男女とも「主に正社員の指示に従って仕事を行っている」者より、仕事を任され、自主的な判断で仕事をしている者の方に不満・不安がある者の割合が高くなっている(第2−19図)。 (継続希望が多い女性パートタイム労働者。若年層や高学歴者では仕事のレベルアップの希望が多い) 一方、女性のパートタイム労働者の67.6%が今後ともパートタイム労働での継続就業を希望する就業形態として選択している。仕事の内容としては「技術・技能・資格を活かした仕事」又は「単純・補助的な仕事ではなく主要な仕事」を希望する者が23.6%と、仕事のレベルアップを望む者も少なくない。若年層ほど、また高学歴の者ほどこうした希望を持つ者が多くなっている(第2−20−1、2図)。 (派遣労働者の不安・不満で多いのは雇用の不安定さ、教育訓練への高い要望) 女性の派遣労働者では「身分・収入が不安定」(56.3%)、「将来の見通しが立たない」(47.0%)等で不満が多い。また、「補助的な仕事のため能力が向上しにくい」が19.3%と男性(15.3%)に比べて高く、職業能力を高めたいと思っている者の割合も男性に比べて高くなっている(第2−21図)。 (男性に比べて正社員を希望する者が多い女性の派遣労働者) 女性の派遣労働者の33.4%(男性32.3%)が「今後も派遣労働者として働き続けたい」としているが、「早い時期に正社員として働きたい」とする者は25.2%(男性14.0%)等、男性に比べて正社員を希望する者が多い。 (在宅就業者が困っているのは仕事の確保、女性は能力や知識の不足をあげる者も多い) 女性の在宅就業者が困っていることとしては「仕事の確保」が49.4%(男性62.7%)と最も多く、これに「単価が安いこと」(女性29.7%、男性49.1%)が続いているが、「能力・知識の不足」をあげるものが22.8%と男性(16.4%)に比べて多くなっている。しかし、実際に能力向上のための取組を行っている女性は55.5%で男性の80.9%に比べて少ない。 (在宅就業者は就業継続の希望が強い) 女性の在宅就業者のうち継続就業を希望する者の割合は85.1%、男性が90.9%と極めて高い。未婚女性では19.0%が「迷っている」としているが、その理由としては「収入が少ない、不安定であること」とする者が91.7%となっており、収入面が大きな要因となっている(第2−22図)。 |
起業希望女性の現在の就業状態をみると、就業形態の多様化を反映し多岐にわたっており、パートタイム労働者、派遣労働者、契約社員といった非正規従業員が28.9%、正規従業員が28.4%と同程度であり、無職の者も21.3%となっている。 起業したい理由をみると、「年齢に関係なく働きたい」が67.1%と最も多く、これに「好きな分野・興味のある分野で仕事をしたい」(61.8%)、「自分の裁量で仕事をしたい」(59.6%)が続いているが、「女性の昇進・昇格に限界がある」や「女性に任される仕事の範囲に限界がある」もそれぞれ19.1%、15.6%となっている(第2−24図)。 |
起業を希望する女性にとって、必要とされている支援で最も多いのは「起業準備、事業計画、資金調達等のノウハウを修得するためのセミナー」、次いで「起業準備、事業計画、資金調達に関する相談窓口」、「人材、市場、技術等に関する情報提供」となっており、起業に必要な知識やノウハウの不足を補う機会が求められている。起業前の職業経験において知識やノウハウを取得できる機会が少なかった場合、それらを独力で行うことには大きな困難を伴うと考えられる。また、同業者等との交流や成功者によるアドバイスなど、人的ネットワークの不足を補うためのサービスも求められている。事業の発展段階に応じた専門家によるコンサルティングについては、既起業者、起業希望者ともニーズが高くなっており、起業に至った後も継続的な支援が必要とされている(第2−25図)。 |