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第1 母子家庭及び寡婦等の家庭生活及び職業生活の動向に関する事項

 以下の記述は、特に記載がないものは、厚生労働省の「全国母子世帯等調査(平成10年11月1日現在)」による。

1.離婚件数の推移等
 離婚件数は、昭和39年以降毎年増加し、昭和58年をピークに減少したが、平成3年から再び増加している。平成13年の離婚件数は、約28万6千件(厚生労働省「人口動態統計」)で、過去最高である。
 近年の離婚増加の原因については、事情は様々であるため、一概には言えないが、そのひとつには、離婚に対する考え方の変化や、女性の経済的自立の進展等近年の社会情勢の変化により、以前に比べ、離婚の障害が少ない環境になってきていることが考えられる。

2.世帯数等の推移
(1) 母子世帯数は、954,900世帯(平成10年)で、平成5年の789,900世帯に対し、20.9%の増加となっている。母子世帯になった理由では、平成5年に比べ死別によるものが減少する一方、離婚や未婚の母の増加により生別世帯が増加し、構成割合では生別世帯が全体の79.9%(平成5年 73.2%)となっている。
(2) 父子世帯数は、163,400世帯で、平成5年の157,300世帯に対し、3.9%の増加となっている。また、父子世帯では、生別世帯が64.9%(平成5年 65.6%)となっている。
(3) 寡婦の数は、1,128,900世帯(平成10年)で、平成5年の1,175,600世帯に対し、4.0%の減少となっている。母子世帯における生別世帯の増加を反映して、寡婦においても、生別によるものが37.0%(平成5年 32.6%)となっており、生別の割合が増加している。
(4) 母子家庭の増加により、児童扶養手当の受給世帯も増加しており、平成11年度末664,382世帯、12年度末708,395世帯、13年度末には759,194世帯となっており(「厚生労働省福祉行政報告例」)、毎年約5万世帯程度増加している。

3.年齢階級別状況等
(1) 母子世帯となった時の母の平均年齢は34.7歳で、そのときの末子の平均年齢は5.4歳となっている。
 母子世帯の母の平均年齢は、40.9歳(平成5年 41.7歳)で、末子の平均年齢は、10.9歳(平成5年 12.0歳)となっており、母子とも平均年齢が低下している。
(2) 父子世帯となった時の父の平均年齢は40.2歳で、そのときの末子の平均年齢は7.8歳となっている。
 父子世帯の父の平均年齢は、46.4歳(平成5年 44.2歳)で、前回調査よりも平均年齢は高くなっている。また、末子の平均年齢は13.0歳となっている。
(3) 寡婦の平均年齢は56.3歳(平成5年55.7歳)で、年齢分布としては「60〜64歳」の階層が35.6%で最も多くなっている。

4.住居の状況
(1) 母子世帯の持ち家率は、全体で26.6%であるが、死別世帯が66.7%、生別世帯は17.3%と両者に大きな違いがみられる。持ち家以外については、借家25.9%(平成5年 33.4%)、公営住宅 16.6%(平成5年 12.6%)、実家等での同居13.6%(平成5年 7.3%)等となっている。平成5年に比べると、持ち家と借家の割合が減少した一方、公営住宅と同居の割合は増加した。
(2) 父子世帯の持ち家率は、58.0%となっている(平成5年 56.4%)。持ち家以外については、借家14.7%(平成5年 20.5%)、公営住宅 8.2%(平成5年 7.0%)、実家等での同居11.4%(平成5年 5.9%)等となっている。平成5年に比べると、持ち家及び公営住宅の割合にはあまり大きな変化はなかったが、借家の割合が減少、同居の割合が増加した。
(3) 寡婦の持ち家率は、59.8%となっている(平成5年 62.7%)。持ち家以外については、公営住宅 10.1%(平成5年 7.8%)、借家16.1%(平成5年 19.6%)、実家等での同居4.5%(平成5年 2.6%)等となっている。
(4) 離婚による転居の状況をみると、父子家庭では、転居しなかった場合が71%、母子家庭では転居した場合が67%となっており、母子家庭が離婚直後に住居面の変化を伴う場合が多い(厚生省「平成9年度 人口動態社会経済面調査報告 離婚家庭の子ども」)。

5.就業状況
(1) 母子家庭の母の84.9%(平成5年87.0%)が就業しており、就業している者のうち常用雇用者が50.7%(平成5年 53.2%)、臨時・パートが38.3%(平成5年 31.3%)等となっている。母子家庭になる前に就業していた者の割合は63.5%(常用雇用者 40.4%、臨時・パート39.2%)であり、母子世帯になる前に就業していなかった母のうち、79.2%が現在就業している(常用雇用者 47.2%)。従事している仕事の内容は、事務、サービス業がそれぞれ約2割となっている。勤務先事業所の規模は、6〜29人のものが最も多く、300人未満の規模までで全体の8割となっている。
 また、母子世帯の母で就業に資する資格を有している割合は、33.6%となっており、平成5年に比べても若干増えているが、資格が現在の仕事に役立っていると回答した者の割合は53.7%に過ぎず、むしろその割合は低下している。
 さらに、現在就業している者のうち、約3割が転職を希望しているが、その理由は「収入がよくない」が約6割となっている。
(2) 父子世帯の父は、父子世帯になる前には殆ど(95.9%)が就業しており、その後も大半(89.4%)(平成5年93.0%)が就業している。就業している者のうち常用雇用者が75.3%(平成5年 71.7%)、事業主が13.7%(平成5年18.5%)、臨時・パートが6.9%(平成5年3.1%)等となっている。
(3) 寡婦は66.7%が就業しており、就業している者のうち常用雇用が42.6%、臨時・パートが33.9%等となっている。
(4) 母子世帯になった直後に仕事を探していた時の問題点として、「年齢制限があった」「子どもが小さいことが問題とされた」「求人自体が少なかった」ということが多く挙げられている(日本労働研究機構「母子世帯の母への就業支援に関する調査結果の概要(平成13年10月発表)」。このように、母子世帯の母は、求職するにあたって、比較的年齢が若いうちは小さい子どもを抱えていることが問題とされ、子どもがある程度成長した頃には年齢制限に直面している。

6.収入状況
(1) 母子世帯の平成9年の年間の平均収入金額(就労収入、生活保護法に基づく給付、児童扶養手当、養育費等全ての収入の金額)は(平均世帯人員 3.16人)、229万円となっている(平成4年 215万円)。
(2) 父子世帯の平成9年の年間の平均収入は(平均世帯人員 3.45人)、422万円となっている(平成4年 423万円)。

7.養育費の取得状況
 離婚母子世帯のうち養育費の取り決めをしている世帯は、35.1%である。養育費の取り決めをしていない理由としては、「相手に払う意志や能力がないと思った」という者が最も多く(61.1%)、「取り決めの交渉をしたがまとまらなかった」11.3%、「取り決めの交渉がわずらわしい」6.5%等となっている。
 また、養育費の受給状況については、現在も受給している者が20.8%、受けたことがある者が16.4%、受けたことがない者が60.1%となっている。養育費を現在も受けている又は一度でも受けたことがある者の養育費の1世帯あたりの平均額は、月額53,200円である。
 離婚の際又はその後、子どもの養育費の関係で相談をした者は、全体の54.1%であり、そのうちの最も多いのが親族であり(41.9%)、家庭裁判所 28.6%、弁護士 11.0%、自治体窓口等 6.6%等となっている。

8.子どもの状況等
(1) 母子世帯における子ども(20歳未満の児童)の総数は、約152万人となっている。1世帯当たりの子どもの数は、「1人」が45.0%(平成5年 41.9%)、「2人」が38.5%(平成5年 42.9%)となっており、 平均1.59人となっている。
 就学状況別にみると、小学生のいる世帯が315,500世帯で最も多く(26.5%)、平成5年に比べて、その割合が増加している。
 小学校入学前児童のいる母子世帯は189,200世帯(母子世帯総数の19.8%)、該当する児童の数は221,500人となっている。養育の状況については、保育所の割合が52.6%と最も高いものの、平成5年に比べると、その割合が減少し、親本人、家族などの割合が増加している。
(2) 父子世帯における子ども(20歳未満の児童)の総数は、約26万人となっている。1世帯当たりの子どもの数は、「1人」が44.5%(平成5年 42.5%)、「2人」が35.5%(平成5年 41.0%) となっており、平均は1.57人となる。
 就学状況別にみると、小学生、中学生、高校生のいる世帯がそれぞれ約2割となっている。
 小学校入学前児童のいる父子世帯は14,700世帯(父子世帯総数の9.0%)、該当する児童の数は15,300人となっている。養育の状況については、母子家庭同様、保育所の割合が50.3%と最も高いものの、平成5年に比べると、保育所の割合が減少し、親本人、家族などの割合が増加している。

9.その他
(1) 公的制度等の利用状況
 母子世帯及び父子世帯ともに、公的制度等を利用する割合はあまり高くない。そのなかで、比較的利用されているのは、公共職業安定所、福祉事務所、市町村福祉関係窓口である。
 また、これまで制度等を利用したことがないもののうち、今後利用したい制度として、公共職業能力開発施設、公共職業安定所等の就業支援関係をあげる割合が増加している。
(2) 子どもについての悩み
 子どもについて悩みがあるとの回答は、母子世帯で、66.9%(平成5年64.4%)、父子世帯で65.7%(平成5年 59.8%)となっている。悩みの内容については、.母子世帯、父子世帯ともに、「教育・進学」についてが最も多く、母子家庭では、「しつけ」、父子世帯では、「食事・栄養」に関することがこれに次いでいる。また、母子世帯、父子世帯ともに、前回調査より悩みがある世帯が増加している。
(3) 困っていること
1) 母子世帯では、困っていることがあるとの回答が、74.6%(平成5年 71.0%)となっている。
 困っている内容については、「家計」が37.9%で最も多く、「仕事」 22.4%、「住居」 18.5%の順となっている。
2) 父子世帯では、困っていることがあるとの回答が68.2%(平成5年 62.2%)となっている。
 困っている内容については、「家事」が34.1%で最も多くなっている。
3) 寡婦については、困っていることがあるとの回答が60.1%(平成5年 47.7%)となっている。
 困っている内容については、「健康」が33.5%と最も多くなっている。
 いずれの世帯も、前回調査に比べて困っていることがある世帯の割合が増加しており、また、「仕事」について困っている者の割合が増加している。
(4) 相談相手について
 相談相手がありと回答があったのは、母子世帯、父子世帯、寡婦いずれも前回調査よりはその割合が増加しているが、母子世帯の81.1%、寡婦の74.2%に比べると、父子世帯では56.8%とその割合は低い。

10.まとめ
(1) 母子世帯及び寡婦の状況
 母子世帯については、生別世帯の割合が増加しており、小さい子どもを抱えながら、臨時・パートで就業している者も少なくなく、収入もかなり低い状況にある。養育費も大半が取得していない。その結果、家計について困っているとの回答が最も多くなっている。また、離婚により転居する割合が高い。このように、母子世帯については、特に、子育てと仕事の両立、より収入の高い就業を可能にするための支援、養育費取得のための支援、及び生活の場の整備などが重要と思われ、その必要性が従来以上に高まっている。
 寡婦については、健康面で困っているとの回答が最も多いことから、日常生活面の支援などが重要と思われる。
(2) 父子世帯の状況
 父子世帯についても、母子世帯に比べてその数は少ないものの、生別世帯の割合が高く、離婚が増加するなかで増加している。母子世帯に比べて、持ち家率が高くなっている。また、父子世帯となる以前から殆どの者が就業しており、その大部分は常用雇用者である。
 困っていることとしては、「家事」が最も多くなっているが、公的制度を利用する人はわずかであり、母子世帯に比べて相談相手なしという割合が高い。
 このように、父子世帯については、特に、子育てと仕事の両立、家事の支援、及び相談機能の充実などが重要と思われる。


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