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(4) 少子化、女性の社会進出、就業形態の変化に対する対応

(4−1) 公的年金制度における次世代育成支援策

 現在、公的年金制度においても、育児休業期間に対して一定の配慮措置を講じるという形で次世代を育成する者への支援が行われているが、公的年金制度における次世代育成支援をさらに拡充すべきという考え方からは、下記のような方法が考えられる。

(1)育児期間に対する配慮措置の拡充
 現在の育児休業期間に対する配慮措置を拡充し、多様な働き方の実現と併せて、育児期間において収入が下がり又はなくなる場合に、将来の年金額計算において配慮を行うことなどについて検討する。
 この場合、次のような点が論点となる。
 現在の配慮措置は第2号被保険者のうち育児休業取得者のみを対象としているが、第2号被保険者として育児期間も働き続けている者、第1号被保険者、さらには育児を理由として離職し第3号被保険者となった者等も対象とするかどうか
 配慮措置の具体的内容として、報酬比例年金について、年金額算定上の賃金の配慮や加入期間の加算といった措置を講じるかどうか
 第1号被保険者に対して配慮措置を採ろうとする場合、基礎年金の給付で配慮を行うことはできないが、保険料負担の面で配慮を行うかどうか
(2)年金資金を活用した次世代育成支援策の検討
 教育に伴う経済的負担の問題が少子化の背景にあると指摘されていることを踏まえ、学生が安心して学べるよう育英奨学金を充実させることと併せて、若者自身が資金を借りて就学し、社会の「支え手」となることを社会全体で支援するとともに、若者が公的年金を身近に感じられるよう、年金資金を活用した貸付制度も含めて新たな貸付制度についても検討する。

 いずれにしても、平成16年の年金改革では、少子・高齢化の急速な進行とその克服に向けた政策努力を年金制度においてどのように受け止めて年金改革を考えていくかについて、幅広い観点に立って十分に検討していくとともに、公的年金制度における次世代育成支援についても、その財源の在り方を含めて、今後、さらに議論を深め、適切な結論を得ることとする。


(4−2) 支え手を増やす取組

《多様な働き方への対応−短時間労働者等に対する厚生年金の適用》
 就労形態の多様化に伴い、厚生年金の適用のなかった者に対して年金保障が充実されるようにするとともに、年金制度の支え手を増やす観点から、短時間労働者等に対する厚生年金の適用を行う方向で検討する。
 このため、下記に掲げる論点等について、今後更に検討を続ける。
(1) 新たに厚生年金が適用される者に関する給付と負担の在り方について、どのように考えるか。また、新たな保険料負担が生ずることについて理解が得られるか。
(2) 短時間労働者等に対して厚生年金の適用を拡大することにより、賃金の低い被保険者が増加することになるが、このことが年金財政に対してどのような影響を与えるか。
(3) 短時間労働者等について、医療保険における取扱いをどう考えるか。

《高齢者の就労促進−在職老齢年金制度の見直しなど》
 現在、年金の支給開始年齢が65歳へ段階的に引き上げられる途上にあるが、高齢者(特に60歳台前半層)の就労を促進していく観点から、現行の在職老齢年金の見直しや、就労(賃金、働き方等)に対してできる限り中立的となる新たな仕組み等について、検討する。例えば、60歳台前半の年金受給者が就労する場合には、年金を65歳以降に繰り下げて受給することを選択できる仕組みなどが考えられる。

《年金改革と次世代育成支援策、雇用対策の総合的な推進》


(4−3) 女性と年金

 女性と年金検討会で示された6つの見直し案の考え方等を踏まえ、第3号被保険者制度の見直しに向け、以下の4つの案に整理した。今後、これらをもとに、さらに議論を深め、適切な結論を得ることとする。
(1)  夫婦間の年金権分割案(方法I)
(2)  負担調整案(方法II)
(3)  給付調整案(方法III)
(4)  第3号被保険者縮小案(方法IV)

《夫婦間の年金権分割案(方法I)》
 保険料負担については、従来どおり、第2号被保険者が勤務する事業所を通じて、その報酬額に応じた保険料を納付することとする一方、年金給付算定上、世帯賃金が分割されたものとして評価。いわば、夫婦の間での年金権の分割を行うことにより、同一世帯内において、個人がそれぞれ負担を行い、給付を受けると擬制する考え方。

《負担調整案(方法II)》
 第3号被保険者に関して、基礎年金という受益に着目した何らかの保険料負担を求める考え方。この場合、次のような仕組みが考えられる。
(1) 基礎年金に関する負担のすべてを受益に応じた負担とするのではなく、被用者グループにおいて、応能負担(定率保険料)と応益負担(定額保険料)を組み合わせる(=負担の一部を受益に応じた負担とする)考え方(方法II−1)
(2) 第3号被保険者に関する保険料負担を、被用者グループ全体ではなく、第3号被保険者を抱える第2号被保険者の間で定率負担により求める考え方(方法II−2)

《給付調整案(方法III)》
 第3号被保険者に関して、保険料負担を求めないが、基礎年金給付を減額する考え方。この場合、例えば、次のような仕組みが考えられる。
(1) 国民年金の免除者と同様の取扱いとし、給付は国庫負担部分に限る(方法III−1)
(2) 現行制度では、被用者年金の被保険者全体の保険料拠出により、第3号被保険者に関する保険料負担全額を賄っているが、これを保険料負担の一部分に限ることにより、給付についても一部とする(例えば、国民年金の半額免除者と同様の扱い)(方法III−2)

《第3号被保険者縮小案(方法IV)》
 現実に約1,000万人の第3号被保険者が存在していること等を踏まえ、当面、現行の第3号被保険者制度を維持しつつ、短時間労働者等に対する厚生年金の適用及びそれに伴う被扶養配偶者認定基準の見直しにより、その対象者を縮小していく考え方。

 この場合、片働き世帯が共働き世帯よりも相対的に高賃金であることに着目して、標準報酬上限を引き上げて保険料の追加負担を求める一方、現行の標準報酬の上限を超える部分は給付に反映されない仕組みとし、実質的に第3号被保険者に関する保険料負担についての不公平感を縮減することも考えられる。

《育児期間等に関する取扱い》
 なお、第3号被保険者を育児・介護期間中の被扶養配偶者に限る考え方については、次世代育成支援策の在り方と併せて検討する。


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