第1 | 趣旨 BSE問題や偽装表示問題などを契機に食品の安全に対して国民の不安や不信が高まっている。こうした状況の下、政府においては、「食品安全行政に関する関係閣僚会議」での検討を踏まえ、食品の安全に関するリスク評価を行う食品安全委員会(仮称)の設置と、消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律として食品安全基本法案(仮称)の制定に向けた準備作業が行われている。 厚生労働省が所管する食品衛生法等に基づく食品衛生規制は、こうした政府の食品安全行政への取組みのうち、リスク管理の主要部分を担うものである。このため、食品の安全の確保のための施策の充実を通じ、国民の健康の保護を図ることを目的として、次期通常国会において食品衛生法等の所要の改正を行う。 |
第2 | 基本的考え方 |
(1) | 国民の健康の保護を図ることを目的とした食品の安全確保のため、国・地方公共団体の責務(リスクコミュニケーションを含む)及び事業者の責務を明らかにするとともに、食品衛生規制における規格・基準、監視・検査体制、食中毒等の飲食に起因する事故への対応、罰則についてその在り方を見直す。 | ||||||
(2) | 上記見直しに当たっては、食品の流通形態の多様化、消費者意識の変化等を踏まえ、特に次の3つの点に着目して行った。
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(3) | なお、食品安全基本法(仮称)の制定に向けた、リスク分析手法や関係者の責務・役割についての議論を踏まえ、必要に応じ、食品衛生法においても適切に対応する。 |
第3 | 主な改正内容 | |
1 法の目的及び国等の責務 |
(1) | 法の目的規定の見直し |
(考え方) 現行法において飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することとされている法の目的について、食品の安全を確保することにより、国民の健康の保護を図ることを明確にする。
(改正内容) |
(2) | 国及び地方公共団体の責務 |
(考え方) 食品の安全確保における国及び地方公共団体の責任を明確にするため、具体的な責務の内容を列記する。 (改正内容)
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(3) | 販売業者等の責務 |
(考え方) 販売業者等(生産者、製造業者、輸入業者、流通業者等を含む。)は、国民への食品の供給者として、その安全確保に責任を有することを明確にするため、その責務の内容を列記する。
(改正内容) |
2 規格・基準 |
(1) | 残留農薬等のポジティブリスト制の導入 |
(考え方) 近年の輸入食品の増加等も踏まえ、食品衛生法に基づく残留基準が設定されていない農薬等(動物用医薬品、飼料添加物を含む。)について、当該農薬等が残留する食品の流通等を原則として禁止する措置(いわゆるポジティブリスト制)を、一定の準備期間経過後に導入する。
(改正内容) |
(2) | 既存添加物 |
(考え方) 化学合成品の添加物に限って採られていた指定制度の天然添加物への拡大(平成7年食品衛生法改正)に伴う経過措置により、当時現に使用されていた天然添加物は「既存添加物」として引き続き使用が認められているが、これらのうち、安全性に問題のあることが判明したあるいは既に使用実態のない既存添加物の使用を禁止できるようにする。
(改正内容) |
(3) | 新開発食品の安全確保の充実 |
(1) | 特殊な方法により摂取する食品等の暫定流通禁止措置 |
(考え方) 近年の食品製造技術等の技術進歩や輸入食品の多様化等により、ダイエット用健康食品などを含む一般的な摂取方法とは著しく異なる方法により摂取される食品や、一般的に飲食に供されてこなかった物を含む食品等が流通している。こうした食品の中には健康被害が発生しているケースもあることから、食品衛生上の危害の発生・拡大を防止するため、当該食品に対する安全確保の充実を図る。
以下の類型の食品であって、人の健康を損なうおそれがない旨の確証のないものについて、現行の食品衛生法の第4条の2と同様の措置(食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、当該食品の販売禁止を可能とすること)を講ずることができるようにする。(第4条の2関連)
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(2) | 健康増進に関する虚偽・誇大広告の禁止 |
(考え方) いわゆる健康食品等による広告の適正化を図り、例えば、効果の確認されていない健康食品に頼ることによって適切な診療機会を逸してしまうといったことがないよう、消費者への適切な情報の提供を図る。
(改正内容) |
3 | 監視・検査体制 |
(1) | 監視・検査体制の整備 |
(考え方) 輸入食品については、輸入件数が増加し、輸入される食品の種類も多種多様になるとともに、国内の食品の流通形態もより複雑になっていることから、民間法人も活用して、監視・検査体制の整備を図る。 (改正内容) |
(1) | 命令検査の対象食品等の政令指定の廃止 命令検査(検査に合格しなければ輸入・流通等を認めない。)の対象食品等について、違反の蓋然性に応じて機動的に対応できるよう、政令指定要件を廃止する。(第15条関連) | |
(2) | 登録検査機関 現在、公益法人に限定されている命令検査を実施する検査機関について、厚生労働大臣による指定制度を改め、現行の指定検査機関と同等の公正・中立性や検査能力等の要件を備えることを条件に、民間法人等も登録検査機関として登録できることとする。(第5章の2関連) | |
(3) | モニタリング検査の登録検査機関への委託 輸入食品等に関して検疫所等が収去し自ら試験を行ういわゆるモニタリング検査について、当該試験業務を(2)の登録検査機関に委託することができることとする。(第17条及び第19条の2関連) | |
(4) | 監視指導の指針及び輸入食品監視検査実施計画(仮称)の策定・公表 厚生労働大臣は、都道府県等における監視指導の重点を示した指針及び輸入食品に対する検査の実施等に関する計画を示した輸入食品監視検査実施計画(仮称)を策定し、公表する。(新設) | |
(5) | 都道府県等食品衛生監視指導計画(仮称)の導入 食品衛生監視員による監視指導について、現在政令により施設の類型毎に回数を定める仕組みを改め、(4)の指針等を勘案して、各都道府県等において、地域の実情に応じた重点的な監視指導計画を策定し、公表する仕組みを導入する。(第19条関連) |
(2) | 営業者による食品の安全確保への取組の推進 |
(1) | 総合衛生管理製造過程(ハサップ)承認制度の見直し | |
(考え方) 営業者による食品の安全の確保に向けた自主管理を促す仕組みである総合衛生管理製造過程の承認を受けていながら重大な食中毒事件を引き起こした事例が発生していることから、営業者による一定期間毎の自律的な改善を促すため、承認制度を見直す。
(改正内容) | ||
(2) | 食品衛生管理者の責務の追加等 | |
(考え方) 食品衛生管理者(特に衛生上の考慮を必要とする食品等の製造・加工工程の管理者)について、自主管理・法令遵守の促進の観点から、責務を追加する。
(改正内容) |
4 食中毒等飲食に起因する事故への対応の強化 | ||
(1) | 大規模・広域な食中毒等の発生時の厚生労働大臣による指示 | |
(考え方) 近年、食品の流通が広域化し、食中毒が全国的に拡散して発生する傾向があることから、食中毒等への対処に際し、国の指示により、危害防止のための迅速な対応を行う。
(改正内容) | ||
(2) | 保健所長による調査及び報告 | |
(考え方) 現行の食品衛生法では、保健所長は医師からの食中毒に係る届出があった場合に調査しなければならないこととされているが、届出がない場合にあっても早期に対策を実施することができるようにする。
(改正内容) | ||
(3) | 販売業者等の記録保管等の努力義務の創設 | |
(考え方) 食中毒発生時において、原材料、製品等の仕入元等に係る記録を参照することにより、原因究明や被害拡大防止を図る。
(改正内容) |
5 罰則の強化(表示義務違反等を含む。) (考え方) 営業者等による自主的な法令遵守を促すため、食品衛生法違反に対する罰則を見直す。
(改正内容) |
第4 | その他 と畜場法等他の食品衛生規制に係る法律についても、併せて必要な見直しを進めていくこととする。 |