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いわゆるダイエット用健康食品による健康被害の防止のための当面の対策について

平成14年8月28日
厚生労働省

 いわゆるダイエット用健康食品による健康被害については、7月12日の3製品12人に関する健康被害事例の公表以来、8月27日時点で786人の健康被害事例(うち4人が死亡)が確認されている。これらの製品の多くはインターネットを通じて個人輸入により入手されていることが判明しており、これは情報の多様化、国際化の進展に伴って生ずる新たな問題であって、今後も同様の事案の発生が懸念される。また、国内において販売されているダイエット用健康食品の中にも医薬品成分を含んでいるものがあることが明らかとなり、健康食品と称して未承認医薬品が流通していることが判明している。

 厚生労働省としては、こうした健康食品・未承認医薬品(以下「健康食品等」という。)による健康被害について、(1)原因物質の解明のための研究、(2)中華人民共和国当局との情報交換、(3)未承認医薬品等の取締りの徹底、(4)被害情報の収集・公表等、(5)輸入食品の審査体制の強化の対策を講じ、被害の拡大防止に努めてきたところであるが、今後の同様の健康被害事例の再発防止や健康被害発生時の迅速な対応による被害拡大防止を目的として、こうした対策を引き続き実施するとともに、今般新たに既存施策の運用面での強化等早急に実施できる対策を取りまとめることとした。

 今般の対策の立案に当たって基本的な視点としたものは以下の4点である。

 第一に、これまで以上に今後の健康被害発生の未然防止に努めることである。今般の健康被害事例を踏まえ、今後、さらに幅広く情報を収集するとともに、健康被害の発生が予見された場合は、迅速に必要な対策を実施することにより、健康被害発生の未然防止に努めていくこととする。

 第二に、医薬品担当部局と食品担当部局との一体的な対応の推進である。今般の健康被害事例に見られるように、健康食品と称して販売されているものが医薬品成分を含有するなど、実質的に未承認医薬品の販売に該当する事例も多くある。こうしたことを踏まえ、今後の健康食品等による健康被害の防止のために、これまで以上に医薬品担当部局と食品担当部局とが一体的に対策を進めていくこととする。

 第三に、健康被害発生時の対応の一層の迅速化である。健康食品等による健康被害に係る対策では、所管が医薬品担当部局と食品担当部局にまたがるため、対策の実施が遅れるおそれもある。こうした複数の部局にまたがる対象に係る対策については、両部局の一体的な処理を可能とする体制を構築すること等により、今後の健康被害発生時の対応のより一層の迅速化を図ることとする。

 第四に、関係者との連携の強化である。健康食品等による健康被害の防止のための対策においては、厚生労働省のみならず、消費者にとって身近な対応窓口である保健所等の地方公共団体や消費者行政機関、各種民間団体等の他の関係者も重要な役割を果たすことにかんがみ、これまで以上にこうした関係者との連携を図っていくこととする。

 これまで講じてきた対策の経緯
 これまで、厚生労働省としては、下記に掲げる対策を実施してきたところであり、今後ともこれらの対策の継続及びより一層の強化を図っていくこととする。
(1) 原因物質の解明のための研究
 中国から輸入されたいわゆるダイエット用健康食品について、肝機能障害を引き起こす可能性のある物質の特定に向け、国立医薬品食品衛生研究所における原因物質の早急な解明に全力を挙げることとしている。

(2) 中華人民共和国当局との情報交換等
 外務省を通じて、中華人民共和国当局に対し今回の事例を周知するとともに、健康被害の事例、原因物質等に関する情報提供を求めるなど情報交換を行うこととし、7月17日に外務省を通じて文書を送付した。なお、7月22日に食品保健部長が中華人民共和国を訪問し、双方の国で発生した健康被害の情報について、相互に情報交換するような協力体制を強化することを合意したところである。
 さらに、8月15日に食品保健部基準課長が中国衛生部を訪問し、我が国における最新の被害状況、製品名、パッケージ情報等に関して情報提供を行ったところである。

(3) 未承認医薬品等の取締りの徹底
 ダイエット用健康食品と称して、未承認医薬品を販売する薬事法違反行為については、都道府県薬務主管部局に対して7月17日に通知を発出し、取締りの強化を要請した。また、検疫所及び都道府県等食品衛生部局に対しても、7月19日に通知を発出し、健康食品のうち、医薬品に該当するおそれがある物については都道府県薬務主管部局に通報するよう指示した。
 さらに、人に健康被害を生じさせるおそれがある食品については、食品衛生法に基づく販売禁止、回収等の措置を含めて厳正に対処することとした。
 これらに加えて、都道府県に対して、7月29日に通知を発出し、健康食品について、N−ニトロソ−フェンフルラミン等の医薬品成分が含まれていないことを自主的に確認するよう食品販売業者を指導する旨指示したところである。

(4) 被害情報の収集・公表等
 被害の未然防止の観点から、我が国における健康食品等による健康被害情報を収集することとした。都道府県等から報告された健康被害事例において、一定の判断基準に合致するような事例については、予防的な観点に立ち、製品の摂取と健康被害の因果関係が明らかでない段階であっても、その可能性が疑われる場合には、製品名、報告自治体、事例の概要を厚生労働省ホームページ等において公表してきたところである。(8月27日現在52製品名を公表。)

(5) 輸入食品の審査体制の強化
 7月29日、食品の輸入届出を提出する際に、製品の成分、形状、表示等からダイエット用健康食品と考えられる物については、N−ニトロソ−フェンフルラミン等の成分が含まれていないことを自主的に確認するよう輸入業者に指導するよう検疫所に対して通知するとともに、都道府県薬務主管課に対しても同趣旨の指導を行うよう通知した。また、輸入食品指定検査機関協会に対して、7月29日に通知を発出し、医薬品成分の分析法を示して検査の実施の協力を求めたところである。
今後、上記措置を徹底するとともに、輸入時における取締りの結果、未承認医薬品が発見された場合には、製品名及び製造者名を公表することとしている。

 今後新たに実施していく対策
 今後は、さらなる健康食品等による健康被害の未然防止、健康被害発生時の被害拡大防止に向けて、1の(1)から(5)に掲げる5つの対策に加えて、以下に掲げる対策も実施していくこととする。
(1) 健康食品等による健康被害防止のための要領の策定
(1) 健康食品等健康危機管理実施要領の策定
 健康食品等に係る健康被害発生の未然防止及び健康被害発生時の被害拡大防止のため、都道府県・保健所等及び厚生労働省内における日常の情報収集や緊急時における対応手順を定める「健康食品等健康危機管理実施要領」(仮称)を早期に策定・公表し、都道府県等に対して通知することとする。

(2) 健康食品等による健康被害防止のための留意点の提示
 健康食品等健康危機管理実施要領(仮称)の策定までの間の当面の措置として、都道府県・保健所等における健康食品等による健康被害防止のための留意点を取りまとめ、都道府県に対して通知する。なお、この通知では、併せて、保健所において受理している健康食品等に関する健康被害相談事例の国への報告の手順を改善することにより、健康被害事例に関する情報収集の改善に努める。

(3) 健康食品等健康危機管理合同連絡会議の設置
 健康食品等に関する情報収集・評価及び健康被害防止のための対策の立案・調整のため、厚生労働省内の関係各課の課長等により構成される健康食品等健康危機管理合同連絡会議(仮称)を設置する。

(2) 健康食品等の輸入時や流通時における対策
(1) 海外渡航者等に対する注意喚起
 健康食品等に関する科学的な情報や健康被害に関する情報を記載したチラシ、ポスター等を作成し、国際空港や検疫所等を通じて海外渡航者等に配布すること等により、健康食品等の安易な個人輸入に対する注意を喚起する。

(2) 公表された健康食品等に対する薬監証明の取扱いの強化
 製品名を公表している未承認医薬品については、2ヶ月分の使用量以下を個人輸入する場合であっても、薬監証明を地方厚生局において取得するよう税関において求めることにより、地方厚生局において販売目的でないことを確認するとともに、必要な危険情報を提供する。また、食品として製品名を公表しているものについても、未承認医薬品の取扱いと同様、少量の個人輸入でも、検疫所において必要な危険情報を提供する。

(3) インターネット監視及び買上げ調査
 未承認医薬品に対するインターネット広告監視等を実施するとともに、こうしたインターネット広告監視の結果及び個人輸入情報等から、ダイエット製品を中心に買上げをして、有害成分を含有する製品等を確認して、販売業者等に対する指導・取締りを強化する。

(3) 輸入代行業者に対する対策
(1) 無許可輸入に該当する場合を具体的に示す通知の発出
 医薬品のいわゆる輸入代行業者が、輸入される物の管理を行っており、輸入に該当する事例も見られることから、無許可輸入に該当する場合を具体的に示す通知を都道府県に発出することにより、いわゆる輸入代行業者に対する都道府県の取締りを容易にする。

(2) 違法な未承認医薬品の広告に該当する場合を具体的に示す通知の発出
 医薬品のいわゆる輸入代行業者が、未承認医薬品の広告を行っている事例も見られることから、未承認医薬品の広告に該当する場合を具体的に示す通知を都道府県に発出することにより、いわゆる輸入代行業者に対する都道府県の取締りを容易にする。

(4) 情報収集・評価・提供
(1) 健康食品等の安全性や効果等に関する情報収集・分析データベースの構築
 国内外の健康食品等に関する健康被害事例、研究報告、文献、販売禁止等の規制に関する情報等の情報を収集・分析し、データベース化を図りインターネット(ホームページ)を利用して国民及び医師、薬剤師、管理栄養士等に情報提供する。

(2) 専門家による健康被害事例の検証のための検討会の設置
 都道府県等から報告された健康被害情報については、疫学等の観点から、製品名等の公表などの必要性について、専門家により構成される検討会において定期的な確認を行う。

(3) 健康食品等に関する消費者に対する情報提供・普及啓発
 健康食品等に関する科学的な情報や健康被害に関する情報を記載したパンフレット、チラシ等を作成し、保健所等を通じて配布することにより、健康食品等に関する知識の向上を図ることによって、消費者自らの判断による食品の選択に資するとともに、健康食品等による健康被害の防止を図る。

(4) 専門家向け情報提供
 健康食品等が医薬品とともに薬局で販売されていること、疾病の治療や食事療法中の患者も利用し得ることから、医師、薬剤師、管理栄養士等の専門家が、健康食品等の性質を理解し、医薬品と食品の役割分担を踏まえて適切に指導することに資するよう、こうした専門家向けの解説資料を作成し、配布することとする。

(5) 子どもの頃からの食生活に関する正しい知識の普及
 若い女性を中心にやせ願望が高く、過剰なダイエットによる健康影響も懸念されることから、健やかな心と体の発達につながる健康的な食生活に関する指針の作成等を通じ、その正しい知識の普及を図る。

(5) 関係者との連携
(1) 消費者行政との連携
 健康食品等に関する多くの苦情相談が国民生活センターや各地の消費生活センターに申し立てられていることにかんがみ、今後、消費者行政を所管する内閣府や国民生活センターとの間で、消費者行政と医薬品行政・食品保健行政との間の連携の活発化を図ることとする。具体的には、例えば、厚生労働省で発表している健康食品等に関する健康被害発生状況や国民生活センターの危害情報システムで把握した健康食品等に関する重篤な危害情報について、相互に情報交換するといった連携策を実施していくこととする。
 また、消費生活センター等と保健所の連携を図るため、内閣府及び国民生活センターに対して、保健所において健康食品等に関する健康被害相談を行っていることを全国の消費生活センター等に対して周知するよう要請することとする。また、各保健所と管内の消費生活センターとの定期的な連絡会の開催等により、消費生活センターと保健所のより一層の連携が図られていくよう要請することとする。

(2) 民間団体との連携
 健康食品等による健康被害の発見及び防止において医師、薬剤師、管理栄養士等の医療関係者等が重要な役割を果たすことにかんがみ、健康食品等による健康被害の疑いの事例を把握した際の保健所への情報提供や健康被害事例発生時の保健所による調査等に対する医師、薬剤師及び管理栄養士の協力について、(社)日本医師会、(社)日本薬剤師会及び(社)日本栄養士会に対して必要な協力を要請していくこととする。
 また、(財)日本健康・栄養食品協会等の業界団体に対して、健康食品の安全性の確保のための自主認証制度の普及充実、健康食品に関する消費者向けの情報提供の充実、健康食品の市場実態の把握、健康被害発生が疑われる際の製造業者等による保健所等に対する自発的な情報提供の推進などの取組みを要請していくこととする。

(3) 中華人民共和国政府との連携
 中華人民共和国政府との間では、既に外務省等を通じた情報交換などを実施しているところであるが、今後、健康被害の原因と疑われる製品に関する詳細な情報を提供していくとともに、担当部局間での関係強化のための両国政府の医薬品・食品担当部局の担当者による連絡体制の構築など、両国政府の間の連携のための体制のより一層の強化を図っていくこととする。

 関係法令の見直し
 さらに、こうした対策に加えて、次期通常国会に予定している食品衛生法全般の見直しの中で、以下の点をはじめとする健康食品等の安全確保のあり方についても引き続き検討を行い、必要な見直しを行っていくこととする。
(1) 健康食品等の流通禁止規定の整備
 健康食品等について、最新の科学的知見等から判断して過剰摂取等による健康影響が懸念される場合に、流通を禁止できる法規定を整備する。

(2) 保健機能食品以外の健康食品の広告規制
 保健機能食品以外の食品について、保健機能食品と紛らわしい広告を禁止する。

(3) 保健機能食品制度の推進
 「健康食品」の安全性や効果を確保するため、特定保健用食品の許可や栄養機能食品の基準追加を進め、保健機能食品制度の推進を図る。


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