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キャリア・コンサルタントに係る試験のあり方研究会
報告(概要)


第1 研究会設置の背景と目的
      現下の厳しい雇用失業情勢の下、求人と求職の効果的なマッチングや個人主導のキャリア形成を進める上で、キャリア・コンサルティングの重要性が増している。こうした中、これを担うキャリア・コンサルタントの養成が求められており、平成13年10月より、有識者及び官民の関係者からなる「キャリア・コンサルティング研究会」(座長:樋口美雄慶應義塾大学教授)において、キャリア・コンサルティング実施のために必要な能力要件等について検討が重ねられ、本年4月に報告がとりまとめられたところである。
 今後、この報告を踏まえ、官民双方においてキャリア・コンサルタント養成の推進策を展開していくこととされているが、特に、民間における取組については、厚生労働省において助成制度の活用等を通じて推進していくこととされている。具体的には、キャリア・コンサルタントに係る能力評価試験を従業員に受けさせる事業主に対して、キャリア形成促進助成金(職業能力評価推進給付金)を支給すること等により、民間におけるキャリア・コンサルタントの養成・能力評価を奨励し支援する予定となっている。
 このため、こうした支援の対象となりうるキャリア・コンサルタントに係る能力評価試験の基準について検討することを目的として研究会が設置された。


第2 試験のあり方
      キャリア・コンサルタントに係る試験のあり方として望まれる事項について、(1)試験の出題範囲、試験方法、出題数、時間配分、採点基準、合否基準、受験資格といった「試験内容」と、(2)試験運営、試験問題作成、審査、実施責任者、組織体制、設備等といった「試験実施体制」の二つの側面に整理した。

   (1) 試験内容について
    1) 試験の出題範囲
           平成13年度キャリア・コンサルティング研究会の報告「キャリア・コンサルティング実施のために必要な能力体系」に基づき作成した「試験に係る能力基準項目」について、万遍なく問うこと。

    2) 試験方法
           学科試験と実技試験を課すこと。基本的には、「試験に係る能力基準項目」の知識面については学科試験で、「試験に係る能力基準項目」のスキル面(II−2及びIII)については実技試験で問うこと。

    3) 出題数、時間配分
           学科試験、実技試験それぞれについて、適正な出題数及び時間配分を定めること。

    4) 採点基準
           学科試験、実技試験それぞれについて、適正な配点、採点項目、採点方法等について定めること。採点項目及び採点方法は、採点の公平を保つために、可能な限り客観的なものとすること。

    5) 合否基準
           学科試験、実技試験それぞれについて、適正な合否基準を定めること。

    6) 受験資格
           受験資格として、「キャリア・コンサルティング実施のために必要な能力体系」を習得するために、一定の教育訓練を受けること、又は相当の実務経験を有していること等を定めること。

   (2) 試験の実施体制について
    1) 試験に係る組織体制及び責任体制
           試験を実施するための組織を整備し、その業務の範囲及び試験運営に対する責任を明確にすること。また、当該試験を継続的に安定して遂行する能力を有していること。

    2) 施設・設備、試験事務等
           当該試験を滞りなく遂行するに足りる施設、人的体制を確保すること。

    3) 審査等に当たる者の選任
           試験問題の作成、採点基準の設定、審査(合否の判定)等に当たる者については、「試験に係る能力基準項目」の担当する分野において適切な専門的知識及びスキル、実務経験を有する者を選任すること。

    4) 試験実施体制の監査機能
           試験の運営が適正に行われていることを監査する体制を、試験実施機関内部に整えること。

    5) 倫理委員会の設置
           倫理委員会を設置し、キャリア・コンサルタントが守るべき倫理規程を定めるとともに、その履行確保を図ること。

    6) 合格者に対する支援(フォローアップ体制)
           試験合格者が、継続的に適切なキャリア・コンサルティングを実施していけるよう、能力の維持・向上に必要な対策を講じること。

    7) 受験料
           適正な受験料を定めること。また、徴収する受験料と実際に受験する試験の整合性を保つこと。

    8) 情報公開
           当該試験に関して情報公開を行うこと。

    9) 試験の実施回数
           試験は年1回以上実施すること。


第3 今後の課題
 1 想定レベル(標準的なレベル)
     今回検討した「キャリア・コンサルタントに係る試験のあり方」については、平成14年4月のキャリア・コンサルティング研究会報告を踏まえたものであり、標準的なものとして位置付けられると考える。今後、キャリア・コンサルティングをより広く世間一般に普及させていくためには、指導者レベル等の人材の養成及び能力評価について検討していくことが重要である。

 2 養成カリキュラム
     キャリア・コンサルタントの質を確保するためには、その養成課程が重要なポイントであり、今後は、養成カリキュラムの具体化、講師、教材、養成体制のあり方等、さらに詳細に検討を行っていくことが重要である。

 3 合格者の能力水準の維持・向上
     今後は、キャリア・コンサルタントの量的な確保を推進するだけではなく、能力水準の維持及びさらなる能力の向上を図っていく必要がある。このため、相談事例に関する豊富な情報、最新の社会・経済動向に関する情報等について適宜入手・交換できる体制や、自己研鑽・スーパーバイズを受けられる体制の整備を支援していくこと等、試験合格後の能力水準の維持・向上のあり方を検討していくことも必要である。


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