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厚生労働省発表
平成14年7月26日
担当 厚生労働省労働基準局賃金時間課
 課長    石 井 淳 子
 課長補佐 田 原 孝 明
 電話    03-5253-1111(内線5527)
        03-3502-6757(夜間直通)

現行水準の維持を基本として
引上げ額の目安は示さないことが適当

──中央最低賃金審議会の答申「平成14年度
地域別最低賃金額改定の目安について」──

 中央最低賃金審議会(会長 神代和俊 放送大学教授)は、本年5月14日、厚生労働大臣から「平成14年度地域別最低賃金額改定の目安について」の諮問を受け、目安に関する小委員会を設けて審議を重ねてきたが、本日、別添のとおり厚生労働大臣に対して答申を行った。
 答申の内容は、平成14年度地域別最低賃金額改定の目安については、意見の一致をみるに至らず、昨年度同様、目安に関する公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するというものである。
 公益委員見解の内容は、「平成14年度地域別最低賃金額(時間額)としては、現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さないことが適当」となっている。
 今後、各地方最低賃金審議会は、この公益委員見解を参考にしつつ地域における賃金実態調査、参考人の意見等も踏まえ審議を行い、その審議結果に基づき都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなっている(したがって、参考5の現行最低賃金額が、必ずしも改定後の最低賃金額となるものではない。)。


別添

平成14年7月26日

 厚生労働大臣 坂口 力 殿

中央最低賃金審議会
会長  神代 和俊

平成14年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)

 平成14年5月14日に諮問のあった平成14年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。

 平成14年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
 また、地域別最低賃金の表示単位期間については、遅くとも平成16年度の地域別最低賃金額改定時からは時間額単独方式に移行することが適当であることから、地方最低賃金審議会における今後の審議に当たっては、この点を十分踏まえて適切に対応されることを強く期待するものである。


別紙1

平成14年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解

(1) 今年度の地域別最低賃金額改定の目安審議においては、賃金改定を行わない事業所と賃金引下げを実施した事業所の割合が約6割に上るなど、これまでにない事態になったことを含め、極めて厳しい最低賃金をめぐる諸情勢に係る諸指標及び労使の主張の隔たり等を総合勘案した上での判断として、平成14年度地域別最低賃金額(時間額)としては、現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さないことが適当との結論を下すに至った。
 また、地域別最低賃金額の日額を定める地域においては、こうした状況の下で下した今年度の目安に対する判断及び表示単位期間に関する時間額単独方式への移行が開始される最初の年であることを踏まえ、適切に対応することを希望するものである。

(2) 目安制度が導入されて20年以上が経過したが、同制度は長らく我が国における低賃金労働者の労働条件の改善に概ね有効に機能し、一定の役割を果たしてきた。しかし、我が国を取り巻く様々な社会経済環境、とりわけ我が国における賃金決定機構が変容を遂げつつある今、地域別最低賃金の運用の基本となっているこの目安制度のあり方について、今後もこのままでよいのかにつき改めて考えるべき時期が来ており、地域別最低賃金の意義・目的を踏まえつつ将来を見据えて、地域別最低賃金の金額水準や改定のあり方を含めた検討に着手するべきと考える。

(1) 目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成12年12月15日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。
 目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。

(2) 目安小委員会の公益委員としては、本年度が地域別最低賃金額の表示単位期間に関し、時間額単独方式への移行が開始される最初の年であることをも踏まえ、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。

(3) 地方最低賃金審議会での審議に当たっては、現行水準の維持を基本としつつ、地域の実態を踏まえた適切な対応がなされることを切に希望する。


別紙2

中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告

平成14年7月22日

 はじめに
 平成14年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。

 労働者側見解
 労働者側委員は、6月の月例経済報告、日銀短観や経営者の業況判断、供給サイドの指標を見る限り、景気は底打ちの方向にあるが、経済の自立的回復には内需の拡大が大きなウェイトを占めており、勤労者の賃金が改善されなければ、消費が伸びず、足元の回復も維持できないという考え方を表明した。
 また、グローバル化との関係でも、単に賃金水準で国際競争力をうんぬんすることは適切ではなく、広く高コスト構造などの改善と中小零細企業の活性化策の強化を図る一方、賃金秩序を形成する上でもっとも基本的なルールとしての最低賃金について存在感のある水準が必要であると考えている旨主張した。
 さらに、全雇用者に占めるパート労働者の比率は徐々に高まってきており、パート労働者の賃金が不安定な状況にあるからこそ、不当な格差がある賃金の下支えが必要であり、底上げを図るためにも、また勤労者の生活実感からも最低賃金の引上げは不可欠である旨主張した。
 特に、最低賃金の水準は、一般労働者の水準の35〜36%程度であり、長期にわたって改善傾向が見られず、また、生計費の観点からも最低賃金の改善が求められており、初任給と比較しても最低賃金は低位にあることから、その水準の改善が必要である旨主張した。
 今日の目安制度の下では、組織労働者の取組みと同様に上げ幅のみに準拠した取組みをした結果、対象者の生活水準向上や格差縮小につながってこなかったものであり、今後は上げ幅だけでなく、あるべき水準を重視した審議にしていくべきである旨主張した。
 今年は、時間額による目安提示のスタートの年であり、働き方の多様化に対応した公正さの確保と、存在感のある最低賃金、その水準の改善に向けて、時間額表示がスタートする年にふさわしい、目に見える改善を行うべきであると最後まで強く主張した。

 使用者側見解
 使用者側委員は、経済状況及び雇用失業情勢は昨年、一昨年と続いている厳しい状況から少しも改善されずに更に悪い方向に進み、日本経済は危機的な状況であって、このような厳しく悪化している状況のもとでは、賃金を上げていく必要はなく、最低賃金もその例外ではないという考えを表明した。
 また、今年は民間賃金の動向に大きな変化が起きていると主張した。民間企業では、賃上げを据え置いただけではなく、賃金カーブの修正など実質的な賃金切下げ措置を行い始めているものであり、ほとんどの産業で初任給の引上げを止めるなども、民間賃金の新しい動きを示すものであって、最低賃金の判断も、このような民間賃金全体の動向と無関係であってはならない旨主張した。
 さらに、賃金コストのこれ以上の引上げは、中小企業は耐えられないものであり、最低賃金の改定によって、さらに人件費負担を増やすことはますます中小経営者を窮地に追い込むものであるため、最低賃金の改定には慎重でなければならないと考える旨主張した。
 加えて、平成14年の賃金改定状況調査が報告されたが、現下の厳しい状況を反映して、第1表の賃上げ凍結事業所がついに過半数超えの55%となっていることや、第4表の賃金上昇率が0.1%であったことからみて、今年果たして目安の議論は必要なのか、はなはだ疑問であると主張した。
 また、今年については、地域別最低賃金の表示単位期間の時間額単独方式への一本化という要素が加わることから、日額で見て実質プラスアルファが出る地域があるということも考慮すべきと主張した。
 以上のような全体状況を踏まえると、すべての事象がかつての右上がりから右下がりの時代になっており、最低賃金だけが毎年引き上げられていくことはすでに不可能になっているのであることから、異常で危機的でもある今日の経済情勢に鑑み、今年の目安改定については、据置きにとどまらずむしろ、引下げ額の提示が必要なときではないかと最後まで強く主張した。

 意見の不一致
 本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。

 公益委員見解及びこれに対する労使の意見
 公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、極めて厳しい経済状況における小規模企業の経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 なお、下記1(1)の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。

(以下、別紙1と同じ。)


(参考1)

最低賃金制度と地域別最低賃金額の改定に係る目安制度の概要

 最低賃金制度とは
 最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなけれはならないとする制度である。
 仮に最低賃金額より低い賃金を労使合意の上で定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされる。

 最低賃金の種類
 最低賃金には、産業に関わりなく地域内のすべての労働者に適用される都道府県別の「地域別最低賃金」と、例えば電気機械器具製造業、自動車小売業など特定の産業に働く労働者に適用される「産業別最低賃金」の二種類が設定されている。

 最低賃金の決定と最低賃金審議会
 最低賃金は、最低賃金審議会において、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分参考にしながら審議が行われ、
 (1)労働者の生計費
 (2)類似の労働者の賃金
 (3)通常の事業の賃金支払能力
の3要素を考慮して決定又は改定されることとなっている。
 最低賃金審議会は、厚生労働省に中央最低賃金審議会が、都道府県労働局に地方最低賃金審議会が置かれており、都道府県別に適用される地域別最低賃金は、各地方最低賃金審議会の審議を経て、決定又は改定することとなっている。

 地域別最低賃金にかかる目安制度の概要
 昭和53年から、地域別最低賃金の全国的整合性を図るため、中央最低賃金審議会が、毎年、地域別最低賃金額改定の「目安」を作成し、地方最低賃金審議会へ提示している。
 なお、目安は、地方最低賃金審議会の審議の参考として示すものであって、これを拘束するものでないこととされている。


(参考2)

目安審議及び地域別最低賃金審議の流れ

流れ図


(参考3)

これまでの地域別最低賃金額改定の目安の推移

  平成
3年度
4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
引上げ率(%) 4.9 4.2 3.1 2.4 2.3 2.1 2.2 1.8 0.9 0.8 0.68
Aランク 213 192 148 118 116 108 116 97 49 44 38
Bランク 206 185 143 114 110 103 110 92 47 42 36
Cランク 196 176 135 108 106 99 106 89 45 40 35
Dランク 185 167 128 102 100 93 100 84 43 38 33
(注)1 各ランクごとの改定の目安は、平成13年度までは最低賃金(日額)に対する金額である。
 A〜Dのランクは、各都道府県の経済実態に基づき区分したもの。詳細は参考5参照。


(参考4)

地域別最低賃金の全国・ランク別加重平均額と引上げ率の推移

(単位:円、%)
年度

ランク
平成

年度
10 11 12 13
全国 4,117
(4.81)
4,319
(4.91)
4,501
(4.21)
4,644
(3.11)
4,757
(2.43)
4,866
(2.29)
4,965
(2.03)
5,075
(2.22)
5,167
(1.81)
5,213
(0.89)
5,256
(0.82)
5,292
(0.68)
  Aランク 4,357
(4.89)
4,570
(4.89)
4,762
(4.20)
4,910
(3.11)
5,028
(2.40)
5,144
(2.31)
5,252
(2.10)
5,368
(2.21)
5,465
(1.81)
5,514
(0.90)
5,559
(0.82)
5,597
(0.68)
Bランク 4,208
(4.83)
4,415
(4.92)
4,601
(4.21)
4,746
(3.15)
4,861
(2.42)
4,938
( −)
5,041
(2.09)
5,152
(2.20)
5,245
(1.81)
5,292
(0.90)
5,319
( −)
5,355
(0.68)
Cランク 3,992
(4.83)
4,190
(4.96)
4,367
(4.22)
4,503
(3.11)
4,611
(2.40)
4,716
( −)
4,817
(2.14)
4,924
(2.22)
5,013
(1.81)
5,059
(0.92)
5,085
( −)
5,120
(0.69)
Dランク 3,762
(4.82)
3,948
(4.94)
4,117
(4.28)
4,247
(3.16)
4,350
(2.43)
4,443
( −)
4,539
(2.16)
4,642
(2.27)
4,727
(1.83)
4,770
(0.91)
4,807
( −)
4,841
(0.71)
(注)1 ( )内は引上げ率を示す。
 金額は、適用労働者数による加重平均日額である。
 平成7年度及び平成12年度に各都道府県の各ランクへの振り分けの見直しが行われたため、当該ランクに含まれる道府県に変更のあったB、C及びDランクについては、平成7年度及び平成12年度の引上げ率は算出していない。


(参考5)

平成13年度地域別最低賃金額

(単位:円)
目安が適用
されるランク
最低賃金額 発効日
日額 時間額
大阪 5,598 703 平成13年9月30日
東京 5,597 708 平成13年10月1日
神奈川 5,596 706 平成13年10月1日
Bランク 愛知 5,447 681 平成13年10月1日
埼玉 5,408 677 平成13年10月1日
京都 5,408 677 平成13年10月1日
千葉 5,408 676 平成13年10月1日
兵庫 5,389 675 平成13年9月30日
静岡 5,365 671 平成13年10月1日
滋賀 5,199 651 平成13年9月30日
栃木 5,180 648 平成13年10月1日
長野 5,164 646 平成13年10月1日
広島 5,142 643 平成13年10月1日
Cランク 岐阜 5,337 668 平成13年10月1日
三重 5,335 667 平成13年10月1日
茨城 5,167 646 平成13年9月30日
山梨 5,166 647 平成13年10月1日
奈良 5,160 647 平成13年10月1日
石川 5,158 645 平成13年10月1日
和歌山 5,157 645 平成13年10月1日
富山 5,151 644 平成13年10月1日
群馬 5,146 644 平成13年10月1日
福岡 5,143 643 平成13年10月17日
福井 5,130 642 平成13年10月1日
新潟 5,124 641 平成13年9月30日
岡山 5,117 640 平成13年10月1日
北海道 5,095 637 平成13年10月1日
山口 5,090 637 平成13年10月1日
宮城 4,932 617 平成13年10月1日
香川 4,926 618 平成13年10月1日
福島 4,868 610 平成13年10月1日
Dランク 徳島 4,885 611 平成13年10月1日
愛媛 4,885 611 平成13年10月1日
高知 4,878 610 平成13年10月1日
鳥取 4,864 609 平成13年10月1日
島根 4,851 608 平成13年10月1日
熊本 4,833 605 平成13年10月1日
長崎 4,832 604 平成13年10月1日
山形 4,831 604 平成13年10月1日
大分 4,830 605 平成13年10月1日
佐賀 4,830 604 平成13年10月1日
鹿児島 4,830 604 平成13年10月1日
青森 4,830 604 平成13年10月1日
沖縄 4,829 604 平成13年10月1日
岩手 4,829 604 平成13年10月1日
秋田 4,829 604 平成13年9月30日
宮崎 4,828 604 平成13年10月1日
(注)時間額は、賃金の大部分が時間によって定められている労働者に適用される。


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