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平成14年6月28日

「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と
実施に関する検討会」の報告書について

 「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」においては、平成13年9月14日より、小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関して検討を行ってきたところである。
 同検討会の最終的な報告書のとりまとめについては、6月21日に開催された第10回検討会において、提出された報告書案に修正意見があり、とりまとめについては座長に一任されたところであるが、この度、座長の了承を経て、別添のとおり報告書が確定したので、公表する。
 なお、報告書については、厚生労働省ホームページにおいても、公表することとしている。


照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局
    母子保健課
宮本(内7940)
森本(内7941)
電話 03−5253−1111(代)
   03−3595−2544(直)


「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」報告書


平成14年6月

小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会

厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課



内容

「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」の設置について
「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」委員名簿
「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」報告書
「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」開催状況


「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」の設置について

1.設置目的

 小児慢性特定疾患の治療研究事業を行い、もってその研究を推進し、その医療の確立と普及を図り、併せて患者家族の医療費の負担軽減にも資することを目的として、医療費の自己負担部分を補助する制度である小児慢性特定疾患治療研究事業(小慢事業)が昭和49年度以来実施されてきたところである。

 創設以来、4半世紀が経ったことから、今日的視点で本事業の目的、内容等を見直し、今後とも慢性疾患をもった子どもたちに適切な医療やサービスを安定的に提供できる事業となるよう検討するため、有識者と患者代表等の御意見を頂くことを目的として、本検討会を開催することとした。

2.検討課題

 概ね次の事項等について検討する。
 (1) 小児慢性特定疾患治療研究事業の見直しの考え方について
 (2) 医療サービスのあり方(対象疾病、対象者)について
 (3) 福祉サービス(在宅福祉、就学、就労)等、調査研究の内容について
 (4) 自己負担等経済的側面について

3.構成
 本検討会は、医療、患者団体、行政、福祉、教育、報道機関等幅広い分野の関係者を委員として参集する(おおむね13名程度の委員を参集)。


「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」委員名簿

 及川郁子聖路加看護大学看護学部教授
 大久保さつき
(平成14年3月まで)
東京都衛生局健康推進部母子保健課長
 加藤忠明日本子ども家庭総合研究所小児保健担当部長
神谷  齊国立療養所三重病院長
鴨下重彦賛育会病院長
 小林信秋難病の子ども支援全国ネットワーク専務理事
 高松鶴吉九州保健福祉大学保健科学部教授
 住友 眞佐美
(平成14年4月から)
東京都健康局医療サービス部子ども医療課長
 永井邦子和歌山県子ども保健福祉相談センター所長
 南 砂読売新聞社編集局解説部次長
 柳田 喜美子
(平成14年4月から)
日本医師会常任理事
柳澤 正義国立成育医療センター病院長
 山城 雄一郎順天堂大学医学部小児科教授
 山本 昌邦横浜国立大学教育人間科学部教授
 雪下 國雄
(平成14年3月まで)
日本医師会常任理事
◎:座長
○:副座長(第3回までは神谷委員、第4回以降は柳澤委員)


小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会報告書

平成14年6月21日

 小児慢性特定疾患の治療研究事業を行い、もってその研究を推進し、その医療の確立と普及を図り、併せて慢性疾患のある子どもの家族の医療費負担軽減にも資することを目的として、医療費の自己負担部分を補助する制度である小児慢性特定疾患治療研究事業が昭和49年度以来実施されてきた。

 創設以来四半世紀が経ち、小児慢性疾患の実態や医学の進歩による治療状況が変化してきている。そのため、今日的視点で本事業の目的や内容等を見直し、疾病の範囲を適切なものとするとともに、今後とも慢性疾患のある子どもたちが、適切な医療サービスを安定的に受けることができる事業となるよう検討するため、小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会(以下「検討会」という)が設置された。当検討会は平成13年9月から平成14年6月にかけて、10回の会議を開催し、小児慢性特定疾患治療研究事業を含む今後の小児慢性疾患対策の方向性とあり方について検討を行った。

 こうした検討を踏まえ、本報告書では、最初に、今後の小児慢性疾患対策の基本的考え方(I)をまとめた後、小児慢性特定疾患治療研究事業の課題と方向性(II)と、小児慢性特定疾患治療研究事業で得られた意見書データの解析事業を含む小児慢性疾患の研究の方向性(III)を示す。この他、慢性疾患のある子どもと家族から要望の強い課題である、医療・療養環境(IV)、教育(V)、就労(VI)についての方向性に関する議論を併せて整理した。

I 今後の小児慢性疾患対策の基本的考え方

 検討会では、慢性疾患のある子どもとその家族が抱える多くの課題と要望の全体像を明らかにし、この全体像の中で小児慢性特定疾患治療研究事業が果たすべき方向性を検討することとした。慢性疾患のある子どもとその家族は多面的な要望を抱えており、多様な方法と活動主体によって、これらの要望の実現を目指すことが必要である。

1. 慢性疾患のある子どもとその家族の多様な課題と要望
 慢性疾患のある子どもとその家族の要望を、検討会で患者団体12団体から聴取した結果、「より良い医療」、「安定した家庭」及び、「積極的な社会参加」、を実現することに集約された。これらの要望には、今後目指すべき基本的方向性を多く含んでいると考えられる。以下に内容を示すと、

(1)より良い医療: より良い医療を受け、可能な限り治癒・回復を図ること
 慢性疾患のある子どもとその家族の根源的な願いは、病気の治癒・回復にある。小児医療は、医療全体の中でも治療技術の進歩が目覚しい分野であり、悪性新生物の治療成績の向上など、達成された成果は多大である。これは、医療に携わる多くのスタッフの絶え間ない努力の結果であると言えるが、今後も、さらなる研究の推進、診療の向上によって、より良い医療を実現することが必要である。

(2)安定した家庭: 家族がまとまりながら慢性疾患のある子どもを支えつつ、家族全員がそれぞれの人生を充実して送ること
 家庭で療養を続ける慢性疾患のある子どものケアは、家族がその大部分を担っている。そのため、家庭が安定することは、慢性疾患のある子どもが心配なく療養を続けるために欠かすことができない。一方、子どもが病気になることは、親やきょうだいの家族関係や職場における状況といった社会との関係にも影響を与える。そのため、ケアの負担軽減や、きょうだいの支援など、家族の支援が要望されている。また、家族がまとまって慢性疾患のある子どもを支えるためには、長期にわたる療養となることが分かった早い段階で、必要な知識や技術を伝えて将来の不安を軽減することや、状況を受け入れることができるよう支えることが必要である。

(3)積極的な社会参加: 慢性疾患のある子どもの教育や就職等の社会参加を全うすること
 本来、持って生まれた能力の可能性を十分に発揮したい、または、させたいという要望は、一般の子どもとその家族の持つもの以上に強いものがある。社会に参加したいという要望もまた同様である。本人の能力や必要な疾病のケアなどの状況に応じて、これらが十分に行われるよう支援することが必要である。

2. 包括的取り組みと関係者との協働による要望の実現
 これらの要望は、慢性疾患のない子どもとその家族が、健康、安定した家庭、社会参加を求めるのと同質のものである。一方、慢性疾患に罹ることは、本人の責として問われるものでなく、様々な負担を自らで全て負うことも困難である。医療保険制度および小児慢性特定疾患治療研究事業によって医療費の負担は軽減されているが、その他必要とされる福祉サービスへの包括的な取り組みが必要とされている。今後は、一般の子どもとその家族が持つものと本質的な差のないこれらの要望を実現し、慢性疾患のある子どもとその家族が社会の構成員として、社会と関わりながら生活できることが望まれている。

 また、上記のような要望を実現するためには、行政だけでなく、様々な活動主体が、全体の中で担っている役割に対する自覚と活動の向上に努め、協働することが必要である。慢性疾患のある子どもとその家族や、慢性疾患のある子どもを育てた経験のある者も、他の慢性疾患のある子どもとその家族のために力になることができる。

(1)行政
 医療支援、福祉サービス実施などの役割を担っており、関連する障害者施策や、教育・就労といった他の行政分野との連携を図りながら取り組むことが必要である。

(2)医療機関
 より良い医療を受けることは、慢性疾患のある子どもと家族の最も強い願いである。このほか、医療機関は多くのスタッフによる様々な支援においても役割を担うことが期待される。

(3)民間による社会支援活動
 慢性疾患のある子どもの家族のための宿泊施設の設置・運営など、民間企業等の社会支援活動が行なわれており、今後もさらに大きな役割を担うことが期待される。

(4)慢性疾患のある子どもと家族、患者家族会、民間支援団体 等
 慢性疾患のある子ども本人とその家族がそれぞれ重要な活動主体であることは当然である。さらに、慢性疾患のある子どもの家族の会や民間支援団体等の組織活動を通じて、他の慢性疾患のある子どもと家族の支援にも役割を果たしており、いっそうの活動が期待される。

II 小児慢性特定疾患治療研究事業の課題と方向性

 小児慢性特定疾患治療研究事業は、研究を推進し、その医療の確立と普及を図り、併せて慢性疾患のある子どもの家族の医療費の負担軽減にも役立てることを目的として、医療費の自己負担部分を補助してきたが、多くの疾病について原因が解明され、治療法も確立してきた中、今では、実質的には医療費の助成として行われている。昭和49年の事業開始以来、対象となっている疾患に罹患している子どもとその家族にとって力となったと考えられるが、公費で実施している制度として、改めてその目的、対象疾患、対象者の範囲を明確にし、将来にわたり安定的な制度として確立していくことが求められている。

1.現在の小児慢性特定疾患治療研究事業の問題点
(1)対象疾患の治療状況の変化と疾患間格差
小児の慢性疾患の医療費負担を軽減する取り組みとしては、昭和43年にフェニルケトン尿症等先天代謝異常症、昭和44年に血友病、昭和46年に小児がん、昭和47年に慢性腎炎・ネフローゼ、小児ぜんそくの各疾患についての入院治療を対象とする制度が開始された。これらは、昭和49年に、対象疾患を拡大するとともに9つの疾患群にまとめられ、小児慢性特定疾患治療研究事業に統合された。その後、平成2年には、神経・筋疾患が対象疾患群として追加され、現在10疾患群を対象としている。
多くの疾患群において、医療技術の向上に伴って生命の危機が回避される場合が増加した反面、療養が長期化し、心身面での負担が以前にもまして大きくなるなど、小児慢性特定疾患治療研究事業全体の疾病像と、慢性疾患のある子どもと家族の負担が様変わりしてきている。
対象疾患の中には一部急性疾患が含まれる一方、現在対象となっていないが、長期に濃厚な治療を必要とする慢性疾患も存在しているという指摘がある。また、同一の疾患であれば、症状や治療法から見て重症度を問わず対象としており、症状が軽微であるものも対象となっている。
疾患群によって、対象年齢が、18歳未満であるものと20歳未満であるものに、また、対象とする治療が、1ヶ月以上の入院治療のみとするものと1ヶ月未満の入院治療や通院治療を含むものに分かれている。

(2)財政的な不安定性
厳しい財政状況を背景に、補助金などの削減が行われており、小児慢性特定疾患治療研究事業費補助金についても、毎年度削減の対象となる奨励的な補助金に位置づけられている。

2. 制度化にあたっての留意点
 以上のような課題に対応し、今後安定的な制度として確立していくために、他の施策との整合性を図りつつ、以下のような事項についてさらに検討し、具体的に対応することが必要である。

慢性疾患のある子どもを抱える家庭の子育ての力を維持するということが重要であり、長期的な観点から療養にかかる費用に注目して、費用が多額にのぼると考えられる慢性疾患のある子どもを優先して支援の対象とすることが必要ではないか。
長期的な医療費用は、現在の療養のための費用、予想される将来の療養のための費用、予想される療養の期間によって変動することから、事業の対象の範囲としては、対象疾患と、対象となる病状や治療法を明確にすることが必要ではないか。その際、急性に経過する疾患や、療養のための経費が長期的に低廉に留まる疾患などは対象とすべきか検討する必要があるのではないか。
どのような状況にあっても、慢性疾患のある子どもとその家族が前向きに療養に取り組む姿勢が不可欠であり、将来の悪化が強く予測される場合には、この視点から支援していく必要があるのではないか。
対象疾患と対象とする慢性疾患のある子どもの症状や治療法の基準を策定するには、医学的知見に基づかなければならず、専門家の意見を求めるとともに将来も見直しの機会が定常的に持たれることが必要ではないか。
現在、地域によって小児人口あたりの患者数に格差がある。これは医療状況や他の医療費支援制度の違い等に加えて、自治体に設置された、専門医らによって構成される小児慢性特定疾患対策協議会等の機関の審査が必ずしも統一されていないことに影響を受けている可能性がある。安定的な制度として支援を実施するにあたっては、更に公正な認定を行う仕組みが必要ではないか。
新たな制度整備を行い、公費により医療費用の軽減を図る場合、限りある財源を効率的に活用するとともに、受益するサービスに対する適正な認識を求めていかなければならないのではないか(国が関与する、医療費の自己負担分を公費で負担する制度で福祉的な性格を持つもの(例:育成医療、未熟児養育医療など)については、基本的に適正な受益者負担を求めている)。なお、少子化対策の観点から、慢性疾患のある子どもとその家族に負担を求めるべきではないという意見があった。
制度の対象者に制度が認知されるよう、行政はもとより、医療関係者が制度の対象者に利用を促すなど、制度運用の改善を図っていくことが必要ではないか。

III 小児慢性疾患に関する研究の推進

 慢性疾患のある子どもとその家族は、疾患の治癒・回復を願っている。医療の向上は続いているものの、更にこれを加速させ、成果を得ることが求められている。最終的に治療成績を向上させるため、以下の課題に対応し、小児慢性疾患の研究を充実させる必要がある。

現在、厚生労働科学研究補助金子ども家庭総合研究事業や、成育医療研究委託費の中で小児慢性疾患の研究に努めているが、特定疾患対策研究事業が、118の疾患を対象にそれぞれ研究班を設置し、原因の究明から治療法の確立に向けた研究を体系的に実施しているように、更に体系的、重点的に取り組む必要があるのではないか。
これまでの研究事業において、多くの研究者が協力して「小児慢性特定疾患治療マニュアル」及び「小児慢性特定疾患療養育成指導マニュアル」が作成され、治療・療育の向上に貢献している。今後さらに、全国の研究者が相互に支援する体制を強化し、治療指針など治療の向上につながる成果を目指していく必要があるのではないか。
意見書に記載されているデータの登録解析は、効率的に今後の医療に役立つ貴重な知見を得る機会となっており、他の手段によって容易に代替できないことから、今後も、より成果を得るための改善を図り、継続することが必要ではないか。
意見書データの活用には、申請者の同意を得ることが条件となっているが、現在、全ての者の同意を得ている状況になっていない。この背景に、データ解析の意義が十分理解されていないことや、情報の保護が確保されているか不安である等、データ解析についての情報が伝わっていないことがある、との指摘がある。今後、データの登録解析の理解を得るため、それまでに得られた成果や個人情報保護の取り組み体制などを分かりやすく伝えることが必要ではないか。
解析は、現在、「小児慢性特定疾患の登録・管理・評価に関する研究」班だけが行っている。今後は、個人情報の保護が十分であることを前提として、他の研究者による解析も行って、多くの成果が上がるよう務めることが適切ではないか。また、意見書の書式についても、解析すべき課題を検討することと合わせ、より成果の得られるものに随時見直すことが必要ではないか。
解析結果は、現在、研究班報告書としてまとめられており、ホームページ(厚生労働科学研究成果データベース http://webabst.iph.go.jp/ )にも掲載されているが、更に成果を分かりやすくまとめ、患者や医療機関に還元するよう務めることが必要ではないか。

IV 医療・療養に関する環境の向上

 医療費用の支援や、研究の推進の他、医療や療養に関する様々な環境の向上が望まれ、また、慢性疾患のある子どもの家族への支援も求められている。以下のような課題に対応し、医療・療養環境の向上を図る必要がある。

質の高い医療の提供については、確立された治療法が全国で受けられるよう、医療関係者のさらなる取り組みが必要であり、平成14年3月に開設された国立成育医療センターは、小児慢性疾患治療を含む成育医療(小児医療、母性・父性医療および関連・境界領域を包括する医療)において先導的な役割を果たし、全国の水準を引き上げる働きを持つことが必要ではないか。
治療法や受けられるサービス、家族会に関する情報など、療養に関する一般的な情報は、患者家族会や、民間支援団体、医療機関、製薬企業等が、それぞれ相談に応じたり、インターネット等による情報提供を行ったりしている。今後、これらの活動主体の他、行政も積極的に参加し、情報提供体制の確立・向上等、情報提供活動を促進することが必要ではないか。
また、療養のために必要なサービスは、個別の状況に応じて、医療機関に所属する医療ソーシャルワーカー、病棟看護師、訪問看護師、医師、自治体に所属する保健師、学校関係者等が、提供している。今後は、更なる各関係者の意識・知識の向上と関係者間のネットワーク機能の強化が期待される。保健所等地域の保健機関は、このネットワーク機能を必要に応じて主導し、支援する役割を果たすことが必要ではないか。
長期の療養を円滑に始めるためには、療養を始める時点で、病気の見通しや、利用できる支援についての情報、適切なケアの仕方など、療養を続けていくための正しい知識と技術を伝えて、将来への不安を軽減することや、家族のおかれた状況に共感しつつ、家族の前向きな姿勢につながるよう支援することが必要ではないか。これらは、患者団体等を通じた、他の慢性疾患のある子どもやその家族との交流や、保健、医療、福祉の専門家による相談・カウンセリングとして行われており、重要な役割を果たしている。今後、さらに有効なものとするため、慢性疾患のある子どもを育てた経験のある者に支援に参加してもらうなど、支援する仕組みを体系的なものとなるように目指すことが必要ではないか。
病棟保育士の設置については、病棟保育士設置促進モデル事業として、病院の設置者を対象に費用の補助が行われてきた。また、診療報酬の平成14年4月改定において、小児入院医療評価の充実の一つとして、病棟に常勤の保育士とプレイルームを設置した場合の加算が行われた。更に、民間支援団体による病児訪問などの取り組みが行われている。こうした取り組みを通じて治療だけにとどまらない入院治療を受けている慢性疾患のある子どもの成長・発達を支援する体制の充実が必要ではないか。
疾患によっては、疾患の特性に応じた日常生活用具や、予防的に車椅子を用いることが必要になることがある。これらについて慢性疾患のある子どもの療養を支援するため、疾患の特性に基づいて必要となる日常生活用具などを給付するための制度を検討することが必要ではないか。
慢性疾患のある子どもを含む、児童に対する保護者の社会的事由による短期入所事業が行われているところであるが、慢性疾患のある子どものいる家族を支援するためには更に医療的ケアも実施できる医療機関での実施拡大や、レスパイトケア(家族の休息を目的としたケア)としての実施、派遣型のケアの実施など、疾患の特性に応じたきめ細かいサービスの提供を検討することが必要ではないか。
離れた地域で長期の治療を受ける場合の家族のための宿泊施設整備については、平成10年度と平成13年度の補正予算での対応や、民間で独自に取り組んでいるものを含め、全国で約100か所が設置・運営されている。今後も、小児医療施設の整備状況なども踏まえ、民間の力も活用しながらこうしたニーズに取り組むことが必要ではないか。

V 一人一人の状況にあった教育

 小児の慢性疾患の児童生徒にとっての教育は、学習の遅れの補完、学力の向上、積極性・自主性・社会性の涵養、心理的安定などの意義があり、また、病気の自己管理能力の育成など治療上の意義が認められてきている。教育は慢性疾患のある子どもが自立し、社会参加するために欠くことのできないものである。この教育をいっそう充実するため、次のような課題に対応する必要がある。

それぞれの病気と慢性疾患のある子どもを理解した専門性の高い教員等を配置し、一人一人の疾病等の状態に応じた対応が必要ではないか。
学校で、慢性疾患のある子どもについて、不必要な制限が行われたり、無理な活動を強いたりするなど不適切な対応を避け、疾患に応じた適切な支援を受けるために、退院後もとの学校に戻ることから通常の学級担任も含め、教育関係者に慢性疾患のある子どもの実態が理解されるよう研修等がなされることが必要ではないか。
慢性疾患のある子どもにも、その状態等に応じ、できるだけ健常児と同様に平等な進学・進級の機会が与えられることが望まれるところである。これの実現を容易にするために、病弱養護学校の幼稚部や高等部の整備及び配置等について検討を行い、地域の実態に応じた対応が必要ではないか。
慢性疾患のある子どもの入院については、成長・発達途上にあることの特性を踏まえ生活環境の整備を行うという面から、病院は、市町村教育委員会との連携のもと、入院している児童生徒のQOL向上のため、院内学級等に必要な面積の専有空間の確保など教育の場の提供等の取り組みが必要ではないか。
専門家の意見を聴くとともに、保護者の意見を踏まえて市町村教育委員会が慢性疾患のある子どもの就学先を決定すること、病弱養護学校と小・中学校間の転学が円滑に行われるよう配慮することが必要ではないか。なお文部科学省は、近年の医学、科学技術等の進歩を踏まえ、病弱養護学校等に就学すべき疾病等の程度を定めた就学基準等を見直し制度改正を行ったところである。
運動の制限を余儀なくされている慢性疾患のある子どもの体育について、その状態に応じた柔軟な学習プログラムの普及と、その取り組み状況をいっそう重視した評価が行われるように配慮することが必要でないか。
疾病等があっても、自立していくために、学校における保護者の付添を必要としない環境づくりについて慢性疾患のある子どもの保護者から要望がなされているところである。今後、病弱養護学校等における看護師による対応など医療的ケアの体制整備や教員との連携のあり方等について、医療・教育・福祉等の関係機関が連携を図りながら検討を行う必要があるのではないか。

VI 一人一人の状況にあった就労

 慢性疾患のある子どもが社会に出て生活を営むためには、就労によって収入を得なければならない。就労は単に経済的自立の手段であるだけでなく、患者にとって「社会で共に生きる」という意義が大きいものと考えられる。また、仕事を行う能力があり、職に就く機会を求めているにも関わらず、就労の機会が得られない患者に対し、以下のような課題に対応し、就労の場を積極的に確保するよう努めることが必要である。

公共職業安定所は、多数の企業の多様な求人情報を有し、患者が就労の機会を得るに当たって役割を果たしており、求人活動に関わる点において患者が不当に就労の機会を失うことがないよう配慮が求められている。従って、公共職業安定所において、求人者が求人票を記入する際に「仕事の内容」の欄を細かく記入させ、また、求人者に、病気のある者であっても個人のそれぞれの事情に応じて求人条件に合致するかどうかをきめ細かく判断してもらうよう指導していくことが引き続き重要ではないか。
患者が就労の機会を得ることが困難な理由としては、雇用主がその患者、疾病を充分理解していないため、就労能力があるにもかかわらず、採用が拒否されるということがあげられ、また、一旦雇用されても、雇用主及び職場で疾病についての理解が十分でないために、不必要に不安がられる等の事情により、安定的に勤務することができなくなることがあるということがあげられている。このため、患者が採用され、安定的に勤務するためには、雇用主が、その患者や疾病について正確な理解をすることが必要であるので、理解が促進されるよう、雇用主に対する情報提供、啓発活動、指導が行われることが必要ではないか。

VII おわりに

 以上、10回にわたる検討会における検討に基づき,小児慢性特定疾患治療研究事業の現状と課題そして今後の小児慢性疾患対策のあり方を論ずる際の視点を取りまとめた。今後、示された課題に取り組むと共に、状況の変化に伴って、不断に見直すことが必要である。

 慢性疾患のある子どもとその家族への対策は、人々が、慢性疾患のある子どもとその家族の存在を正しく認知することが基礎となる。今後、関係者が取り組みを続け、慢性疾患のある子どもとその家族を社会全体で支援するという連帯感の醸成や、知識の不足に基づく不適切な対応の減少を図る必要がある。

 本検討会は、全ての関係者が、本報告書の方向性を認識し、協働しつつ、慢性疾患のある子どもとその家族の幸せのために尽くすことを期待する。


「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」開催状況

平成13年9月14日 (第1回)
座長、副座長選出
小児慢性特定疾患治療研究事業の現状とおかれた状況及び小児医療を巡る関係状況説明
検討スケジュール
平成13年10月10日 (第2回)
制度の現在の課題
  ・対象疾病、対象者のあり方
  ・調査研究のあり方
  ・福祉サービスのあり方
  ・自己負担のあり方
平成13年11月2日 (第3回)
制度の現在の課題(つづき)
  ・同上
平成13年12月5日 (第4回)
制度の現在の課題(つづき)
  ・特に対象疾病、対象者のあり方
平成14年1月30日 (第5回)
・患者団体からのヒヤリング(第1回)
平成14年2月8日 (第6回)
患者団体からのヒヤリング(第2回)
平成14年3月15月 (第7回)
対象の疾病と患者に関する具体的検討
平成14年4月12日 (第8回)
対象の疾病と患者に関する具体的検討
平成14年5月27日 (第9回)
取りまとめ案検討
平成14年6月21日 (第10回)
取りまとめ


本報告書についてのお問い合わせ先

厚生労働省雇用均等・児童家庭局
母子保健課
担当:課長補佐:宮本(内線7940)
課長補佐:森本(内線7941)

〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2(13階7号ドア)
電話:03-5253-1111(代表)、夜間直通:03-3595-2544
FAX:03-3595-2680
Home Page: http://www.mhlw.go.jp/


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