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第2章 ものづくり労働者の確保等の現状と課題

(1)ものづくり労働者の雇用の現状

製造業においては、海外生産比率の上昇等に伴い就業者数が減少するとともに、高齢化が進んでおり、製品の高付加価値化対応できる人材の育成や、高度熟練技能の継承が重要な課題。

 平成13年の労働市場は初頭から悪化。ITの不振や輸出の減少に伴う景気の落ち込みの他、職業能力のミスマッチがその要因。

職種別過不足状況の推移

 製造業の雇用情勢は特に厳しく、雇用者は平成10年から4年連続して減少。第3次産業の雇用者が前年比増加で推移しているのと対照的な動き。

産業別雇用者数の推移

 製造業の雇用調整を方法別にみると、「残業規制」や「配置転換」の方法で行われることが多いが、平成13年7−9月期には「希望退職者の募集、解雇」が大きく上昇するなど、雇用調整の方法が変化。

製造業の雇用調整実施方法

 海外生産比率や製品輸入が大きく増加している業種ではおおむね就業者数の減少率が大きくなっており、国際的な経済活動の活発化が雇用に悪影響を及ぼすおそれ。

海外生産比率の上昇と就業者数の変動の関係(平成2年から平成11年)

輸入浸透度の変化と就業者数の変動の関係(平成2年から平成11年)

 製造業の就業者のうち30歳未満の者の割合は低下傾向にある一方、55歳以上が増加傾向にあり、高齢化が進展。

年齢別の就業者数及びその割合の推移

(2)ものづくり労働者の職業能力開発

国際競争が激化し生産拠点の海外移転が進展する中で、ものづくり労働者に求められる能力が高度化・多様化しており、それ対応してものづくり労働者の職業能力の開発・向上を図ること重要な課題。

 製造業企業の教育訓練の実施状況についてみると、概して企業規模が小さいほど低い水準。

計画的なOJTとOFF−JTの実施率

 労働移動の増加等により、企業主導の能力開発だけでは限界が生じてきていることから、労働者の自発的な職業能力開発の必要性が増してきているが、「忙しくて自己啓発の余裕がない」「費用がかかりすぎる」等が問題。

自己啓発についての問題点

 国際化の下でコスト競争が激化し、量産分野を中心として生産拠点の海外移転が進展。国内の生産は、ニーズの多様化に対応し多品種少量生産にシフトするとともに、高付加価値化。これに伴い、
多数の機械を操作できる多能工型技能者
生産の変化に対応して仕事と人の配置などを適切に行えるマネジメント能力を備えたマネージャー型技能者
生産のあり方を体得した技能者
高度熟練技能者
の重要性が増加している。企業や公共職業能力開発施設においては、それに対応した人材の育成に努めている。

技能者タイプごとの重要度の変化

(具体的事例)
(1) 多能工型技能者の能力開発
 A社は海外との競争が激化した90年代半ばから、生産性を上昇させるために「自己完結方式・一人生産方式」に取り組んでいる。例えば、金物加工では、ある一人の技能者を取り囲むように機械をコの字型に並べ、技能者はその機械をすて使って様々な製品を作る。
 このような生産方式に対応できる技能者の育成の際には、技能者本人とグループリーダーとの話し合いにより個々人の技能マップが作成され、それをもとにリーダが作成したOJTの課題設定シートに則り、チーム内のベテラン技能者または他チムの適当な技能者の下で計画的にOJTが行われる。

(2) マネージャー型技能者の能力開発
 D社では本社の技能研修センターが中心になって、技能系リーダーを養成するたのマネジメント能力養成コースを開設している。対象は一定水準以上の人事評価を受けている班長レベルの技能者であり3か月間現場を離れて工場改善、販売実習、情報技術などを学ぶ。また、同社では高度な技能者について生産ラインら離れ改善業務等のスタッフ的な仕事を担当するエキスパート職が導入され、技能のキャリア・コースの複線化を進めている。

(3) 実践技術者の育成
 職業能力開発大学校では、機械に関し専門性を有する者が電子、情報に関する科目を習得することによって、生産設備の省力化システムを構築・運用できるようなることを目指すなど、技術と技能の双方に通じた生産現場の実践技術者を育成しいる。

 熟練技能の継承は多くの企業の課題となっており、OJTの強化、指導者の養成等により若年の育成に努力。

技能継承に向けて実施している取り組み

(3)ものづくり労働者の職業能力の評価・職場環境

 ものづくり労働者の職業能力が生涯にわたって段階的かつ継続的に開発・向上されることを促進するため、その職業能力を的に評価できる制度の整備を進めることが重要な課題。

 技能検定はものづくり労働者の能力開発・評価に大きな役割を果たしており、仕事に対するプロ意識の高揚、従業員の能力開発意欲の喚起、教育訓練目標の明確化などに貢献。昇格・昇進などの処遇を決める際、技能検定の合格を考慮している企業も多い。

技能検定の活用について

 製造業の大手企業において、技能検定の検定職種が現業系職種を網羅している割合は平均で約6割。職業能力のミスマッチ解消等のため、現在評価制度がない分野についても労働者の知識・技能を適切に評価できるようにすることが課題。

 ものづくり労働者のキャリアの諸段階に応じて、技能検定、高度熟練技能者認定制度、卓越した技能者表彰制度(現代の名工)等の社会的な評価の仕組みを通じ、高度の熟練技能形成を促進。

技能振興関係の施策の対象

 製造業の労働者に同世代の人と比較した現在の仕事や生活の評価を尋ねると、「仕事のやりがいが大きい」と評価する人が多い一方で、「収入が少ない」、「社会的地位が低い」と評価している人が相対的に多い。

同世代と比べた現在の仕事や生活の評価


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