厚生労働省においては、パートタイム労働研究会の検討の参考とするため、平成13年10月1日から11月30日まで研究会の検討課題について意見を募集した。集計の概要は次のとおりである。
(1) 合計 | 231件 |
(2) 性別 | 男性 95件 女性 105件 不明 31件 |
(3) 労使 | 労働者 71件 使用者 76件 不明 78件 その他 6件 |
(4) 就業形態 | 正社員 101件 パート 47件 その他 22件 不明 61件 |
検討課題に関する主な意見
(注)すべての回答者がすべての課題について意見を記入しているわけではないこと、中立的な意見もあることから以下の表では合計は231件を下回る。
1 パート労働者(短時間労働者)と正社員の均衡処遇をどう進めるか 企業の雇用管理の実態も踏まえつつ、パート労働者と正社員の処遇の均衡の確保を図るための方策について、どのように考えるか。 |
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均衡処遇を進める必要があるとの立場 113件 | 均衡処遇を進める必要はない、あるいは困難との立場 29件 |
(パートの意見) | (パートの意見) |
・ オランダのように同一労働であれば賃金の区別をしないという意見に賛成。正社員を優遇しそれ以外を補助的な役割と位置づける会社社会に違和感を覚える。 | ・賃金が安いということには、それだけ責任が薄いという利点もある。 |
・ 勤務する職場では、正社員とパートで給料は3倍以上の開きがあるにもかかわらず、仕事内容はほとんど同じである。あまりにも多額な賃金格差では、職場の雰囲気は悪くなり仕事もなおざりになりかねない。 | |
・ ワークシェアリング | |
(正社員の意見) | (正社員の意見) |
・ 職種に応じて賃金体系を決め、正社員であろうがパートであろうがそのスキルに応じて報酬を与えるべき。 | ・ 何よりもまず景気の回復が必要。 |
・ 同一労働同一賃金は原則であり、仕事が同じである場合、パートの賃金は正社員と同じであるべき。 | ・どんなときも、フルタイムで仕事をこなすことは、短時間パートとは比較にならない努力がいる。短時間のパートをフォローしながら自分の仕事もこなさなければいけない正社員とパートでは同じ立場になり得ない。 |
・ 経営管理側の意識転換が必要。 | ・人件費を抑えなければ会社は倒産するため、必要だとは思わない。 |
・ 職務給制度の浸透が必要。 | |
(その他) ・ 仕事の結果で公平に査定し待遇も公平にあるべき。 ・ 日本のパートは企業側の人件費削減に対応している。 ・ 政労使3者納得のいく合意の上での立法化が有効と思われる。 ・パート労働法に均衡ではなく均等待遇を明記すること。 ・ILOパート条約に批准する。 ・パートの処遇改善よりも正社員のパート化により処遇均衡を図る方法も検討すべき。 | |
2 企業・労働者双方のニーズに応じた柔軟な雇用システムをどう構築するか フルタイム労働と短時間労働とを行き来できる仕組み(育児、技能修得のための通学等の必要に応じて正社員のまま短時間勤務できる仕組み、現在の短時間パートがフルタイム正社員に転換できる仕組み)、パート労働者のキャリアアップやパート労働者が短時間労働のまま正社員になる仕組みについてどのように考えるか。 |
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柔軟な雇用システムが必要との立場 82件 | 必要がない、あるいは困難との立場 34件 |
(パートの意見) | |
・ 短時間パートも希望と実績次第でキャリアアップ(フルタイム)できるようになってほしい。 ・ 子育て期や介護の時期など男女ともパートとフルタイムを行き来できるようになってほしい。 ・ 柔軟なシステムを作るための助成金を設けてほしい。 ・賛成であるが、このシステムにより労働者が不利にならないようにすることが必要。 ・ ワークシェアリングで働き方をいろいろ選択できるようにしてほしい。 |
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(正社員の意見) | |
・ 正社員とパートの行き来を可能とするためには、企業が雇用する際に求めている職能をしっかりと定義し、それとともに賃金体系を見直し、現在の年功序列からスキルに応じ体系に変える必要がある。 | ・現在の経営環境下では、中小企業では不可能。大企業では難しい。 |
・ 仕事内容にあった勤務形態という視点を持つことが大事。 | ・ 短時間労働者は正社員の処遇問題はあまり考慮しておらず、むしろ社会保険の適用や税金に関心があるようで、事業所は事業計画(の作成)に苦労している。このような状態下で、制度を進めていく考えはない。 |
・ 短時間正社員ができても良いが、フルタイム正社員との処遇差を明確にする必要。 | ・ コスト削減が不可欠(中国との競争)であり難しい状況。 |
・ パート労働者をキャリアアップして正社員にするのは、業務の拡大状況によっては最も有効な手段と考える。 | ・ 代替要員の確保が非常に難しく、将来問題として検討する必要はあるが当面は考えていない。 |
・ このような制度はどんどん進めた方がいいと考えるが、問題点は中小企業では人の確保が難しく時間単位での細かな対応を求められていることである。 | ・ 官公庁、大企業のパートを中心に考えるのではなく、中小企業の経営者、正社員、パートがどのような状況かを重点的に調査して対策を考えるべきだと思う。 |
・ 理想ではあるが、個々の企業、労働者だけでこの柔軟な雇用システムを作るのは無理なので、制度を進めていく企業への支援等社会全体の支援システム作りが急務。 | ・ 企業・労働者双方のニーズに応じた柔軟な雇用システムは、時間と財源と人の問題を解決しないと構築は難しい。 |
(その他) | |
・ 家族的責任のために仕事を中断するのは、当人のみならず社会的にも損失。仕事を中断するのではなく、短時間勤務に切り替えて仕事を継続できる制度を導入することは、正社員とパート労働者との賃金格差是正にも効果を上げることができる。 | ・ 労使双方のニーズに応じた雇用システムなどありえない。 |
3 就業調整問題への対応について、どのように考えるのか。 パート労働者が社会保険の適用用件等を考慮して就業時間・日数や収入を調整する問題についてどのように考えるか。 |
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就業調整問題への対応が必要との立場 109件 | 対応は必要ない、あるいは困難との立場 13件 |
(パートの意見) | (パートの意見) |
・共働きを想定した社会保険や税制のシステムを作ってほしい。 ・短時間でも社会保険が適用になるようにしてほしい。 ・パートの扶養の枠を引き上げてほしい。 ・個人単位の制度にしてほしい。 |
パートの処遇改善が進み正社員並みにならない限り、就業調整はなくならない。 |
(正社員の意見) | (正社員の意見) |
・社会保険の収入130万円要件は廃止すべき。 | ・損得勘定から見て就業調整は当然の自衛手段であるからやむを得ない。 |
・配偶者優遇制度に問題がある。 | ・あくまで働こうとする者の姿勢の問題 |
・社会保険の会社負担分を給料として上乗せしすべて労働者負担とした方がいい。 | ・労使双方合意の上での調整ならば、良いのではないか。 |
・扶養のあり方の検討が必要。 | ・現時点ではよい解決策は見あたらない。 |
・早急解決は難しく時間をかけて行う必要。 | |
(その他) | |
・制度そのものが不要 ・パート労働者は現在の税制に振り回されている。 ・税や年金などの制度を世帯単位から個人単位に変える。 ・制度が正確に理解されていない部分が多い。 |
・特別問題と感じたことはない。 |