報道発表資料  トピックス  厚生労働省ホームページ

平成12年度 児童相談所における児童虐待相談処理件数報告

(平成13年11月14日)
厚生労働省雇用均等・児童家庭局 総務課

 厚生労働省では、毎年、社会福祉行政業務報告として、社会福祉関係諸法規の施行に伴う各都道府県・指定都市等の行政の実態を数量的に把握しており、今回、その一部で ある児童相談所における児童虐待相談処理件数について、雇用均等・児童家庭局総務課が調査した補足内容と合わせて報告するものである。
 平成12年度の児童相談所(全国174か所)における児童虐待相談処理件数は、17,725件であった。

1 相談内容別受付件数の年度別推移(報告例)

 平成12年度、全国の174か所の児童相談所で受け付けた相談総数は、362,655件であった。昭和23年に児童福祉法に基づく児童相談所が活動を開始してから年を経るごとに相談件数が増加し、昭和39年度、276,005件の相談を受け付け、第一次のピークとなった。その後、微増減を繰り返していたが、平成4年度、276,416件、これを境にして増加傾向となっている。
 平成12年度は、養護相談が他の相談に比べて伸びたのが特徴として挙げられる。これは、養護相談に属する児童虐待相談の増加が、養護相談の件数を引き上げた結果であると考えられる。

種別

年度
総数 養護相談 非行関係相談 障害相談 育成相談 その他の相談
平成10年度 ( 1998 ) (100%)
336,241
(11.0%)
36,819
( 5.3%)
17,669
(52.7%)
177,059
(21.1%)
70,881
( 9.9%)
33,813
平成11年度 ( 1999 ) (100%)
347,833
(12.9%)
44,806
( 4.9%)
17,072
(52.8%)
183,748
(19.9%)
69,108
( 9.5%)
33,099
平成12年度 ( 2000 ) (100%)
362,655
(14.9%)
53,867
( 4.7%)
17,211
(52.3%)
189,843
(18.8%)
68,324
( 9.2%)
33,410
*児童虐待相談は、養護相談の内数である

2 虐待に関する相談処理件数の推移(報告例)

 平成12年度の児童虐待相談は、統計を取り始めた平成2年度を1とすると16倍に増加、前年度と比較しても1.5倍の17,725件に増加した。この理由としては、平成12年度に「児童虐待の防止等に関する法律」(以下、「児童虐待防止法」とする。)が成立、施行され、広報・啓発などの対策に積極的に取り組んだことなどにより相談、通告が促進されたことなどが考えられる。

平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度
〈100〉
1,101
〈106〉
1,171
〈125〉
1,372
〈146〉
1,611
〈178〉
1,961
〈247〉
2,722
〈373〉
4,102
〈486〉
5,352
〈630〉
6,932
(1,056)
11,631
(1,610)
17,725
(注)上段〈 〉内は、平成2年度を100とした指数(伸び率)である。

3 虐待の経路別相談件数(報告例)

 この項目は、児童虐待相談が、児童相談所にどのような経路からもたらされたのかを把握したものである。実数的には、全ての経路機関等の実数が増加しているが、家族からの相談件数の相対的な割合が、平成10年度27%(1,861件)、平成11年度23%(2,611件)、平成12年度21%(3,692件)と減少している。

  総数 家族 親戚 近隣
知人
児童
本人
福祉事
務所
児童
委員
保健所 医療
機関
児童福
祉施設
警察等 学校等 その他
10年 (100%)
6,932
(27%)
1,861
( 3%)
224
( 9%)
616
( 2%)
159
(14%)
939
( 2%)
142
( 4%)
292
( 6%)
395
( 5%)
324
( 6%)
415
( 13%)
895
( 9%)
670
11年 (100%)
11,631
(23%)
2,611
( 3%)
370
(15%)
1,678
( 2%)
228
(13%)
1,543
( 3%)
323
( 4%)
473
( 5%)
573
( 5%)
580
( 5%)
617
( 12%)
1,431
( 10%)
1,204
12年 (100%)
17,725
(21%)
3,692
( 3%)
544
(14%)
2,449
( 2%)
294
(13%)
2,306
( 3%)
467
( 5%)
829
( 5%)
799
( 5%)
858
( 6%)
1,109
( 13%)
2,382
( 11%)
1,996

(1)家族の内訳(総務課調)

 この項目は、家族からの相談のうち虐待する本人からの相談件数を把握したものである。家族からの相談は3,692件、その内の1,906件が虐待者本人からの相談であり、児童虐待相談の1割を占めている。

  虐待者本人 虐待者以外
父親 母親 その他 父親 母親 その他
10年度 (11.3%)
98
(86.6%)
754
(2.1%)
18
(100%)
870
(19.8%)
196
(60.0%)
595
(20.2%)
200
(100%)
991
11年度 (13.0%)
178
(86.1%)
1,179
(0.9%)
13
(100%)
1,370
(23.0%)
286
(55.0%)
682
(22.0%)
273
(100%)
1,241
12年度 (9.8%)
186
(89.2%)
1,700
(1.0%)
20
(100%)
1,906
(22.3%)
399
(55.5%)
991
(22.2%)
396
(100%)
1,786

(2)児童福祉施設等の内訳(総務課調)

 この項目は、児童福祉施設、学校等のうち、保育所、幼稚園からの相談件数について把握したものである。結果は、保育所及び幼稚園からの相談・通告が、それぞれに実数、相対的割合ともに増加している。

  児童福祉施設 学校等
保育所 その他 幼稚園 その他
10年度 (57.1%)
185
(42.9%)
139
(100%)
324
(3.5%)
31
(96.5%)
864
(100%)
895
11年度 (49.0%)
284
(51.0%)
296
(100%)
580
(3.9%)
56
(96.1%)
1,375
(100%)
1,431
12年度 (60.7%)
521
(39.3%)
337
(100%)
858
(7.4%)
175
(92.7%)
2,207
(100%)
2,382

4 虐待の内容別相談件数(報告例)

 この項目は、児童虐待相談を種類別に分類したものである。結果は、それぞれの分類ごとに実数が増加しており、ネグレクトの割合が増大していることが特徴であり、児童虐待としてのネグレクトの理解が地域住民や関係機関、児童相談所に浸透しつつあることが伺えるものとなっている。

  総数 身体的虐待 保護の怠慢
ないし拒否
(ネグレクト)
性的虐待 心理的虐待
平成10年度 (100%)
6,932
(53.0%)
3,673
(31.9%)
2,213
(5.7%)
396
(9.4%)
650
平成11年度 (100%)
11,631
(51.3%)
5,973
(29.6%)
3,441
(5.1%)
590
(14.0%)
1,627
平成12年度 (100%)
17,725
(50.1%)
8,877
(35.6%)
6,318
(4.3%)
754
(10.0%)
1,776

5 主たる虐待者(報告例)

 この項目は、虐待を行った主たる者が誰かを分類したものであり、結果は、実母の増加が著しく、相対的な割合が大きくなっている。

  総数 その他
実父 実父以外 実母 実母以外
平成10年度 (100%)
6,932
(27.6%)
1,910
(8.2%)
570
(55.1%)
3,821
(2.8%)
195
(6.3%)
436
平成11年度 (100%)
11,631
(25.0%)
2,908
(7.0%)
815
(58.0%)
6,750
(2.3%)
269
(7.7%)
889
平成12年度 (100%)
17,725
(23.7%)
4,205
(6.7%)
1,194
(61.1%)
10,833
(1.8%)
311
(6.7%)
1,182

6 被虐待児童の年齢構成(報告例)

 この項目は、児童虐待の対象となった児童を年齢階層により分類したものであるが、相対的な割合に大きな変化は見られない。

  総数 0〜3未満 3〜学齢前児童 小学生 中学生 高校生・その他
平成10年度 (100%)
6,932
(17.8%)
1,235
(26.9%)
1,867
(36.6%)
2,537
(13.4%)
930
(5.2%)
363
平成11年度 (100%)
11,631
(20.6%)
2,393
(29.0%)
3,370
(34.5%)
4,021
(10.9%)
1,266
(5.0%)
581
平成12年度 (100%)
17,725
(19.9%)
3,522
(29.0%)
5,147
(35.2%)
6,235
(11.0%)
1,957
(4.9%)
864

7 立入調査(総務課調)

 この項目は、児童福祉法第29条及び児童虐待防止法第9条に基づき児童の居所等に立入調査を行った件数を把握したものであり、平成12年度には96件の立入調査が行われた。これは、児童虐待のおそれがある場合には、立入調査が行えることを明確化する規定が盛り込まれた「児童虐待防止法」が成立、施行されたことにより、これまでにも増して積極的な運用がなされたものと考えられる。

年度 件数
平成10年度 13件( 20名)
平成11年度 42件( 64名)
平成12年度 96件(132名)
( )は、対象児童数

8 一時保護(総務課調)

 この項目は、児童福祉法第33条に基づき一時保護を行った件数を把握したものである。これは、児童虐待相談件数が急増した結果、保護者からの分離が必要な深刻な事例も増加したと考えられる。

  平成10年度 平成11年度 平成12年度
一時保護所 1,645 3,496 4,868
一時保護委託 408(100%) 823(100%) 1,300(100%)
  児童養護施設 272(66.7%) 418(50.8%) 766(59.0%)
乳児院 53(13.0%) 139(16.9%) 211(16.2%)
児童自立支援施設 7(1.7%) 6(0.7%) 16(1.2%)
情緒障害児短期治療施設 6(1.5%) 8(1.0%) 17(1.3%)
障害児関係施設 6(1.5%) 18(2.2%) 36(2.8%)
その他社会福祉施設 0(0%) 1(0.1%) 16(1.2%)
警察署 12(2.9%) 127(15.4%) 73(5.6%)
その他 52(12.7%) 106(12.9%) 165(12.7%)
2,053 4,319 6,168

9 虐待相談の処理種類別内訳(報告例)

 この項目は、児童虐待相談として受け付けたものを平成12年度中に施設入所措置等により対応した内容について件数を把握したものであり、それぞれの項目ごとに実数が増加している。

年度 総数 施設入所 里親等委託 面接指導 その他
平成10年度 (100%)
6,932
(20.1%)
1,391
(0.5%)
35
(69.6%)
4,826
(9.8%)
680
平成11年度 (100%)
11,631
(17.9%)
2,081
(0.4%)
48
(72.9%)
8,482
(8.8%)
1,020
平成12年度 (100%)
17,725
(14.3%)
2,527
(0.5%)
91
(76.7%)
13,596
(8.5%)
1,511

○施設入所措置の内訳(総務課調)

 この項目は、施設入所措置件数2,527件の内訳を把握したものであり、相談件数の増加にともない各施設とも実数が増加している。

  平成10年度 平成11年度 平成12年度
児童養護施設 1,100 (79.0%) 1,585 (76.2%) 1,909 (75.5%)
乳児院 192 (13.8%) 317 (15.2%) 348 (13.8%)
児童自立支援施設 23 ( 1.7%) 50 ( 2.4%) 70 ( 2.8%)
情緒障害児短期治療施設 37 ( 2.7%) 56 ( 2.7%) 84 ( 3.3%)
その他の施設 39 ( 2.8%) 73 ( 3.5%) 116 ( 4.6%)
1,391 (100%) 2,081 (100%) 2,527 ( 100%)

10 親権・後見人関係請求・承認件数(報告例)

 この項目は、児童福祉法の規定に基づき家庭裁判所の承認を得るための手続きを行った件数を把握したものである。特に、児童福祉法第28条の申し立て件数が88件から127件へと増加している。

年度 事項 法第28条による施設
入所措置の承認申立
法第33条の6による
親権喪失宣告の請求
法第33条の7による
後見人選任の請求
法第33条の8による
後見人解任の請求
平成10年度 請求件数 39 10
承認件数 22
平成11年度 請求件数 88 14
承認件数 48
平成12年度 請求件数 127
承認件数 87

11 児童相談所の関与があった死亡事例 (総務課調)

年度 件数
平成10年度 8件
平成11年度 5件
平成12年度 11件


(参考) 死亡事例の概要

事例 1 (1歳男児)
○相談の経路
 母親が若年で養育困難であると親族から相談

○虐待の状況
 実母の暴行により死亡

○家族構成
 実父、実母

○児童相談所の対応状況
 施設入所後、祖父母が養育することで家庭引き取り。保健所、保育所、施設と連携しながら継続指導を行っていた

事例 2 (1歳女児)
○相談の経路
 病院からの通告

○虐待の状況
 実母の暴行により死亡した疑い

○家族構成
 実父、実母、姉

○児童相談所の対応状況
 通告後、一時保護を経て施設入所措置。保育所入所を前提に家庭引き取り

事例3 (2歳男児)
○相談の経路
 病院からの通告

○虐待の状況
 実母の暴行により死亡

○家族構成
 実父、実母、姉

○児童相談所の対応状況
 病院からの通告により、施設入所も視野に入れて介入。他市に居住する祖父母が養育を申し出、退院後は主に祖父母が養育。保健所、病院と共に援助を継続していたが、一時的に実父母宅に戻った時に母親の虐待行為により死亡

事例4 (3歳男児)
○相談の経路
 病院からの通告

○虐待の状況
 実父の暴行により死亡

○家族構成
 父親、母親、兄、弟

○児童相談所の対応状況
 病院からの通告により、父母の同意を得て一時保護。在宅指導を行うことで、家庭引き取り。家庭訪問、来所指導を継続、保健機関も関与していた

事例5 (3歳男児)
○相談の経路
 家族が本児の乱暴な行動に困っている、と保健センターから連絡

○虐待の状況
 継母とその家族から暴行を受け、死亡

○家族構成
 実父、継母とその親族、妹

○児童相談所の対応状況
 保健婦からの連絡後、継母が「乱暴な行動にどのように対応したらいいかわからない」と相談に来所。家庭訪問を予定するが、継母から来所するとの意向が示され、来所相談を予定していた

事例6 (3歳女児)
○相談の経路
 保育所からの通告

○虐待の状況
 実父の暴行により死亡

○家族構成
 実父、実母

○児童相談所の対応状況
 保健センターとは情報交換、保育所、主任児童委員に地域での見守りを依頼、福祉事務所に両親の指導を依頼していた

事例7 (3歳女児)
○相談の経路
 保健センターからの通告

○虐待の状況
 実父母が充分な食事を与えず餓死

○家族構成
 実父、実母、弟

○児童相談所の対応状況
 保健センターと面接指導を開始、保健センターが家庭訪問により、母親への指導を継続中に病院から虐待の疑いありと保健所に通告。改めて、関係機関の協議により保健センターが訪問指導を継続していた

事例8 (3歳男児)
○相談の経路
 保育所からの通告

○虐待の状況
 実母とその内縁の夫の暴行により死亡

○家族構成
 実母、内縁の夫、妹

○児童相談所の対応状況
 家庭訪問により児童の状況を把握したが、実母が本児を連れて内縁の夫の元へ転居。転居先が把握できないうちに虐待により死亡

事例9 (3歳男児)
○相談の経路
 市町村福祉担当課からの通告

○虐待の状況
 実母の暴行により死亡

○家族構成
 継父、実母、姉、妹

○児童相談所の対応状況
 通告後、実母と面接の上、一時保護。継父、実母との面接、親子関係の改善状況の観察を行い、関係機関と協議の上、家庭引き取り

事例10 (5歳女児)
○相談の経路
 親族からの通告

○虐待の状況
 実父の暴行により死亡

○家族構成
 実父、姉

○児童相談所の対応状況
 通告後、実母が子ども全員を引き取り、父母は離婚。その後、姉と本児を父が養育することについて父母が合意。児童相談所は施設入所を勧めるも、父は同意せず、定期的な家庭訪問、保育所との連絡を条件に実父が養育していた

事例 11 (6歳男児)
○相談の経路
 福祉事務所からの通告

○虐待の状況
 実母の内縁の夫の暴行により死亡

○家族構成
 実母、内縁の夫、姉

○児童相談所の対応状況
 福祉事務所から本児の様子について連絡を受け、福祉事務所に調査を依頼していたが、直接介入しないうちに虐待により死亡

(担当)
厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 総務課
電話 03(5253)1111(代表)
児童福祉専門官 坂本 正子(内7822)
児童相談係長 太田 和男(内7829)

トップへ
報道発表資料  トピックス  厚生労働省ホームページ